ボクの奥さん

ボクの奥さんは、甲斐よしひろさんの大ファン。そんな彼女との生活をお話したいと思います。

亀和田武さん2

2017-02-01 11:59:00 | 日記
亀和田さんにとって、初期の甲斐バンドの曲の魅力は
歌詞に登場する少年たちの「センチメンタリズム」だそうですが

【HERO】以降についての考察によれば
「この曲や、これ以降の甲斐バンドを語る時
[疾走感]という言葉が頻繁に使われた
この曲の魅力を一語に集約するなら、まさにドンピシャリ

で、更にもう一歩この曲の魅力に踏み込んで行けば
[時代]あるいは[社会]といったような生硬な言葉でしか語れない
個人の力量を遥かに超越した絶対的な[あるもの]

それが強いる抑圧の感覚を、のびやかな疾走感によって
気持ち良く発散して行くという、そのプロセスこそが最大の魅力である

今、改めて聞き返しても、溢れるばかりの疾走感は少しも損なわれていない
しかし、最も印象深く耳に残ったのは
甲斐よしひろのヴォーカルの若さである
そしてその若い声質が振り撒く、のびやかで明るい表情である

極言してしまえば【HERO】という曲の全編に漂う疾走感を支えているのは
歌詞でもなければメロディでもなく
ましてやテナーサックスの咆哮でもない
甲斐よしひろの声が、この曲の疾走感を一人で支えている

もう一度、繰り返す
ちょっとした声の表情に、まだ少年期の特徴を残した
25歳の甲斐よしひろのヴォーカルが【HERO】の疾走感を支えている

この[声]の力に思い至った時、我々は改めて気づく
甲斐よしひろが、ソングライターやメロディメーカーや
そしてステージにおけるパフォーマンス・アーティストである前に
まず、シンガーであったことを…

ミック・ジャガー、マーク・ボラン、ジム・モリソン
パティ・スミス、ジョニー・ライドン、プリンスといった
傑出したロックシンガーを想起すれば
[声]の力学の重要性は自ずと認識されて来る

[声]は、詩やメロディが伝えて寄越そうとする[意味]を軽々と突破する
[声]の表情にこそ、その時時の彼の生理、感性だけでなく
意識、思考といったものまでが反映されている

【きんぽうげ】では、彼のハスキーなヴォーカルは
やや頼りなげで、甘いセクシーな雰囲気を撒き散らしている

物憂げで、気怠く、ワイセツな匂い
間違ってもエロティシズムなどと言ってはいけない
そんな高尚なものではない
もっとあからさまで、卑猥で、直載的にセックスを連想させるもの

この曲が発表された当時、コンサート会場の客のほとんどは
ティーンネイジャーの少女たちだったが
当然、彼女たちは、彼の振り撒くワイセツな匂いに気がついていた

…どころか、アイドル歌手たちが発散する
規格品のセクシーさとは全く異質で、もっと生々しく
無意識の領域から立ち上って来るような
挑発的な性の匂いの虜になっていたはずだ、きっと」

…と、当時の奥さんがそう指摘されたら
顔を真っ赤に染めたであろう(笑)鋭い考察ですけど

それが、例えば、セクシーアイドルが胸の谷間を強調したり
美脚が付け根まで見えそうなミニスカートを履いたり…といった
意図的な演出だったら、思春期の少女の潔癖さでもって
恐れられ嫌悪されたんじゃないかと…?

実際、奥さんは甲斐バンドに対して
最初から「ちょいワル(笑)」なイメージを抱いていたのが
初めて【カーテン】を聴いた時には「激ヤバ」だと確信したらしい(笑)

「親には聴かせられない!」と焦った(笑)その歌詞に相応しい
エロい?歌い方をされていたら「引いて」しまったかも知れないけど

ちょっと「オトナ」の世界を垣間見るようなドキドキで済んだのは
甲斐バンドのワイセツ感を、背徳的なものではなく
健康な人間なら誰でも持ってる欲求だと理解できたからなんだとか…(笑)

甲斐さんご自身は、残間里江子さんとの対談で
「ステージで歌ってる時は
ボルテージとエネルギーとパワーをあげることしか考えてない

1曲ごとに熱して冷めて、また熱して
それは、ちょうど鉄が熱くなって
水をかけられると強くなって行くみたいに高まって行く訳ね」と話されてますが

残間さんは「熱くなって、また冷めてといった情の曲線は
まさに性的と言っていいような気がする」と思われたらしく

「ステージでセクシュアルということを意識している?」と質問なさってます(笑)

「昔から同じだし、特別、意識はしていない
あんまり意識してると男の客が来なくなっちゃうし…

でも、最初パァーッと飛びついたのが女だったってことは
多分にそれはあるんだろうね」という甲斐さんのお答えは
企まずしての結果だったことを物語っているし

その独特な「声」にしても
シンガーとしての「武器になる」という認識はお持ちだったものの
「セクシーさ」を前面に押し出して歌われた訳じゃないでしょう

自然に甘く声がかすれたり、思いの外、大きなブレスの音が入ったり
男性なら気に留めないようなディテールが
女性の無意識な部分(本能?)に訴えたのかなあと…?

ともあれ「真面目とワイセツという
甲斐バンドのこの振幅の大きさを僕は愛する」と亀和田さん

「メロディと歌詞、これに【漂泊者】以降リズムも加わり
三つの要素の激しいせめぎあいによって
80年前後からロックとしての表現力を高めて来た

【地下室のメロディ】という博多の[照和]をモチーフにおいた曲では
ノスタルジックな追憶の物語が歌われている

しかし、サウンドはあまり湿気を感じさせない
中近東風フレイバーのエキゾチックなもので
詩と曲がピッタリとは重ならず、微妙なズレを見せ始めている

このズレ、あるいはギャップとでも言うべき感覚を更に押し進めたのが
【ビューティフル・エネルギー】だ

松藤英男の少し頼りなげで
フーッとどこかに抜けて行ってしまうような印象の透明なヴォーカルと
爽やかなメロディに対して、激しい落差を示すホットな性描写
これ以降の甲斐バンドの曲には、至るところにこうした仕掛けが施される

【フェアリー】に関しては、甲斐よしひろ自身
(【安奈】や【HERO】から流れてるラインと)
[ある種の距離や落差がないと面白くないもんね
やっぱりメロディらしい詞だったら、まあツマンナイよね]と話している」

…と記されていて、これらの文章を読むたびに
奥さんは、それまで自分が漠然と感じていた
甲斐バンドや甲斐さんに関する様々なことを
明確に言い表して貰えた気がしたんだとか…

奥さんが亀和田さんに「似ている」ということは
亀和田さんに物凄く失礼なことなのかも知れませんが(汗)
少なくとも、当時の一部の?甲斐さんファンにとっては
まさしく代弁者でいらしたことは間違いないんじゃないかと…?
コメント
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