[コラム]新年にトランプを再び目にするかもしれないあなたへ
新年は、米国が自ら主導する「ルールに基づく国際秩序」の自由主義的国際秩序を維持できるかどうかの岐路に立たされる重要な年になるだろう。外ではウクライナ戦争とガザ戦争、中国との対決という「外憂」を、内ではドナルド・トランプという「内患」を抱え、自由主義的国際秩序を維持していかなければならないためだ。
冷戦終結後、イラク戦争など主な戦争は米国の能動的意志によって進められたが、最近のウクライナ戦争とガザ戦争は米国の意志とは関係なく繰り広げられる、望まざる戦争だ。これらの戦争は3年前の2021年1月6日、国会議事堂前で始まった「トランプの内乱」を完成させる背景になりうる。
来年3年目を迎えるウクライナ戦争をめぐり、米国内外で疲労感が高まっており、戦況は事実上ロシアの占領地固めに入った。ジョー・バイデン政権が議会に要請した約600億ドルのウクライナ援助案は、共和党が国境統制の強化と連携させたことで承認が阻まれており、欧州連合(EU)の500億ユーロ支援案もハンガリーの反対で実現しなかった。ウクライナは兵站(へいたん)不足の状況で、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は50万人増兵案を提案した。
戦争が勃発した当初もウクライナ兵士の平均年齢は30~35才の高齢だった。現在は43歳まで高くなった。50歳以上も徴集しなければならないほど兵力資源が底をついた四面楚歌の状況だ。ロシアとドイツをつなぐノルドストリーム海底パイプライン爆破事件が西側の工作であることを初めて暴露した米国の探査報道ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏は最近、交渉説を伝えた。ハーシュ氏は2日、ウクライナがロシアに占領地を放棄する代わりに北大西洋条約機構(NATO)に加入する平和交渉がウクライナ軍のヴァレリー・ザルジーニ総司令官とロシアのワレリー・ゲラシモフ総参謀長の間で協議されていると主張した。ロシアは占領した4州を合併する代わりに、ウクライナはNATOの兵力と攻撃兵器を配備する条件でNATOへの加盟を認めてもらうという内容だ。
主流メディアのニューヨーク・タイムズ紙も23日、ロシアが9月から現在の戦線で戦闘を凍結する方式の休戦案を、水面下のチャンネルを通じて米国に打診していると報じた。戦争がロシア主導の交渉局面に進む可能性があることを示唆する。
ウクライナ戦争はますますガザ戦争と連動している。米国など国際社会が最も懸念していた中東域内に広がる影響のためだ。国際物流のボトルネックである紅海で、イエメンのフーシ派「アンサール・アッラー」がイスラエル行きの船舶攻撃に乗り出した。米国は多国籍連合海上軍の結成でこれを防ぐ「繁栄の守護者作戦」に乗り出したが、深刻な状況だ。
米国とその同盟はアンサール・アッラーに報復することはできるが、それは一回限りにしかならない。ガザ戦争の火の粉が紅海路まで飛ぶ可能性があるからだ。内戦で事実上勝利したアンサール・アッラーは、イラン、ひいてはロシアと中国を背景に紅海とアデン湾を結ぶバブ・エル・マンデブ海峡で自分の取り分を主張している。これはイランおよび中ロの利害でもある。ロシアに対する制裁により中東のガスを輸入しなければならない欧州は、紅海の航路を利用しなければならない。
ガザ戦争に対しては批判の声が非常に高まっている。紅海におけるアンサール・アッラーはガザ戦争によって国際社会で沸騰した反イスラエル世論を背景に存在感を強めている。イスラエルと断交する国も出るなど、イスラエルにガザへの攻撃の中止を求める国際世論が高いが、米国はイスラエルに足を引っ張られている。政治献金とウォール街を左右するユダヤ系ロビーに政治家たちは卑屈になっており、対外政策を担当する高官たちも大半がユダヤ系か親イスラエルのスタンスだ。パレスチナ住民を同情する世論さえも反ユダヤ主義だと非難する新版マッカーシズムが猛威を振るっている。にもかかわらず、民主党内では前例のないイスラエル批判の声があがっている。バイデン政権は罠にはまった状態だ。
ウクライナ戦争は最高強度の制裁をもってしてもロシアの足を引っ張れない米国覇権の現実を、ガザ戦争は米国が掲げる自由と人権という価値の偽善的側面を露呈した。年が明け、11月5日が過ぎれば、以前とは全く異なる世界が私たちの目の前に迫ってくるかもしれない。
ドナルド・トランプ前大統領が再び大統領選挙で勝利し、権力の座に返り咲くかもしれない。彼は昨年夏以降、バイデン大統領に世論調査の平均支持率で約2%リードし、12月4~18日基準では、46.8%対44.5%(リアルクリアポリティクス集計)で優位を占めている。2つの戦争という外憂とトランプという内患は、米国をどこに向かわせるのか、そのような米国が韓国と世界にどのような波紋を呼ぶのかは、年明けの国際秩序で明らかになるだろう。