こぶとりばばぁの鬼退治日記

ぶっそうな題名でスミマセン。

吉村昭

2016-05-29 21:58:10 | ひとり言
最近、吉村昭にハマっている。
偶然読んだお医者さん(誰だったか失念!)の本で紹介されていて読んでみたら、面白かった。解体新書の前野良沢を主人公にした『冬の鷹』に始まって、世界で初めて胃カメラを作ったと言う日本人の話『光る壁画』を読み…。これは動物実験で沢山の犬を使用していて、ちょっと読むのが辛かったけど、もっと辛かったのが心臓移植の話で『神々の沈黙』。これも沢山の犬が実験に使われていて、途中で心が折れて読むのを止めようかと思ったくらい。

子供の頃、某大学病院に1カ月間、祖母の付き添いで寝泊まりしたことがある。その病院の裏に動物実験用に使われた動物たちの慰霊碑があった。こんな感じで使われていたんだ、と思った。沢山の命の犠牲の上に、今日の技術が成り立っている。いや、今もまだ犠牲になっている動物たちがいるんだなぁ。沢山の命が失われて行く上で、自分たちの生命が維持され、なおかつ安泰な生活を享受出来ているんだなぁ。ちゃんと生きなきゃ、失礼だなぁ、と思いました。この齢になって、今さら?って感じですが…。

ちゃんと生きなきゃ、と思った作品でまたその上を行ったのが、黒部ダム建設の話『高熱隧道』。これはエッセイの『私の引出し』の中で紹介されていて、知人の会社の話だと知って興味を持った。時代は今まさに放送されている朝ドラの『とと姉ちゃん』の時代。あの時、300名もの犠牲を出してトンネルが掘られていたんだと…。

高校生の時、修学旅行で黒部ダムに行った時、慰霊碑に沢山の人の名前があったのを思い出した。おバカな高校生の私は、「大変だったんだなぁ~」と言うありきたりな感想しか持たなかったけど、改めて読んでみて犠牲になった人たちの命はいったいなんだったんだろう?と虚しさを覚える。変な話、動物実験に使われた動物たちと変わらないような錯覚をおぼえた。修学旅行に行く前に、是非、学生に一読させたいな。私が学校の先生なら…。

日常生活を普通に過ごしていると、今ここに自分が存在していることが、沢山の人や動物たちの犠牲の上に成り立っていることに鈍感になる。それを気づかせてくれる作品が吉村昭には多い。

それと『私の普段着』にしろ、『私の引出し』にしろ、どんな過程で作品が出来上がったのかが書かれていて、ついつい読みたくなるようになっている。今度は何を読もうかな?
ただ、戦争ものは、ちょっと、キツイ…。