読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

ロバート・B・パーカーの『盗まれた貴婦人』

2024年01月11日 | 読書

◇『盗まれた貴婦人』(原題:Painted Ladies)

   著者:ロバート・B・パーカー(Robert・B・Parker)
   訳者:加賀山 卓朗      2010.11  早川書房 刊

  
 パーカーのスペンサーシリーズ第38作である。パーカーは39作『春嵐(Sixkill)』
を最後に2,010年に亡くなった。
 今回の事件は題名にあるように17世紀の名画『貴婦人と小鳥』という絵画が美術館
から盗まれ、犯人から身代金の要求があって、スペンサーは受け渡しに向かうという
美術史教授プリンスの依頼でその警護を請け負った。しかし金を渡し受け取った絵画
(とみられた)が爆発、依頼人は爆死した。ろくに仕事をしなかったスペンサーは依
頼料を返したものの腹の虫が収まらないので無報酬で事件の背景を探る。

 関係者を探っているうちに犯人の痛いところを突いたのか、スペンサーの事務所で
待ち受けた殺し屋二人にカービン銃で襲われた。襲撃者の腕にアウシュビッツ収容者
に特有の番号の刺青があり、謎が深まる。
 プリンスは女漁り教授として知られており、女子学生の一人ミッシー・マイナーと
その母で保険会社勤務ウィニフレッド・マイナー(なんと盗難絵画の保険事故担当だ
った)が不可解な関係者として浮かび上がる。

 何といってもパーカーの作品の魅力は登場人物、とりわけスペンサーの恋人スーザ
ン、相棒のホーク(今回は登場しない)、州警の警部ヒーリー、ボストン市警の警部
クワーク、同部長刑事のベルソン、地方検事補のケイト、弁護士のリタなど登場者と
の会話で交わされる小気味よいやりとりである。
 また今回は愛犬のパールがスペンサーに暴漢待ち受けの危急を知らせるという働きを
して存在感を示した。
 
 スペンサーが名画「貴婦人と小鳥」に関わったことが余程の脅威だったのか、ベッド
に爆弾を仕掛けられるという攻撃を受けた。攻撃は二度目である。

    意固地なスペンサーは敢然と反撃する。
 あちこち手を回して調べていると大二次世界大戦終結時ナチスがユダヤ人の美術品
を没収した際、これを免れた名品「貴婦人と小鳥」を所有者の孫が隠し場所から取り
出し画商に売ったことが判明した。ナチスに奪われた美術品を見つけ正当な所有者に
取り返すことを目的とする財団を作りその代表者となっているのがその孫(アリエル
・ハーツバーグ)だった。

 ウィニフレッド・マイナーはアリエルの元妻でミッシーは二人の娘だった。ウィニ
フレッドはアリエルの財団における絵画売買のからくりを知っていた。この3人の住
いに踏み込んだスペンサーはすんでのところで銃撃戦を回避できたが、アリエルは元
妻に撃たれて死んだ。

                             (以上この項終わり)

  

 



    

 


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