ボクの奥さん

ボクの奥さんは、甲斐よしひろさんの大ファン。そんな彼女との生活をお話したいと思います。

甲斐よしひろ語り下ろしライナーノーツ(2018年)1

2021-04-29 14:34:00 | メディア
甲斐バンド ビルボードツアーの又聞きレポが一段落したところで
「ビルボードライブ コンプリートBOX」に関する
甲斐さんの「語り下ろし」に戻りたいと思いますが
まずは、ビルボードツアー2015~2017の3年間のおさらいから…

「4年連続でビルボード&ブルーノートのステージに立ち
更なる境地を目指すKAIに緊急インタビュー」という記事で…

「今回は、デンジャラスでフォーキーなサウンド、それをさらに推し進めようと思ってるんです
前回やった中の何曲かは非常に挑戦的なサウンド
ロックで言うとプログレッシブ的なアプローチでやったんですけど
それを今回はさらに進化させるということですね」と甲斐さん

「1回目はある意味では『試し』なんですね
プロが真剣に遊んでいる中でのいわゆる『お試し』なんですけど
それは、だからこそ原石をぶつけるようなもので、太さもあるし、だからこその迫力もある訳です

2回目は、その原石をぶつけたような太さが、細くなってしまわないように気をつけて
そのためにある種の角度をつけた斬新なアイデアや
例えば『黄昏に消えた』のようなアプローチがあった訳です
『冷血』も1回目は一人でやりましたけど
去年は『この編成では、こういう風にやるんだ』とみんな思ったでしょうね

そういう風に角度をつけたから、結果としてブルーグラス的なテイストやブルース
カントリー、あるいはソウルに通じる感覚も出て来て
1回目とはまた違った意味での太さを感じて貰えたと思うんです

3回目は、もう一つのアプローチとして
大ヒット曲をそのままフォーキーにやってみようという
当たり前のオーソドックスなパターンも入れてます
色んなアプローチで臨もうとしているので
僕の言い方で言うと『すごくデンジャラスな感じに聴こえるだろう』という…

その『デンジャラスなフォーク』で、閉塞した時代、ため息まじりの日常に暖かな火を灯す
都会のキャンプファイアーのようなステージにしたいと…
みんなが手拍子できて、すごい近い感じでストレートに伝わる曲
その演奏を聴いただけで何を言いたいのか、何を歌おうとしているのかが
聞いてる人の身体にサーッと沁みていくようなタイプの曲

例えば『吟遊詩人の唄』あるいは『10$の恋』みたいな曲ももちろん必要だし
それがフォーキーなアンサンブルでの一番わかりやすいアプローチだとは思うんです
でも、そこに『オクトーバームーン』とか『Fever』のような
非常に先鋭的で挑戦的なアプローチをやっていかないと面白くないですよね

それは、今、アメリカで『アメリカーナ』と呼ばれて注目されているパンチブラザーズの
とても先鋭的なアプローチにも通じるものでもある訳ですよね
とは言っても、パンチブラザーズのマネをする訳ではなくて
僕らなりのやり方、僕らなりのスタイルでやれるはずだと思って
実行してみせたのが、去年(2017年)のステージだった訳です

と、このシリーズの流れを総括された上で
「もっとも『今年はそういう(先鋭的で挑戦的な)曲を沢山やります』ということではないですよ
ステージの展開上『ここ!』というポイントにしか入れないけれども…
それでも、それは流れの中のアクセントというようなものでもなくて
むしろ、ひとつのクライマックスになるようなものだと思っています

もちろん、セットリストの要所ごとに
みんなが歌えるようなシーンも作りつつ、ということなんですけど
終わったら、心がポカポカポカとした感じで帰れるというのは
いつも僕らがライブをやる時のベースにあることですからね」と話されてました

また、実際にシーズン3まで終えられてみて…
「『何かが弾けた』という感覚が僕らの中に確かにあるんですよ
それは、言い換えると新しい扉を開いてしまったという感覚なんですけど
それは自分たちの『今』を信じて
その向こうにある『未来』をこじ開けたいという衝動なんですよね

去年やった挑戦的なアプローチをさらに進化させようと考えている訳ですが
その前提には『今の僕たちにはそれが出来る!』という確信があるんです
それは言ってみれば、野球のピッチャーが経験を積んで
ピッチングの幅が広がるというようなことかも知れないですね

スライダーを縦に落とすだけじゃなくて
ボールを揺らして、微妙にバットの芯を外す
ツーシームのようなことだって出来るようになるみたいな…(笑)
今や大リーグでは、大きな変化をする球よりも
微妙な変化で打ち取るという変化球の方が主流になってますよね

それと同じように僕らの進化というのも
演奏が始まった最初は『また新しいアプローチだ!』と思わせるんだけど
歌が入ると『やっぱりちゃんと甲斐よしひろのあの曲になってる!』というようなことですよね

去年の『Fever』を思い出してみてください
歌い方自体はそんなに違ってなかったでしょ
でも、今まであまり聴いたことがないような導入で
しかもサウンド感もあまり聴いたことがない感じだったから
最初は『ううっ!?』となる訳ですよね
それでも聴いていくと、しかるべきところに着地するっていう…

それは1回聴いただけですぐわかるようなアプローチは面白くないと
僕が思ってるということでもあるんです
デヴィッド・フィンチャーの映画のように、あるいは、夢の遊眠社やNODA MAPのように
1回観ただけではよくわからないだから何回も出かけてみたくなるっていう…
そういう表現こそがいちばん面白いと思うんです

それはなかなか難しいんだけど、今、ネットTVとかで見れる海外のドラマって
編集のテンポがものすごく速いじゃないですか
あのテンポ感が今の時代のテンポなんだろうし
それに、あれを作ってる連中はみんな、1回でわからせなくていいと思ってるんでしょうね
というか、むしろ1回ではわからないようにしてる

となると、導入の作り方とかアイデアがよくないと最後まで見ないですよね
デヴィッド・フィンチャーにしてもスティーブン・ソダーバーグにしても
超一流監督の大半が、今、連続ドラマを撮ってるのは、そこだろうと思うんですよ

甲斐バンドの日比谷野音の映像も実は同じで
あの時に映像制作チームを一新したんですけどその結果、全体のテンポが速くなったんです
そこに戸惑った人が、僕らの周りにもいたんですけど
それが1年経つともう『あれがいいんだよね』と言ってるんです
『ふざけんなよ』という話なんだけど…(笑)

映像のテンポが速いというのは、スイッチングの速さじゃないですから
色んなところでメリハリをつけながら
この時代の背景に流れているビートを感じさせるということなんですよね

…で、今回のバンドの話に戻ると
去年、新しい扉をこじ開けて、やり始めた表現というのは
そういう意味でのテンポの良さと着眼の良さを生かして
1回ではわかってしまわない演奏というイメージが、実は根底にあったんです

ただそれは、実際にやってみないと確信できない部分があったんだけど、でも去年ちゃんとやれたから
だから、今年はそれをさらに進化させていくということなんですよね

ただ、テイストということで言うと、去年とはまた違うものになると思うんです
なぜかというと、曲が違うから…つまり、楽曲の個性を生かしながら
アプローチはあくまで挑戦的ということですよね」と説明なさってますが
実際に、どんな曲を選ばれ、どんな風に挑まれたのか?…は、また次回に…(笑)
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