JCP市原時夫です

千葉県房総の睦沢町から、政治・経済・歴史・オペラ・うたごえを考えるgabuku@m12.alpha-net.ne.jp

地域再生へ茂原革新懇が岡田知弘教授講演

2012年11月12日 | Weblog


 茂原革新懇が、10月6日に開催した、地域再生に向けての岡田知弘京都大学教授の講演の内容が、「ちば民報」に掲載されました。
転載します。

大企業の撤退で

 各地で超一流と言われる企業が工場閉鎖やリストラをすすめ、労働者の雇用を脅かし、地域経済に打撃を与えています。今年に入って茂原では、パナソニックと東芝コンポーネンツが撤退し、労働者だけでなく地域経済に大きな影響が出ている茂原市で、茂原革新懇が10月6日、京都大学の岡田知弘教授を招いて、「ひとりひとりが輝く地域再生―企業誘致政策を超えて]と題する講演会を開催しました。主催者挨拶で岡崎巌事務局長は、大企業の身勝手を批判しつつ「これからのまちづくりを、いったいどぅすればいいのか、一人ひとりの市民が考えていく一助になれば」と、ごの集会の狙いを語りました。
 岡田氏は、「経済と言えば、世界経済とか証券取引所の情報とか円高とかの話ばかり。しかし茂原の経済、千葉の経済というような地域経済なしに日本の経済はあり得ない。それを支えているのは、中小企業、中小業者、そして農家や協同組合である」と、地域からものを見る視点を述べました。
 地域経済を衰退させたいちばんの原因は、何よりもグローバル化と多国籍企業重視の「構造改革」政策です。生産拠点も販売網も海外に展開し、自動車は7割が海外生産。電器関係もそうなりつつあります。その結果、地方に展開していた国内工場が閉鎖され、産業
の空洞化が起きました。

 「構造改革」で疲弊

 その一方で、農林水産物の関税を大幅に引き下げて輸入促進をした結果、日本の食料自給率は先進国中最低となり、地場産業が崩壊していきました。大企業の本社がある東京などに、海外に輸出したり投資した利益の7割が集中しました。グローバル化すればするほ
ど東京は潤い、地方は疲弊する構図です。

 2001年から始まった、この小泉「構造改革」は労働、経済、金融などあらゆる面で推し進められました。そのなかで日本全体はマイナス成長となり、賃金や社会保障はI割以上カットされました。その結果として格差と貧困が拡大しました。
 これにたいし、国民が反撃した結果、自公政権が崩壊し、民主党政権が誕生します。ところが、この政権は国民の期待を裏切ります。いま野田内閣は「構造改革」を再稼動させるという末期的症状に陥っています。
 岡田氏は、小泉さんは、地域の経済が弱くなってきているのは市町村が小さいのが原因と、広域合併を進めた」と言います。
これによる大きな自治体の誕生で、企業の進出や大規模公共事業の誘致がやりやすくなりました。
 さらに問題なのは、大プロジェクトをやり、企業誘致をやれば地域が活性化するという考え方。大規模公共事業はゼネコンが受注し、地場の建設業は下請けにさえ入れない。企業誘致に成功したとしても利益は本社に還元され、地域内に再投資されません。その上パナソニックとか日立とか東芝などは、全国で工場閉鎖、撤退、リストラをくり返しているという事実があります。目先の利益を求めて地球規模で移動し、足元の地域経済に責任を持だないのが、大企業・多国籍企業の本質です。

 自治体の役割

 では、一人ひとりが輝く 地域再生のためには何か大 事か。岡田氏は「地域内再 投資力」ともいうべき力を、自治体が系統的にサポートしていくことが欠かせないといいます。地域経済を担っている、雇用者の85%を占める中小企業や協同組合が投資する力を、量(お金の再投資規模)と質(技術開発、生産能力等)でいかに高めていくのかが一番大きなカギです。
 企業誘致のために補助金を積むといった政策をくり返すのではなく、地域の実態に合わせた施策をつくりだしていくことが必要です。これを実現する手段として中小企業振興基本条例が注目されています。「地方産業政策は地方自治体の責務」だとして、現在90自治体で制定されていますが、千葉県でも07年に制定されています。岡田教授は、千葉県のこの県条例を高く評価しています。その主な内容として、「中小企業振興と地域づくりの一体的把握」があります。そして「大企業は中小企業を配慮して取引をするように」と、大企業の役割も定められています。これをもっと活用するとともに、野田市が10年2月に施行したような「公契約条例」が必要です。市の発注する公共事業や特定の請負作業について、市が定
める最低賃金を上回ることを入札資格とするものです。ワーキングプアを規制することになり地域経済振興につながります。これがさきの中小企業振興基本条例と結合すればさらに有効です。
 これに真っ向から逆行する動きがTPPです。あらゆる物、サービスが国境を越えて自由に動けるよう、あらゆる障壁、規制を取っ払おうというものです。これは、地域内再投資力を弱めてしまうものであり、「絶対に許してならない」と強調しました。
 グローバル競争に左右されない、個性あふれる地域経済・社会を再構築するためには、自治体の役割が決定的に重要です。自治体は行財政権限と条例をつくる法的権限を有するからです。
 地域内再投資力を高めるという観点から、「地域の宝もの」をさがし、住宅リフォーム助成制度などの施策を通じた、仕事と雇用を創出するとりくみが広がっています。また、地域金融機関の役割、大企業の地域貢献、地域内企業のネットワークづくりと地域内産業
連関の重要性などを、日本各地の実践例を紹介しながら詳しく報告しました。
 そして最後に、地域を知り、科学的に将来を見通せる「地域学」の立場が不可欠だとして、「地域のことは地域の人しかわからない。そこから何をなすべきかが引き出せる。そのため”まちの研究所”をつくることをお勧めする」と2時間たっぷりの中身の濃い話を
終えました。
  (文・写真 関口偵雄)