読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

サイコミステリー「森の死神」ほか

2009年05月24日 | 読書
◇「森の死神」(原題:La mort des bois)
 著者:ブリジット オベール(Brigitte Oubert)香川由利子訳1997.6早川書房刊

 いやー 久々に引き込まれました。珍しくフランス作家のサイコミステリー。
 パリの爆弾テロに巻き込まれて目も見えず、口もきけない(耳だけOK)の全身
 麻痺状態の美女に忍び寄る連続殺人魔の影。身動きできない身体にささやく
 触る、針で刺す…。結構気丈で「こんちくしょう、うすのろ(対刑事)」など、言葉
 にできない過激な内心の声が括弧つきで連なるので面白い。こんな状況設定
 は他の小説でも部分的にはあるが、全編この調子なのが珍しくて新鮮。
 しかも連続殺人犯候補者が周りに数人いて、主人公が推理するのだが、意外
 な人物が犯人…。

       

◇昏い部屋(原題:THE DARK ROOM)
  著者:ミネット ウォルターズ( Minette Walters)成川裕子訳1999.7東京創元社刊

  この作家の代表作「氷の家」、「女彫刻人」、「死のひそむ家」などはすでに読
 んでいる。なかなか手の込んだストーリーで少々疲れるが、惹きこまれる。
  今回の作品は自動車事故からの昏睡から覚めた女主人公が、すっぽりと抜け
 落ちた事故直前の記憶と、時折現れる深層記憶像との間で戦くさまが事の真相
 を予感させる。そして周辺に起こる連続殺人。
  どの辺でこの犯罪者を当てることができるかで読者の力量が試されるのかも。
 舞台はイギリス。ウィルトシャー州の片田舎。

          

スペンサ-ヴィル(原題:Spenncer Ville)
  著者:ネルソン デミル(Nelson Demille)上田公子訳1997.6文芸春秋社

  「ゴールドコースト」で初めてネルソンデミルに出会ってファンになった。軽快・軽妙
 な語り口が良かった。これは原書で読まないとほんとの魅力がわからないだ
 ろうと御茶ノ水の「丸善」で分厚い原書を手に入れた。2・30ページ読んだが、
 そのままになっている。なぜか。言い訳は山ほどある。
  物語の舞台スペンサーヴィルは著者の生まれ育った故郷の原風景、古き良き
 アメリカ・・・少なくともヴェトナム戦争前の素朴で自信に充ち溢れていたアメリカ
 のたたずまいが奇跡的に色濃く残っている土地のようだ。
  米国国家安全保障会議のスタッフという要職に上り詰めながら、我を通した
 ために辞職に追い込まれた頑固な元スパイ。 お互いに愛し合っていながら
 も、ヴェトナム戦争がきっかけで疎遠となり、しかし忘れられない女のために生
 まれ故郷に帰ってみれば、かつての恋人は意外にも地元の警察署長となっ
 ている悪ガキの妻に。
  アメリカ現代史をなぞりながら主人公の過ぎ越しかたをなぞり、今に残る古
 き良き時代のアメリカ風景を描き、なおかつ悪徳警察署長に闘いを挑み、恋
 人を苦境から救い出そうとするヒーローの活躍を描いた本書は、エンターテーメントと
 して過不足ない。

         

  (以上この項おわり)

        

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