知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

意匠の類否の判断

2008-11-09 16:44:19 | Weblog
事件番号 平成20(ワ)1089
事件名 意匠権侵害差止等請求事件
裁判年月日 平成20年10月30日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 意匠権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 阿部正幸

ア意匠の類似範囲
 意匠の類否の判断は,当該意匠に係る物品の看者となる取引者,需要者において,視覚を通じて最も注意を惹かれる部分である要部を対象となる意匠から抽出した上で,登録意匠と被告意匠とを対比して,要部における共通点及び差異点をそれぞれ検討し,全体として,美感を共通にするか否かを基本として行うべきものである。そして,上記の判断に当たっては,当該意匠の出願時点における公知又は周知の意匠等を参酌するなどして,これを検討するのが相当である。
・・・

 以上によれば,本件意匠の要部については,正面側ないし背面側から見た吊部及びハンガー本体の形状であって,吊部については,フック部が正面側において円周の左下部が中心角約90度にわたって開放された円弧状をなし,吊下軸部がフック部の最下端に連なり,軸支持部を挿通し,軸支持部が円筒状でその円筒の内部で吊下軸部を支持し,その円筒の外部下端でハンガー本体のワイヤー状の線に前後から挟まれて結合しており,ハンガー本体については,ワイヤー状の線からなる首部が上部に台形状に突出しており,首部に半円状の薄板が懸装され,首部の端から肩支持部に直線状に連なり,肩支持部に連なって先端部が下方に折り曲げたように延在する短い直線状である点であるものと認められる。
・・・

オまとめ
 上記エの本件意匠と被告意匠との差異点のうち,本件意匠では,首部の正面側の上辺のワイヤー状の線に半円状の薄板が取り付けられているのに対し,被告意匠において,首部5の正面側に本件意匠のような薄板が取り付けられていないという点において,被告意匠は,看者に対して本件意匠と異なる美感を与えるものというべきである。

 そして,上記エの本件意匠と被告意匠との共通点のうち,・・・との基本的構成態様は,乙1ないし4意匠にも共通してみられる形状であること,首部が上部に台形状に突出しているとの形状は,乙3意匠にもみられる形状であること,吊部における円筒状の軸支持部は,ハンガー本体の全体の大きさと対比して,特に際立つ存在ではなく,また,その形状が乙4意匠にもみられるものであることに照らすと,上記の共通点は,上記の首部の薄板が欠如するとの差異点を凌駕するほどの影響を看者に及ぼすものとみることはできない。その余の共通点についても,上記の差異点を凌駕するに足るものということはできない。

 以上のとおりであるから,本件意匠と被告意匠とは,相互の共通点の存在にかかわらず,全体として,看者に対して異なる美感を与えるものであると認められる。

職務発明の実績補償金の消滅時効の起算点

2008-11-09 16:22:53 | Weblog
事件番号 平成20(ネ)10039
事件名 職務発明の対価請求控訴事件
裁判年月日 平成20年10月29日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

3 消滅時効完成の有無
(1) 職務発明について特許を受ける権利等を使用者等に承継させる旨を定めた勤務規則等がある場合においては,従業者等は,当該勤務規則等により,特許を受ける権利等を使用者等に承継させたときに,相当の対価の支払を受ける権利を取得する(特許法旧35条3項)。対価の額については,同条4項の規定があるので,勤務規則等による額が同項により算定される額に満たないときは同項により算定される額に修正されるが,対価の支払時期についてはそのような規定はない。
 したがって,勤務規則等に対価の支払時期が定められているときは,勤務規則等の定めによる支払時期が到来するまでの間は,相当の対価の支払を受ける権利の行使につき法律上の障害があるものとして,その支払を求めることができないというべきである。そうすると,勤務規則等に,使用者等が従業者等に対して支払うべき対価の支払時期に関する条項がある場合には,その支払時期が相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となると解するのが相当である(最高裁平成15年4月22日第三小法廷判決・民集57巻4号477頁参照)。
 そして特許法旧35条3項に基づく相当の対価の支払を受ける権利は,同条により認められた法定の債権であるから,権利を行使することができる時から10年の経過によって消滅する(民法166条1項,167条1項)。

 そこで,以上の見地に立って本件について検討する。

(2)ア 原判決6頁1行~7頁9行のとおり,本件発明等取扱規則は,被控訴人が従業員のした職務発明について特許を受ける権利を承継した場合の相当対価について,実質的に出願補償,登録補償及び実績補償の3種に区分し,同区分に従いそれぞれ支払をすること,また,これら各補償の支払時期は,出願補償については出願した時点,登録補償については特許権の設定登録がされた時点と規定し,他方,実績補償の支払時期については,「会社が,特許権等に係る発明等を実施し,その効果が顕著であると認められた場合その他これに準ずる場合は,会社は,その職務発明をした従業員に対し,褒賞金を支給する。」(9条)と規定する。そして控訴人の本訴請求債権は,このうち実績補償に関するものである。

イ ところで,実績補償は本件発明等取扱規則9条が定めるように「会社が…発明等を実施し,その効果が顕著である」ときに支払時期が到来するものであるが,会社が発明を実施し,その効果を判定するためには一定の期間経過を必要とすることは道理であるから,上記規則9条は,会社が発明を実施しその効果を判定できるような一定期間の経過をもって実績補償に係る対価請求債権の支払時期が到来することを定めたものと解するのが相当である。

 そこで,どの程度の期間経過をもって実績補償に係る対価請求債権の支払時期と解すべきかであるが,被控訴人により平成13年11月21日から施行された本件特許報奨取扱い規則(甲9)の6条には職務発明者に「営業利益基準」に基づき一定の報奨金が支払われることが,また1条に,上記「営業利益基準」が報奨申請時の前会計年度から起算して連続する過去5会計年度における対象事業の営業利益を基準とするものであることが規定されている。
 同規則は控訴人が被控訴人会社を退社ないし退任した後の平成13年11月21日から施行されたものであるとしても,5年をもって実績評価期間とする部分は,控訴人在職期間中から関係人の間で当然の前提とされていた内容を注意的に明文化したものと認めるのが相当であり,しかも,これが使用者と従業者の双方にとって不当に長いと解すべき事情も見当たらない

 そうすると,本件発明等取扱規則9条における実績補償の支払時期を決する前提となる発明の客観的価値を認定するために必要とされる期間は5年ということになる。

ウ 以上によれば,本件発明等取扱規則9条における実績補償に係る相当対価の支払請求債権は,各職務発明の実施から5年を経過した時点が消滅時効の起算点となるところ,原判決4頁下5行~5頁13行のとおり,本件発明はいずれも平成5年10月7日に実施されたことが認められるから,本件発明の実績補償に係る相当対価支払請求債権の消滅時効の起算点は,それから5年を経過した平成10年10月7日ということになる。そして,控訴人は平成19年2月1日被控訴人に対しその履行を催告し(甲7の1,弁論の全趣旨),同年5月18日に本訴を提起した(当裁判所に顕著な事実)から,上記消滅時効は上記催告時に中断したことになる。

訂正審判請求における判断対象の不可分一体性

2008-11-09 12:23:36 | 特許法126条
事件番号 平成19(行ケ)10283
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年10月29日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 田中信義

4 訂正審判請求における判断対象の不可分一体性について
(1) 前記第2の1に記載したとおり,本件特許に係る請求項は全4項であったところ,本件訂正審判請求は上記請求項中の1及び2に係るものであり,請求項2~4については,特許取消決定が確定した結果,本件訂正審判請求のうち,請求項2に係る部分は訂正の対象を欠くものとして無効であり,結局,本件訂正審判請求は,本件特許の請求項1に係るものとなった。また,本件特許の請求項3及び4に係る部分についても特許取消決定が確定したため,本件特許は請求項1に係る発明を対象とするものとなった。

 ところで,特許庁は,前記第1の3に記載したとおり,本件特許の請求項1及び2に係る訂正審判請求である本件訂正審判請求について,訂正審判請求の対象となっていない請求項3及び4についても独立特許要件の具備の有無について審査すべきものとする立場を採っているところである。本件訂正審判請求については,上記のとおり,本件特許のうち,請求項1以外の各請求項に係る部分の特許取消決定は確定したため,請求項1に係る本件発明のみについての訂正の適否を検討すれば足りるものとなったが,以下,念のため,特許庁の上記取扱いについても検討しておくこととする

(2) 平成6年法律第116号附則6条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下「平成6年改正前」という。)の特許法126条3項は「第一項ただし書第一号の場合は,訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。」と規定し,同条1項ただし書第1号は「特許請求の範囲の減縮」を掲記するところ,同条3項の上記「訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明」とは,「特許請求の範囲の減縮をした後の発明」であって,「減縮されていない発明」を含むものではないというべきである

 もっとも,上記文言は,文理上,「訂正後における特許請求の範囲に記載されている全ての事項により構成される全ての発明」と解釈する余地があるが,特許法における訂正の審判の位置付けに照らすと,このように解釈することはできないというべきである

 すなわち,平成6年改正前の特許法126条が定める訂正の審判は,主として特許の一部に瑕疵がある場合に,その瑕疵のあることを理由に全部について無効審判請求されるおそれがあるので,そうした攻撃に対して備える意味において瑕疵のある部分を自発的に事前に取り除いておくための制度である。他方,特許法153条3項は「審判においては,請求人が申し立てない請求の趣旨については,審理することができない。」と規定しており,訂正の審判においては,訂正を許すべきか否かが判断の対象となり,(その限度で同条1項及び2項に基づいて職権で広範囲に審理できるものの,)求められた訂正の可否を超えて判断することは許されないのである

 仮に,特許権者が,複数の請求項の一部の請求項について特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を求めて訂正審判を請求した場合において,その訂正の可否を,一旦査定・登録された,訂正を求めていない他の請求項に係る発明についての独立特許要件の具備の有無にも係らしめるというのであれば,訂正審判請求がされるたびに,特許庁は,全請求項について審査を繰り返すことになってしまうほか,特許権者が権利行使の準備等のために必要と考えている訂正について,適時に判断を得ることができない結果ともなり得るし,制度についてのこのような理解は,ひいては,特許権者が訂正したいと考えている請求項のみについて,第三者をして形式的な無効審判を請求させた上,当該審判手続において訂正請求をすることによって実質的に必要な訂正の効果を確保しようとするなど,制度の不健全な利用を招来するおそれすらある。

 したがって,平成6年改正前の特許法126条3項において,独立特許要件の存在が求められる発明は,「特許請求の範囲の減縮をした後の発明」であるというべきであり,審決の判断中,本件訂正において訂正の対象とされていない請求項3,4に記載された発明について独立特許要件の有無を検討した部分は,審決の結論を導くために必要なものではなく,そもそも本訴における審理の対象となり得ないものであったというべきである

 なお,平成20年7月10日最高裁第一小法廷判決(平成19年(行ヒ)第318号)は「特許異議申立事件の係属中に複数の請求項に係る訂正請求がされた場合,特許異議の申立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正については,訂正の対象となっている請求項ごとに個別にその許否を判断すべきであり,一部の請求項に係る訂正事項が訂正の要件に適合しないことのみを理由として,他の請求項に係る訂正事項を含む訂正の全部を認めないとすることは許されない。」と判断したものであるが,
 その前提として,特許査定及び訂正審判請求と訂正請求の法的性質が異なることを示すために,
「訂正審判に関しては,特許法旧113条柱書き後段,特許法123条1項柱書き後段に相当するような請求項ごとに可分的な取扱いを定める明文の規定が存しない上,訂正審判請求は一種の新規出願としての実質を有すること(特許法126条5項,128条参照)にも照らすと,複数の請求項について訂正を求める訂正審判請求は,複数の請求項に係る特許出願の手続と同様,その全体を一体不可分のものとして取り扱うことが予定されているといえる。」と説示するほか,
訂正請求の中でも,本件訂正のように特許異議の申立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とするものについては,いわゆる独立特許要件が要求されない(特許法旧120条の4第3項,旧126条4項)など,訂正審判手続とは異なる取扱いが予定されており,訂正審判請求のように新規出願に準ずる実質を有するということはできない。」
と判示している。

 しかしながら,上記判示中において「一体不可分」とされているのは,あくまでも「複数の請求項について訂正を求める訂正審判請求」であり,「新規出願に準ずる実質を有する」との判示も,訂正が求められている請求項については,訂正後の特許請求の範囲の記載に基づく新たな特許出願があったのと同様に考えることができることを述べていると理解すべきものであって,訂正が求められていない請求項を含む全ての請求項について特許性の有無を再審査することまで求められるものでないことは明らかである

動機付けはあるが具体的適用が困難である事例

2008-11-09 11:56:38 | 特許法29条2項
事件番号 平成19(行ケ)10283
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年10月29日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 田中信義


(2) 容易想到性についての検討
 前項の技術状況によれば,本件優先権主張日(平成5年9月17日)当時,2つの部材の電気的接続を図るための機械的接合方法を検討するに当たり,カシメ接合の方法を想到することは当業者にとって格別困難なことではないものといって差し支えない。そして,カシメ接合を検討する上においては,接合の強固性等を確保するために両部材の接合面の広さの確保が重要な考慮要素となることも,両部材を重ね合わせて加圧するというカシメ技術の性格上当然のことというべきである。

 そこで,これを引用発明についてみると,同発明の接合部材である「1対の針状端子」の形状は「針状」と規定されている。一般に「針」とは,「縫い,刺し,引っ掛け,液を注ぎなどするのに用いる,細長くとがった道具の総称。縫針・待針・留針・注射針・釣針・レコード針など,用途に応じてきわめて種類が多い。・・・」(1991(平成3)年11月15日株式会社岩波書店発行の「広辞苑第四版」2106頁)とされていることからみると,「針状」とは「細長くとがった」状態となっていることを意味するものというべきである。また,引用発明に係る刊行物1(甲第1号証)には,「この絶縁材層3の本体部3aの厚さは,発光ダイオード2の針状端子2a,2a間の間隔が通常0.1インチ(2.54mm)であることから,2~2.5mmとされている。」旨の記載があり,この記載によれば,引用発明に係る発光ダイオードの針状端子は,直径1mmに満たない程度の細長い「針」のような形状になっているものと解することができる

 そうすると,上記のような引用発明に係る「針状端子」の形状をそのままに,カシメ接合面を確保した上,カシメ接合することは困難であるといわざるを得ない。この点に関し,審決は,「リードの幅は,機械的接続を行うに当たって必要な幅に設計上決めることである」とするが,本件全証拠を精査しても,発光ダイオードの「針状端子」(リード)を,必要とする適宜な幅にすることを容易に行い得ることを認めるに足りる証拠はない。

 以上によれば,引用発明の「1対の針状端子2a,2a」に接した当業者が,本件発明の相違点2に係る構成を容易に想到し得たと認めることはできないというべきであるから,取消事由3は理由がある。

特許法29条の2への抗弁と特許法36条6項1号

2008-11-09 11:26:48 | 特許法29条の2
事件番号 平成20(行ケ)10126
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年10月29日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

(3) なお,被告は,原告が先願明細書には*A*の実施例がないから先願明細書にはこれが記載されているとすることはできないと主張することは,原告自ら,本願補正発明が「発明の詳細な説明」に記載されたものでなく,特許法36条6項1号に違反しているということを認めることになる,と主張するが,特許法29条の2の適用に当たって先願明細書にどのような発明が記載されているかの認定と本願が特許法36条6項1号に適合するかどうかの判断は異なるものであって,先願明細書に*A*が記載されていないことから直ちに本願が特許法36条6項1号に適合しないものとなるということはない
(ブログ編者注:*A*には、電気化学的活物質の組成式が入る。)

請求項の用語の意義の認定と刊行物との対比

2008-11-09 10:54:59 | 特許法29条2項
事件番号 平成20(行ケ)10106
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年10月29日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

4 取消事由1(一致点認定の誤り)について
(1) 前記第3,1(3)のとおり,審決は,「カラー画像を表わす輝度成分および色差成分を含むカラー画像データを圧縮符号化して出力する画像データ圧縮符号化装置において,」「モノクロ画像を表すように処理して出力させるモノクロ処理モードを選択すると,色差成分を所定の値に固定させること」を本願発明と刊行物1発明の一致点と認定している。
 したがって,審決は,本願発明のモノクロ処理モードと刊行物1発明の白黒モードを対比し,色差成分を所定の値に固定させる点が一致していると認定していることになる。

(2) 刊行物1発明において個々の「Y,Cb,Cr」は,それが集まることによって「画像データ」となるから,本願発明の「カラー画像を表わす輝度成分および色差成分を含むカラー画像データ」と刊行物1発明における「Y,Cb,Cr」は,「画像データ」である点で共通する。
 しかし,前記2で認定した本願発明の意義によれば,本願発明は,モノクロ処理モードにおいて,カラー画像データをモノクロ画像を表わすように,画像データの色差成分を所定の値に固定させ,所定の値に固定された色差成分と輝度成分とを圧縮符号化処理するものである。そして,ここで処理に対象とされる「カラー画像を表わす輝度成分および色差成分を含むカラー画像データ」は,色差成分の値が0になることがあるとしても,常に0ということはなく,0以外の数値を採ることが予定されている以上のような本願発明の意義は,前記第3,1(2)の本件補正後の請求項1に基づき十分に認定できるものである。

 これに対し,前記3で認定した刊行物1発明の意義によれば,刊行物1発明においては,カラーモードと白黒モードがあり,白黒モードでは,白黒画像を対象としているから,本来色成分(Cb,Cr)は存しないものである。もっとも,前記3で述べたように,「読み取るスキャナの光学系の特性やセンサ類の位置ずれによる色ずれのために,Y,Cb,Cr変換後の色成分が完全に“0”に成らないことがあり,原稿が白黒画像であるにもかかわらず,符号データに色成分が含まれること」があるが,これは,本来含まれてはならないものが含まれるのであって,本来含まれることが予定されていないものである。

 したがって,本願発明の「カラー画像を表わす輝度成分および色差成分を含むカラー画像データ」は,色差成分が0以外の数値を採ることが予定されているのに対し,刊行物1発明の白黒モードにおいては,「Y,Cb,Cr」は,本来色成分を含むことが予定されていない

 そして,上記(1)のとおり,審決は,「モノクロ画像を表すように処理して出力させるモノクロ処理モードを選択すると,色差成分を所定の値に固定させること」を本願発明と刊行物1発明の一致点と認定しているのであるから,その対象となる「画像データ」に上記のような相違点があることは,本願発明と刊行物1発明の相違点として認定すべきである


動機付けと阻害要因の主張・判断事例

2008-11-09 09:43:45 | Weblog
事件番号 平成19(行ケ)10295
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年10月29日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

(3) これに対し原告は,引用例1発明に引用例2の一部切取構成を適用する動機付けが欠如している旨主張する。
 しかし,ブレーキ装置においてブレーキ力を発生させるために作用させる力を小さなものとすることは,ブレーキ装置の耐久性等の観点から当業者が当然指向する技術課題というべきものであるから,引用例2を引用例1発明に適用する動機付けの存在を認めることができる。

(4) また原告は,引用例1発明に一部切取構成を適用して端部壁の荷重を軽減することは,それにより制動板からピストンロッドにかかる面圧を上昇させ,ピストンロッドの損傷による故障や耐久性劣化の原因となるとか,引用例1発明に一部切取構成を採用することの目的が増力だとすれば,制動板の板厚と面圧という相反する要因を考慮する必要があるなどとして,引用例2の一部切取構成を適用することには阻害要因がある旨主張する。

 しかし,引用例1発明に引用例2の技術を適用するに当たり,ピストンロッドの摺動面に傷がつかない程度に円筒内面を切り取り,また制動力が生ずる程度に制動板の板厚を設定することは,当業者が適宜なし得る設計的事項というべきである。

 なお,ピストンロッドが損傷するか否かは,ピストンロッドと制動板の円筒内面の接触面積のみで決まるわけではなく,制動板からピストンロッドに与えられる面圧の大きさや,ピストンロッドや制動板の材質にもよるのであるから,引用例1発明に引用例2の一部切取構成を適用した場合に,必ずピストンロッドの摺動面に傷がつくというものではない。
 また,本願発明は引用例1発明に引用例2の一部切取構成を適用したものと同一の構成を有するものであるところ,本願明細書には,かかる構成を採用したことによるピストンロッドの損傷や耐久性劣化が生じる可能性,ひいては制動板の板厚と面圧との関係等について何ら言及するところがないから,その意味においても原告の主張する上記事由が前記(2)の容易想到性の判断を左右するものとは認めることができない

契約解除後の契約条項の定めの有効規定の効力

2008-11-09 08:52:36 | Weblog
事件番号 平成19(行ケ)10351
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年10月28日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

2 共同出願要件違反(2)(解除の効果に係る判断の誤り)について
 審決は,本件共同出願条項について,民法545条1項の債務不履行解除により,又は存続特約のない平成13年3月26日付け合意解約により遡及的に消滅し,本件特許の出願日である平成13年6月6日以前にその効力を失ったから,本件特許には,本件共同出願条項に基づく原被告の共有を前提とする特許法38条(共同出願)違反の瑕疵はなく,同法123条1項2号の無効理由は存在しない旨判断した(審決書37頁以下)。

しかし,上記審決の判断は,次のとおり誤りである。
(1) 事実認定
・・・

(2) 判断
ア 本件開発委託契約の記載によれば,同契約では,
① 本件発明について特許を受ける権利が原告と被告の共有であることが定められ〔本件共同出願条項(6条1項(2))〕,また,
② 本契約の有効期間は,本契約締結の日から第2条の委託業務の終了日までとすると定められ(8条1項),さらに,
③ 前項の定めに関わらず,・・・第6条(工業所有権)に関する定めは,当該工業所有権の存続期間中有効とする〔本件効力存続条項〕(8条2項)と定められている。

 そうすると,本件共同出願条項(8条2項にいう「第6条(工業所有権)に関する定め」に当たる。)は,本件開発委託契約の合意解除を原因とする「委託業務の終了」(8条1項)にもかかわらず,本件効力存続条項(8条2項)により,委託業務終了後の平成13年6月6日の本件特許出願時においても,「当該工業所有権の存続期間中」(8条2項)として,その効力を有するものと解すべきは,疑いの余地はない

 したがって,上記認定した事実経緯の下における本件では,平成12年中に,新型浄水器についての設計開発作業は完了し,特許出願することができる段階に至っていたのであるから,合意解除がされた平成13年3月26日には,本件効力存続条項によって,合意解除の後においても,引き続き,原告及び被告は相互に,特許を受ける権利の共有,共同出願義務を負担することになる。

イ この点について,被告は,本件開発委託契約書8条1項の「委託業務」は,事実行為であって,法律行為(契約)の終了原因である法定解除や合意解除を含まないから,法定解除等により契約目的を達成せずに途中で契約関係が終了した場合には8条1項が適用されず,その適用を前提とする8条2項の本件効力存続条項も適用されない旨主張する。

 しかし,被告の上記主張は,以下のとおり理由がない。すなわち,
① 8条1項の「第2条の委託業務の終了」には,契約目的を達成した場合のみならず,委託業務(事実行為)が合意解除(法律行為)を原因として途中で終了する場合も含むと解するのが文言上自然であり,前記のとおり,合意解除の場合にも8条1項が適用され,8条2項の本件効力存続条項により本件共同出願条項がその効力を有すると解するのが,当事者の合理的な意思に合致するというべきであること,
② 本件開発委託契約では,最終的には,原告が被告の開発費用を負担することとし,被告が技術等を提供することと定められ(甲5の3条2項,3項参照),開発資金等を提供した原告と,技術等を提供した被告との間において,特許等について共有とするとした趣旨は,互いに相手方の同意を得ない限り独占的な実施ができないこととして,共同で開発した利益の帰属の独占を相互に牽制することにある点に照らすならば,合意解除がされた場合においても,両者の利益調整のために設けられた規定を別の趣旨に解釈する合理性はないこと,
③ 本件開発委託契約書5条(秘密保持)の約定は,同契約が合意解除がされた場合にも,不正競争防止法の関連規定の適用を待つまでもなく,その効力を特約により存続させて互いの営業秘密を保護しようとするのが契約当事者の合理的意思に合致すると考えられること等,
諸般の事情を総合考慮するならば,本件開発委託契約書8条2項において上記秘密保持規定と同様に記載された「6条(工業所有権)に関する定め」について,合意解除の場合においても,その効力を特約により存続させるのが契約当事者間の合理的意思に合致するといえる。

債務不履行解除か契約条項に基づく解除か

2008-11-09 07:59:38 | Weblog
事件番号 平成19(行ケ)10351
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年10月28日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

共同出願要件違反(1)(債務不履行解除の事実認定の誤り)について審決は,被告の原告に対する甲8書簡中の記載,
すなわち,
「ここに開発委託契約の案件につきまして,弊社の最終的な条件および御見積もり等を下記の通り御提示申し上げますので,何卒,御高配を頂き御承認を賜りますよう切に御願い申し上げます。」との記載(甲8の冒頭本文)及び
「9,開発委託契約の解約について上記8の納期を前提としますと2月14日までに御決裁を頂きたく御願いを申し上げます。なお,本開発委託契約を御解約される場合は不本意ではありますが契約書第4条に基づき,前記5の開発設計費を請求させて頂きます。」
との記載(甲8の9項)によれば,甲8書簡は,「平成13年2月14日を期限とする開発委託契約の法定解除の意思表示に実質的に相当乃至示唆することは明らかである。」と認定した(審決書37頁)。


 しかし,審決において債務不履行解除の意思表示の認定根拠とされている甲8書簡中の「本開発委託契約を御解約される場合は」という記載には,敬語が使用されているから,その「御解約」の主体は,被告作成の甲8書簡の相手方である原告であると理解される。また,甲8書簡において,被告が原告に対して主張した開発設計費支払請求の法的根拠は,債務不履行解除に係る損害賠償請求権(民法545条3項,415条)ではなく,本件開発委託契約書(甲5)の4条である。
 同条項の記載,すなわち「甲(判決注原告)のやむを得ない事由により,開発を中止又は中断しなければならなくなったとき,甲はその旨を乙(判決注被告)に書面にて通知することにより,本契約を解除することができる。この場合,甲乙協議の上,乙がそれまで負担した費用を甲は乙に支払うものとする。」という約定記載によれば,その解除権行使の主体は,原告のみに限定されている。したがって,甲8書簡で言及された「御解約」の主体は,被告ではなく,原告であることは明らかである。その他,甲8書簡には,債務不履行を理由とする解除の意思表示を認めるに足りる記載が見当たらない。

 そうすると,甲8書簡をもって被告が期限付きの債務不履行解除の意思表示をし,又は黙示的にその意思表示をしたものであると認めることはできない。
したがって,被告が債務不履行を理由とする解除の意思表示をしたとした審決の認定は誤りであり,この点に関する原告の主張は,理由がある。

本願発明の数値範囲からはずれる引用例

2008-11-05 06:43:33 | 特許法29条2項
事件番号 平成19(行ケ)10306
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年10月28日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

・・・
 上記のとおり,本願明細書には,乾熱収縮率を測定する場合の温度を特に180℃に設定した積極的な理由は記載されていないから,引用例2の実施例1における収縮処理の温度が150℃であるとしても,それによって本願発明についての容易想到性が否定されることはないというべきである。

(イ) また,周知例2には,180℃の処理による乾熱収縮率が,本願発明に定められた乾熱収縮率(5~15%)の範囲内ではない17.5%(実施例3),19.5%(実施例4)であるエアバッグ基布用ポリエステル繊維も記載されている。
 しかし,本願明細書には,乾熱収縮率が「5~15%」という数値範囲の内にあるか外にあるかによって作用効果に顕著な差異を生ずる旨の記載はないから,周知例2に,実施例として,乾熱収縮率が本願発明に定められた乾熱収縮率(5~15%)の範囲内ではないものが記載されていたとしても,それによって本願発明についての容易想到性が否定されることはないというべきである。

信義誠実の原則に反する訴訟活動

2008-11-05 06:26:20 | Weblog
事件番号 平成19(行ケ)10331
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年10月28日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

 なお,本件における原告の訴訟活動及び争点設定に関して,当裁判所の意見を述べる。

 民事訴訟法2条は,「・・・当事者は,信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない」と規定する。同規定は,公正かつ迅速な訴訟手続を行い適切な司法判断を得るという法の理念に即して,民事の紛争の解決が実現されることを目的として,訴訟を追行する訴訟当事者に対して,誠実な訴訟活動をするよう努める義務を負わせることとしたものである。
 同規定の上記の趣旨に照らすならば,当事者が,客観的に明白な事実に反し,また,自己が主観的に確信した真実に反して,徒に主張や立証活動を行ったり,逆に,反対当事者が,上記のような事実に基づいて,徒に,相手方の主張を否認したり,反対立証を重ねるような場合には,民事訴訟法2条に規定する信義誠実の原則に反する訴訟活動であると解すべきである

 ところで,本件取消訴訟をみると,原告は,本件発明1に限っても,審決のした本件発明1と甲1発明Aとの一致点及び相違点(6個)の認定及び相違点(6個)に関する容易想到性の判断,並びに審判手続のすべてに誤りがあると主張して,審決を取り消すべきであるとしている(原告第1,第2準備書面,合計59頁)。
 しかし,
①およそ,当事者の主張,立証を尽くした審判手続を経由した審決について,その理由において述べられた認定及び判断のすべての事項があまねく誤りであるということは,特段の事情のない限り,想定しがたい。また,
②本件において,本件発明と引用発明との間の一致点及び相違点の認定に誤りがあるとの原告の主張は,実質的には,相違点についての容易想到性の判断に誤りがあるとの主張と共通するものと解される。
そのような点を考慮するならば,本件において,原告が,争点を整理し,絞り込みをすることなく,漫然と,審決が理由中で述べたあらゆる事項について誤りがあると主張して,取消訴訟における争点としたことは,民事訴訟法2条の趣旨に反する信義誠実を欠く訴訟活動であるといわざるを得ない

反論の機会-提示済み文献を周知例で補強した事例

2008-11-05 06:20:33 | Weblog
事件番号 平成19(行ケ)10331
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年10月28日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

3 取消事由3(手続の違法性)について
 原告は,相違点3a(凹入部形成方法)の容易想到性判断に当たり,審決は,甲9以外に甲27及び28を裏付けとして周知技術を認定しているが,これらは審決において指摘された刊行物であり,原告に意見を述べる等の機会を与えなかった違法がある旨主張する。

しかし,以下の経緯に照らすならば,原告の主張は理由がない。すなわち,
(1) 平成19年1月11日付け審判請求書(甲19)において,被告が「・・・は現実的ではなく,(中略)成形型を圧接して行なう手法が最も一般的であり常套手段である。」として甲9を例示した(20頁23行~21頁4行)。原告は,平成19年4月2日付け審判事件答弁書(甲20)において,これに対して反論をした(14頁11行~15頁4行)。

(2) 審判体は,被告に対し,平成19年6月11日付け【口頭審理陳述要領書の作成にあたって】と題する書面(甲23)において,甲9以外に被告の主張する手法が「最も一般的で常套手段であることを裏付ける周知例があれば提示してください。」として,周知例を示すよう促したが(1頁下から9行~4行),被告は,平成19年7月10日付け「口頭審理陳述要領書」(甲25,7頁)において,周知例を調査中であるとして,具体的な文献は提示しなかった。

(3) その後,審決では,甲27及び28を示して「一般に,容器の成形において,一旦ブロー成形された容器の一部を加熱し,そこに特定形状の型を圧接させる後加工によって容器を所望の形状に成形することは,従来周知の技術である」とし,「甲9のような小型のブロー成形容器に対しても,該容器を加熱しつつ成形型を圧接させて後加工を行う技術が示されているといえる。」と認定,判断した。

 以上のとおり,審理の過程で無効の理由として「ブロー成形後に,その凹部に見合う凸部を有する成形型を圧接して行なう手法が最も一般的で常套手段である」という技術事項が証拠とともに示され,原告に対しても意見を述べる機会が与えられていること,その後に,審決において,当該技術が周知であることを裏付ける証拠(文献)が付加されていること等の経緯に照らすならば,本件審判手続及び審決は,申立人が申し立てなかった新たな無効理由に基づいて判断したものとはいえず,また,実質的に意見を述べる機会を付与しなかったものともいえない

 したがって,本件審判手続において特許法134条2項,同153条2項等の規定に反する手続があったものと認めることはできず,原告の主張は理由がない。

アイデアに同一性が認められる事例

2008-11-04 06:52:50 | 著作権法
事件番号 平成19(ワ)25428
事件名 損害賠償等請求事件
裁判年月日 平成20年10月23日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 阿部正幸

以上によれば,原告教材と被告教材又は被告教材試作品とは,いずれも,著作権法によって保護されない,表現それ自体でないアイデア又は表現上の創作性がない部分において同一性が認められるにすぎず,被告教材又は被告教材試作品を作成し,東京外大公式サイトに掲載する行為が,原告教材について原告らが有する翻案権及び同一性保持権を侵害するということはできない。

著作隣接権と著作権

2008-11-02 21:37:27 | 著作権法
事件番号 平成19(ワ)9613
事件名 実演家の権利侵害差止請求事件
裁判年月日 平成20年10月22日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 清水節

第3 当裁判所の判断
本件レコード1が,原告A,同C及び同Dらの演奏を固定したものであり,本件レコード2が,原告らの演奏を固定したものであること,並びに被告が,本件レコードを製造,販売していることは,いずれも当事者間に争いがない

したがって,原告らは,被告に対して,実演家の録音権(著作権法91条1項)及び譲渡権(同法95条の2第1項)を侵害するものとして,同法112条1項により,本件レコードの製造,販売の差止めを求めることができる

2 これに対して,被告は,原告らの差止請求は認められない旨主張するので,以下,被告の主張について検討する。

(1) 被告は,まず,単なる演奏家は,当該楽曲の著作権者の意向に反して,演奏契約上の顕著な違反又は人格権の侵害がない限り,著作隣接権の行使として,演奏を固定したレコードの製造の差止めを求めることはできず,原告らも,被告に対して,被告の意向に反して行使できる実演家の著作隣接権を有しないと主張する

しかしながら,著作隣接権と著作権とは別個独立の権利であり,レコードに固定された演奏についての実演家の著作隣接権の行使が,当該レコードの楽曲についての著作権により制約を受けることはないのであるから,実演家は,当該楽曲の著作権者等から演奏の依頼を受けて演奏をした場合であっても,当該楽曲の著作権等に対して,当該演奏が固定されたレコードの製造,販売等の差止めを求めることができることは明らかであり,被告の上記主張は失当である。