徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

ある農夫に話を聞く

2021-09-16 19:06:18 | 熊本
 今日は初秋の風景を見て回ろうと車で家を出た。結局、菊鹿町の「番所の棚田」まで足を延ばした。彼岸花は七部咲きとのことだが、主役はやはり稲。今年もまた休耕田が増えたようだ。12年前、初めて訪れた時、「ここは天国か!?」と思ったほど、この世のものとは思えぬ黄金と真紅の鮮やかなコントラストの棚田が鮮明に思い出される。年々、美観が衰えていくのが残念だ。
 「番所の棚田」を降りて上内田川に沿って下る途中、今回も上内田神社にお詣りしていこうと農道を進んで行くと、一人の年老いた農夫が畦道で休憩しているのが見えた。少し通り過ぎてから車を停め、車を降りて声をかけた。
「ご苦労さま!今日は何のお仕事ですか?」
「畦道の草刈ばしよります。」
 近くで顔を見ると僕よりだいぶ年上に見える。
「失礼ですが、おいくつですか?」
「84になります。」と照れたように笑った。
「お一人でやっておられるのですか?」
「ハイ!」
「田んぼはどのくらいの広さですか?」
「五反ですたい。」
「それは大変ですね~。後継者はおられないのですか?」
「息子がおりますばってん、勤めに出よります。」
「まだ息子さんに継がれないんですか?」
「ワシが動けんようになるまではやろうと思うとります。」
 それからしばらく世間話をした後、時間を取らせたお礼を述べ、
「くれぐれもお気をつけください!」と声をかけて別れた。
 日本の農村の現実を見た気がした。


上内田の稲田と神社


番所の棚田