「国際紛争助長国家」「死の商人国家」への道を突き進むことに他ならない。日本共産党は閣議決定に強く抗議し、撤回を求める。

2024-03-27 10:36:56 | アメリカの対応

2024年3月27日(水)

次期戦闘機輸出の閣議決定に

強く抗議し、撤回を求める

山添政策委員長が談話

 日本共産党の山添拓政策委員長は26日、「次期戦闘機輸出の閣議決定に強く抗議し、撤回を求める」とした談話を発表しました。


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 一、岸田政権は26日、日英伊が共同開発・生産する次期戦闘機の日本から第三国への輸出を可能にする閣議決定を強行した。これは昨年12月の殺傷武器輸出解禁(外国企業からライセンスを得て日本が生産した殺傷武器をライセンス元国へ輸出できるようにする)につづく暴挙である。殺傷武器の輸出拡大は、「戦争国家」づくりをめざす「安保3文書」にもとづくもので、「平和国家」としての戦後の歩みを大本から覆し、「国際紛争助長国家」「死の商人国家」への道を突き進むことに他ならない。日本共産党は閣議決定に強く抗議し、撤回を求める。

 一、次期戦闘機は、「いずれの国においても実現されていない新たな戦い方」をする最新鋭機であり、殺傷武器の最たるものである。英伊にとっては英伊独西が共同開発したユーロファイターの後継であるが、同機はサウジアラビアに輸出され、イエメン内戦で空爆を行い、多数の民間人が犠牲になった。次期戦闘機が第三国に輸出された場合、さらに破滅的な攻撃に使用される危険性があることは明白である。

 一、政府・与党は次期戦闘機輸出には「三つの限定、二重の閣議決定」で歯止めを主張するが、およそ通用しない。「輸出するのは次期戦闘機に限る」というが、強力な殺傷能力を持つ最新鋭戦闘機を可能にして、その他は輸出できないという理屈は成り立たない。「輸出先は日本と『防衛装備品・技術移転協定』を締約している国に限る」としているが、現在15カ国と結んでいるこの協定は、国会の関与もなく政府の一存でいくらでも増やすことができる。「現に戦闘が行われている国は除外する」とするが、日本が輸出した後に戦闘を開始する事態は十分あり得る。加えて、閣議決定を二重に行ったところで、国民と国会に諮らず、政府・与党の密室協議で進めることに他ならず、なんら歯止めにならない。日本が開発・生産に加わる次期戦闘機が無辜(むこ)の市民の命を奪うとともに、戦闘機をはじめとする殺傷武器の輸出競争を激化させて逆に地域の安定を脅かす可能性はまったく排除されない。

 一、政府は、第三国への輸出について「市場が大きくなり効率化する」などと、販路拡大でコストを安くし、多売によりもうけを増やす――まさに「死の商人」の論理を露骨に表明した。軍需産業のもうけのためなら命の犠牲もいたしかたない、国際紛争をあおり立てて「経済の糧」にすると言っているに等しく、「死の商人国家」への堕落である。

 一、日本は、自民党政府のもとでも、このような危険で堕落した道は拒否してきた。1976年に三木政権が表明した「武器輸出三原則」は、「国際紛争を助長しない」との理念にもとづき事実上武器輸出を全面禁止し、1981年には衆参両院本会議が同三原則の厳格な運用を求める決議を全会一致で可決した。にもかかわらず岸田政権は、次期戦闘機の第三国輸出という歴史的暴挙を、国会を無視し、自民党、公明党の「協議」と一片の閣議決定で強行した。議会制民主主義をも踏みにじるものであり、断じて認めることはできない。閣議決定の撤回と、「武器輸出三原則」の立場に戻ることを強く求め、そのために全力をあげる。

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 21日の米CNNなどの報道によると、エジプトを訪問中のブリンケン長官はこの日、米国とエジプトはガザ戦争の休戦に対する認識を共有しているとし、交渉は進展していると述べた。

2024-03-25 09:15:27 | アメリカの対応
 

エジプト訪問のブリンケン米長官

「ガザ休戦交渉は可能…ラファ地上戦は大きな過ち」

登録:2024-03-23 10:57 修正:2024-03-23 14:49
 
 
21日、エジプトを訪問したトニー・ブリンケン米国務長官が、エジプトのサーメハ・シュクリ外相と共同記者会見を行っている/ロイター・聯合ニュース

 ガザ戦争勃発以後、6回目の中東訪問となる米国のトニー・ブリンケン国務長官がエジプト訪問中に「難しい作業だが、依然として交渉は可能だ」と述べ、イスラエルとハマスの人質解放および休戦合意に対する希望を示した。

 21日の米CNNなどの報道によると、エジプトを訪問中のブリンケン長官はこの日、米国とエジプトはガザ戦争の休戦に対する認識を共有しているとし、交渉は進展していると述べた。ブリンケン長官はエジプトのサーメハ・シュクリ外相と共同記者会見を行い、「徐々に(交渉の)間隔は縮まっているが、いまだに挑戦的な作業」だとし「難しい作業だが、依然として交渉は可能だと考える」と述べた。ブリンケン長官は米国がエジプト、カタール、イスラエルと共に強力な提案を交渉テーブルに上げ、パレスチナの武装勢力ハマスはこれに応じたが、まだ難しい課題が残っていると説明した。その上で「我々は隔たりを狭めたが、依然として隔たりは残っている」と述べた。

 さらにブリンケン長官は、イスラエルがラファ地上戦を断行するならば大きな過ちになると警告。「ラファで大規模な地上作戦を行わなくてもハマスを効果的に処理できると米国は信じている」と述べた。さらに、来週イスラエルの代表団がワシントンを訪問すれば、米高官らが代案となる計画を説明すると述べた。ブリンケン長官は同日夕方、カイロでサウジアラビア、カタール、ヨルダン、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)の外相とも会談を行う。

 この日、米国とエジプトは、ガザ地区に対する人道支援を増やすための具体的な措置を講じることで合意したと明らかにした。エジプトのシュクリ外相は「エジプトは、敵対行為の中止と軍事活動の終息を促進させるために可能なすべてのこと、必要なすべてのことをする」とし、「我々はラファでの軍事作戦を完全に拒否するという点で一致している」と述べた。

 20日から23日までの4日間にわたり中東を訪問中のブリンケン長官は、サウジ、エジプトなどを経て22日にイスラエルに向かう。ブリンケン長官は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相および戦争内閣の閣僚らと協議を続ける予定だ。ガザ戦争と戦後構想に関して激しくぶつかっている米国とイスラエルが、ブリンケン長官の訪問で意見の隔たりを埋めることができるか注目されている。進展しない人質解放と休戦会談は、ブリンケン長官が21日にカイロで戦後構想を話し合った後、翌日から再開される予定だ。21日のイスラエル首相室の声明によると、イスラエル交渉代表団を率いる諜報機関(モサド)のデービッド・バルネア長官は22日にカタールのドーハに再び出国し、米国のウィリアム・バーンズ中央情報局(CIA)長官とともに、カタールのアルサニ首相、エジプトのアッバス・カメル総合情報庁長官と会い、交渉を再開する。

キム・ミヒャン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
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新年は、米国が自ら主導する「ルールに基づく国際秩序」の自由主義的国際秩序を維持できるかどうかの岐路に立たされる重要な年になるだろう。

2024-01-01 09:20:20 | アメリカの対応
 

[コラム]新年にトランプを再び目にするかもしれないあなたへ

登録:2023-12-26 08:37 修正:2024-01-01 08:05
 
ウクライナ戦争は前例のない制裁にもかかわらずロシアを押さえつけられない米国の覇権の現実を、ガザ戦争は米国が掲げる自由と人権という価値の偽善的側面を露呈した。これに加え、来年11月5日が過ぎれば、トランプの大統領選挙勝利で、以前とは全く異なる世界が私たちの目の前に迫ってくるかもしれない
 
 
米共和党の有力大統領選候補であるドナルド・トランプ前大統領が19日(現地時間)、アイオワ州ウォータールーで遊説している=ウォータールー/ロイター・聯合ニュース

 新年は、米国が自ら主導する「ルールに基づく国際秩序」の自由主義的国際秩序を維持できるかどうかの岐路に立たされる重要な年になるだろう。外ではウクライナ戦争とガザ戦争、中国との対決という「外憂」を、内ではドナルド・トランプという「内患」を抱え、自由主義的国際秩序を維持していかなければならないためだ。

 冷戦終結後、イラク戦争など主な戦争は米国の能動的意志によって進められたが、最近のウクライナ戦争とガザ戦争は米国の意志とは関係なく繰り広げられる、望まざる戦争だ。これらの戦争は3年前の2021年1月6日、国会議事堂前で始まった「トランプの内乱」を完成させる背景になりうる。

 来年3年目を迎えるウクライナ戦争をめぐり、米国内外で疲労感が高まっており、戦況は事実上ロシアの占領地固めに入った。ジョー・バイデン政権が議会に要請した約600億ドルのウクライナ援助案は、共和党が国境統制の強化と連携させたことで承認が阻まれており、欧州連合(EU)の500億ユーロ支援案もハンガリーの反対で実現しなかった。ウクライナは兵站(へいたん)不足の状況で、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は50万人増兵案を提案した。

 戦争が勃発した当初もウクライナ兵士の平均年齢は30~35才の高齢だった。現在は43歳まで高くなった。50歳以上も徴集しなければならないほど兵力資源が底をついた四面楚歌の状況だ。ロシアとドイツをつなぐノルドストリーム海底パイプライン爆破事件が西側の工作であることを初めて暴露した米国の探査報道ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏は最近、交渉説を伝えた。ハーシュ氏は2日、ウクライナがロシアに占領地を放棄する代わりに北大西洋条約機構(NATO)に加入する平和交渉がウクライナ軍のヴァレリー・ザルジーニ総司令官とロシアのワレリー・ゲラシモフ総参謀長の間で協議されていると主張した。ロシアは占領した4州を合併する代わりに、ウクライナはNATOの兵力と攻撃兵器を配備する条件でNATOへの加盟を認めてもらうという内容だ。

 主流メディアのニューヨーク・タイムズ紙も23日、ロシアが9月から現在の戦線で戦闘を凍結する方式の休戦案を、水面下のチャンネルを通じて米国に打診していると報じた。戦争がロシア主導の交渉局面に進む可能性があることを示唆する。

 ウクライナ戦争はますますガザ戦争と連動している。米国など国際社会が最も懸念していた中東域内に広がる影響のためだ。国際物流のボトルネックである紅海で、イエメンのフーシ派「アンサール・アッラー」がイスラエル行きの船舶攻撃に乗り出した。米国は多国籍連合海上軍の結成でこれを防ぐ「繁栄の守護者作戦」に乗り出したが、深刻な状況だ。

 米国とその同盟はアンサール・アッラーに報復することはできるが、それは一回限りにしかならない。ガザ戦争の火の粉が紅海路まで飛ぶ可能性があるからだ。内戦で事実上勝利したアンサール・アッラーは、イラン、ひいてはロシアと中国を背景に紅海とアデン湾を結ぶバブ・エル・マンデブ海峡で自分の取り分を主張している。これはイランおよび中ロの利害でもある。ロシアに対する制裁により中東のガスを輸入しなければならない欧州は、紅海の航路を利用しなければならない。

 ガザ戦争に対しては批判の声が非常に高まっている。紅海におけるアンサール・アッラーはガザ戦争によって国際社会で沸騰した反イスラエル世論を背景に存在感を強めている。イスラエルと断交する国も出るなど、イスラエルにガザへの攻撃の中止を求める国際世論が高いが、米国はイスラエルに足を引っ張られている。政治献金とウォール街を左右するユダヤ系ロビーに政治家たちは卑屈になっており、対外政策を担当する高官たちも大半がユダヤ系か親イスラエルのスタンスだ。パレスチナ住民を同情する世論さえも反ユダヤ主義だと非難する新版マッカーシズムが猛威を振るっている。にもかかわらず、民主党内では前例のないイスラエル批判の声があがっている。バイデン政権は罠にはまった状態だ。

 ウクライナ戦争は最高強度の制裁をもってしてもロシアの足を引っ張れない米国覇権の現実を、ガザ戦争は米国が掲げる自由と人権という価値の偽善的側面を露呈した。年が明け、11月5日が過ぎれば、以前とは全く異なる世界が私たちの目の前に迫ってくるかもしれない。

 ドナルド・トランプ前大統領が再び大統領選挙で勝利し、権力の座に返り咲くかもしれない。彼は昨年夏以降、バイデン大統領に世論調査の平均支持率で約2%リードし、12月4~18日基準では、46.8%対44.5%(リアルクリアポリティクス集計)で優位を占めている。2つの戦争という外憂とトランプという内患は、米国をどこに向かわせるのか、そのような米国が韓国と世界にどのような波紋を呼ぶのかは、年明けの国際秩序で明らかになるだろう。

 
//ハンギョレ新聞社
チョン・ウィギル|国際部先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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 1998年、米国のクリントン政権とホロコースト記念館の主導で開かれた「ワシントン会議」は、第2次世界大戦中にナチスが略奪したユダヤ人の芸術品の問題を解決するための会議だった。

2023-11-12 19:22:33 | アメリカの対応
 

[レビュー]

「文化遺産略奪禁止法がなかったから合法だ」

登録:2023-11-11 06:48 修正:2023-11-11 10:06
 
略奪と紛争、対立で彩られた文化遺産紛争史 
 
『モナリザの家はどこなのか:文化遺産をめぐる対立と紛争の世界史』 
キム・ビョンヨン著|歴史批評社
 
 
「フランスの科学芸術記念物の勝利の入城」1798、ピエール=ガブリエル・ベルトロー、パリ国立自然史博物館所蔵。フランス革命戦争で略奪した芸術品をパリに持ってくる場面を描いた=歴史批評社提供//ハンギョレ新聞社

 先月26日、韓国最高裁は、日本の対馬の寺院から盗まれ韓国に持ち込まれた高麗時代の仏像の所有権は日本にあるとする判決を下した。忠清南道瑞山(ソサン)の浮石寺で製作されたこの仏像は倭寇によって略奪されたと考えられるが、流出の経緯を確認できる資料はなく、日本の寺院が20年を超えて問題なく所有していたので、「取得時効」の法理により所有権がこの寺院に移ったとみなさなければならないという理由だった。

 フランスのルーブル博物館を代表する美術品であるレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」は、1911年8月に盗難にあい、2年ほど後に回収されたことがある。イタリア出身の犯人は、絵をダ・ヴィンチの母国であるイタリアに戻そうとする愛国心の発露だったと主張し、裁判の過程でイタリア人の熱烈な支持を受けた。彼はこの作品がナポレオンがイタリアから略奪した美術品の一つだったと信じていたが、それは誤解だった。ダ・ヴィンチを崇慕していたフランス国王フランソワ1世が、1516年に彼を呼び寄せフランスに定着するよう支援し、フランスで完成した「モナリザ」をダ・ヴィンチの死後に彼の弟子のサライが相続し、フランソワ1世がサライから作品を購入することによって、この絵はフランスの所有物になった。

 この2つの事例でみられるように、略奪と盗難、購入などで原産地を離れた文化遺産は、しばしば所有権紛争に巻き込まれることがある。文化財庁で長きにわたり国外文化財の還収業務を担当した著者(キム・ビョンヨン)は、著書『モナリザの家はどこなのか』で、文化遺産をめぐる対立の歴史を振り返り、国外に搬出された文化遺産を取り戻した事例を紹介する。国際法を専攻した著者は、関連法規と法理に基づいて議論を進めていくが、既得権を持つ強大国の恣意的な法適用を鋭く批判したりもする。

 
 
『モナリザの家はどこなのか:文化遺産をめぐる対立と紛争の世界史』キム・ビョンヨン著|歴史批評社|2万6000ウォン//ハンギョレ新聞社

 文化遺産は遠く数千年前の過去から伝えられてきたものを指すが、「文化遺産」という概念が国際法に初めて登場したのは、比較的最近の1954年だった。第2次世界大戦の過程で文化遺産の大規模な略奪と棄損を経験した各国政府の代表がオランダのハーグに集まり採択した「武力紛争の際の文化財の保護のための条約」(「1954年ハーグ条約」)においてだった。韓国では、1960年に国務院令第92号として公布された「文化財保存委員会規定」を通じて文化遺産の概念を初めて導入した。

 近代以前には戦争で勝った側が戦利品を略奪することは当然視され、芸術品も例外ではなかった。西暦81年にローマに建設されたティトゥスの凱旋門の南側の柱には、ティトゥス帝がエルサレムを陥落して聖殿にあった7枝のユダヤの燭台を担いで略奪していく場面がレリーフに刻まれている。ナポレオンが率いたフランス革命軍はイタリアで600点あまりの芸術品と彫刻像を略奪し、バチカン所蔵の「ラオコーン群像」やハイデルベルク大学図書館の古書がそれに含まれていた。ナポレオンの敗北後、フランスの戦争責任を問うために開かれた1814~5年のウィーン会議を通じて、「ラオコーン群像」をはじめとする略奪品300点あまりがイタリアに返還され、ハイデルベルク大学の古書もハイデルベルクに戻った。略奪文化遺産の原産地への返還を意味する「ハイデルベルク原則」がこの時、誕生した。

 1954年ハーグ条約が文化遺産の概念を初めて導入したとすれば、1972年に発効した「文化財の不法な輸入、輸出及び所有権移転を禁止し及び防止する手段に関する条約」は、盗難や違法に持ち出された文化遺産は原産国に返還されなければならないとする原則を確認した。過去の植民地支配の時代に略奪された文化遺産の返還がこれによって可能になり、返還の事例が相次いだ。フランスのエマニュエル・マクロン大統領が西アフリカのベナン共和国の文化遺産26点を返還すると宣言したのに続き、英国ケンブリッジ大学で展示されていた「ベニンのおんどりの青銅彫刻像」が2021年ナイジェリアに返還され、ドイツが所有していたベナンの青銅品1130点も同様に昨年ナイジェリアに戻った。

 この本では、韓国の「魚在淵将軍の帥字旗」の事例も紹介されている。1871年の辛未洋擾の際、米軍はこの旗を含む旗50本と重砲27門、千歩銃481丁などを戦利品として捕獲した。米国の法律によると、この旗は文化遺産ではなくあくまで戦利品に該当したが、2007年に貸与方式で韓国に戻された。1866年の丙寅洋擾の際にフランス軍が略奪して2011年に永久賃貸形式で戻ってきた外奎章閣儀軌も同様のケースだ。19世紀にアフリカとアジアで取得した欧米列強の略奪品の大部分は、帥字旗や外奎章閣儀軌と似た運命にある。「略奪の時代に略奪を禁止することはなかったから合法だとする欧米社会の主張が続いている」のだ。

 
 
グスタフ・クリムトの作品「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像I」。1998年のワシントン会議の結果、絵画の主人公アデーレの夫であり法的所有者であったユダヤ人フェルディナンドの相続人である姪に所有権が戻った=歴史批評社提供//ハンギョレ新聞社

 1998年、米国のクリントン政権とホロコースト記念館の主導で開かれた「ワシントン会議」は、第2次世界大戦中にナチスが略奪したユダヤ人の芸術品の問題を解決するための会議だった。1997年10月から1998年1月までニューヨーク近代美術館で開かれたエゴン・シーレ特別展がこの会議の直接のきっかけになった。オーストリアの美術館の所蔵品として展示された作品のうち、「ヴァリの肖像」と「死せる町III」の元の所有者だったユダヤ人相続人が、ニューヨークでの展示を機に作品に対する所有権を主張し、それを受け、検察と税関が召喚状と押収令状を発行した。この会議で、略奪品問題の解決のための11の原則が採択され、さらに、欧州各国も同様にナチス略奪品の原状回復のための法的・制度的な措置を用意し始めた。「ヴァリの肖像」が「世界を変えた」と評されるのはそのためだった。「ウーマン・イン・ゴール」という別名で呼ばれ、その名で映画も作られた(日本語題は『黄金のアデーレ 名画の帰還』)グスタフ・クリムトの作品「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像I」も同じくその会議の恩恵を受けた。

 
 
1998年の「ワシントン会議」の直接のきっかけとなったエゴン・シーレの絵画「ヴァリの肖像」と対を成すディプティク作品「ホオズキと自画像」1912、レオポルト美術館所蔵=歴史批評社提供//ハンギョレ新聞社
 
 
1998年の「ワシントン会議」の直接のきっかけとなったエゴン・シーレの絵画「ヴァリの肖像」1912、レオポルト美術館所蔵=歴史批評社提供//ハンギョレ新聞社

 この本にはそれ以外にも、フランスの博物館に所蔵されていたアフリカ女性サラ・バートマンの遺体の返還、画家のイ・バン氏の都羅山駅の壁画撤去を通じてみた場所特定的な美術と創作者の権利、白人男性の芸術家に偏向した作品の所蔵をやめ、代わりに黒人や女性などのマイノリティーの作品に変える美術館の動きなど、他にも興味深い話が多い。

チェ・ジェボン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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戦略企画は一般的に、現在と未来の脅威を評価し、それに対応する目標、手段、方法を探して、それを具体的に実行する武器、部隊、兵力に対する所要を導き出した後、最終的に予算に反映する手順で行われる。

2023-10-31 08:40:14 | アメリカの対応
 

国防費をつぎ込む米国…どれほど大きな恐怖を望むのか

登録:2023-10-30 06:49 修正:2023-10-30 07:39
 
[ハンギョレS]ムン・ジャンリョルの安保多焦点 
米国の危険な核戦略 
 
中国とロシアという「2つの核競争相手」に直面 
バイデン大統領、「反撃を唯一の目的とする」核政策を廃棄 
核兵器増やし、核戦力を現代化 
軍拡競争に火をつける…危うい平和
 
 
22日、朝鮮半島南方の韓日の防空識別圏(ADIZ)が重なる区域で、韓米日空軍が共同空中訓練を実施している=米空軍提供//ハンギョレ新聞社

 米国が世界覇権を維持してきた力が軍事力に由来することについては異論がないだろう。第二次世界大戦後、米国の軍事力が核兵器を基盤にしてきた点も否定し難い。核兵器の発達と核戦略の進化は米国を主人公にしたストーリーだ。恐ろしく複雑に見える核戦略も、その主な部分を成しているのはあっけないほど簡単な常識だ。恐怖感。まさしくそれが8割を占める。抑止理論、制限的核戦争論、ミサイル防衛(MD)、核軍縮、反核運動など、ほとんどのものが恐怖感に基づいており、新規の核武装を除く多くのものを米国が主導してきた。

 米国の歴代の行政府が核戦略文書を発表してきた背景には、核戦争の危険性と恐怖を減らす目的もあるだろう。ジョー・バイデン政権もここ1年間で少なくとも5つの関連文書を公開した。昨年10月、米国防総省は4年周期の国家防衛戦略(NDS)を核態勢見直し(NPR)およびミサイル防御見直し(MDR)とともに公開した。今年2月、国家情報長官(DNI)は核脅威が含まれた定例の脅威評価報告書の公開版を発表した。先月28日には国防総省が9年ぶりに「2023大量破壊兵器(WMD)対応戦略」を出し、今月には下院議員14人で構成された戦略態勢委員会の最終報告書が発表された。さらに国防総省は、中国が約500発の核弾頭を保有しているという評価を含む「中国の軍事・安全保障上の展開」という年次報告書を議会に提出した。

米国、化学生物兵器への報復として核攻撃を暗示

 戦略企画は一般的に、現在と未来の脅威を評価し、それに対応する目標、手段、方法を探して、それを具体的に実行する武器、部隊、兵力に対する所要を導き出した後、最終的に予算に反映する手順で行われる。最近公開された米国の核戦略文書はこのような段階ごとに、少なくとも脱冷戦以降からオバマ政権までの基調とは異なる特徴が見られる。

 大きな変化は、中国がロシアとほとんど対等な水準とみなされていることだ。米国が「核を保有する2つの強力な競争相手と初めて直面している」という認識だ。米国は、中国が現在保有する核弾頭も従来の410発(ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が今年1月に推定)から100発ほど増えたとみており、今後2030年までに1000発ほどになると予測している。米国がロシアとの新戦略兵器削減条約(New START)に沿って配備された核兵器の数を1550発と制限しているため、数年後には中国が単独で米国と大差のない「作戦状態」の核戦力を保有することになると見込んでいるのだ。さらに、核拡散防止条約(NPT)に加盟していない核保有国のうち、唯一米国本土を打撃する意志と能力を持った北朝鮮の核脅威も考慮せざるを得なくなった。

 核戦略の目標は時代や国を問わず、核戦争の抑止だ。この不変の普遍的目標の他に、核兵器をどのような目的で「使用」するのかも目標になり得る。中国は核武装と同時に「核先制使用の放棄」(No First Use)を宣言したが、米国やロシアはそうしなかった。ロシアはウクライナ戦争で核兵器使用の可能性を示唆しており、米国は敵の化学生物兵器の使用やサイバー攻撃に対する報復として核兵器を使用できることを暗示している。バイデン大統領は大統領選で公約した、核兵器を敵対国による核攻撃の抑止や反撃のためにのみ使用するという「唯一の目的(sole purpose)」政策を廃棄し、敵を抑制するために核を含む軍事力と外交力、強力な同盟関係を結合する「統合抑止(Integrated Deterrence)」を掲げている。ここで「抑止」は敵の核攻撃に対してのみ適用されるわけではなない。

 核抑止の対象が「2プラスアルファ(北朝鮮)」の敵対的核保有国になった上、統合抑止の実現を目指すことにしたため、米国の対応戦略は変化を迫られている。戦略文書でもその方向性が示された。まず、核兵器を量と質ともに強化することだ。中国の核兵力が増強されれば、核兵器の数を制限する新戦略兵器削減条約は廃棄される可能性が高い。質的にも数十年経った旧型大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を新型に替え、次世代戦略爆撃機を導入することにより、いわゆる「3大核戦力」の現代化を進めるだろう。2030年代半ば頃までにこのような事業の完了を目指すものとみられる。

 核兵器だけでなく通常の先端兵器と新概念の兵器体系に対する投資も増えている。ミサイル防衛システムは、地上から海、空、宇宙、サイバー領域までを網羅する探知・追跡・迎撃の重層的連動システムで構成され、これを直ちに精密打撃の体系に連携する「戦争網(war net)」を高度化する。ビックデータと超高速演算を結合した軍事用人工知能(AI)は、指揮官の判断を「指揮」するようになり、それに繋がれ24時間疲れ知らずで動く無人システムが防衛と攻撃に加担する。つまり、米国の軍事覇権は徹底的に技術を基盤とし、「事実上の完璧な防衛」と「必要なだけの攻撃」能力を同時に備えることで維持されるということだ。

米学者ら「現在の核戦力で十分」

 米国の核戦略には、二つの昔からの問題が必然的に伴う。一つは高騰する国防費だ。2024会計年度の米国の国防予算(案)は総額8420億ドルで、史上最大規模だ。これには空中戦力611億ドル、海軍481億ドル、MD関連631億ドルなど、核戦略と比較的関連が大きい部分が1700億ドルを越える(ちなみに開発途上国を支援するために2013年に発足した「グリーン気候基金」の2020~23年の世界総拠出額は135億ドル水準)。

 二つ目の問題は、武器輸出と軍拡競争によって引き起こされる平和の破壊と戦略的不安定だ。米国は対象国や集団を問わない通常兵器輸出で不動の1位の国だ。核軍拡競争が今後かなりの間、中国、ロシア、北朝鮮の「反作用」によって加速化することは明らかだ。米国が数カ国を対象に核軍備を増強しても、対象国は米国を1対1の脅威として感じるだろう。

 チャールズ・グレーザーら米国の学者3人は先日、「フォーリン・アフェアーズ」への共同寄稿で、「米国の核軍備は中国とロシアを同時に抑止できる」とし、これ以上のミサイルは必要ないと主張した。14隻の米海軍オハイオ級原子力潜水艦にそれぞれ20基の弾道ミサイルが搭載され、各ミサイルには8発の核弾頭が装着されるうえ、各弾頭は数百キロトンの威力を持っているため、これに400基のICBMと60基の戦略爆撃機を加えれば「十分すぎる」という見解を示した。

 世界が突然戦争の罠に吸い込まれている。ウクライナとガザ地区で恨みと憎悪と恐怖があふれ出しているが、その根源の一軸である米国は休戦と平和のための責務には消極的だ。朝鮮半島の安全保障も、北朝鮮の核を諸悪の根源とみなし、北朝鮮政権終末論と北朝鮮非核化でなければ何もできないという「北朝鮮核還元論」という罠にはまり、身動きが取れない状況だ。本当にこれも「恐怖心」によるものだろうか。ある国々と勢力の貪欲のためだろうか。それとも罠を解く平和という鍵を手にしても使えない愚かさと卑怯さのためだろうか。

ムン・ジャンリョル|元国防大学教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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