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癌と生きる 依存症と生きる

命がある限り希望を持つということ

依存症から回復するとは

2014-08-29 16:01:10 | 依存症
昨日は先日薬物で逮捕されたミュージシャンの
裁判のニュースが報道されていました。
それを見ながら、また先日聞いた後藤先生の
「動機づけ面接」のお話を思い出していました。

後藤先生のお話はアルコール依存症が中心でしたが
しばしば「患者さんは頭壊れちゃってますから」という言葉が
出てきました。
こういう言い方に反発を感じる方もおられるかもしれませんが
これは決して依存症の人を軽蔑した言葉ではなくて
むしろ依存症の本質をとても明快に表していると思います。

前に依存症の人というのはAならAという人格ではなく
まったく別の何者かになると書いたことがありますが
この「壊れちゃった」というのはそれと同じ感じです。
もはや、もともとのAさんではないから
もうお酒でも、ギャンブルでも、女性問題でも
何でもありの状態なわけです。

そして後藤先生はこうも言われました。
「でも実は真面目なんです。そして働き者なんです」
つまり依存症になる前の人格は真面目で働き者だったという場合が多い。
特にこれは日本人の本来の性質からしても納得できます。

その真面目で働き者であったAさんが、お酒なりギャンブルなり薬物なり
依存症の原因となる毒によって「頭壊れちゃった」依存症のK(仮)さんという
全くの別人格に変貌する、このことを家族や依存症でない多くの人は
簡単には理解することができません。

家族のほうは真面目で働き者だったAさんであった頃の
幸せで楽しかった記憶が残っているのでとても苦しみ
何とかもとのAさんに戻そうと
哀願したり、叱責したり、ありとあらゆる手段を試みますが
ことごとく失敗に終わって、徒労と失望を繰り返し疲れ果てます。

昨日のニュースでも「なぜ家族の気持ちがわからないのか」といった
コメントが多く聞かれましたが
ある程度の期間薬物に依存してKさんという別人格になっている人が
わずか3ヶ月ばかり薬物から離れて治療したからといって
もとのAさんに戻るということはあり得ないし
そもそもそんなに簡単に回復できるようなものならば
ギャンブル依存者530万人とかアルコール依存者100万人といった
とんでもない数字が出てくるわけはないのです。

それにたとえKさんが回復したとしても、もとのAさんに戻るわけではない。
依存症からの回復というのはそういうことではないと私は理解しています。
「やりたい」という衝動を意思や理性の働きでコントロールすることが
できない、脳はコントロールする働きを失っている
依存症はそういう病気です。
「治癒することはない」というのはもとには戻らないということです。

ですからKさんが本当の意味で回復するというのは
単純に依存の対象を止めればいい、離れればいいということではなく
依存しない人生を生きることができる新しい人格X(仮)さんとして
一から生き直す、そういうことなのだろうと思っています。

今まで依存していたお酒とかギャンブルとか薬物などではなく
自分の時間とエネルギーを使う意味のある
そして自分を支えることができる核になるものを見出して
人間として生きる意味のある新しい人生を生きることが
本当の意味での回復なのだろうと思います。

そして家族がそうした依存者をそれでも支えることができるとしたら
この人は自分が知っているAではなくて「頭壊れちゃってるKなのだ」
という割り切りというか、ある種の気楽さが前提でなければ
依存者がそれまでに起こした様々な悲惨な出来事を水に流して
新しい人生を生き直すのを見守り、
それをずっと支え続けていくことは難しいように思います。

そしてこの考え方は
今家族が依存症で、次々に問題を起こして大変という場合でも
「この人は頭壊れちゃってるんだ」と
一歩距離を置いて見る事ができるようになれば
(直接本人に言ったら大変なことになりますけど)
依存者の嘘やおどしといった言動を真に受けなくてよくなり
案外有効なのではないかとも思います。

後藤先生がお話の中で「頭壊れちゃってる」を繰り返されたのは
セミナーに参加されていたカウンセラーなどの専門職の人たちに
患者の言葉や心情に過度に巻き込まれない、一線を画す
そのための気持ちの持ち方のコツだと理解しましたが
上手に使うことができれば家族や周囲の人の役にも立つと思います。

残念ながら私の場合は、問題の渦中にあった頃は
こうした知識が何もなくて、振り回され続けていました。
今その頃を振り返ってみれば、確かにギャンブルや借金や女性問題で
むちゃくちゃで、しかも「自分でも何をやってるかわからない」と
のたもうたダンナは確かに「頭壊れちゃってたんだ」と思えますが
すべてあとのまつりです。

とまあなかなか偉そうなことを書き並べていますが
理想的な回復を、我が家で体現できているかといえば
「ギャンブルを止めた」というとこまでは
なんとかできているのかもしれませんが
その分がアルコールやネットにすり替わっているような気もしますし
道は果てしなく遠いということでもあります。



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