知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

請求項の用語の意義の認定と刊行物との対比

2008-11-09 10:54:59 | 特許法29条2項
事件番号 平成20(行ケ)10106
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年10月29日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

4 取消事由1(一致点認定の誤り)について
(1) 前記第3,1(3)のとおり,審決は,「カラー画像を表わす輝度成分および色差成分を含むカラー画像データを圧縮符号化して出力する画像データ圧縮符号化装置において,」「モノクロ画像を表すように処理して出力させるモノクロ処理モードを選択すると,色差成分を所定の値に固定させること」を本願発明と刊行物1発明の一致点と認定している。
 したがって,審決は,本願発明のモノクロ処理モードと刊行物1発明の白黒モードを対比し,色差成分を所定の値に固定させる点が一致していると認定していることになる。

(2) 刊行物1発明において個々の「Y,Cb,Cr」は,それが集まることによって「画像データ」となるから,本願発明の「カラー画像を表わす輝度成分および色差成分を含むカラー画像データ」と刊行物1発明における「Y,Cb,Cr」は,「画像データ」である点で共通する。
 しかし,前記2で認定した本願発明の意義によれば,本願発明は,モノクロ処理モードにおいて,カラー画像データをモノクロ画像を表わすように,画像データの色差成分を所定の値に固定させ,所定の値に固定された色差成分と輝度成分とを圧縮符号化処理するものである。そして,ここで処理に対象とされる「カラー画像を表わす輝度成分および色差成分を含むカラー画像データ」は,色差成分の値が0になることがあるとしても,常に0ということはなく,0以外の数値を採ることが予定されている以上のような本願発明の意義は,前記第3,1(2)の本件補正後の請求項1に基づき十分に認定できるものである。

 これに対し,前記3で認定した刊行物1発明の意義によれば,刊行物1発明においては,カラーモードと白黒モードがあり,白黒モードでは,白黒画像を対象としているから,本来色成分(Cb,Cr)は存しないものである。もっとも,前記3で述べたように,「読み取るスキャナの光学系の特性やセンサ類の位置ずれによる色ずれのために,Y,Cb,Cr変換後の色成分が完全に“0”に成らないことがあり,原稿が白黒画像であるにもかかわらず,符号データに色成分が含まれること」があるが,これは,本来含まれてはならないものが含まれるのであって,本来含まれることが予定されていないものである。

 したがって,本願発明の「カラー画像を表わす輝度成分および色差成分を含むカラー画像データ」は,色差成分が0以外の数値を採ることが予定されているのに対し,刊行物1発明の白黒モードにおいては,「Y,Cb,Cr」は,本来色成分を含むことが予定されていない

 そして,上記(1)のとおり,審決は,「モノクロ画像を表すように処理して出力させるモノクロ処理モードを選択すると,色差成分を所定の値に固定させること」を本願発明と刊行物1発明の一致点と認定しているのであるから,その対象となる「画像データ」に上記のような相違点があることは,本願発明と刊行物1発明の相違点として認定すべきである


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