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癌と生きる 依存症と生きる

命がある限り希望を持つということ

薬物事件を依存症を知るきっかけにしてほしい

2014-05-25 10:29:13 | 薬物依存症
この一週間ほど、TVや新聞は、連日のように芸能人の薬物使用に
関するニュースを流していました。
こういうニュースではいつも「社会的な実績や立場のある人がなぜ?」という
問いかけがされますが、その答えは簡単です。依存症だからです。

もう何度も書きましたが、依存症は脳が依存対象へのコントロールを失う病気
です。依存する対象が、薬物であれ、ギャンブルであれ、アルコールであれ
病気が進行するとコントロールを失った脳は、依存するものへの強烈な欲求、
渇望以外の機能が働かなくなって、人格の変化、人間性の崩壊が起こります。
その結果何がやってはいけないことなのかという判断や、これをやったらどう
なるかというような思考も働かなくなります。というよりも、極端な言い方を
すれば、依存者というのは、もとのAならAという人物ではなく、別の何者か
に変貌したというべきではないかと自分の体験から言っても感じます。

アルコールの場合だけは、ある程度時間が経たなければ依存症にならないよう
ですが、薬物とギャンブルの場合はたった一回の経験でも依存状態になります。
その理由としては、A10神経系(脳内報酬系)という分野への強烈な刺激
によって脳内物質のドーパミンの放出のされ方が異常になるという生物学
的な変化が起こるためだと、依存症のメカニズムが近年解明されてきています。

依存症になる理由として、性格や意思が弱いというような言われ方をしますが
そういう問題ではなくて、薬物やギャンブルの作用で脳に科学的な変化が生じ
るもので、いつどうやって依存症になったのかは本人にもわかりません。
報道ではストレスが原因かという表現がされていますが、依存症の原因はあく
までも薬物やギャンブルといった脳を変化させる毒との接触です。
確かにストレスに弱いことは、あらゆる依存物質に依存しやすい要因のひとつ
かもしれませんが、どんなに性格が弱くてもそうした毒に接触しない限り、
依存症にはならないのです。作家で精神科医の箒木蓬生さんが「お釈迦さまで
も依存症になる」と極言されているように、自分の今持っているどんな能力
を総動員したとしても、薬物やギャンブルの場合は依存症になることを止める
ことはできなません。これらの依存症に関しては、意思や理性や経験は
まったく役に立たないわけで、依存症にならないためのたった一つの方法は、
薬物やギャンブルなどの毒に安易に接触しないということだけなのです。

しかも依存症は、通常の医療(投薬や注射など)による治療の方法がありません。
現在依存症の回復施設は、アルコールではAA,ギャンブルではGA、薬物ではNA
といった回復するための自助グループがほぼ全ての都道府県にあり、依存者
同士のミーティングが定期的に行われています。その他に、このブログでも
前に紹介したジャパンマックや、薬物依存であればダルクという薬物依存症の
民間の相談機関、リハビリ施設があって、AA,GA,NAとも提携しつつ、依存者が
依存症から回復するための活動を行なっています。

薬物報道の際に、ある弁護士さんが、アメリカでは依存症に対応するリハビリ
施設が充実しているが、日本はとても数が少ないと言われていて、これは
本当にその通りです。アメリカのドラマを見ていると、薬物やギャンブル
アルコールや虐待、ストーカー(加害者側)に至るまで、会話の中でセラ
ピー、カウンセリング、リハビリ施設といった言葉が頻繁に出てきます。
アメリカでは、そういう人間の脳や心の問題について、取り合えず対応
できる設備やシステムがある程度できているのだなということが分かります。

それに比べて日本では、もはや薬物の問題でさえごく身近な問題に
なりつつあるのに、対応するための機関は民間のNPO法人のがんばり
だけに委ねられているような、とても先進国などとはいえないお粗末さ
です。今回の報道を見ても、依存症の怖さという部分が特にクローズ
アップされているようにも思えません。薬物という部分が強調されて
いますが、広い意味で言えば依存症は対象が何であれその恐ろしさは同
じです。正常な判断力や思考力を失った依存者の行動(借金や違法行為)
は、本人だけでなく家族や周囲の人間たちにも大きな悲劇的な影響を
与えます。

自分たちとは無関係な芸能人の話と受け止めず、どうかこういう機会に
依存症は実は自分たちのごく身近にある大きな脅威だと認識して
軽い気持ちでおかしなものに近づかないことが大切です。「疲れが
取れる」「やせる」「健康にいい」など、つい気持ちが動いて
しまうような誘い文句を言われても、得体のしれないものは基本的に
危ないものなのだというくらいの警戒心が必要です。

またアルコールやネットのように依存症になるまでに一定の時間が
かかるものは、これらの依存症についての知識を持って、自覚的に
予防をすることが大切です。依存症は治らない病気です。
一度依存症にかかってしまったら、正常な人生を送るためには
毎日依存をしないという努力を死ぬまで続けていくことになります。
依存症の人にとって、これはものすごく困難なことなのです。
このように、依存症は誰にとっても人生そのものを失ってしまう
本当に恐ろしいものなのだということを知っていただきたいと思います。

私の意見は少し極端だと思われる方がおられるかもしれませんが
現実にアルコール依存症は、飲酒運転で死亡事故を起こして
いるケースがたくさんあります。ギャンブル依存症も、借金苦
から悲惨な事件を起こす例が数多くあります。薬物はそもそも
それ自体が違法であり犯罪行為です。その結果、無関係な人たち
が犠牲になっています。この三種類の依存症だけでも患者数は
すでに一千万人を超えていると思われますからけして大げさだ
とは思いません。事件や報道はすぐに風化しますが、インパクト
の大きい今だからこそ依存症の恐ろしさを一人でも多くの人に知
ってもらい、考えてもらいたいと願っています。

「癌はどうした」と突っ込まれそうですが、現在のところこれといって
変化はありません。クレーター化した患部から時折若干の出血がある
くらいです。お風呂上りに、病院からもらった塗り薬を塗っています。
自分が末期がんなのだという現実にも、さほど大きな動揺や衝撃を
感じずに日々が過ぎています。正直自分だけが病気という今の状態
よりも、ここまで生きてきた歳月のほうが何倍も大変でした。
人が幸不幸を感じる感覚というものはあくまでも相対的なものなのかも
しれないなと、ちょっと思ったりもします。




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