読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

黒川博行の『勁草』

2024年02月15日 | 読書

◇ 『勁草

    著者:黒川 博行   2017.12 徳間書店 刊

  

  巷間オレオレ詐欺と呼ばれる特殊詐欺がテーマの作品である。今の日本では
 小金を持った高齢者がターゲットにされ、いくら注意を呼び掛けても被害者は
 増える一方である。
  詐欺グループにはターゲットを探る名簿屋、ターゲットの財産、家族状況な
 ど情報収集を受け持つ下調べ屋がいる。掛け子、出し子、受け子と分業システ
 ムになっていて、指示役に従って動くので基本互いに連係はない。

  本作では橋岡と矢代という名簿屋のリストに従って下調べをするチームと特
 殊詐欺グループを追う大阪府警特殊詐欺捜査班の佐竹と湯川という二人の刑事
 の戦いが中心である。
  ちなみに詐欺グループのリーダーは高城という名簿屋上りで、「ふれあい荘」
 というアパートを持っており受け子供給源である。また「大阪ふれあい運動事
 業推進協議会」という得体のしれない団体の看板を掲げている。この下に青木
 という掛け子兼サブリーダーがいる。
  詐欺グループの橋岡は几帳面で慎重派である。矢代は気が荒くずぼら、仮釈
 放の期限切れにあと1か月の身で保護司の推薦で高城のアパートに入って詐欺
 屋になった。
  二人のやりとりはテンポと歯切れが良くてまるで漫才を聞いているようであ
 る。
  一方特殊詐欺捜査班の佐竹と湯川のコンビも息が合っている。詐欺グループ
 の構成はあらかた調べがついていてあとはタイミングを計っているだけ。着実
 にグループを追い込んでいく。結構こわい暴力も使う。

  ある日橋岡・矢代は賭博にのめり込んでやくざに多額の借りを作ってしまい、
 二進も三進もいかなくなり、ついに詐欺グルプのリーダー高城に借金を頼むが
 断られた矢代は高木を絞め殺す。
  二人は現金と通帳、印鑑を奪う。ロレックス、パテックフィリックなどもあ
 って換金した。
    
  殺した高城の事務所を探っていると高城のなじみの女が現れる。矢代は「高
 城は四国に出掛けた。行き先は分からない。向こうからの電話を待ってる」な
 どと出まかせを言うが、やがて徳山というやくざ者が現れて白鞘の刃物を出し
 て脅しをかける。
   対象者名簿を運び出ところを奥山にとがめられた矢代はゴルフのシャフトで
 殴り殺してしまう。死体は高城と同じ林の中である。
  
  10指に余る預金口座のうち大口から金を引き出すのに苦労する。株券はあき
 らめた。高城の乗っていたベンツも残債が残っていて100万弱にしかならな
 かった。  
  高山を殺った矢代はやくざに捕まり半殺しの目に遭った。高城の数千万円の
 通帳・印鑑も奪われた。危うく逃れた橋岡は一千万円の金だけを持って沖縄へ。
 危うく命を取り留めた矢代は,二件の殺しは橋岡の仕事と罪をなすり付ける。

  沖縄の島を逃げ回った橋岡は最後は暗闇の中崖から転落し死んだ。

                          (以上この項終わり)








因みに勁草とは風に強い草、意志が堅固なこと


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