のすたる爺や

文明の果てなる地からのメッセージ

密入国者

2013年08月06日 | 日記・エッセイ・コラム

 十年ほど前ですが、中国とロシアの国境で100人を超える奇妙なメキシコ人の集団がロシア国境警備隊につかまりました。

 メキシコのパスポートを持っていたからメキシコ人なのでしょうが、ヒゲも眉毛も濃くないし鼻だってでかくない、誰がどう見ても中国人の風体と顔つき。確かにメキシコにも中国人はたくさんいますし、チーノと呼ばれて蔑まされていますが、家庭内では中国語(主に広東語が多い)を喋っても、外ではスペイン語を喋っています。ところがこのメキシコ人の集団、誰一人としてスペイン語も喋れない。

 結局中国に強制送還になったそうですが、モスクワからメキシコ領事館の職員までやってきての大仕事だったそうです。

 偽装パスポートでの密入国と言う事は当然の事実ですが、だいたい中露国境でメキシコのパスポートもって、誰がどう見ても中国人の風体をしていれば疑われて当然と思わないのか、あまりにも浅はかな行動にあきれ返るし、笑いのつぼを心得ていると感心してしまいます。

 広東語・福建語圏の中国人だったそうで、中国の南部からわざわざ激寒の国にやってきて何ができるのかなど考えてもいないのでしょう。ソビエト時代ならメキシコといえばスターリンのライバルのトロツキーが逃げ延びた先、「スパイ罪」で奥地の森林伐採やダム建設工事に従事させて、労働力として有効活用したことでしょうが、紳士的な国になったものです。

 日本ですと、「海岸に流れ着いた密航者の遺体」とか「コンテナーの中に隠れ酸欠で大量窒息死」と深刻で暗い話になってしまいますが、ロシアですと軍や警官に撃たれなかっただけもうけものと言うこともあり、ほのぼのとした話題になってしまいます。

 密入国者輸出大国の中国も北朝鮮からの密入国者には頭を痛めているようですが、ウラジオストクはじめ、シベリアなどでは北朝鮮からの出稼ぎ労働者が随分います。シベリアの森林作業などに従事している北朝鮮の労働者も多く、ほとんどラーゲリーと変わらないような環境で働いていますが、給料がもらえることと、食事が十分にあること、休日があることなど囚人よりは良い待遇です。

 ウラジオストクではゴミの収集などの仕事についている北朝鮮労働者も多いようです。こうした労働者には北朝鮮当局の監視もついているので逃げることも難しいようですし、家族が本国にいたり、比較的身分を保証された実であるから国外に出られるので、あえて危険を冒すようなまねもしないようです。

 ロシアはここ何年も死刑を執行していませんが、逮捕される以前に射殺される事は十分にある国なのでうかつなことなどできはしません。犯罪者には教育で矯正でも、国を守るためには迷わず撃てと言うことでしょう。

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