知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

著作隣接権と著作権

2008-11-02 21:37:27 | 著作権法
事件番号 平成19(ワ)9613
事件名 実演家の権利侵害差止請求事件
裁判年月日 平成20年10月22日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 清水節

第3 当裁判所の判断
本件レコード1が,原告A,同C及び同Dらの演奏を固定したものであり,本件レコード2が,原告らの演奏を固定したものであること,並びに被告が,本件レコードを製造,販売していることは,いずれも当事者間に争いがない

したがって,原告らは,被告に対して,実演家の録音権(著作権法91条1項)及び譲渡権(同法95条の2第1項)を侵害するものとして,同法112条1項により,本件レコードの製造,販売の差止めを求めることができる

2 これに対して,被告は,原告らの差止請求は認められない旨主張するので,以下,被告の主張について検討する。

(1) 被告は,まず,単なる演奏家は,当該楽曲の著作権者の意向に反して,演奏契約上の顕著な違反又は人格権の侵害がない限り,著作隣接権の行使として,演奏を固定したレコードの製造の差止めを求めることはできず,原告らも,被告に対して,被告の意向に反して行使できる実演家の著作隣接権を有しないと主張する

しかしながら,著作隣接権と著作権とは別個独立の権利であり,レコードに固定された演奏についての実演家の著作隣接権の行使が,当該レコードの楽曲についての著作権により制約を受けることはないのであるから,実演家は,当該楽曲の著作権者等から演奏の依頼を受けて演奏をした場合であっても,当該楽曲の著作権等に対して,当該演奏が固定されたレコードの製造,販売等の差止めを求めることができることは明らかであり,被告の上記主張は失当である。

最新の画像もっと見る