金元大統領の遺志を受け継ぐ私たちは、対話と相互尊重の精神を通じて米中と南北が共存する「平和な東アジア」を作ることができるという確信を持ち、軋轢(あつれき)と対立を止める契機を作らなければならない。

2024-08-22 19:12:56 | 尹大統領は、おかしいね!
 

【社説】ハンギョレ新聞

荒波の朝鮮半島、再び「金大中路線」から答えを探そう

登録:2024-08-22 06:04 修正:2024-08-22 08:36

 

 
 
初の南北首脳会談が開かれた2000年6月13日、金大中元大統領が平壌順安空港に出迎えに来た金正日総書記と手を取り合って明るく笑っている=大統領府写真記者団//ハンギョレ新聞社

 今年は、金大中(キム・デジュン)元大統領の生誕100年になる年だ。金元大統領は1924年1月に新安(シナン)荷衣島(ハイド)で生まれ、民主主義と人権のために闘争した「行動する良心」として生涯を過ごし、2009年8月に逝去した。全世界を二つに分ける「新冷戦」と殺伐とした南北対立で、故人が思い描いた「正義が川のように流れ、統一に対する希望が虹のように浮び上がる国」(1998年大統領就任の辞)の夢はますます遠ざかっているようにみえる。金元大統領の遺志を受け継ぐ私たちは、対話と相互尊重の精神を通じて米中と南北が共存する「平和な東アジア」を作ることができるという確信を持ち、軋轢(あつれき)と対立を止める契機を作らなければならない。

 イム・ドンウォン元統一部長官は21日、ソウルプレスセンターで開かれた「金大中誕生100周年記念フォーラム-荒波の朝鮮半島、大韓民国の進むべき道を問う」(ハンギョレ新聞社主催、金大中平和センターなど主管)で、「平和に向けた金元大統領の努力は、我々が直面している今日の難関を克服するための道しるべになるだろう」と述べた。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に対しては、「光復節記念祝辞で示した統一論は、平和ではなく吸収統一を進めるという意味だ」としたうえで、「戦争につながる危険性を排除できないため、決して受け入れてはならない」と語った。

 金元大統領は冷戦時代、戦争抑止のための「周辺4大国(米国、ソ連、中国、日本)安全保障論」(1971)と、南北が平和共存と交流を経て統一に進むべきだという「3段階統一論」(1973)を主張した。朝鮮半島の平和と統一のためには「周辺国の協力」が必要であることをよく知っていたのだ。朝鮮半島の平和における最大の障害物である北朝鮮の核問題についても、「朝米敵対関係の産物」であるため、この問題に決着を付けなければ解決できないと考えた。金元大統領の確固たる方針は、ついにビル・クリントン米大統領を突き動かし、太陽政策に弾みをつけた。

 不幸にも、2010年代に入ってから、「浮上する中国」と「核開発を継続する北朝鮮」に対抗するためには、歴史問題は後回しにして韓米日軍事協力を進めるべきと主張する反動の流れが続いてきた。尹錫悦政権は日本の安倍晋三元首相が主導したこの流れを盲目的に踏襲している。「金大中精神」は薄れ、力で相手を屈服させるという「安倍路線」が時代を支配している。これを止めるためには、11月に選出される新しい米大統領を説得し、米中、朝米の対話の牽引役を担わなければならない。簡単ではないが、決して諦められないことだ。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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一部の脱北者団体は、早ければ6日から北朝鮮に向けビラを送ると予告した。北朝鮮は2日、汚物風船の散布の中断を発表する際、「北朝鮮に向けて再びビラを散布するなら、汚物風船を再び飛ばす」と警告した。

2024-06-08 08:03:21 | 尹大統領は、おかしいね!
 

韓国軍、まもなく西海NLLで海上射撃を再開…

再び「朝鮮半島の火薬庫」へ

登録:2024-06-06 05:49 修正:2024-06-06 09:05
 
 
今年1月5日午前、西海の北朝鮮の海岸砲が海上射撃を行ったことを受け、対応射撃として同日午後、白ニョン島海兵隊がK9自走砲で海上射撃している=国防部提供//ハンギョレ新聞社

 今月4日に行われた9・19南北軍事合意の効力停止に伴い、西海(ソヘ)5島と陸上の軍事境界線(MDL)一帯での砲射撃訓練が今月中に再開される。延坪島(ヨンピョンド)と白ニョン島(ペンニョンド)に配備された海兵部隊が、K9自走砲の海上射撃訓練を約6年ぶりに実施することになれば、北方限界線(NLL)問題が再び南北の緊張を高める要因になるとみられる。

 国防部関係者は5日、「現在、白ニョン島と延坪島など北西島しょ一帯の海上でワタリガニ漁が行われており、現地漁業関係者を対象に射撃訓練の方針を説明し、住民保護対策などを点検したうえで、K9射撃訓練を行う」と述べた。海上射撃訓練を準備するのに半月ほどかかることを考えると、今月中旬頃に射撃訓練が実施される見通しだ。

 海上射撃訓練の再開は西海のNLL一帯が再び朝鮮半島の「火薬庫」になるという意味だ。韓国はNLLを「血を流して守った領土線」と捉えているが、北朝鮮は「強盗まがいの北方限界線は無効」だと主張する。南北軍隊は1999年以降、NLL問題で4回にわたって交戦した。

 韓国は西海での海上射撃訓練が「NLL以南で実施された通常の訓練」だと主張しているが、NLL自体を認めない北朝鮮は「領海に対する侵略」とみなしている。特に北朝鮮は、延坪島砲撃戦の発生直前、K9自走砲の海上射撃に敏感な反応を示した。K9の射程距離は40キロメートルだが、延坪島は北朝鮮の黄海道から13キロメートルの距離だ。K9が海に向けて射撃訓練を行っている間に砲身の方向を変えれば、簡単に海州(ヘジュ)の北朝鮮軍第4軍団司令部を砲撃することができる。

 悪化の一途をたどっている南北関係を考えると、北朝鮮はK9海上射撃訓練の再開に一層敏感に反応する可能性がある。北朝鮮は南北関係を「敵対的な二国間関係」として捉えており、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記兼国務委員長は1月15日、最高人民会議第14期10回会議の施政方針演説で、「北方限界線」について「不法無法」だとしたうえで、「大韓民国がわが領土、領空、領海を0.001ミリでも侵犯すれば、すなわち戦争挑発とみなされるだろう」と述べた。海兵隊だけでなく、NLL一帯の海軍艦艇の機動および砲射撃訓練まで再開されれば、南北海軍間の海上衝突に広がる可能性がある。

 市民団体の「参与連帯」は同日、「9・19軍事合意まで効力停止になり、緩衝空間が消えた状況で、偶発的な衝突や事故、誤った判断が戦争につながる危険性が非常に高い」とし、「南北米共に戦争危機を高める軍事行為と威嚇を中止し、武力衝突の予防と危機管理のための対話を再開しなければならない」と対話を求めた。

 
 
今年1月5日午前、西海の北朝鮮の海岸砲が海上射撃を行ったことを受け、対応射撃として同日午後、白ニョン島海兵隊がK9自走砲で海上射撃している=国防部提供//ハンギョレ新聞社

 このような中、一部の脱北者団体は、早ければ6日から北朝鮮に向けビラを送ると予告した。北朝鮮は2日、汚物風船の散布の中断を発表する際、「北朝鮮に向けて再びビラを散布するなら、汚物風船を再び飛ばす」と警告した。

 軍と政府省庁、関連機関で構成された統合防衛本部は同日午前、統合防衛関連機関対策会議を開き、北朝鮮の汚物風船の散布と全地球測位システム(GPS)かく乱状況に関して状況を共有し、対応策を点検した。

 一方、国防部はこの日、米国のB1B戦略爆撃機が朝鮮半島で合同直撃弾(JDAM)を投下する実射撃訓練を2017年以後7年ぶりに行い、縦深標的に対する精密打撃能力を示したと発表した。米国の戦略爆撃機が朝鮮半島で展開されたのは今年で2回目だ。

クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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国防部が海兵隊捜査団に「師団長ら指揮責任者を捜査対象から除外せよ」と圧力を加えたということは、すでに物証まで出ている。

2023-12-17 15:19:11 | 尹大統領は、おかしいね!
 

[社説]「チェ上等兵事件」

大統領室介入の強力な情況、特検急ぐべき

登録:2023-12-15 22:37 修正:2023-12-16 10:24
 
 
パク・チョンフン元海兵隊捜査団長が先月28日午前、京畿道華城市の海兵隊司令部で行われた海兵隊軍事警察兵科長の補職解任審議委員会に出席している/聯合ニュース

 海兵隊捜査団が8月2日に「チェ上等兵殉職事件」を警察に移牒(いちょう)した直後、大統領室と海兵隊の間で電話連絡がなされていたことが確認された。この通話の後、国防部は事件を警察から回収しており、当時のパク・チョンフン海兵隊捜査団長(大佐)が抗命罪で立件されている。イム・ソングン海兵隊第1師団長ら指揮責任者の過失致死容疑を指摘し、警察に移牒した海兵隊捜査団の措置が黙殺され、逆に反撃される過程に大統領室が介入したという強力な情況が明らかになったのだ。捜査に対する大統領室の違法な介入の真相究明をこれ以上遅らせてはならない。

 ハンギョレの取材の結果、8月2日に海兵隊捜査団が警察に事件を移牒してから約1時間後の午後12時51分、大統領室国家安保室に派遣されていたK大佐が海兵隊司令官秘書室長に電話をかけ、この時は電話に出なかった秘書室長が35分後に折り返し電話して通話が行われた。それから24分後、国防部のユ・ジェウン法務管理官が慶尚北道警察庁に電話し、事件を回収すると表明した。K大佐はそれより前の7月30日に、キム・ゲファン海兵隊司令官に捜査団の調査結果についてのメディアブリーフィングの資料を要請し、受け取っている。このような一連の状況は、海兵隊捜査団の捜査結果に尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が激怒し、大統領室が介入して事件の移牒を覆したというパク・チョンフン捜査団長側の主張を裏付ける。

 国防部が海兵隊捜査団に「師団長ら指揮責任者を捜査対象から除外せよ」と圧力を加えたということは、すでに物証まで出ている。国防部長官の秘書室長役を務める軍事補佐官が8月1日、海兵隊司令官に「確実な容疑者は捜査依頼に、指揮責任関連人員は懲戒にすることも検討してください」というメッセージを送っていたことが明らかになったのだ。当初は海兵隊の捜査結果を承認していたイ・ジョンソプ国防部長官(当時)がわずか一日で態度を変え、警察への移牒の保留を指示し、捜査からの指揮責任者の除外を迫った背景は、大統領室による介入抜きには説明できない。

 にもかかわらず、軍検察はこれついての捜査に力を注いでいない。国家安保室に派遣されていたK大佐、国防秘書官らを書面で調査しただけで、8月2日の電話は問いもしていない。高位公職者犯罪捜査処にも告発されているが、明確な捜査の動きはまだない。チェ上等兵殉職事件の全貌を明らかにするための特検法は、10月に国会で迅速処理案件に指定されたが、来年4月までの熟慮期間を経なければならない。特検法の表決を繰り上げてでも、チェ上等兵殉職の真実と大統領室による捜査への介入疑惑を早急に明らかにすべきだ。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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これはまさに赤壁の戦いを控えて曹操が歩いた道でもある。曹操は周瑜に騙され、現地の地形に詳しい水軍の将軍たちをスパイだとして除去し、指揮の乱れをもたらした。

2023-12-04 09:04:40 | 尹大統領は、おかしいね!
 

[寄稿]自己陶酔に陥った「曹操の道」を歩む尹大統領

登録:2023-12-02 07:56 修正:2023-12-02 08:21

 

キム・ジョンデ│延世大学統一研究院客員教授
 
 
尹錫悦大統領が11月29日、ソウル龍山の大統領室庁舎で2030世界博覧会の釜山誘致の失敗と関連し、硬い表情で国民向け談話を発表している/聯合ニュース

 10月のソウル江西(カンソ)区庁長補欠選挙と11月の釜山(プサン)万博誘致戦の過程には、国政を遂行する尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の特徴がよく表れている。自分が孤立しかねないという危機を全く認識していない。

 与党「国民の力」が17%ポイント以上の大差で敗れた補欠選挙直前まで、尹大統領は勝つか僅差の勝負だと信じていたという報道が目を引く。万博も博覧会国際事務局(BIE)総会で投票が進行された28日、尹大統領は、釜山(プサン)が順調に1次投票を通過すると信じていた。政府の確信に影響されたマスコミは釜山の100万坪の万博敷地で、「天地開闢が起きるだろう」として歓喜の瞬間を待っていた。ところが、いざ開票が始まると、惨状が露呈した。90カ国の首脳と150回余りの首脳外交、5千億ウォン(約560億円)以上の公的開発資金の提供、1年中続いた大統領の外遊にもかかわらず、確保した票はあまりなかった。誤った希望に陶酔したうえ、反論を許さない独善がもたらした惨事だ。

 国際政治学者ハンス・モーゲンソーによると、国際政治でも「戦略的ナルシシズム」現象があるという。現実をありのまま見ることができず、自分の主観どおり相手を勝手に解釈したり、判断したりする行動だ。大統領の周辺に苦言を呈する参謀がほとんどおらず、大統領自らも自己肯定感の低い人をそばに置いて、自分の確信を簡単に貫こうとする。政治的ライバルを悪魔化し、対話はもちろん接触さえ避ける。何でも自ら判断し、決心し、行動し、他の意見を排除する。

 こういう自己陶酔の現象が確認されるもう一つの重要な議題が9・19南北軍事合意書の形骸化だ。形骸化措置の最も根本的な出発点は、力で北朝鮮を脅かせば屈服するか譲歩するだろうという期待だ。これこそがひどい自己陶酔だ。2009年の李明博(イ・ミョンバク)政権当時、キム・テヒョ対外戦略秘書官がそうだった。キム秘書官が、イム・テヒ労働部長官が北朝鮮と整えた水面下の対話のチャンスを台無しにし、北朝鮮に侮辱感を強要したことで起きたのが、2010年の天安艦襲撃と延坪島(ヨンピョンド)砲撃事件だ。同年初め、北朝鮮が西海(ソヘ)で何かを企んでいるという情報が多数報告されたにもかかわらず、これを無視して大型艦艇を危険水域に進入させ、海上射撃訓練を強行した。これに対して北朝鮮は行動で答えた。数多くの人々が死んで避難したその惨状こそが、戦略的ナルシシズムが国家にどのような不幸をもたらすかを示す教科書だ。

 そして今、軍事合意書の形骸化が軍事境界線における北朝鮮の重火器前進配備をもたらすのは、明らかな安保危機のシグナルだ。自分に陶酔した者の耳には2010年も今もこのような警告が聞こえない。さらに尹大統領は、補欠選挙の敗北や万博誘致の挫折のように、安全保障でも実際に経験してみないと気付かないタイプだ。

 これはまさに赤壁の戦いを控えて曹操が歩いた道でもある。曹操は周瑜に騙され、現地の地形に詳しい水軍の将軍たちをスパイだとして除去し、指揮の乱れをもたらした。尹大統領は昨年、治安監級以上の警察幹部の大半を交代させており、今年はまともに働いていた大将らを全員追い出したうえ、国家情報院の幹部らも一気に交代させた。外交と情報、軍事に混乱を来さないのがおかしい状況だ。国情院と外交部が万博誘致戦で釜山が確保した票をきちんと計算できなかったというのがそれを裏付けている。

 曹操は諸葛亮に計略に陥り、矢10万本を敵に贈る羽目になった。一時、韓国の資産だったロシアの宇宙・軍事技術が北朝鮮に渡ったのだから、ミサイルと砲10万発を北朝鮮に渡したのも同然だ。さらに、中国まで北朝鮮側に回っている。尹大統領は大したことではないと考えているようだが、これがまさに自己陶酔に陥って戦争で判断を誤った曹操の姿だ。

 ハンス・モーゲンソーは戦略的ナルシシズムを排撃し、「戦略的エンパシー(感情移入)」を勧告する。優越感に浸って自分の主観を絶対視せず、相手をきちんと知り理解しようと努力すべきということだ。軍事合意書を形骸化し、前線にドローンを多く飛ばすことで安全保障が成し遂げられるという期待は傲慢であり妄想だ。イスラエルがハマスに奇襲されたのはドローンがなかったからではない。パレスチナの疎外、喪失、怒りの感情を理解できず、無視したことで、危機を迎えた。9・19軍事合意書のようなものがイスラエルとハマスの間で維持されていたなら、戦争はなかっただろう。

 我々が平和を成し遂げるためには、北朝鮮をどれだけ知っているかが重要だ。北朝鮮に無知な者には平和も勝利もあり得ない。曹操に似ていく今の権力がまさにそうだ。

 
//ハンギョレ新聞社
キム・ジョンデ│延世大学統一研究院客員教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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今回の判決に、遺族たちは失望を隠せなかった。

2023-11-03 10:53:02 | 尹大統領は、おかしいね!
 

セウォル号惨事、

韓国海洋警察の指揮部に無罪確定…国は責任を負わなかった

登録:2023-11-03 09:50 修正:2023-11-03 10:25
 
 
セウォル号惨事から9年を3日後に控えた4月13日午前、全羅南道木浦市の木浦新港の鉄製埠頭に、2017年に事故海域で引きあげられた船体が保存されている/聯合ニュース

 2014年のセウォル号沈没惨事当時、初動措置を適切に取らず乗客を死亡させた疑いで裁判に付されたキム・ソッキュン元海洋警察庁長など朴槿恵(パク・クネ)政権時の海洋警察指揮部の「無罪」が、惨事から9年たって確定した。惨事から9年に及ぶ今までの間に「セウォル号救助失敗」に対する法的責任を負った海洋警察は、当時の現場指揮官1人のみだ。

 2日、最高裁2部(主審イ・ドンウォン最高裁判事)は、業務上過失致死などの容疑で起訴されたキム元庁長に無罪を言い渡した原審判決を確定した。同じ容疑で起訴されたキム・スヒョン元西海海洋警察庁長とチェ・サンファン元海洋警察次長、キム・ムンホン元木浦海洋警察署長など9人も、全員原審と同じく無罪判決が下された。キム元署長とイ・ジェドゥ元3009艦艦長は、事件の報告過程で虚偽文書を作成した疑いでそれぞれ懲役1年6カ月に執行猶予3年、懲役6カ月に執行猶予2年が確定した。

 キム元庁長らは、2014年4月16日に起きたセウォル号惨事当時、救助に必要な注意義務を果たさなかったため303人を死亡させ142人を負傷させた疑いで、2020年2月に起訴された。裁判所は3回の裁判で全て無罪を言い渡した。セウォル号の船長と船員たちが乗客に対する現場状況についてまともに報告しなかった状況で退船命令もせず脱出したため、海洋警察指揮部としては大規模な人命被害を予見することが難しかったという判断だ。事故当時、セウォル号は無理な増築と違法の過積載状態で予想よりはるかに早く沈没したが、このような状況を予想するのが難しかったという点も考慮された。

 
 
セウォル号惨事当時に適切な初動対応をせず乗客を死亡させた疑いで起訴されたキム・ソッキュン元海洋警察庁長が2月7日午後、ソウル瑞草区のソウル高等裁判所で開かれた2審宣告公判で無罪を言い渡された後、発言している/聯合ニュース

 これによって国は事実上、セウォル号救助失敗の責任を免れた。これまでセウォル号救助失敗の責任を問い、起訴された海洋警察は計12人だったが、「有罪」が宣告された海洋警察は2015年に懲役3年が確定した当時の123艇艇長だけだ。現場指揮官だったキム・ギョンイル元艇長を除いた関係者らは、法廷に立たせるのにも6年近い時間がかかった。惨事直後に構成された捜査チームは、海洋警察指揮部を取り調べたにもかかわらず、現場の救助責任者だったキム元艇長1人だけを業務上過失致死の疑いで起訴し、捜査を終えた。海洋警察指揮部は文在寅(ムン・ジェイン)政権時代の2019年に発足した「検察セウォル号惨事特別捜査団」の再捜査を経た後に初めて裁判に付された。

 裁判所は「セウォル号救助失敗」は刑事処罰の対象よりは「管理責任に関する叱責」の対象だとみたが、実際に彼らに対する政府レベルの懲戒がなされたわけでもなかった。キム・スヒョン元西海海洋警察庁長は、セウォル号惨事の責任を負って解任されたが、残りの関係者らは何の咎めも受けずに残った。政務職だったキム・ソッキュン元海洋警察庁長は懲戒を受けず、2014年11月に海洋警察解体と国民安全処発足とともに無事退任した。彼は昨年から韓瑞大学海洋警察学科の教授として在職し、法務法人「大陸亜州」の顧問も務めている。

 チェ・サンファン元海洋警察次長は、惨事当時、救助作業を主導した民間の救助業者「アンディン(Undine)」に特恵を与えたという疑惑で職位解除されたが、免職処分取り消し請求訴訟で勝訴し、責任を免れた。キム・ムンホン元木浦海洋警察署長は、監査院の「解任要求」にもかかわらず降格処分で終わった。その後国民安全処の西海海洋警備安全本部・企画運営課長を経て、東海海洋警備安全署1513艦長を務めた。イ・チュンジェ元海洋警察警備安全局長は、2015年に南海海洋警備本部長を経て海洋警備安全調整官(治安正監)まで昇進した。

 今回の判決に、遺族たちは失望を隠せなかった。この日、最高裁法廷に出た4・16セウォル号惨事家族協議会のキム・ジョンギ運営委員長(壇園高校2年1組キム・スジンさんの父親)は「ひょっとしたら、と思ったが、『やっぱり』だった」とし、「最高裁までも納得できない常識に反する判決を下す現実で、国民は誰を信じればいいのか、もどかしく悲痛であまりにも腹立たしい」と述べた。家族協議会のチョン・ソンウク真相究明部署長もハンギョレの電話取材に対し「この国では災難惨事が起きても国は絶対に責任を負わないという意味として受け入れるほかはない」とし、「セウォル号だけでなく、梨泰院(イテウォン)雑踏事故惨事、五松(オソン)地下車道水没惨事でも同様に国は個人にすべての責任を押し付けて逃げるだろう」と批判した。

イ・ジヘ、イ・ジェホ、キム・ヘユン記者unique@hani.co.kr(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
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