あの餃子のうまさの秘密はなにか。
故宮の、白玉の鶴・翡翠の亀・王義之の書・始平公造像記、それら、
「ふっとんだ」
「こっちが いい」
「しかし あの完成度は なんだ」
36種類のギョーザなんかクソクラえ、
「一品で いいんだ」
「ただひとつ 他を圧するギョウザあり」
中華街に中華料理の食材や道具を売る専門店、そこで、
「うやうやしくて 苦みありて調子しずかなオトコ」
目と目、どちらともなく ふたことみこと、わたしが、
「あのギョウザのうまさの秘密は なんでしょう」
すると、
「それは 自然飼育した黒豚の背中のアブラです」
さすが、ヨコハマ、人物がいた。
「それを ちょっと入れるだけで いいんです」
「幕末、箱館に向かう船の中で プロシャの公使が洗面器のラードをなめるシーンが記録されているんです」
ここで、私の、
「ギョーザの旅が 終わった」