のすたる爺や

文明の果てなる地からのメッセージ

労働力

2013年08月05日 | 日記・エッセイ・コラム

 ソビエト時代に政府中枢にいた父親を持つ留学生と、東西冷戦時代について話をしたことがあります。

 十数年前まで、ソビエトは日本にとってもっともの危険な仮想敵国でした。ソビエトが日本を占領しようと攻めてくることを基本に日本の国防は成り立っていました。実際、危うい事態はあってもソビエトが日本に攻め入ってくることはなく、かの国は崩壊しました。

 本当に日本を占領したり属国にするような考えがソビエトにあったのだろうか?と言う話になったとき、彼はきっぱりと「その計画はありました。」と言うのでびっくりしました。

 日本を支配下に押さえたときのメリットはなんだろう?やはり暖かいからだろうか?などと思ってしまいますが、ただ単に暖かい国を手に入れたいなら他にもっと適した国はたくさんありますし、自国の食糧もまかなえない少ない農地、資源も少なく自然災害も多い日本を押さえたところでどんなメリットがあるのかといえば、人材だったのだそうです。

 人材といっても最先端の技術の人材ではなく、一般労働者としての人材が一番欲しいと彼のお父さん達は考えていたそうです。工場でも建設現場でも日本人はテーマさえ与えてやれば、自分達で創意工夫して最も効率よい方法を見つけ出して成し遂げてしまいます。こうした実力をシベリア抑留者を通してソビエトも見ています。

 「パパ達は、日本人はロシア人の半分や三分の一の食糧で、二倍三倍の作業効率を上げると言っていました。」って、お前らがそれしか食べさせてくれなかったんだろう!

 ノルマはロシア語の”ナルマーニャ”(普通)から来た言葉ですが、その日のノルマを与えてやらないと働かないソビエト市民と違って、ノルマなど与えなくても日本人は早出残業してそれ以上の作業をしてしまうので、労働者としての魅力が高いことは言うまでもありません。

 基本的に農耕民族のロシアですが、遊牧民的な意識も多分に持っているので、私達は家畜のようなものだっただろうか?と思えてしまいます。

 「もし暖かい土地や広大な土地を望んでいたら、ソビエトは中国に攻め入っていたでしょうし、それはとてもたやすいことだったと思います。でも、7億人の人間をどうすればいいでしょうか?中国は資源もないし技術もない。労働者の能力は問題外。彼らを食べさせるだけでソビエトは破綻するでしょう。中国も粗悪な人材のおかげで国が生き残ったのです。」

コメント
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