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貫井 徳郎の『誘拐症候群』

2024年02月08日 | 読書

◇『誘拐症候群』 

   著者:貫井 徳郎   2001.5 双葉社 刊  


     
  作者の「症候群」三部作『失踪症候群』、『誘拐症候群』、『殺人症候群』
の一つ。 
 主役を演じるのが警視庁人事二課の環敬吾が指揮する特殊工作班の一人武藤。
警察組織の枠外グループで、諸般の事情で警察が表立って扱いにくい案件を処
理するいわば時代物の「必殺仕置人」の現代版と言った役回りである。

 今回の「誘拐」案件は身代金小口誘拐(身代金が何とか都合できる額)と営利
誘拐対象者(男児)が殺害されるという本格大型誘拐(身代金1億円)が交錯し、
誘拐グループを暴く環班の面々も交錯し合うところが読みどころ。
 環のグループは概ね元警官である。世間的には私立探偵や建設現場作業員、ホ
ームレスなどさまざまである。チームの何人かが事案の調査データを持ち寄って
犯人の特定し、環の指示で対処する。

 今回の主役は新宿駅頭で托鉢僧を続ける武藤。同じ駅頭でポケットティッシュ
を配る高梨の息子が誘拐された。身代金は1億円。高梨には不仲ではあるが裕福
な父親がいて支払い能力があるとみなされたらしい。なぜか高梨と武藤が顔見知
りであることを知っていて、身代金運搬役は武藤と指名された。携帯でさんざん
あちこち引きずり回され、結局武藤は怪我を負わされた上身代金は奪われた。
犯人は相当頭がいいらしい。
 
 一方街では身代金を誘拐対象者が何とか工面できる額にした幼児営利誘拐は頻
発していた。警察に連絡して幼児の命がないと言われ身代金を支払うので事件は
表面化しない。
 誘拐された幼児はある男によってあさるマンションの一室に連れ込まれ、ある
女性が面倒を見た。その女性は誘拐案件とは知らずネットで知り合った「ジーニ
アス」と名乗る男から依頼されたのだった。

 身代金は偽札だったらしく犯人は焼き捨てた。資金を用立てた高梨の父親が工
作したらしい。そして誘拐された幼児は殺された。幼児の父親高梨は激怒し小細
工を弄した父を殺害した。その間のいきさつはのちに高梨が武藤に打ち明けた。

 ジーニアスは周到なプランを組み立て、電話や書類は使わず、パソコン通信や
インターネットを介することで証拠を残さないよう巧みに処理している。
 しかし環のメディアを使ったおびき出し、強引なパソコン機器の押収、メール
の記録解明などによってついに警察に証拠を握られ御用となった。
 天網恢恢疎にして漏らさずである。

                        (以上この項終わり)

 

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