The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

「オリエント急行殺人事件』公開を前に:アガサ・クリスティーやその他あれこれ

2017-11-30 | アガサ・クリスティ


以前ご紹介しました リメイク版「オリエント急行殺人事件」”Murder on the Orient Express”の公
開12月8日が近づいてきました。
そこで、この映画を観る前に 改めてこの作品の原作が生み出された要因、この作品に纏わる色々な
事柄に触れ直しながら復習と予習をしてみようと思います。
以前も書きましたが、ワタクシがアガサ・クリスティーの原作を読んだのはもうかれこれ20年以上
前(ひょっとすると30年位かも)と兎に角大昔の事で、クリスティー作品にのめり込む最初の作品
であったと思います。
兎に角予想もしなかった様なエンディングに驚かされたものでした。 その後クリスティー作品は
殆ど読破しましたが(「トミーとタペンス」物は読み残している作品が幾つか)、何れにしても遥か
昔の事。
そんな状態ですので、久々に原作を再読してみるつもりです。

その後映像化され、TVドラマも含め色々観てはおりますが、今回は久々の映像化という事で兎
に角楽しみにしている所です。
(過去の作品に関しては キャストも含め拙記事ご参照いただければ幸いです)
『オリエント急行殺人事件』2017 リメイク版が豪華です!

↓ 日本語版予告編
https://youtu.be/CFkQMskGMZk?t=1
(サー・ケネスのフランス語訛りも見どころ?、あ、聞きどころ)

ただ、アルバート・フィニー版の印象がかなり強烈に残っているので、今回のリメイク版がどの様
に作られているのか興味と不安が入り乱れているというのも少なからずあったりして・・・・

以下これまでに書いた内容と重複する部分もありますが、
「オリエント急行殺人事件」」はアガサ・クリスティーにより1934年に発表された 著者の長編とし
ては14作目、エルキュール・ポアロ シリーズとしては8作目にあたる作品です。
クリスティーは 大西洋単独無着陸飛行で有名な飛行家リンドバーグの息子が誘拐されその後殺害された
事件(リンドバーグ愛児誘拐事件 )に着想を得てこの作品を書いたと言われています。←少々ネタ
バレになりますが・・・

(余談ですが、リンドバーグの大西洋無着陸単独飛行は、1957年ビリー・ワイルダー監督、ジェームズ・
スチュアート主演の「翼よあれが巴里の灯だ」 ”The Spirit of St. Louis”と言う映画になっています。
かなり古い映画ですが、何時どこで観たんだったかな~?昔”名画座”ってのがあったので、そんな所で
観たんでしょうね。)

又、これも良く知られた事実ですが、アガサは1926年12月3日に自宅を出たまま行方不明になった失踪事件
があります。 ”Agatha Eleven Missing”「アガサ・クリスティー11間の失踪」として世に知られ、結局
11日後ヨークシャーのハロゲート・ハイドロパシック・ホテルで名前を偽って滞在していた事で発見され
ました。

この事件を題材に 独自の解釈で制作された1979年公開された「アガサ 愛の失踪事件」”Agatha”が
あります。

※ ヴァネッサ・レッドグレーブ、ダスティン・ホフマン、ティモシー・ダルトン等出演
(余り知られていないかも知れませんが、勿論観ましたよ!)

そして、その後執筆活動を再開し、何度かイスタンブールを訪れ その際は「ペラ・パラスホテル」
”Pera Palace Hotel” に滞在し、「オリエント急行殺人事件」の構想を練ったと言われています。
(余談ですが、「ペラ・パラスホテル」、勿論行きました。 出来れば宿泊したかったのですが 生憎
予約が入っていた為部屋の中を見せてもらうだけでしたが・・・)

↓ 「ペラ・パラスホテル」外観です。クラシックな雰囲気の好きなホテルです。

↓ アガサ・クリスティーが宿泊していた部屋(レストレーション前、私が訪れたのもこちらでした)
 ”Agatha Christie Room”

↓ 2010年にレストレーションされた部屋(使いやすそうにはなった様だけど、以前の方が雰囲気がある様な・・・)


又この作品の主題になる「オリエント急行」ですが、1883年に「ワゴン・リ社」により運行が始まった
豪華国際寝台列車で その当時はパリ―イスタンブール間の運行でした。(その後ルートは度々変更さ
れています。)

当時はイスタンブールにあるターミナル駅である「シルケジ駅」がオリエント急行の終着駅(出発駅)
として使われていました(又、余談ですが、この駅も時間の合間にチラッと外観だけ見てきました)


そして、これらの事を踏まえた上で臨む今回のリメイク版「オリエント急行殺人事件」ですが、英国
をはじめ諸外国では既に公開され 全世界興行収入で約1億5,500万ドル(約165億円)に達しそうな
勢いを見せているそうです。
そんな状況があるせいか、続編の企画が進められているそうです。
同じくサー・ケネスがポアロを演じ(監督も)、「ナイルに死す」”Death on the Nile” になるとも
言われています。
(source : シネマトゥデイ)

この作品は1978年に「ナイル殺人事件」と言うタイトルで公開された事があります。
この時のポアロは、ピーター・ユスティノフ。 その他ベティー・デイヴィス、マギー・スミス、ミア・
ファーロー、アンジェラ・ランズベリー、デヴィッド・ニーブン等豪華出演者でした。凄かったですねぇ。
ミア・ファーローが良かった。

(ひつこいですが、勿論この作品も観ました。 以前書いた事があるのですが、この時のユスティノフの
ポアロは体格が立派過ぎて、人の良いオジサン風でチョットイメージと違うかとも思ったのですが、兎に
角豪華なキャストとエジプトの風景を堪能する事が出来る作品ではありました。 どの風景も懐かしく、
アガサ・クリスティーがこの作品を執筆したと言われ、又作品にも使われていたアスワンにある ”Old
Cataract Hotel”には偶然宿泊する事になり、このホテルからナイル河を見ながら映画をシーンを思い
浮かべながら感慨にふけったものでした。

そう言えば、映画の中でルクソール神殿の列柱の上から大きな石が落ちて来るシーンがあり、実際その
場を訪れた時 このシーンが蘇り思わずビビりながら上を見上げたもんでした(汗)

又TVドラマのデヴィッド・スーシェ版ポアロ作品でも「オリエント急行殺人事件」、「ナイルに死す」
共に制作されています。 スーシェ版も良かったですねぇ。
↓ 「オリエント急行殺人事件」

↓ 「ナイルに死す」


サー・ケネス版”Death on the Nile”が実現するとすれば どんな作品になるのか・・・・又期待が
膨らみます。

色々思い出す事が多く、アチコチ話題が飛びまくりで申し訳ありませんでした。
因みに、トルコもエジプトもいわゆる”聖地巡礼”ではありません、念のため・・・どうでも良いですね(汗)

「オリエント急行殺人事件」、観た後感想が書ければ良いんですけど・・・(出来るかなぁ?)






『Dr.Who」Christmas Special 2017 情報少し

2017-11-26 |  ∟Doctor Who
『Doctor Who』Christmas Special 2017 ”Twice Upon a Time”


毎年年末恒例の「ドクター・フー」”クリスマス スペシャル”が近づいてきました。
今年のスペシャルは、12代目カパルディ―・ドクター最後のエピソードであり、同時に2010年以
来脚本を担当していたモファット氏の最後の作品にもなる訳です。
英国放送は12月25日(木)の予定で、その前に何か所でスクリーニングも予定されている様です。


今年のスペシャルのタイトルは 『Twice Upon a Time』で内容詳細は分かっていませんが、12代
目ドクターのリジェネレーションもあり、何と初代ドクターとの共演という事の様です。



Trailer はこちらから ↓
https://youtu.be/YCkDXegqjR0
 最初にトレーラーと違うものを載せていたので訂正しました)

キャスト :
監督 : レイチェル・タラレイ(『シャーロック』”6つのサッチャー”)
脚本 : スティーブン・モファット
出演:
ピーター・カパルディ : ザ・ドクター(12代目)
デヴィッド・ブラッドレイ : ザ・ドクター(初代)
マーク・ゲイティス : ザ・キャプテン
パール・マッキー : ビル・ポッツ(コンパニオン)
ジョディ―・ウィティカー : ザ・ドクター(13代目)

と、ドクター三代が揃い踏みという賑やかさです。 尤も13代目ドクターは12代目がリジェネレー
ションした後チョコッとの出演になるのでしょうけどね。

↑ 初代、12代目ドクターとそれぞれのターディス

今回ドクターはリジェネレーションの気配に抵抗している様です。
リジェネレーションして記憶はそのまま受け継がれるにしても、そのドクターとしての性格、アイ
デンティティは失われてしまうので、これまでのドクターがそうであった様にリジェネレーション
は寂しいものがあります。
何と言っても忘れられないのが、10代目テナント・ドクターの ”I don't want to go” には泣き
ましたっけ。

ところで、初代と12代目が初対面(?)でお互いに名乗る時、12代目は”I am the(”ザ” ðə, Doctor”
と言うのですが、初代は”I am the(”ディ”ði )Doctor”と言っているのです。 つまり、初代の特別
感を表しているんでしょうかね? 
これは、シャーロックがアイリーンの事を”The(”ディ”ði )Woman”と呼んでいたのと同じ意味なの
かな? モファット氏使い回し?(笑)
(それにしても発音をカタカナで表示するのはホントに難しい)


マーク・ゲイティス扮する”ザ・キャプテン”というのはどういう役柄なのか分かりませんが、予告編
を見る限り某国の某独裁者の様な風貌ですし、セリフの一端に第一次世界大戦に触れられているので 
もしかしたらそのあたりに纏わる内容なのかな?

又は、RadioTimesにある様に、実際に第一次世界大戦に従軍経験があり、警察署を考案した建築家
であり、1963年以来ターディスとして使われているブルーのポリスボックスのデザインに影響を与
えたというギルバート・マッケンジー-トレンチがモデルなのではないか・・・とも言われていま
すが、どうなんでしょうね?

初代のドクターを演じるデヴィッド・ブラッドリーは”ハリー・ポッター”、”ゲーム・オブ・ス
ローンズ”、”ホロウ・クラウン”等多くの作品にも出演していて 結構あちこちで見かけるベテ
ラン俳優さんです。


(この13代目ドクターのコスチュームに関しては、サスペンダー、長めのコート、インナーの縞柄、
ブーツ等過去歴代のドクターのコスチュームを色々取り混ぜたオマージュだとも言われています)

13代目ドクター登場新シーズンは2018年夏ごろになるとか。 しかし・・・
どうもイメージ湧かないんですよね、女性のドクターってのは。

何れにしてもクリスマス・スペシャルも日本で見られるのはかなり先の事になりそうです。

クリスマス・スペシャルに関しては 2年程前になりますが過去の作品をザッとリストにしました
ので覗いて頂ければ幸いです。(そのうち新しい作品も加えた修正版を書くつもりですが・・・・)

Dr. Who Christmas Specials リストと雑感など







『SHERLOCK S1E0』 "A Study in Pink” Pilot版 回想 (6)

2017-11-22 | SHERLOCK S1E0 : A Study in Pinki (Pilot)
『SHERLOCK』S1E0 : ”A Study in Pink” 『ピンク色の研究』 Unaired Pilot :(6)



・・・・・その(6)(間があいてしまいましたが最後です)


221Bの外の通りにはパトカーや警官たちが。

救急車の後部のステップには方に赤いブランケットを掛けられバイタルチェックのモニターを付け
られたシャーロック。(E0 では飲み物を飲んでいます)
何故ブランケットを掛けられるのかレストレードに文句を言うシャーロック。

GL:ショックを受けたからだよ。
SH: ショックなんか受けていない。
GL:ああ、だが誰か写真を撮りたがるかも。
SH:で、撃ったのは君のところの人間じゃなかったんだな。
GL:まさか。そんな余裕はなかったよ。 でもああいうヤツは敵もいるだろう。その内の一人が後を
付けたのかも知れない。それが誰にせよ我々が着いた時にはいなくなっていたし、何も出来なかっ
たよ。
SH:僕はそんな風には。
GL:そうか、言ってみろ。(と言ってコートから手帳を取り出す)今度は書き留めてやるよ。
SH:僕の部屋の壁から見つかった銃弾は拳銃で撃たれたものだ。 その種の武器であの距離から心臓
を打ち抜いた。 それがあんたの探している鋭い一撃だが、ただの強盗ではない。兵士だ。全く手が
ぶれていない。明らかに戦闘行為に慣れている。 だが、僕が危機に直面するまで撃たなかった、
だからあんたが探している男は 強い道徳的信念を持ち 恐らく軍人の経験があって鋼の精神を持
ち・・・・・



と言いかけた時 少し離れた歩道に立ちこちらを見ているジョンの姿を見つけ、真相に気付いたシャー
ロックは、動揺して言った言葉だから気にしないでくれとレストレードに告げジョンの方に歩いて行
きます。


後を追いながら「何処に行くんだ」と言うレストレードに、「家の事で相談しないと」とシャーロック。
そのシャーロックに対し、
GL:君は正しい方のクスリを選んだのか?
SH:さあね、混乱していたから分からないよ。どっちを選んだのか分からない。
GL:あいつが勝ったのかも知れないぞ。
SH:かもな。でもあいつは死んだ。




そしてジョンの方に歩み寄ったシャーロック
JW:ドノバン巡査部長が全て説明してくれたよ。 二つの…薬だって? 酷い事件だ。怖ろしい。
SH:何処なんだ?
JW:(何の事か分からない振りをしながら)何が何処だって?
SH:いいから。銃は何処にやった?
JW:ああ、えっと、テムズ川の底かな。(え?テムズ川に捨てたって? これはダメでしょ。後々
ジョンの拳銃が必要になる機会が多々あるのに・・・てな事で、E1では使われなかったですね)
SH:指についた硝煙の跡を消しておかなければ。これで服役させられる事はないだろうけど、裁判
は回避しよう。
JW:僕はタクシーの後を追いかけて、勿論警察を呼んだよ。 それでも君から目を離さない方がいい
と思ったんだ。
シャーロックはジョンをジッと見つめながら、
SH:大丈夫か?
JW:勿論大丈夫だよ。
SH:人を一人殺したんだぞ。
JW:死んでいく人を何度も見て来たー良いヤツで、友達も。もう眠れなくなるだろうと思った。
今夜は良く眠れそうだ。
SH:その通りだな。
JW:君はあの恐ろしい薬を飲もうとしていたんじゃないか?
SH:そんな訳はないよ。時間を稼いでいたんだ。
JW:いや違うね。そうやって楽しんでいたんじゃないか? 命を懸けて自分の賢さを証明して。
SH:なんでそんな事をする?
JW:バカだから。
ここでシャーロックは一瞬眉をひそめるが、やがてジョンに向かって笑みを浮かべます。
ようやく自分を理解してくれる存在を見つけたという感じで。 ジョンも微笑み返す。
(ここ好きです)
そして2人で夕食を食べに行こうとすると(中華レストランに関する蘊蓄はE1へ)、まだ質問がある
と言ってレストレードがシャーロックを呼び止めます。


JW:あ、レストレード警部、僕が知る限り彼は数日何も食べていないんです。
だからもし貴方が彼を次の事件まで生かしておきたいなら 今させるべき事は彼に食事を摂らせる
事です。
GL:で、君はいったい誰だ?(ローリンストーン・ガーデンで会っているのにすっかり忘れられて
いたジョン)
JW:僕は彼の主治医です。
SH:そしてバカなヤツだけが主治医と言い争いをする。
GL:分った。明日話を聞くからな。もう行っていい。
JW:ありがとう。
(この辺はE1には使われていなかったと思うけど、いつの間にジョンはシャーロックの主治医に
なった?(笑) で、シャーロックも異論もなくこの言葉を受け入れている。レストレードに対
する言い逃れとは云え、この辺りのセリフは好き)

と言って2人は歩き出す。
SH:で、タクシーの後をを追いかけたんだな。足が悪いのは心因性によるものだと言ったよね。
JW:分かってたよ。
SH:でも撃たれたんだよな。
JW:ああ、そうだよ肩をね。
SH:ああ!
(去って行く2人を眺めていたレストレードは、手に持った手帳の書き込んだページを破り丸めて
しまう。)
そこへお出掛けから戻って来たハドソンさんが腹を立てながら2人の元に駆け寄って来る。←この
ハドソンさん登場はE1では使われなかったシーンです)

Mrs.H:シャーロック、私の家に何をしてくれたの?
SH:貴女の家は何ともなっていませんよ、ハドソンさん。 2階に死んだ殺人犯がいるって事だけ
ですよ。
Mrs.H:死んだ何ですって?
SH:ロンドンには良い知らせ。カーペットには悪い知らせ。
そして、ブランケットをハドソンさんに押し付けてジョンと歩き出す。
SH:おやすみハドソンさん。
押し付けられたブランケットを見下ろしながら、
Mrs.H:”I'm not your housekeeper!” 私は貴方の家政婦じゃないのよ!


レストレードは立ち去っていく2人を見ながら、ドノバンに向かい、
GL:明日あの2人が必要だ。
SD:どの2人ですか?
GL:シャーロック・ホームズとドクター・ワトソンだ。
(E1ではマイクロフトが締めくくったセリフをE0でレストレードが云っています。

そして、見つめ合いながら微笑み歩み去って行くシャーロックとジョン(見つめ合い?微笑み合っ
ちゃうんですよ、もうね。 これはE1にも引き継がれていきますけどね)

ところで、些細な点ですが、E0ではレストレードがネクタイ絞めてます。


すっかり間延びしてしまいましたが、以上で終わります。


数年ぶりにじっくりパイロット版を観直してみると、E1本編で90分に尺が伸びた分、そして
伸びた分のせいばかりでは無くあらゆる面で練り込まれ完成度が高くなった事に改めて感動
させられます。

先ず、キャラクター設定に関しても、
マーティンはE0の時点でジョンのキャラクター完成している様に思えます。 安定感が素晴ら
しくがっちり相手を受け止めている様に感じられました。
一方、シャーロックはE0では未だ 頭は良いけど未熟でチョット変わった隣のお兄ちゃん風。
(可愛いんですけどね)それが本編で、エキセントリックな天才探偵としてのキャラクターが
確立され、鼻持ちならない傲慢さ、変人振りもすっかり印象付けられ、そして何と言っても
BBCの意向にも添うべく(衣装も含め)スタイリッシュでセクシーな雰囲気をより鮮明に醸し
出すようになり、これが世界中を魅了する様になったのだと感動を覚えます。

比較するために、本編E1のシャーロックとジョンを。
すっかりヴァージョンアップされたシャーロックとあまり変化はない(?)ジョン。





久々に懐かしい画像を見ながら、あの頃は良かったな~と泣きそうになりながら・・・

そして、E0では登場していなかったマイクロフト、モリアーティーの影を追加する事により、
よりストーリーに深みが出て今後の展開を期待させる要素が追加されています。

又、セット、画面構成(BGMを含め)にしても格段にヴァージョンアップされ洗練されました。
何より、今回パイロット版を観直していて気付くのは、DVDの画質が良くないのです。まぁ、
これは試作品だし、予算の関係もあったのかも・・・とは思いますが。

ただ、E1での完成度が素晴らしいのは十分分かっていながらも、このパイロット版も別の
意味で凄く好きなのです。
何より、製作陣の正典に向かい合う純粋な気持ちが表されていて観ている側にもそれが伝
わって来る様に思えるのです。が、これは個人的な思い込みなのかも知れません。 

E4で色々考えさせられ、基本に戻ってのパイロット版再見でしたが グダグダと取り留め
も無く長くなってしまいました。
お付き合い頂き有難うございました。



← 『SHERLOCK S1E0』 "A Study in Pink” Pilot版 回想 (5)




”The Lord of the Rings” ドラマ化決定ニュース

2017-11-18 | The Lord of the Rings/The Rings of Power


既に色々報道されているのでご存知の方も多いかと思いますが、数日前に米CNN,Varietyその他の
複数のメディアにより発表された記事によれば、J・R・Rトールキンの長編小説「指輪物語」
”The Lord of the Rings”のTVドラマ化の権利をAmazon が得た事が発表されたとの事。
(11月13日Amazon発表)

Amazonはトールキン財団、出版社ハーパーコリンズとの話し合いの結果、同作の複数シーズン
にわたる製作権のほか、スピンオフを製作する権利も得たとの事で、権利売却額は2億5000万ドル
(約285億円)ひぇ~~!ですね。 権利の金額だけで!ですよ。
今回権利を得て映像化されるTVドラマシリーズは、映画第一作でも描かれた「旅の仲間」の前日談、
「ホビット」よりも前の時代を描いたものになる様ですが、中つ国を舞台にした「シルマリルの物語」
は契約に含まれていない様です。 そして、トールキンの死後に出版された作品だとの事ですね。

今回の企画は、世界的に人気を博したHBOの「ゲーム・オブ・スローンズ」の様な壮大なスケールの
高品質なファンタジー巨編を作りたいとのAmazonの意向がある様です。

ピーター・ジャクソン監督によるあの独特な世界観と壮大なスケールがTVの画面で描き出せるだろう
かとも思うが、「ゲーム・オブ・スローンズ」でも十分に匹敵するスケールが描かれていたので、
その点は大丈夫だろうけど、監督、出演者も重要な要素になって来ると思えますね。
ただし、脚本もこれから、ということらしいので、実際に動き出すのはまだまだ当分先の事になる
のでしょう。

今回のシリーズの製作はAmazonをはじめ、トールキン財団、ハーパーコリンズ社のほか、映画シリーズ
を手掛けたニュー・ライン・シネマも関わることになる様です。
そして、権利売却額だけでも桁外れの上、製作費に関しても一部メディアによれば 1シーズンだけでも
1億~1億5000万ドル(約114億~171億円)は下らないだろうと言われています。何やら壮大なスケール
の作品が出来そうで楽しみです。

「指輪物語」”The Lord of the Rings”は大好きで原作も読みましたし(かなり昔の事で記憶もアヤ
フヤ)、映画も何度も観ています。
お粗末ながら大分前に概略も拙ブログに書いた事があります。
”Game of Thrones”は大人向けのファンタジーと言う感じですが、”The Lord of the Rings”は大人も
子供も楽しめる壮大なファンタジーだと思うので より多くの視聴者が期待できるでしょうね。

これから少しづつ情報も出て来るかと思いますが、又追って取り上げて行こうと思います。

ところで、Amazonの製作ってことは、当然ながらAmazon Primeでの配信になるんでしょうねぇ。(当たり前!)








今更ですが『刑事ヴァランダー』 とタイムリーな関連トピックス

2017-11-16 | 海外ドラマ
“Wallander” & “Murder on the Orient Express”+”Thor Ragnarok”



凄~く今更なのですが、ドラマのご紹介としては何度か取り上げながらも 遅ればせながらやっと
取り掛かる事に致しました。
(先ずはS1を中心に)

2008年~(英/スウェーデン)
制作総指揮 : ケネス・ブラナー
出演 : 
クルト・ヴァランダー : ケネス・ブラナー
ブーグルンド : サラ・スマート
ホルゲゾン : ダディー・シミン
スヴェードベリ : リチャード・マッケイブ
マーティンソン : トム・ヒドルストン
リンダ・ヴァランダー : ジーニー・スパーク
ステファン・フレッドマン : ニコラス・ホルト



初めてこのドラマを観たのは もう5,6年前位だったでしょうか。 その後も何度となく再放送で
観直してはいたもののなかなかじっくりと取り掛かる機会がありませんでした。

内容に触れる前に このドラマ、出演者についての入門編です。

原作は、スウェーデンの推理作家ヘニング・マンケルの小説「クルト・ヴァランダー」の映像化作
品でスウェーデンの制作会社と英国の制作会社が共同制作し、BBC Oneで放送されたものです。
S1は2008年主人公ヴァランダー刑事の故郷でもあるスウェーデンのイースタで行われました。
なので、スウェーデンの実際の景色、空気感が非常に良く描かれている様に思えます。

この原作本は又もや大昔に読んだのですが、全くと言って良い程忘却の彼方なので 原作とは別に
新たな視点で観る事にしました。

出演者に関しては、
ケネス・ブラナー(Sir Kenneth Branach)
 
RADA(The Royal Academy of Dramatic Art)を主席で卒業後 ローレンス・オリビエの再来と言われ
シェークスピア俳優として知られ、その後自身でRTC(The Renaissance Theatre Company)を設立舞
台上演にも力を入れながら、映画、ドラマの主演、制作、監督を務めています。

以前拙記事でもご紹介した”ハムレット”をはじめ、
日本でも良く知られた作品としては、
”ハリー・ポッターと秘密の部屋”(Harry Potter and the Chamber of Secrets)
”マリリン7日間の恋”(My Week with Marilyn)
話題になった
”ダンケルク”(Dunkirk)
これから公開予定の
”オリエント急行殺人事件”(Murder on the Orient Express) 
等に出演
”オリエント急行殺人事件”と云えば、少し話が逸れますが、どのエピソードだったか(いい加減)で、
捜査会議で事件がまるで『オリエント急行殺人事件』の様だというクダリがありました。
チームメンバーが、ピーター・ユスチノフだったっけ?、アルバート・フィニーだったっけ?と盛り上が
る中 ヴァランダーが苛立つ・・・というシーンでした。
この時には、サー・ケネス自身も自分がポアロを演じるだろう事は考えていなかったのだろうなぁと
ちょっと嬉しくなったりしました。

 で、タイムリーなトピックス その(1) :

サー・ケネス版の『オリエント急行殺人事件』リメイク版は12月8日公開予定です←必ず観ます!
公式サイトは、
http://www.foxmovies-jp.com/orient-movie/

以前ご紹介した記事はこちらから ↓
『オリエント急行殺人事件』2017 リメイク版が豪華です!

又、監督としても、
”マイティー・ソー”(Thor)
”シンデレラ 実写版”(Cinderella)
等を手掛ける硬軟取り混ぜて幅広い分野で活躍しているベテラン役者さんですね。

そして、「ヴァランダー」ではブロードキャスティング・プレス・ギルドの主演男優賞を、英国アカデミー
(BAFTA)で最優秀ドラマシリーズ賞を含む6部門を受賞しています。
この後S4迄制作されています。

 
他の出演者に関しては、今や日本でも大人気のトム・ヒドルストンが若き日のクルクルヘアーでヴァランダー
の相棒マーティンソンを演じています(可愛いです!)。 但しS2迄です。 残念!
トムヒと言えば、経歴が素晴らしくて イートン校からケンブリッジ大学を経てRADAを卒業。
又家系も元は貴族の家系に繋がるといったように 生まれ、学歴、演技の基礎、経歴そしてルックスと正に
非の打ちどころないサラブレッドなんですよね。 只者じゃありません。
そして、ヴァランダー出演を機に ケネス・ブラナーから「マイティー・ソー」のロキ役を打診さえたとの
事で、以後 アベンジャーズの多くの作品(今後公開予定も含み)で”ロキ”を演じています。
その他、割と最近日本で公開された 「キング・コング 髑髏島の巨神」にも出演していたし、
TVドラマでも 「ホロウ・クラウン」、「ナイト・マネジャー」等にも出演してました。
そう言えば、007の次期ボンド役が噂されていたけど 某人気女性歌手とのスキャンダルでご破算になったの
かしら? トムヒのボンド見たかったのに~。

 そしてタイムリーなトピックス その(2)として :

只今”マイティ・ーソー バトルロイヤル”が絶賛(勝手に”絶賛”つけました)上映中です。(未だ観に行け
ていませんが近い内に行く予定)

”マイティー・ソー バトルロイヤル”公式ページは ↓
http://marvel.disney.co.jp/movie/thor-br.html

 
又今回再度観直してやっと気づいたんですが、S1E1にニコラス・ホルトがゲスト出演していました。
”X-Men”シリーズでもお馴染みだし、これから公開予定(の筈だった)で最近話題になっている”The Current
War”でベネディクトと共演、二コラ・テスラを演じています。(この映画何時か観る事が出来るんでしょうか・・、
もぅね、全く 怒!) 
このドラマの時点では未だ幼い少年の様な雰囲気でE1の重要な意味を持つ役割を演じています。

他ゲストスターは、
S1 ジョナサン・アリス、 S2にルーパート・グレイブス 等シャーロックチームも出演していました。

脇を支える共演者の演技も光るドラマで 重厚な仕上がりになっていると思います。
その他、脇を支えるキャストの演技も光る作品で、重厚な仕上がりになっている。

S1 2008年
S2 2010年
S3 2012年
S4 2016年(The Final)

話を”ヴァランダー”に戻しまして、ヴァランダーのキャラクター、ストーリー設定に関して・・・
この主人公ヴァランダーはありふれたヒーローでは無く、仕事にのめり込み 私生活でも妻との別居(離婚)、娘や
父親との確執に苦悩しながら 健康問題を抱えながら人間としての弱さも隠しきれない不器用で普通の中年刑事。
しかし、真摯に事件に向き合う姿を描いています。
被害者にも感情移入してしまい、時に涙を見せたり(結構何度も泣いています)人間らしい姿も見せます。
又、このドラマに関しては、同僚の刑事達との関わり親密で ヴァランダーに対しては概ね好意的で彼の行動や私生活
を思いやる優しさが垣間見える。
ただ、トムヒ演じる部下のマーティンソンは何かとヴァランダーに反発する事もあるが 若々しいオーラでヴァランダー
との温度差を感じさせ 自分の扱われ方に不満を抱える未熟な刑事である事実を明確にして奥深いキャラクター像を演
じています。 出演回数が少なかったのは残念な所。

ストーリー展開は、1つの事件が起き、そして物語が進むにつれて 一見関係なく懸け離れて起きた別の事件と思われ
た事件が後に密接に繋がり そして最後にそれぞれの点が1つに纏まり解決に導かれるというのがドラマの方程式の様
になっている様に思えます。 その為途中気を抜けなくて目が離せなくなるサスペンス・ドラマとしても秀逸。
又現代社会が抱える問題を提起していて 社会派の一面も併せ持ち、派手なアクションや直ぐに
拳銃を撃ち合う事もあまりなく(時々ありますが)、ストーリー展開と登場人物の心象風景を的確に伝えるドラマです。

今回は取りあえずの入門編(今更ですが)及び関連情報を書きましたが、何れ余裕があれば
各シーズンに関しても感想を書きたいと思っています。





『シャーロック・ホームズ対伊藤博文』 : 松岡圭祐著

2017-11-12 | ブックレヴュー&情報

『シャーロック・ホームズ対伊藤博文』 講談社文庫 2017年6月
松岡圭祐著

シャーロック・ホームズのパスティーシュです。
松岡氏の著書に関しては「千里眼」シリーズ等を読んだ経験がありますが、あの作風から”シャー
ロック・ホームズ”パスティーシュを?と一瞬結びつかなかったのです。
ただ、あらゆるパスティーシュに手を出すワタクシとしても、これは外せないッ!と手に取りました。


この作品は、タイトル通り、シャーロック・ホームズが明治の偉人伊藤博文とタッグを組むという意
表をつくコンセプトで、かのミステリー界の巨匠にしてシャーロッキアンとしても有名な島田荘司氏
をして「これは歴史の重厚に、名探偵のけれんみが挑む興奮作だ。シャーロック・ホームズが現実の
歴史に溶けこんだ。いかに彼は目撃者のいないライヘンバッハの滝で、モリアーティ教授に対する正
当防衛を立証し、社会復帰しえたのか。日本で実際に起きた大津事件の謎に挑み、伊藤博文と逢着す
る正典のあらゆる矛盾が解消され論証される、二十世紀以来最高のホームズ物語。」とまで言わしめ
て推奨分を寄せている様に、ミステリーと歴史小説、フィクションと史実が高いレベルで融合した
エンターテインメントに仕上がっていると思わせられました。

伊藤博文は歴史の教科書での知識しかなく、又大津事件も あ~そんな事あったっけな位のお粗末な
知識しかなく(恥)、今回この作品を読むにあたって 改めて少しだけ情報見直してみました。
伊藤博文は1841年~1909年、大津事件が1891年に実際に起こった事件 それらに、かのシャーロック・
ホームズが登場し事件を解決するという、フィクションとノンフィクションを融合させた思いもよらぬ
作品です。
シャーロック・ホームズに関しては、正典”The Final Problem”「最後の事件」でモリアーティー教授
と対決し、ライヘンバッハの滝壺に落ちて死亡したと言われる1891年5月4日から”The Empty House”
「 空き家の冒険」で復活する1894年4月までの3年間が”The Great Hiatus”(大空白時代又は”大失踪
期間とも”
)と言われ、後にホームズもその間チベットを含む世界各地を訪れていたと語っていること
からも、大津事件の時に日本を訪れていたという点に関しても時間的な齟齬は無い訳ですね。
(但し、両作品の発行時期に関しては実際には10年間ある訳ですが、この点に関しても最後にきちんと
ワトソンの説明として明らかにされています)

これからは一部ネタバレありますのでお含みおき下さいマセ。

冒頭は、ライヘンバッハでのホームズとモリアーティーの決闘のシーンですが、この場面も正典では語り
つくされていなかった2人の心情がそれぞれの視点で詳しく語られています。
(この場面も「グラナダ版」のシーンが彷彿とさせられます) ※この時ホームズは37歳(もっと年上と
思い込んでいた)
モリアーティーが死亡し、1人生き残ったホームズはモリアーティーの手下モラン大佐から逃れ、身を隠し
ながら逃亡生活を送るうち 兄のマイクロフトの手助けにより秘密裏に日本に向かい長く厳しい船旅に出
る事になる。
何故日本だったのか・・・マイクロフトの指示で日本の伊藤を頼る様にと。

それに関しては、1864年に遡る。
当時22歳の伊藤春輔(後の博文)は仲間と共に密航の末ロンドンに滞在中であった。
街中でならず者に絡まれていたホームズ兄弟(兄マイクロフト17歳、シャーロック10歳)を助ける事にな
るがその時のホームズ兄弟の描写には思わずニヤリとさせられる。 その時のシャーロックの言葉「繁殖
した牡蛎が何故埋め尽くさないのか・・・・」( 確か「瀕死の探偵」からの引用ですね)を始めとする
既に後の天才振りを彷彿とさせられる兄弟二人のやり取りが嬉しい。
この事件の際日本の柔術で3人の男をたたきのめした伊藤は、シャーロック少年にとってヒーローであり、
恩人となったのだった。

帰国後伊藤は激動の日本において要職を歴任し、名前を博文と改名していたが、その後再び渡欧の機会を
得る。当時41歳。
伊藤は昔懐かしさにホームズ兄弟に会おうとするも、政府の要職についていたマイクロフトからは断られ、
その代わり探偵という職業についているというシャーロックに会う為ベーカー街221B を訪れる事になる。
ホームズの帰宅を待つ伊藤が見たホームズの部屋の中の描写が又嬉しい。 きちんと正典通りの描写が
細かく書かれている。
(その中で、伊藤が見つけた”大きく捻じ曲げられ、その後元に戻そうとした様子の火かき棒” ←これを
見て、お~ッ! ロイロット博士か!と気付きます。)
そしてそんな中ホームズとワトソンが帰宅するのですが、その時の会話は正に「まだらの紐」を解決した
直後の様子。
ホームズとワトソンの外見も正典通りの描写がされている。
ただ、この時ホームズは伊藤と認識しているにも係わらず 酷く冷酷な無関心な様子で伊藤の私生活等を
推理して暴き出すのみ。(女遊びが目に余る・・・等)その原因は若き日英国に渡る前に日本の公使館焼
き討ちに伊藤が関わっていた事に対する怒りもあった。
失望して去る伊藤を送り出しコカインに手を出すホームズ。

長い過酷な航海の後疲弊した状態で日本に到着し 伊藤の元を訪ねあてたホームズを驚きながらも暖かく
迎えた伊藤家に滞在する事になったホームズ。 当時総理大臣を辞め 枢密院議長となっていた伊藤。
伊藤の妻梅子をはじめ娘の朝子、生子も皆英語を話す事が出来た為意思の疎通には困らなかったが、伊藤
家の複雑な家族構成を即座に推理するホームズ。つまり、梅子にとっては生子は実の娘だが朝子は伊藤の
妾の娘。
梅子自身も元は芸妓であったという伊藤。(やはりなかなかの艶福家であったらしい伊藤。 知らなかった)

そんな折、ホームズが航海中に大津で起きたロシア皇太子ニコライの暗殺事件があった事を聞かされた。
皇太子を襲った犯人の津田は捕えられ無期懲役の判決が下り取りあえずは決着したと思われた事件が4か月
後 突如ロシアが態度を一変させあわや戦争に突入かという危機に陥るが ホームズは事件の真相を追う
べく鋭い推理を働かせ事件の真相に迫っていく。
殆どは史実の通りの様だが 予想外の展開を迎えるあたりはこの作品ならではの躍動感にあふれている。

お台場沖に集結したロシア艦隊9隻の名前を探り出すホームズの推理はなかなか難しくてちょっとついて
行けない(汗)

再びコカインに手を出そうとしたホームズを叱責し止めさせようとする伊藤が、その代わりに自分の夜
遊びを辞めると約束する彼の固い決心を聞き ホームズも感動して、その後一切コカインに手を出さな
くなったという。

英国ではモリアーティー教授殺害容疑が掛けられ、モリアーティーの弟(ジェームズ・モリアーティー
即ち駅長をしている弟)から損害賠償請求訴訟を起こされ裁判に掛けられる怖れがあるホームズは日本
でも名前を知られることを避けなければならず、生きている事を母国に知られない様にしなければならない。
その上モリアーティーの残党であるモラン大佐他の暗躍も予想されるというジレンマに陥るホームズ。

兄マイクロフトに対する不信感、反発も事件で係る事になったニコライ皇太子兄弟の姿に重ね合わせて
いる様に思えるが、その後兄に対する気持ちに変化が見られるようになる。

母国に思いを馳せ 2度と帰国出来ないかも知れない、或は帰国したとしても投獄されるかもしれない
いう怖れと時折寂しさを覚えながら 日本語も分からないながら伊藤の助けとなり事件を解決しようと
するホームズの姿が生き生きと描かれている。
大津事件の犯人津田が獄死した後死因を調べる為汽車の長旅を経て1人釧路集治監迄訪れる事になる。

ロシアの軍艦に乗り込む再には伊藤も自ら武器を持ちホームズに同行するという行動派。
その際ホームズが「かつてテムズ川で追跡したオーロラ号より大きいが・・・と思い出す言葉は、正典
”The Sign of Four”「4人の署名」から!

思いもよらぬ2重3重のどんでん返しを経た後、ホームズの活躍によりロシアとの戦争も回避され、
事件は終結する。

日本を去る時に伊藤から渡された手紙はヴィクトリア女王の署名入りの恩赦によるホームズに対する
起訴取り下げ。 伊藤その他の働きによるものだった。
感動したホームズは、その上に伊藤によりダライ・ラマ謁見の許可も得た。(正典通りチベットに
寄ることになる)
1894年春3年振りにロンドンに帰国し 久々に221Bに戻ったホームズ。
ハドソンさんとの再会は正典通りで、同時に「グラナダ版」をそのまま思い描かれるシーン。
そして、2階の居間にはマイクロフトが待っていた。
ぎこちない再会でホームズは素直にマイクロフトに感謝の言葉を掛けられる様になっていた。
この2人の会話は感動モノ。

そして、ワトソンに会いに行く場面も正典通り。 そしてこの場面も「グラナダ版」を彷彿とさせる。

そして、正典”The Empty House”「空き家の冒険」のクダリは、やっと執筆の許可が出たという10年後
のワトソンの手記として引用されている。
(これで実際にストランドマガジンの出版期間10年の空白の意味に言及されている)

兎に角面白かったです。

歴史の本の中で読んだ維新後の近代史で活躍した人物たちが フィクションを交えながらも生き生きと
した形で活躍し、その中に架空の人物であるシャーロック・ホームズが無理なく溶け込んでいる。
正典のホームズのイメージを損なわず人間的な部分も加えながら活躍する様子は ホームズが実在
したかの様な感じまで抱かせられる。
そして、日本での経験を踏まえ人間的にも成長する姿は ホームズらしさを引き立てている。

そんな中、正典からの引用、踏襲も多く それらの箇所を見つける度に思わずニヤリと嬉しくなる
というおまけ付き。(上記で触れた以外にも、「青い紅玉」、「「ギリシャ語通訳」等からの引用
もあります)

ライヘンバッハでの決闘や3年間の空白期間等正典内で十分に説明されていなかった矛盾や不明な点
に触れられている事も魅力になっています。

又、兄マイクロフトとの関係においても、シャーロックの兄に対する不信感や反発も日本での経験
を経て変化し、221B での再開のシーンでお互いにギクシャクしながらも少し心のウチをさらけ出し
2人ともがぎこちないながらも素直に本心を口に出すクダリは 個人的にこの作品の中でも特に好き
な部分でした。 

正典を知らなくても(知っていれば尚嬉しい)、或は実際の史実を覚えていなくても十分楽しめ
るとは思いますが、維新後の近代史は受験勉強の期間と重なった為か殆ど素通りで良く理解して
いなかった者としては 今回、実在の政治家たちがフィクションの部分を含め如何に日本の近代化、
復興に情熱と力を注いでいたかを感じ、改めてこの辺りの歴史を勉強し直してみようかと思わせ
られました。

映像化を期待する声、そしてその場合のホームズはジェレミーで・・・という願望も目にしました。
ワタクシもジェレミーの姿を重ね合わせながら読んでしまいました。
是非ジェレミーのホームズで・・・ってか・・・こればっかりは無理!(涙)

最後のもう一度、フィクションとノンフィクションを融合させながら重厚であり、エンター
テインメントとしても一級と感じるこの作品はホームズのパスティーシュの中でも特に気に
入った作品の一つになりました。







『SHERLOCK S1E0』 "A Study in Pink” Pilot版 回想 (5)

2017-11-08 | SHERLOCK S1E0 : A Study in Pinki (Pilot)
『SHERLOCK』S1E0 : ”A Study in Pink” 『ピンク色の研究』 Unaired Pilot :(5)



・・・・・その(5)


本編ではギリギリまで犯人が誰か気付いていなかったシャーロックですが、E0では早い段階でタ
クシードライバーが犯人だと気づいていたんですね。

酔っ払った振りをしてタクシーに近づいたシャーロックは、窓を叩いて「221Bまで乗せて行ってく
れ」と頼むのですが、勤務中ではないと断るドライバー。

シャーロックはタクシーに寄りかかりながら密かにピンクの犠牲者の携帯に電話を入れます。
それに応えたドライバーにどうやって犠牲者たちに毒を飲ませたのか訊ねるシャーロック。

ドライバーを問い詰めている隙にわきの下に注射器を刺され麻酔薬を打たれてしまうシャーロック。
(「ベルグレーヴィアの醜聞」でアイリーンのシーンに使いまわし?)

その様子を窓越しに見ていたジョンとアンジェロ。
アンジェロは、”All part of the plan. Sherlock always has a plan”「全部計画の一部だよ。シャー
ロックには何時も計画があるんだ」と云うのですが、ジョンは、”Yes, and it's gone wrong”
「分かってる。でも上手くいかなかった様だ」 と心配そうな様子。

シャーロックが麻酔薬の為車のシートに倒れ込みながら弱々しく ”John!”と呼ぶのを聞き(聞こ
えたのか気配を察知したのか?)ジョンは、シャーロックを乗せて走り去ったタクシーを追って走り
出します。



(この時、杖の事をすっかり忘れている。 E1ではシャーロックと共にタクシーを追いかける事に
気を取られて杖を忘れるけど、ここではシャーロックの事を心配する余り・・・って所が良い!)

フラフラのシャーロックが連れ込まれたのは221B のフラット。

「人は自分の家で死にたがるもんだ」と言いながら,バランスを崩して床に倒れ込んだシャーロックに、
「意識を失っていたのは10分だ。 あんたは強いな。たいしたもんだ」と云うドライバー。
住所はシャーロックから聞いたし、鍵もスリ取っていたドライバーは、「僕の部屋だ」というシャー
ロックに、「人は自分の家で死にたがるもんだ」、もがきながら立ち上がろうとするシャーロックに、
あと一時間位はヤクが効いている筈で、今なら何でも好きな事が出来る。心配しなくても良い、あん
たを殺してやるから・・・と余裕でしゃべるドライバー。


(ところで、こんなにヨレヨレのシャーロックは自分で2階に上がれたんだろうか?それのもドライバー
が担いで上がったんだろうか? 妙な事が気になる)



もがきながら立ち上がろうとするシャーロックを椅子に座らせたドライバーは、同じような2つの薬瓶を
出し、それぞれから一錠ずつカプセルを取り出す。

(この辺りからの2人の会話は殆どE1へ引き継がれています)

少しづつ意識がはっきりしてくるシャーロックとドライバーの心理戦。 会話のやり取りもE1と同じ。


そして、シャーロックはドライバーの余命が短い事を見抜きますが、E1の様に子供の存在も出て来ず、
何となくあっさりと流されます。
E1でシャーロックは自ら犯人の懐に入り込み、冷静かつ対等にドライバーと会話し 追い詰めていき
ますが、ここでのシャーロックはヤクで朦朧としているので犯人を追い詰める過程も弱い様な感じ。
仕方ないですね、ヘロヘロなんだから・・・
このドライバーが何故5人もの殺人を犯したのか・・・は、余命が短い為自暴自棄になってという事で、
犯行動機としては何となく曖昧。
E1では子供の存在があり、そしてモリアーティーの影が出る事により、犯行理由により説得力が出ました。
( 犯人が動脈瘤”aneurism”を患っているというのも正典の踏襲です)


ドライバーからどちらかのカプセルを選ぶように指示されていた時、外の通りで車が急停止するブレー
キの音と共に、窓越しに点滅するパトカーのブルーライトが見える。
(カプセルが入っている瓶もE1で透明な瓶に変わり 各瓶にカプセルが一つづつ入っているのが分かり
やすく変更されています)
シャーロックもドライバーもパトカーの存在に気付いている。
その時、部屋の電話の着信ライトが点滅するのに気付いたシャーロック(勿論ドライバーも気付い
ている) シャーロックはニヤリとしながら、”Good old Doctor Waton. I underestimated him”
「ドクター・ワトソン。 彼を見くびっていたよ」(シャーロックは直ぐにジョンからだと分かって
いたんですね)
 ”good old Watson” は正典でもホームズが良く口にするフレーズです)




シャ-ロックは勧められなかった方のカプセルを手に取り、ドライバーがもう一つのカプセルを手に
取る。 シャーロックが取らなかった方をドライバーが手に取り、シャーロックがカプセルを口に入
れようとした時、銃声が響き渡り窓から飛び込んできた弾丸がドライバーの胸を貫通して シャー
ロックの背後の壁に突き刺さりります。
(E1では少しの間息がありシャーロックに痛めつけられたドライバーもE0では即死でした)




カプセルと取り落としテーブルに倒れ込むドライバーを見て衝撃を受けたシャーロックは 一瞬倒れ
たドライバーを見下ろしていたが 慌てて窓へ駆け寄り外の通りを探します。

(ところで又チョット余計な疑問。 ドライバーは窓に背を向けて座っており、シャーロックはドラ
イバーと向かい合わせに座っているのですが、窓越しにドライバーを射撃して銃弾が貫通して向かい
合って座っていたシャーロックに当らず壁に突き刺ささるというのは凄く無理がある様な気がします。
いくら射撃の名手のジョンと言えどもスコープも付いていない訳だし・・・・
で、この点もE1ではシャーロックが窓を背に、ドライバーが向かい合って座るという事で何とか解消
されている。)
 この向かい合った建物の窓から221Bを窓越しに射撃するというのは、正典”The Empty House”
「空き家の冒険」でモラン大佐が221Bのホームズを射撃する事を踏襲しているのでしょう)

その後別のパトカーで駆け付けたレストレードは他の警官たちに、「誰か見た者は? 何処から撃った
んだ?誰が撃ったんだ?今すぐ一帯を封鎖しろ」と叫んでいる時、シャーロックは向かいの建物へ視線
を向けると 一つの部屋に灯りが点いていて窓が少し開いていた。 この窓を見つめるシャーロック。


話が逸れるのですが、このドライバーの訛り(cockney)が聞き取り難くて良く分かりません(汗)
演じているのはフィル・デイヴィスで 思い付くだけでも 「Whitechapel、「Silk」、「Dr.Who」等
数多くの作品に出演しているベテラン俳優ですが、他作品ではこんなに訛ってません(当たり前)。

又、このドライバーはE0では付けていませんが、E1では「ロンドン・ブラックキャブ 」ライセンスを首
から下げていました。 ロンドンのブラックキャブのドライバーライセンスを取得するのは大変困難だ
そうで、それ故信頼がおける立場であるという訳なので 「誰にでも信用される、誰も疑わない」とい
う幽霊の様な立場である事を印象付けていました。




・・・・・to be continued です。




← 『SHERLOCK S1E0』 "A Study in Pink” Pilot版 回想 (4) 
→ 『SHERLOCK S1E0』 "A Study in Pink” Pilot版 回想 (6)



Benedict misc.(39) : "Patrick Melrose"撮影現場&”Interview Magazine"少し

2017-11-05 | Benedict Cumberbatch関連
この数日ベネディクトの話題がネット上を賑わしているようです。 こういうのって何か凄く久し
振りだな~って思えます。
1つは”インタビュー・マガジン”でレディオヘッドのトム・ヨークとの対談+強烈な印象の表紙及び
その他の写真。
これは他の方々が既に記事に挙げていらっしゃると思うので詳細は省きます。

もう1つが、先日もご案内しました TVミニシリーズの”Patrick Melrose”の撮影中の画像色々。
前回の最初の公式画像が微妙(泣)だったので 凄く不安だったんですけど、今回の野外撮影画像を
見る限りベネディクトらしい姿で少しホッとしたのです。







今回の現場はニューヨークでの撮影かと思ったら、実際はグラスゴーの市内に1980年代のニューヨーク
を再現したセットだとの事。
なので、スーツ等の服装もエレガントだし、セットもその当時の雰囲気を感じさせられます。


↓ 寒そう


ところが・・・
いきなりの”アイパッチ”!!





(via anindoorkitty and etc.)

そしてプレイボーイには似つかわしくないお買い物(?)のボリ袋(?)
う~ん、不思議だ。何だろう、この設定は。
原作を読めていないので(やっぱり手を付けられなかった)どういう内容で、どういう経緯でこんな姿
なのか興味が湧いて来ましたよ。

英国並びに米国での放送は来年とのことですが、日本ではどうなんでしょうねぇ。


最後に、せっかくなので、チラッと”インタビュー・マガジン”の写真を。




インタビューの詳細とその他の写真はInterview Magazineでご覧下さい。 なかなか面白いです。
で、ベネディクトの扮装のコンセプトはロックンローラーなんでしょうね。
こんなベネディクトの姿は初めてでビックリなんですが・・・ですが・・・個人的には余り・・・なんです。
でも、貴重な写真でしょうね(奥歯にものが挟まった様な言い方してますね、ワタクシは)





『ドクター・ストレンジ』期間限定配信開始

2017-11-01 | Doctor Strange
『Doctor Strange』

Marvel Studio作品 2016年11月4日(米国)、2017年1月27日(日本)公開
 
『ドクター・ストレンジ』がいよいよHuluにて本日(11月1日)から12月15日までの期間限定配信
開始となります。
嬉しいですね!
ってか、又観るつもり? もう何度観れば気が済むのか・・・・(汗)
面白いし、ベネディクトのストレンジさんカッコ良いんですもん。 
まぁ、ストーリー構成に関しては色々なご意見もある様ですが、そこは置いといて(置くんかい?)

↓ 公式ページ
https://www.happyon.jp/doctor-strange

『ドクター・ストレンジ』に関しては、詳細及びネタバレはここに書きませんが、1つだけ、エンディン
グクレジットは最後までご覧下さいね。 最後の最後まで引っ張ります(笑)

今回の配信は、『マイティー・ソー バトルロイヤル』の11月3日劇場公開を記念しての特別配信
の様で、同時にマーベル作品も配信になります。

『マイティー・ソー バトルロイヤル』

原題 ”Thor Ragnarok” (しかし、何度も愚痴りますが この邦題の付け方ってどうなんでしょう?
せっかく内容に即した原題がついているのに、安っぽいタイトルにしている様な気がします)
※ ”Ragnarok”「ラグナロク」とは北欧神話の世界における週末の日と言う意味(Wikipediaから引用)

Official trailer (International版)

https://youtu.be/ZvtADxwpTeg

米国(LAX)初公開が10月10日ですから、今回日本公開もかなり早かったですね。(とは言え世界各国より
は遅れてますが・・・)
ストレンジさんもチョコッ出ていますが、今回は何と言ってもロキ!(個人的に) 楽しみ!


今回Huluで『ドクター・ストレンジ』以外に配信されるマーベル作品は、

『マイティー・ソー』
『マイティー・ソー/ダークワールド』
『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』
『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』
『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』

詳細はHulu公式ページで確認下さい。

https://news.happyon.jp/hulu-press/thor-ragnarok