そんなことに熱中するより単語のひとつでもおぼえたらいい、すると、
「うっせー クソジジイ」
「うっせー」は「うるせえー」、「クソジジイ」は、くそじじいだろう。
あの大戦の直後、サハリンの真岡の電話交換手が自決している、南下するソヴィエット軍の兵士から凌辱されるのを拒否するためだ、
「紅いヒモで足首をしばったんだよ」
「へえー」
「オオマタひらきになったら みにくいだろう」
「おじさん おじさん」
「うん」
「どうして紅いヒモってわかるの」
「バカ バカ バカー」
「・・・」
「いいか 死ぬんだぞ 純潔の乙女なんだぞ ここだけの話し 処女なんだ」
「あたしだって処女だよ」
「おまえたちは いいの」
死ぬ前に歌を詠んでいる
今夜から ぐっすり眠れるのが うれしい・・・
「たいへんな苦しみだったんだろう そうそう 昭和の皇后さまが歌をよせている」
「もし 渋谷に出ることがあったら 109ばかりではなく 靖国神社によってごらんなさい」
「あたしたち 知らなかったんだ」
「だれも おしえてくれなかった」
「・・・」
「おじさん ありがとう」
ちょっとは通じたのかもしれない。