知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

反論の機会-提示済み文献を周知例で補強した事例

2008-11-05 06:20:33 | Weblog
事件番号 平成19(行ケ)10331
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年10月28日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

3 取消事由3(手続の違法性)について
 原告は,相違点3a(凹入部形成方法)の容易想到性判断に当たり,審決は,甲9以外に甲27及び28を裏付けとして周知技術を認定しているが,これらは審決において指摘された刊行物であり,原告に意見を述べる等の機会を与えなかった違法がある旨主張する。

しかし,以下の経緯に照らすならば,原告の主張は理由がない。すなわち,
(1) 平成19年1月11日付け審判請求書(甲19)において,被告が「・・・は現実的ではなく,(中略)成形型を圧接して行なう手法が最も一般的であり常套手段である。」として甲9を例示した(20頁23行~21頁4行)。原告は,平成19年4月2日付け審判事件答弁書(甲20)において,これに対して反論をした(14頁11行~15頁4行)。

(2) 審判体は,被告に対し,平成19年6月11日付け【口頭審理陳述要領書の作成にあたって】と題する書面(甲23)において,甲9以外に被告の主張する手法が「最も一般的で常套手段であることを裏付ける周知例があれば提示してください。」として,周知例を示すよう促したが(1頁下から9行~4行),被告は,平成19年7月10日付け「口頭審理陳述要領書」(甲25,7頁)において,周知例を調査中であるとして,具体的な文献は提示しなかった。

(3) その後,審決では,甲27及び28を示して「一般に,容器の成形において,一旦ブロー成形された容器の一部を加熱し,そこに特定形状の型を圧接させる後加工によって容器を所望の形状に成形することは,従来周知の技術である」とし,「甲9のような小型のブロー成形容器に対しても,該容器を加熱しつつ成形型を圧接させて後加工を行う技術が示されているといえる。」と認定,判断した。

 以上のとおり,審理の過程で無効の理由として「ブロー成形後に,その凹部に見合う凸部を有する成形型を圧接して行なう手法が最も一般的で常套手段である」という技術事項が証拠とともに示され,原告に対しても意見を述べる機会が与えられていること,その後に,審決において,当該技術が周知であることを裏付ける証拠(文献)が付加されていること等の経緯に照らすならば,本件審判手続及び審決は,申立人が申し立てなかった新たな無効理由に基づいて判断したものとはいえず,また,実質的に意見を述べる機会を付与しなかったものともいえない

 したがって,本件審判手続において特許法134条2項,同153条2項等の規定に反する手続があったものと認めることはできず,原告の主張は理由がない。

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