イスラエルは23日、レバノンの1600カ所を空爆し、死者492人、負傷者1645人を発生させることをもって「北の矢作戦」を開始した。ガザ戦争を拡大する第3次レバノン戦争の引き金を引いているのだ。

2024-09-29 16:51:57 | 真の解決目指して
 

米国はイスラエルに武器を握らせておいて休戦しろというのか

【コラム】

登録:2024-09-26 01:31 修正:2024-09-26 06:21
 
イスラエルは1年近く戦争を続けながら戦争を拡大している。米国の兵器支援なしにそれはできない。ガザ休戦を望んでいるだって? 中東での戦争拡大を防ぎたいだって? 直ちにイスラエルへの兵器支援を中止すればよいのだ。米国にそれができるだろうか。 
 
チョン・ウィギル|国際部先任記者
 
 
デモ隊が24日、米ワシントンのホワイトハウス前で、米国によるイスラエルに対する武器支援の中止と戦争の中止を要求するデモを行っている=ワシントン/AFP・聯合ニュース

 イスラエルは23日、レバノンの1600カ所を空爆し、死者492人、負傷者1645人を発生させることをもって「北の矢作戦」を開始した。ガザ戦争を拡大する第3次レバノン戦争の引き金を引いているのだ。この日、ニューヨーク・タイムズは、米国のジョー・バイデン政権のガザ戦争休戦に向けた仲裁の努力は時効を迎えた、戦争の拡大を挑発するイスラエルのネタニヤフ首相には絶望するとの分析記事を掲載した。失笑した。米国やバイデン政権の態度にあきれた。

 米国がイスラエルに武器を握らせておきながら、休戦を促しているからだ。報道されたことだけを見てみよう。米国務省は8月14日、イスラエルに200億ドル規模の兵器供給を承認したと発表した。F-15戦闘機50機、最先端の中距離空対空ミサイル、対戦車砲弾などの兵器の販売を承認するよう議会に要請したのだ。「現在と未来の敵の脅威に対応するイスラエルの力量を強化」すると説明されている。

 6月26日のワシントン・ポストの報道によると、米国はガザ戦争勃発後、イスラエルに65億ドルの軍事支援を提供した。同紙は「非常に巨大な規模の事業」という当局者の言葉を伝えた。そのうち30億ドルは5月に承認されたものだが、当時は米国がガザ南部のラファで全面戦争を展開しようとしているイスラエルに反対し、一部の爆弾の船積みを中断していた。

 では、米国はイスラエルにどれほど兵器支援中止の圧力をかけたのか。当時の下院の内部メモによると、供給が保留された爆弾は2千ポンド(約900キロ)のものが1800発、500ポンド(約225キロ)が1700発。「戦争勃発後、米国が提供した軍事支援全体の1%未満」だそうだ。

 当時、イスラエルのネタニヤフ首相は、米国が兵器と弾薬の供給を遅らせていると公開の場で非難した。ホワイトハウスは不正確な指摘だと釈明した。米国はイスラエルに借金の返済を迫られ、慌てふためいている格好だ。この時イスラエルは、ヨアブ・ガラント国防相が率いる代表団を米国に送り、米国の兵器輸送の専門家たちと共に「数百の個別項目」を検討したと報じられている。米国が支援を保留した爆弾はその後、当然にも改めて提供された。

 では、イスラエルはこれらの兵器を自分たちの金で買うのだろうか。ほとんどタダだ。米国はバラク・オバマ大統領時代の2016年、イスラエルに毎年38億ドルを10年間にわたって支援する安保協定を同国と締結した。周辺国に対するいわゆる「質的な軍事力の優位」をイスラエルに保障するためだ。これに加えて米国は今年4月、イスラエルに対する260億ドル規模の安保支援法も成立させた。

 オバマ時代に締結された安保協定によって毎年提供される38億ドルは、兵器購入に33億ドル、ミサイル防衛網に5億ドルが使われている。イスラエルはこの金で、史上最強とされる最新鋭の戦闘機、米国のF-35ステルス戦闘機を実に75機も注文し、30機あまりの引き渡しを受けている。米国を除くと、F-35を実戦に使用した最初の国はイスラエルだ。

 バイデン政権はガザ戦争勃発以降、イスラエルに兵器を支援したくてうずうずしていた。2500万ドル以上の兵器の販売は議会の承認を得なけなければならないが、金額がそれ未満になるよう分割してイスラエルに兵器を販売した。こうした販売は100件以上になる。戦車、弾薬と砲弾を支援する計2億5300万ドル規模の2件の支援に対しては大統領の緊急権限を発動し、議会の審査も免れた。

 米国によるイスラエルの立場の擁護や支援、ガザ戦争における兵器支援には仕方のない面もある。しかしネタニヤフは、米国の休戦仲裁の努力に応じるふりをしつつ、結局はその都度はねつけ、ポケベルテロなどの奇想天外な方法で戦争拡大を挑発している。にもかかわらず、返済をせまる借金取りに金を返すように米国が兵器を支援し続けるというのは、一体どういう了見なのか理解できない。

 米国内のユダヤ人のパワーが強いため、大統領選挙を控えて彼らの顔色をうかがわざるを得ないという事情も理解する。だがそれにも限度がある。中東での戦争拡大が米国の安保上の利益を深刻に侵害しているにもかかわらず、米国はイスラエルに武器を握らせて自らを傷つけている。米国はオバマ政権成立前も毎年イスラエルに30億ドルの直接支援をおこなっていた。イスラエル国民1人当たり500ドルだ。イスラエルが何をしても、一杯食わされても黙々と支援してきた。放蕩息子に遊ぶ金をやる愚かな親だ。

 イスラエルは1年近く戦争を続けながら戦争を拡大している。米国の兵器支援なしにそれはできない。ガザ休戦を望んいるだって? 中東での戦争拡大を防ぎたいだって? 直ちにイスラエルへの兵器支援を当面のあいだ中止すればよいのだ。米議会が兵器支援を決議しても大統領は拒否できる。米国やバイデンにそれができるだろうか。

 
//ハンギョレ新聞社

チョン・ウィギル|国際部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1159686.html韓国語原文入力:2024-09-25 16:26
訳D.K
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大野知事の追悼文送付は、毎年東京都墨田区の都立横網町公園で行われる「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼

2024-09-03 16:19:52 | 真の解決目指して
 

「関東大震災の朝鮮人犠牲者を哀悼」…埼玉県知事が追悼文

登録:2024-09-03 06:19 修正:2024-09-03 08:42
 
 
「関東大震災の時に虐殺された朝鮮人の遺骨を発掘し追悼する会」は1982年9月、目撃者の証言をもとに荒川付近で遺骨発掘作業を始めたが結局発見できなかった。翌年、1923年11月に警察が遺骨を移したという新聞記事が見つかった=在日コリアン写真家の裵昭さん提供//ハンギョレ新聞社

 埼玉県の知事が、1923年の関東大震災当時に虐殺された朝鮮人犠牲者の追悼行事に追悼文を送ったことが確認された。追悼文に朝鮮人虐殺被害が明示されていないという限界はあるものの、意味のある措置という声があがっている。

 日本の市民団体「姜大興(カン・デフン)さんの想いを刻み未来に生かす集い実行委員会」(実行委)は2日、ハンギョレの取材に対し、大野元裕埼玉県知事が「関東大震災の発生から百一年を迎えるにあたり、震災で犠牲になられた全ての方々の御霊前に、衷心より哀悼の意をささげます」と書いた追悼文を送ってきたと明かした。大野知事が関東大震災の朝鮮人犠牲者と関連して追悼文を送ったのは今回が初めて。

 姜大興さんは関東大震災当時に殺害された朝鮮人の中で名前が確認された極めて異例な事例だ。1923年9月1日、関東大震災が発生したことを受け、埼玉県警は県内の朝鮮人を集め、県の北部に接する群馬県などに移送する計画を立てた。姜さんはこの過程で一行とはぐれ片柳村に紛れ込んだものと推定される。地震発生から3日後の9月4日午前2時頃、姜さんは自警団に捕まり無残に殺害された。当時の新聞記事などによると、自警団は姜さんを殺害した後、褒賞を求めて警察に名乗り出たところ、処罰を受けた。その後、地元住民らが姜さんを追悼するため、埼玉県染谷にある常泉寺に墓碑を建て、「朝鮮人姜大興の墓」という碑銘を刻んだ。2007年から地域の市民団体が姜さんの命日である9月4日に合わせて追悼行事を開いている。

 大野知事は先月27日、定例記者会見で実行委が追悼文の発送を要請したことに対して「デマ情報に基づいて朝鮮人の虐殺があったことは痛心に堪えない」とし、関東大虐殺当時の朝鮮人犠牲者に対する追悼文を送ることを前向きに検討していると明らかにした。

 大野知事は昨年9月の記者会見で、朝鮮人虐殺の背景には、関東大震災の翌日、埼玉県内の郡役所が朝鮮人に対する警戒を強化するよう通達した「不逞鮮人放火に関する件通牒(つうちょう)」を傘下の町村に送った点があったと認めた。

 関東大震災の朝鮮人虐殺は「朝鮮人が井戸に毒を入れた」といったデマが広がり、当時日本の警察など公権力が朝鮮人の警戒強化などを叫び、これを助長し、時には加担して起きた。大野知事が公権力の責任を一部認める発言をしたのは前向きな姿勢といえる。日本政府は「政府として調査した限り、事実関係を把握できる記録が見当たらない」とし、朝鮮人虐殺をまともに認めていない。大野知事は外務省出身で、2010年に民主党候補として埼玉県参議院選挙に立候補して当選した。2019年から埼玉県知事を務めている。

 
大野元裕埼玉県知事が日本の市民団体「姜大興さんの想いを刻み未来に生かす集い実行委員会」に送った追悼文//ハンギョレ新聞社

 大野知事の追悼文送付は、毎年東京都墨田区の都立横網町公園で行われる「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典」に、今年まで8年連続で追悼文の送付を拒否してきた小池百合子東京都知事の態度と対比を成している。 小池知事は「都慰霊会の大法要で大震災当時犠牲になったすべての方々に哀悼の意を表している」として、追悼文の送付を拒否している。

 ただし、大野知事の追悼文にも「震災で犠牲になられた全ての方々」に対して哀悼の意を捧げると書かれており、限界がある。

 実行委の小川満事務局長はハンギョレとの電話インタビューで「大野知事が朝鮮人追悼集会に追悼の意を伝えてきたことは、今後同じ歴史を繰り返さないためにも意味がある」とし、「初めて追悼文を送っており、今後さらに積極的なメッセージが出るよう知事を説得したい」と語った。

東京/ホン・ソクチェ特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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米国と中国の覇権競争の表面化に伴って言われはじめた「自由貿易の終焉」は、バイデン政権の今回の措置でより鮮明になった。

2024-05-18 09:39:22 | 真の解決目指して
 

[社説]

米中覇権競争の中、韓中関係の不確実性の解消を急げ

登録:2024-05-17 08:46 修正:2024-05-17 22:42
 
 
チョ・テヨル外相が今月13日午後、中国・北京の釣魚台国賓館で韓中外相会談をおこなっている/聯合ニュース

 米国政府が中国製の電気自動車(EV)に課す関税を現行の25%から100%へと引き上げることを決めた。半導体の関税も25%から50%に引き上げ、バッテリーと関連部品、天然黒鉛、永久磁石も関税を大幅に引き上げるか新設することを決めた。先月、鉄鋼とアルミニウムの関税を25%に引き上げたことに続く措置だ。中国はこれに強い対応を取る考えを明らかにした。中国の後続措置、そして米国の追加措置が世界貿易にどのような連鎖反応を呼び起こすか、現在のところは不確実だ。貿易への依存度の高い韓国経済にとっては大きな危険要素だと言わざるを得ない。

 米国のバイデン大統領は、通商法301条に則って今回の関税引き上げを指示した。1994年3月にクリントン政権で短期間用いられて以来、消えたかのようだった通商法301条は、トランプ前大統領が2018年に復活させ、中国に対する関税引き上げの根拠として用いた。米国と中国の覇権競争の表面化に伴って言われはじめた「自由貿易の終焉」は、バイデン政権の今回の措置でより鮮明になった。キャサリン・タイ米国通商代表は、「メキシコで作られた中国製品の輸入」に制裁措置を取る意向を示した。中国の過剰供給は欧州連合(EU)も批判してきた。米国の関税引き上げによって、中国が欧州市場をさらに積極的に攻略しようとすれば、欧州でも保護措置が打ち出される可能性が高い。

 中国製品が米国市場に入ってくるのを阻止しようとする米国の措置によって、韓国企業は反射利益を得られるという期待がなくはない。しかし、短期的な利害得失に執着すべき時ではない。米国は半導体、EVなどの未来産業分野で中国の浮上を防ぐためにこのような措置を取っているというが、韓国はそれによる貿易秩序の変化から自由にはなり得ないからだ。避けられない変化には適応するとしても、守るべき秩序はきちんと管理しなければならない。

 米中覇権競争の表面化に伴って比重が大幅に低下してはいるものの、中国は依然として韓国の最大の輸出相手国だ。また、韓国にとっては数多くの必須原材料の供給元でもある。米中対立でグローバルサプライチェーンのかく乱が次第に深刻化しているため、韓中の安定的な交易関係は両国いずれにとってもいっそう重要になりつつある。2019年12月の会談を最後に中断していた韓中日首脳会議が、まもなく韓国で開催される。相互の利益を最優先の目標とし、韓中関係の不確実性を解消する契機とせねばならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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米国の軍事戦略に付き従って中国への対抗姿勢を強め、戦争の危険をつくりだす岸田政権と、外交による平和構築の立場に徹し、その実現のために奮闘する日本共産党との対比が鮮明になっています。

2024-05-04 10:48:49 | 真の解決目指して

東アジア平和構築

憲法9条生かした外交 今こそ

 東アジアでは、大国間の対抗が強まる下、さまざまな紛争や緊張、対立が生まれています。戦争の心配のない東アジアをどうやってつくるのか。その展望を示すことが、今の政治に切実に求められています。

 その点で、米国の軍事戦略に付き従って中国への対抗姿勢を強め、戦争の危険をつくりだす岸田政権と、外交による平和構築の立場に徹し、その実現のために奮闘する日本共産党との対比が鮮明になっています。

■軍事同盟の強化

 岸田政権は、2022年末に決定した「安保3文書」に基づき、他国をミサイルなどで直接たたく敵基地攻撃能力の保有や軍事費の2倍化など、東アジアの軍事的緊張を激化させる空前の大軍拡を進めています。

 4月10日の日米首脳会談では、米軍と自衛隊の「指揮・統制の枠組みを向上」(共同声明)することで合意しました。バイデン大統領が「日米同盟が始まって以来、最も重要なアップグレード(更新)」と絶賛したように、狙いは米軍の指揮統制システムの中に自衛隊を組み込むことです。そうなれば日本は主権の一部を切り離され、先制攻撃を選択肢にする米軍の指揮の下、自衛隊が無制限に武力行使を拡大することになります。憲法じゅうりんの日米軍事同盟の歴史的大変質です。

■日本共産党の提言

 一方、日本共産党の志位和夫議長は17日、各国の外交官らを前に講演し、「東アジアの平和構築への提言―ASEANと協力して」を発表しました。

 提言は、(1)ASEAN(東南アジア諸国連合)と協力して東アジア規模での平和の地域協力の枠組みを発展させる(2)北東アジアの諸問題の外交的解決を図り、東アジア平和共同体を目指す(3)ガザ危機とウクライナ侵略を国連憲章・国際法を唯一最大の基準にして解決する―というものです。

 ASEANは1976年に東南アジア友好協力条約(TAC)を結び、「紛争の平和的手段による解決」「武力による威嚇、武力の行使の放棄」を相互関係の指針にしています。地域を問わず「全ての平和愛好国との協力が必要」とし締約国を拡大してきました。日米中なども加入しています。

 2019年にASEAN首脳会議は、「ASEANインド太平洋構想」(AOIP)を採択しました。▽対抗でなく対話と協力のインド太平洋地域をつくる▽ASEAN10カ国と日米中など8カ国が参加する東アジアサミット(EAS)など現行の枠組みを対話と協力のプラットフォーム(舞台)として活用・強化する▽TACを指針とし、東アジア全体で推進する―などを柱にしています。特定の国を排除せず、東アジアの全ての国を包摂した枠組みを活用・発展させ、戦争の心配のない平和な地域にする構想です。日本共産党の提言はこうした構想に沿った現実的なものです。

 日米首脳会談の共同声明は、米英豪の排他的な軍事的枠組みAUKUSと日本の協力検討を打ち出しました。一方で、AOIPの支持を明記しました。ここにもASEANの力が働いていることを示しています。日本がやるべきは軍事的対応の強化ではなく、東アジアの平和構築に向けた憲法9条を生かした外交です。

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 まさにここに肥満の予防や治療の突破口があるとみられている。中村教授は、「適切な食習慣によって繊毛の短縮化を防止すれば、年を取っても脳の抗肥満機能を正常に保てるだろう」と述べた。

2024-03-30 08:47:04 | 真の解決目指して
 

「中年太り」なぜ起こる?…日本の研究チーム、

肥満治療の突破口を発見

登録:2024-03-28 01:54 修正:2024-03-30 07:38
 
[クァク・ノピルの未来の窓] 
「食欲調節」担う視床下部のニューロンの末端にある一次繊毛 
年を取るほど短く…食事のカロリーを下げると再生
 
 
年を取るにつれ、視床下部のニューロンの繊毛が短くなることが中年太りの原因であることが明らかになった=Sean S/Unsplash//ハンギョレ新聞社

 特に食事量が増えたわけでもないのに、中年になると急に太る人は多い。米国では、50歳の人は若い時より平均で15キロも太っているという国立衛生研究所の統計がある。老化によって基礎代謝が低下するから、というのが定説だ。筋肉量と活動量が減るから食事量が同じでもエネルギーがあまり消費されず、体内に脂肪として蓄積されるというわけだ。しかし、中年太りを招く生理的過程が科学的に究明されていたわけではない。

 名古屋大学が中心となった日本の研究チームが、ラット実験によって、脳の視床下部のニューロン(神経細胞)で起きる変化が中年太りにつながることを明らかにし、国際学術誌「セル・メタボリズム」に発表した。

 アーモンドほどの大きさの視床下部は新陳代謝と食欲を調節する脳の領域で、大脳の内側の左右に並んでいる視床の下にある。研究チームは、視床下部のニューロンの末端に触角のように生えている一次繊毛に注目した。この繊毛には、栄養の過剰を感知し、新陳代謝と食欲を調節して肥満を予防する「メラノコルチン4型受容体(MC4R)」というタンパク質がある。すべての細胞には繊毛があるが、ニューロンには1つずつ一次繊毛がある。

視床下部のニューロンの繊毛が縮む

 実験では、ラットが年を取れば取るほど一次繊毛が短くなることでMC4Rの機能が弱まり、それが体重の増加を誘発することが発見された。一次繊毛が肥満に関与するということはすでに知られている事実だが、一次繊毛の長さが年を取るにつれて短くなることが確認されたのは初めて。

 まず、ラットの脳にMC4Rがどのように分布しているかを調べた。その結果、MC4Rが視床下部のニューロンの特定の部分のみに集中的に存在することを突き止めた。

 続いて、生後9週の若いラットと6カ月の中年のラットの脳の一次繊毛の長さを測定した。すると、中年ラットの繊毛は若いラットの繊毛よりはるかに短いことが分かった。これは、中年ラットの新陳代謝と脂肪燃焼の能力が若いラットより劣るということと一致する結果だ。

 次に、ラットに様々な栄養で構成される餌を供給し、ラットの繊毛にどのような変化が起きるかを調べた。その結果、高カロリーの餌を摂取したラットの繊毛はより速く、低カロリーの餌を摂取したラットの繊毛はよりゆっくりと短くなることを発見した。

 
  
老化によるニューロンの一次繊毛の短小化と肥満の関係=出典:名古屋大学//ハンギョレ新聞社

低カロリーの餌の供給で繊毛が復活

 研究を率いた中村和弘教授は、「私たちはヒトでも似たようなしくみが働くと考えている」とし、今回の発見は根本的な肥満治療法の開発に役立ちうるとの期待を示した。

 興味深いのは、年を取るにつれて短くなっていった繊毛が、2カ月間にわたって低カロリーの餌を摂取させたところ、再び伸びたことだ。

 研究チームはまた、遺伝子工学技術を用いて繊毛のより短いラットを作り出し、実験をおこなった。すると、ラットの餌の摂取量が増加し、新陳代謝が低下することを発見した。続いて、このラットの脳にレプチンというホルモンを投与した。レプチンは食欲を低下させるホルモンだ。ところが驚くべきことに、ラットの食欲はまったく落ちなかった。繊毛が短くなったことで、レプチンが本来の機能を発揮できなくなっていたのだ。

 論文の第一著者である大屋愛実博士は「レプチン抵抗性と呼ばれるこの現象は肥満患者によく見られるもので、長い間その原因が明らかになっていなかった」と語った。

 肥満患者は脂肪組織がレプチンを過度に分泌するため、飽食シグナル分子であるメラノコルチンの作用を慢性化させる。研究チームは、これが老化に関係する繊毛の短縮化を促進することで、メラノコルチンが本来の機能を果たせなくさせ、肥満の悪循環を招くと解釈した。

 研究チームは、総合的に老化につれて繊毛が短くなることがラットの中年太りとレプチン抵抗性を誘発するとの結論を下した。

 まさにここに肥満の予防や治療の突破口があるとみられている。中村教授は、「適切な食習慣によって繊毛の短縮化を防止すれば、年を取っても脳の抗肥満機能を正常に保てるだろう」と述べた。

 また、老化による退行は別の一次繊毛でも起こり得て、それが様々な病気の原因となる可能性があると報告された。

*論文情報

Age-related ciliopathy: Obesogenic shortening of melanocortin-4 receptor-bearing neuronal primary cilia

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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