こぶとりばばぁの鬼退治日記

ぶっそうな題名でスミマセン。

『冬の鷹』

2016-04-02 19:16:57 | ひとりよがり
誰だったかお医者さんの本に紹介されていた本。
吉村昭著、『冬の鷹』読了。面白かった。
歴史の教科書で、名前だけ知っていた『解体新書』とその著者、杉田玄白と前野良沢。
これはその前野良沢が主人公。『解体新書』が誕生した経緯が書かれているけど、世の中を上手く生き抜いた杉田玄白と学者肌で堅物だったために、世に名を残すこともなく(実際は知られることになるけど)この世を去った前野良沢の対照的な生き様が描かれている。平賀源内なんかも出て来るが、それぞれの人物像が今の時代にもいそうな感じで、江戸時代ほぼ中期の世から人はそんなに変わっていないのかなぁ~と思ってみたりする。

前野良沢は『解体新書』に訳者として名前を出すことを断っているが、その理由が、
「私の学は、名を得るためのものではない。世には、自分の学び得たものをすぐに出版したがる傾向がある。その根底には、名声を得たいという欲望がひそんでいることが多い。それが私には意に染まぬから、あえて名をしるすことを固辞したのだ」
と息子に言っている。出版するには未完成なところがあるから、それを世に出すのは嫌だと言っている。

まぁこんなに厳しくなくてもいいと思うけど、ホント、今の世の中、お金になると思うとすぐ出版物を出す傾向はあるなぁ~と思ってしまう。ダイエット本なんかそうよね。根拠がちゃんとあれば、必ずそのダイエットでやせられるハズだけど痩せない。だからまた違うダイエット本が出て来る。なんか流行り廃りも激しいし…。だから最近、私は簡単に出版物を信用しないようになった。本の価値も下がってきているから、本も売れなくなっているような気がする。読書離れ云々もあるけど…。やっぱ信用できる本は、時代が変わっても残っている本なんですよね。

それにしても、前野良沢の名前が残ってよかったと思いました。