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ボクの奥さん

ボクの奥さんは、甲斐よしひろさんの大ファン。そんな彼女との生活をお話したいと思います。

ムサシ2021その5(ネタバレあり)

2021-11-02 19:03:00 | 日記
ボクが拝見した配信映像の「五人六脚」の場面では、5人全員が仰向けに倒れられたあと
吉田さんの右足首を更に下手側に引っ張ろうとなさる藤原さんが
ご自身よりも下手側におられる沢庵様の体の上に乗り上げるような形になられたかと思ったら

その沢庵様が、いつの間にかステージ際から逆さまにズリ落ちていらして
沢庵様と繋がっておられる藤原さんも引きずられステージから落ちそうになっていらっしゃるのを
一足早く麻縄をほどき、ステージ下に降りられた平心さんが
沢庵様と藤原さんの麻縄を必死にほどこうとなさってました(笑)

…という風に、この場面ではキャストの皆さんの動きに目を奪われてしまうんですが(笑)
小次郎が「巌流島の決闘」の際に遅刻した武蔵を「卑劣漢だ!」と罵ったことに対して
武蔵が「あの時は、舟島の周りの潮目を読んでいたのだ

あの瀬戸では、正午を境に潮目がガラリと変わり、勢いよく下関へ向かって流れ出す
その潮に乗って、一刻も早く下関へ引き揚げなくてはならない
さもないと、細川家のご家来衆に捕まってしまう」
…と説明しながら、組んず解れつなさってる訳で(笑)

小次郎が「試合の刻限について言っている!刻限の約束をお主は破った!
それを卑劣だと言っているのだ!」と返すと
「戦いを始める時は、予めその前に戦いをどう終えるかを考えておかなくてはならない
これが戦いの基本ではないか!この基本に忠実だっただけだよ!」と答え

更に「貴様の狡い位置取りのせいで、太陽と波のきらめきが目にちらついて眩しかったぞ!」
…という小次郎の言葉にも「位置取りも兵法の一つだよ
お主も太陽と海を背にすれば良かったではないか?
…と字面だけ見ると、興奮気味の小次郎を至って冷静に諭しているみたいだけど

実際は、前述のように身悶えしながら、ズルズルと舞台の上を移動なさったり
吉田さんが痛さのあまり扇子で反撃なさったりと
足首綱引きに集中しなければならない時間もある中
「よくセリフを忘れたり、噛んだりせずに喋れるもんだなあ!」とビックリします(笑)

その後も、小次郎が「あの木刀よ!長い!長過ぎる!あんな長い木刀は見たことがない!」と責めると
「お主の太刀も長かったぞ。あの『物干し竿』に遅れを取ってはならない
そこで、小舟の櫂をお主の物干し竿より一尺長く仕立て上げたのよ
試合に適う武器を選び、もしも良いものがなければ、自分の手で作る
これも、我ら武芸者の仕事の内なのだよ」と説明

「貴様は、その木刀の先を波の下にくぐらせて、その長さを隠していたな!」との言葉にも
「それもまた技の内だ」と軽くいなす武蔵(笑)
「この機会に忠告しよう。お主は(燕返しの)剣さばきにこだわり、愛刀物干し竿にこだわり
格好の良いキレイな勝ち方にこだわり、そして約束にこだわる
そして、それらのこだわりが集まって、お主の型になっている
型が判れば、崩すのは容易い。俗にお茶の子サイサイというヤツだな」と評すると

小次郎は「黙れ!貴様の口には毒があり過ぎる!
舟島での『勝つつもりなら、なぜ鞘を捨てた』という、人を小馬鹿にしたあの言い草といい
只今の悪口雑言といい、もう…黙れ!黙れ!黙れ!」と怒りのあまり、言葉が出ない様子(汗)

一方、武蔵は「言葉、言葉、言葉!言葉を持って相手の心を掻き乱し、その出鼻を挫く
言葉は我ら武芸者にとって、最初の、そして最強の武器なのだ
お主の剣は天才の剣だ。だが、言葉に限って言えば、まだ三歳の童子にも及ばぬな」

…と立て板に水で、小次郎は「おのれっ!黙れ!」と怒り狂うことしか出来なくなっているのへ
「ほら、お主には『おのれ』と『黙れ』の二つしかないではないか」とバッサリ(苦笑)
ちなみに…このお二人の言い争いの合間合間に吉田さんは、大開脚姿で「孝行狸」を謡っておられました(笑)

余談ですが、プログラムに掲載されていた井上ひさしさんと堀威夫さんの対談をご紹介しますと…
井上さんが「武蔵の剣は合理的で素晴らしいが、それは結局『ロボット』でもある
相手がこう打ち込んで来たら、何も意識せずにこう受けるという
自分をロボット化してゆく行為でもある。でも、それには限界がある

小次郎は、武蔵に負けたのが悔しいという『感情』
ロボット化して強くなった武蔵と、感情が強い小次郎
武蔵は感情を排除して、徹底的な合理主義」と評されると
堀さんが「無駄もある程度必要です
無駄を排除した武蔵の限界がそこにあるのかなあ」と返されたんだけど

井上さんは「自分が危害を加えられる時には、自分を守らないといけない
自分が刀を抜くことは認められている、自分に大義がある場合は
『反対者は殺してもいい』という考えもある
でも、徳川家師範の柳生家が大事にしていたのは、戦って勝つのではなく、戦う前に勝つこと
相手の言い分を聞いて、戦う前に勝つ方法を採用する徳川家

この考えを作ったのは、沢庵和尚と柳生宗矩。この芝居は、ここが焦点になる
侍に刀を抜かせない。刀を抜く場合、侍はまず自分の方に刃を向ける
あれは、最初に自分の悪い所を斬って、キレイになったということで、相手も斬れる
そういう心の問題を侍の一人一人に植えて行く

だから、侍は剣だけでなく禅をやった。そして、心を無にして行くようになる
だから、剣が抜けなくなる
刀を抜く時に大事なのは心の問題。物理的な体をどこまで操れるのかという問題ですね
戦国の雄・織田信長は武で滅んだ。豊臣秀吉は武を弄んで、朝鮮半島まで出兵して失敗した
徳川家は武を振り回すのは良くないと知っていた

そこに、武蔵は剣だけ、小次郎は感情だけ、柳生は剣を抜かずに勝負する
そういう三者を登場させたいと思った」と明かされていて
さすが、ものを書かれるにあたって「難しいことをやさしく、やさしいことを深く
深いことを面白く」と心がけていらした方らしい言葉だなあと…

それはともかく…五人六脚の麻縄がほどけたところで、提案者の宗矩殿に
小次郎が「柳生新陰流の両固めとは、もうお付き合い致しかねます」と断り
武蔵も「石段の方にだけは、お近づきにならぬよう
そのたびに足を踏ん張っておりましたが、いささか疲れました」と告げると

「そうか…五人六脚という難事業をやってのけても
お主たちの気持ちが和らぐことがなかったのだな…残念至極じゃ」と宗矩殿
すると、小次郎がこの言葉に「残念という言葉は、某が使うべきです
五人六脚などというものがなければ、これまでの怨みつらみを
何もかも武蔵にぶちまけてやれたのですから…

小倉の御城下の笑い者になって、どれほど悔し涙を流したか!たらい一つでは足りなかった!
また、九州の山中にこもって体を作り直すのに、どれほど汗を流したか!」と食いつき
「風呂桶に溢れるくらいはあったか?」という武蔵の茶々に
「おのれ!貴様の居所を突き止めるために、どれだけの草履を履き捨てたか!」と噛みつくと
武蔵から「一千足も履き潰したか?」と返されて

「黙れ!この六年間の苦心のありたけを、貴様にぶっつけてやりたかったのだ!」と怒鳴り
宗矩殿に向かって「某の方が遥かに残念です!」と涙ぐまんばかりに訴える姿が
ザブングル加藤さんの「悔しいです!」みたいで、ちょっと笑ってしまいました(笑)スミマセン!
でも、舞台上でも、宗矩殿が小次郎の方に近づいて来て
「…すまん」と謝られていてクスクス(笑)

沢庵様が「参籠禅の最中である。今夜はここまでとしよう
その内に、この二人には、わしが仏の法を説き聞かせてやることにする」と閉会を宣言し
五人が客間へ戻ろうとしたトコへ、まいさんが駆け込んで来て
「やはり、あの浅川甚兵衛が後ろに控えていたのでございます!
それで、乙女殿は、お店からのお使いと一緒に、筆屋へ急ぎ帰られました!

乙女殿が心配です!このまいも、佐助稲荷下の籠屋から一挺呼んで筆屋へ参ります
それにつけても、なんと浅川甚兵衛は卑劣な奴でしょうか!
詳しいことが判りましたら、すぐ引き返して参ります!」と、まくし立てて駆け去ってしまい
訳が判らない様子で立ち尽くす五人…(苦笑)

ようやく、沢庵様が「平心坊、ナンのナニがしとは誰のことだ?
ほれ、たった今、まい殿が浅川ナニがしとか言っておられたろうが」と訊ねるも
平心さんも「さあ、心当たりがございませんが…」と首をひねったトコで暗転…

第1幕4場「狸(第2日・未明)」との表示が出て
夜明け前の屋根付き廊下に…上手側から、小次郎、宗矩殿、武蔵、平心さんの順で…座り
座禅に入っている四人の前を、警策を手にゆっくり歩いていた沢庵様が
下手側(奥にあるらしき石段)を気にしている平心さんの肩を打つも
「ウチの大檀那衆のことが気がかりです…
あれっきり、ウンともスンともありません」と平心さん

沢庵様は「去る者は去り、来る者は来る、これ、人間世界の実相なり!
…と、こう思い切り、突き放して、心をひたすら空にするのだ」と諭し
次に、うつらうつらと舟を漕いでいる宗矩殿の肩を打つと、ハッと目覚めたものの
「げに痛わしや我が父は、泥の小舟に乗せられて…」と謡い始め
「もう止めて下さらんか…そのお声のせいで、昨日から頭が病めてならん」と泣きが…(苦笑)

でも、宗矩殿は「わしの声が定まっていないのは、これが新作能だからだ
筋に、詞に、曲に、舞いの振り、この四つを
一時に工夫しているのだから、たまには声も裏返る訳だな
実はな、御坊、この間、家光様がこう仰せられたのよ

『泥舟で沈められたあの古狸に、親に似ぬ孝行息子があったとせよ
その孝行子狸の仇討ちが舞狂言にならないだろうか?宗矩、考えて参れ』とな
完成の暁には、家光様と舞うことになっている」と返し
「上から下まで能楽狂い…いやはや、結構な世の中になりましたな」と呆れ顔の沢庵様

…が、宗矩殿が「御坊は謀り事の機敏というものを知らないから困るな
次の将軍と政治顧問が(能三昧に見せかけて)実は、諸大名の国替えなどをご相談申し上げておる
言うならば、お能を政治の隠れ簑にしている訳だ」と説明すると「なるほど!」と感心し
「カチカチ山の後日談」に興味津々な平心さんが、宗矩殿に続きを促すと
宗矩殿が謡い舞うのに合わせて、一緒に謡い舞い出す始末…(苦笑)

…と、その時、武蔵と小次郎は気配を感じたらしく、石段の方を見ると
筆屋の忠僕・忠助さんが、心張り棒を突き立てながら現れ、物語は次の展開へ…

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