徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

わが父 こころの謡蹟

2020-04-26 22:20:42 | 伝統芸能
 今夜の「古典芸能への招待」(Eテレ)では、人間国宝の喜多流能楽師・友枝昭世さんが舞囃子「田村」を舞われ、その圧倒的な存在感は、以前ナマの舞台を拝見した時よりも迫力を感じた。

 ところで、来月はわが父の没後20年。父がまだ四つか五つだった頃、立田山麓の泰勝寺跡に住んでおられた長岡家(現細川家立田別邸)に日参していた。お坊ちゃまの遊び相手だったが、お屋敷で謡曲のお稽古が行われる日は、幼い父も末席に侍らせられていたという。父は門前の小僧よろしく謡曲「田村」の「ひとたび放せば千の矢先・・・」という一節だけは終生忘れなかった。

 謡曲「田村」の謡蹟(謡の舞台となった跡)は清水寺や坂上田村麻呂の歴戦の地なのだろうが、わが父にとって謡曲「田村」の謡蹟は泰勝寺跡の長岡家だったにちがいない。

▼謡曲「田村」 結末の地謡
あれを見よ不思議やな。味方の軍兵の旗の上に。千手観音の。光を放って虚空に飛行し。千の御手ごとに。大悲の弓には。知恵の矢をはげて。一度放せば千の矢先。雨霰とふりかかつて。鬼神の上に乱れ落つれば。ことごとく矢先にかかつて鬼神は残らず討たれにけり。ありがたしありがたしや。誠に呪詛。諸毒薬念彼。観音の力をあはせてすなはち還着於本人すなはち還着於本人の。敵は亡びにけりこれ。観音の仏力なり。


父の生家から泰勝寺の境内へ入る虎口


毎日くぐったであろう山門


緑に覆われた庭園


祭事が行われていた神殿


北側の奥にお屋敷が