読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

デニス・ルヘインの『シャッターアイランド』

2024年01月07日 | 読書

◇『シャッターアイランド』(原題:Shutter LsLand)

   著者:デニス・ルヘイン(Dennis Lehane)
           訳者:加賀山 卓郎       2003.12 早川書房 刊

   
 ミステック・リバー』でおなじみのデニス・ルヘインの作品。本書は一味違う。
保安官を主役としているが、捜査小説でも、冒険小説でもない。読んでいくうちに
「シャッター・アイランド」という孤島、密室、暗号の登場でまるで本格ミステリ
ー小説と見紛う構成である。 

 物語は1954年9月、主人公のアメリカの連邦保安官テディ・ダニエルズと相棒の
チャック・オールが、ボストン沖のシャッターアイランドにあるアッシュクリフ病
院という精神障害犯罪者病院を訪れるところから始まる。女性患者の一人が行方不
明になったことで二人が派遣されたのである。

 主人公のテディは放火事件で妻を亡くしており、放火犯がこの病院に入院してい
ると信じてこの島の捜査に応じた側面がある。
 テディとチャックは病院長、副院長、看護師、看護婦、看護助手、警備員など多
くの関係者と渡り合いながら、核心に迫ろうとあがくが、コーリーという副院長に
あしらわれてなかなか事件の真相に迫れない。

 本書はプロローグを含め主人公が孤島の施設を訪れて第1日目から4日目迄の5
段立てであるが、第4日目の段入りの前に出版社側が入れた袋綴じがあって、「封
を切って、あなたの推理が正しいかどうか確かめてください」とある。そこでは衝
撃的結末が待っていた。
 さらに文芸評論家の池田冬樹氏が解説していて、本書の味わいの濃厚さをいや増
している。
 池田氏によれば本書は”味わいは”社会派ミステリに近い”という。氏によれば作者
はプロローグからすでに読者を引っかけるという狡猾な確信犯だという。
                           
                          (以上この項終わり)


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