知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

動機付けと阻害要因の主張・判断事例

2008-11-09 09:43:45 | Weblog
事件番号 平成19(行ケ)10295
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年10月29日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

(3) これに対し原告は,引用例1発明に引用例2の一部切取構成を適用する動機付けが欠如している旨主張する。
 しかし,ブレーキ装置においてブレーキ力を発生させるために作用させる力を小さなものとすることは,ブレーキ装置の耐久性等の観点から当業者が当然指向する技術課題というべきものであるから,引用例2を引用例1発明に適用する動機付けの存在を認めることができる。

(4) また原告は,引用例1発明に一部切取構成を適用して端部壁の荷重を軽減することは,それにより制動板からピストンロッドにかかる面圧を上昇させ,ピストンロッドの損傷による故障や耐久性劣化の原因となるとか,引用例1発明に一部切取構成を採用することの目的が増力だとすれば,制動板の板厚と面圧という相反する要因を考慮する必要があるなどとして,引用例2の一部切取構成を適用することには阻害要因がある旨主張する。

 しかし,引用例1発明に引用例2の技術を適用するに当たり,ピストンロッドの摺動面に傷がつかない程度に円筒内面を切り取り,また制動力が生ずる程度に制動板の板厚を設定することは,当業者が適宜なし得る設計的事項というべきである。

 なお,ピストンロッドが損傷するか否かは,ピストンロッドと制動板の円筒内面の接触面積のみで決まるわけではなく,制動板からピストンロッドに与えられる面圧の大きさや,ピストンロッドや制動板の材質にもよるのであるから,引用例1発明に引用例2の一部切取構成を適用した場合に,必ずピストンロッドの摺動面に傷がつくというものではない。
 また,本願発明は引用例1発明に引用例2の一部切取構成を適用したものと同一の構成を有するものであるところ,本願明細書には,かかる構成を採用したことによるピストンロッドの損傷や耐久性劣化が生じる可能性,ひいては制動板の板厚と面圧との関係等について何ら言及するところがないから,その意味においても原告の主張する上記事由が前記(2)の容易想到性の判断を左右するものとは認めることができない

最新の画像もっと見る