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癌と生きる 依存症と生きる

命がある限り希望を持つということ

書籍紹介「ギャンブル依存症」田辺等著

2013-09-25 09:34:44 | ギャンブル依存症
まず初めに、私はこのブログで同じことを何度も書いている。
これは私が年のせいで少々呆けてきたから(まあそれもないことはないが)
ではなくて、何かの理由でこのブログを訪れてくださった方でも
かれこれ5年近く書き続けているブログを全部読んでくださるとは考えにくい。

それでギャンブル依存症を知るために特に大切と思われることについては
繰り返し書いていることをお断りしておきたい。



先月田辺等先生が書かれた「ギャンブル依存症」
を読んだ。この本の初版は2002年で、しばしば引用している帚木蓬生
(ははきぎほうせい)先生の著書「ギャンブル依存とたたかう」よりも
2年早い。

著者の田辺等先生は、精神科医で北海道立精神保健福祉センターの所長を
されている。この本によると、先生が所属されるセンターの精神保健相談
の窓口にギャンブルに関する相談が寄せられるようになったのは、1990
年になってから。今から約20年前のことだ。

(業界では1980年代にフィーバーと呼ばれる一度に大量の玉が出る
いわゆる大当たり、すなわち高額の報酬を得ることのできる機種が開発
され、その後何回にもわたり警察庁による規制がかけられてはいるが
現在のデジパチの構造もこのフィーバーを踏襲している)

この本はギャンブル依存症について、多くの実例をあげて、とても分かり
やすく書かれていると同時に、実際にギャンブル依存者と何十年も苦闘
してきた人間が読むと、序文から結びに至るまで、一言一句が身につまさ
れるというか納得できるものだと思う。

この本では、田辺先生が実践されてきた取り組みが紹介されている。
そこで私がポイントと感じたところを幾つかあげる。
まず先生たちは、ギャンブル依存症の、特に家族からの相談を受けて
相談援助グループを開始された。
その理由は、次のように述べられている。
「精神保健相談では、診療機関に紹介できる精神科の病気と、医療に
なじみにくい心の問題があります。例えば不登校問題や家庭内暴力
がそうです。薬物療法で解決が期待できないような心の問題では
本人や家族のカウンセリングを行います。センターでは、本人や
家族のグループを作り、グループでカウンセリングを行うことも
珍しくありません」

このように専門家が指摘されているように、ギャンブル依存症に限らず
依存症というのは「医療になじみにくい心の問題」という性質がある。
つまり依存症は、投薬とか化学療法といった医療行為だけでは回復を
めざすことが難しい病気なのである。

そこで田辺先生は、専門医として勤務した時の、アルコール依存症
の集団精神療法のノウハウと経験をもとに、ギャンブル研究会という
ギャンブル依存症の治療グループを1991年に立ち上げられた。

やがてその研究会から派生的に家族の会が生まれ、やがて家族の会は
自主的な活動を始める。それから数年して、依存者本人たちも自主的
にG.A(ギャンブラーズ・アノニマス)を立ち上げ、今に至っている。

この田辺先生たちが実践された北海道の場合が、ある意味モデルケース
なのだと私は思う。心の問題の相談にあたる県や市の精神保健福祉
センターが、まず依存症について正確な知識を持ち、的確な説明の
できる専門医なりカウンセラーなりを紹介し、そこで依存者本人も
家族も、これが医療行為だけでは回復が難しい心の問題で、グループ
カウンセリングが有効であることをちゃんと納得した上で、自分の
地域のG.Aに参加をする。このプロセスがとても大事なように思う。

しかし一方では「専門医に相談をしたが、どうすることもできない
と言われた」という話をしばしば見かける。人間の心の問題に携わ
る専門家の人たちが、もう少し依存症というものを正しく理解して
患者や家族をサポートできる体制が一日も早く整うことを心から願
ってやまない。

なぜ今回こういう風に長々と書いたかというと、数日前に「激増する
ネット依存」というニュースを見かけたからだ。前にこのブログでも
触れたが、PCや携帯の普及によって、新型の依存症が特に若年層
に発生するだろうということは、TVゲームなどの前例を見ても
ある程度は予見ができた。発表では50万人となっていたが、潜在
的な予備軍を考えると、そう遠くない将来これもかなり深刻な問題
になるのではないかととても危惧している。

依存症の問題は、依存する対象がなんであれ共通する点が多い。ギャン
ブル依存症の治療に、先行したアルコール依存症の治療のノウハウが
色々用いられていることを見てもそれが分かる。もし身近に「これは
依存症ではないか」と思われる家族がおられる場合は、そのことだけに
とらわれず、まず依存症全般について理解することを勧めたい。

いたずらに解決を焦って、叱責や恫喝を繰り返したり、闇雲に依存の
対象を取り上げたりすると、引きこもりや家庭内暴力、家出など
さらに問題をこじらせてしまうこともあるので、当事者にしてみたら
とんでもなく大変ではあるけれども、依存症の場合は、家族がその
問題に巻き込まれずに、冷静に対応することがとても大切なのだと
私自身はこれまでに嫌というほどの失敗を繰り返して、今そこに
思い至っているのだ。



ギャンブル依存者の家族にとって大切なこと(3)

2013-08-28 13:14:02 | ギャンブル依存症
前のブログで多重債務に陥った我が家の借金返済の経緯を書いた。
何年も何年も借りては返す状況で、息つく間もなくまた新たな借金が
発覚する。こういうことを繰り返していると依存者のギャンブルの問題に加えて
度重なる借金とその返済の労苦で家族のほうが精神的にひどくまいってくる。

借金を返さなければならないので、自分のことにお金を使えなくなる。
新しい服も買えず、美容院にもいけず、自分の趣味にお金を
使うこともできなくなる。そういう状況で何年も、何十年も過ごすと
家族が心労からくるうつ病や、自律神経症、胃潰瘍、高血圧などを発症する。
ところが病気になっても病院にかかるお金さえ捻出するのは難しい。
こんな状態が続けばついには自殺をさえ考えるようになる。

だから自分の置かれている状況を冷静に分析して
幾つかの問題を順序立てて整理し解決することがとても大切になってくる。

そこでまず経済的な問題。
任意整理をするために訪れた司法書士さんのところで
ダンナは「銀行やカード会社、消費者金融といった
正規のところからの借金は解決の道があるが
ヤミ金に手を出すと自分たちでは助けることが難しくなる。
だから絶対ヤミ金などから借金しないように」と念を押された。
ギャンブル依存症の治療に関して「借金の肩代わりはよくない」と言われる。
これば例えば家族に資産があって、借金するたびに誰かが返済をしてやり
依存者本人は何の苦労もしないケース。
これは依存症を助長し悪化させるだけで、問題は解決しない。
だから借金を解決する場合には、絶対に依存者本人が
自分で相談をする、手続きをすることが不可欠だ。

次に「ヤミ金からの借金」について。
これは自分の体験を書くことはできないが
ネットで検索すると対処法を回答してくれているサイトがたくさんあって
ヤミ金に対応してくれる弁護士さんを探すこともできる。
その中のひとつ弁護士ドットコムは次のアドレスで見られる。

http://www.bengo4.com/howto/12/

ここにヤミ金への対処法が書かれているが、要約すると

1.ヤミ金はそれ自体が無登録営業で刑事罰の対象となる違法な組織

2.現行の法律では年利20%を超えて貸し付ける貸金業者は違法
  であり、当該消費貸借契約は無効とされているため、債務者は
  利息を1円たりとも支払う必要はない

ということだが、現実にヤミ金に借金があったり、取立てにあったり
している人にとっては、自分で法律を盾にして支払いを拒絶する
ことが難しい場合も多いだろう。
そこでこのサイトは次のように締めくくられている。

「相手がヤミ金であるかどうかを確認するために、また解決策を見つけ
るために、多重債務問題の相談窓口に一日も早く相談するようにしまし
ょう。相談窓口には、最寄りの警察署の生活安全課、弁護士会・司法書
士会、日本司法支援センター(法テラス)などがあります」

ヤミ金の取立てに対して「弁護士さんにお願いしました」と言って
依頼した弁護士さんの名前を告げただけで取立てがなくなったという
ケースも結構あるらしい。

ギャンブル依存者の家族にとって大切なことはとにかく
「自分ひとりでなんとかしようと思わない。抱え込まない」こと。
自分の状況を相談できて、それにたいして納得のできる助言を
してくれる場所を何とか探すこと、それが何よりも大切だと思う。
更に実際に借金を解決するために行動する場合には
依存者本人にきちんと話をして本人が対処すること、これがとても大切になる。


ギャンブル依存者の家族にとって大切なこと(2)

2013-07-31 11:52:37 | ギャンブル依存症
五年前ダンナと一緒に
福岡県の多重債務者生活再生相談窓口を訪れた。

ダンナがそれより三年ほど前に借金の返済に困り
お兄さんに頼んでお兄さんの名義で借り替えてもらった借金
それだけを返済し続けるなら生活が成り立たないことはなかった。

しかしダンナは肩代わりしてもらって返済した消費者金融のカードを
そのまま持っていて(しかも返済したために借り入れ可能額が増えていた)
再び借金をしてはギャンブルを繰り返し、じきに行き詰った。
当時のダンナはといえば、表情は虚ろでげっそりして、話しかけてもうわの空。
おそらく24時間借金のことで頭が一杯のようで
あまけに女性問題まで起すなど、すべてにおいて常軌を逸していた。
ダンナを問い詰めると「自分でも何をやってるか分からない」という答えが返ってきて
私は「ギャンブルで人間がこんなふうに壊れるものなのか」と
深い戦慄を感じずにはいられなかった。

私はその頃には「ダンナは間違いなくギャンブル依存症だ」という
確信を持っていて、何とか最悪の事態を回避することを考えていた。
最悪の事態というのは、借金の返済に追われて
あるいはギャンブルがしたいという衝動に負けて犯罪を犯すことだ。
あれほど正常な判断力も、思考力も、人間性も失われていれば
もう何が起きてもおかしくない、そういう切羽詰った状況だった。

それでまずはダンナの借金を、ちゃんとした低利の機関で借り替えようと考えて
県の窓口に相談したのだった。
そこで担当の人にこれまでの経緯を隠さずに話し
ダンナがおそらくギャンブル依存症だということも言った。
その説明の後に現在の我が家の家計の収支を書き出すように言われ
それを見た担当の人が「多重債務を抱える人は、何とか借金を借り替えて
少しでも返済の額を少なくしようという風にしか考えられなくなっているのですが
この家計で返済に当てられるお金がどれくらいあるか、冷静に考えて見てください」
と言われた。

私はその言葉でまさに目が覚めた思いだった。
そこまではまさに自転車操業で借金を返し続けてきたが
それをせずに、一方ではお兄さんへの返済も続けながら
二人の収入から数万円を返済するのはほとんど不可能なことだ。
そして担当の人と一緒に弁護士さんにも会い
個人再生で借金の整理をすることになったが
費用の面で弁護士さんに依頼するのは無理があるということで
最終的に司法書士さんにお願いすることになった。

家族が依存者の作った借金を解決するのは良くないと言われている。
それをやる人間は共依存だとも。
しかし正常な思考力や判断力を失った依存者が
まっとうな道筋で自分の抱える問題を解決するのはかなり難しい。
夫婦であれば離婚という選択肢もあって他人になることもできるが
親子や兄弟となればそれほど簡単にはいかない。
事態を破綻させずに問題を解決しようと思えば
家族がそのための道筋をつける役回りを追うことになる。
そこで何をどこまで助力するかは本当に難しいことなのだ。

そこの担当の方からはギャンブル依存症やGAに関する資料もいただいた。
ダンナの多重債務や任意整理などの問題を通じて
出合った人たちの中でギャンブル依存症のことやその対処の方法を
一番正確に適切に理解していた人だったように思う。

電話で確認したところこの組織は現在も活動をされている。
福岡県が出資し、運営をグリーンコープ生協に委託していて
名称は福岡県多重債務者生活支援相談窓口
TEL 092-482-7788
(月~金 AM.9:30~PM6:00 曜日時間については要確認)

ここは福岡県に在住する人を対象に活動しているが
他の都道府県でもおそらく同様の機関を設置している所もあるのではないだろうか。

借金のもともとの原因がギャンブルである場合には
その借金をした人間はほぼ間違いなくギャンブル依存症なので
それについての何らかのアドバイスも受けることができるのではないかと思う。



ギャンブル依存者の家族にとって大切なこと(1)

2013-06-09 10:28:00 | ギャンブル依存症
ギャンブル依存症の家族について相談を寄せられている
掲示板を見ていて、重要なことに気がついた。
前のブログで書いた「依存症の回復に向かう」手段と言うのは
依存者本人が自分の病気について多少なりとも自覚し
「何とか人生をもう少しまともなものにしたい」と願っている場合には有効だが
とてもそんな段階には達していない場合のほうがおそらく
圧倒的に多いということだ。

自分の家族、配偶者とか親とか子どもとかが依存症という場合でも
患者の状態はひとりひとり違う。
「ギャンブルで借金もあるのに嘘をついて家のお金を持ち出す」
「何度も借金が発覚して、その都度周囲の人間が肩代わりしたり
借り換えをして返済し続けたのにまた借金を作る」
「お金を出さないと暴力を振るったり家に帰ってこなかったりする」
現在こういう状態にあるギャンブル依存症の人間は
たとえ周囲が説得して、医療機関を受診させたりGAの組織につながって
回復をめざさせようとしてもすぐに成果を得ることはかなり難しい。

なぜかというとギャンブル依存症に限らず
ほとんどの依存症は「否認の病」と言われていて
例えばギャンブル依存症かどうかをチェックできる質問についても
否認したり、嘘をついたりする可能性のほうが大きいからだ。

「やめようと思えばいつでもやめられる」
「これが最後で、明日からはもうやらない」
「勝てば借金なんかすぐに返せる」

特にギャンブル依存症の大きな特徴は「うそ」と「借金」と
言われるように、ギャンブルをやり続けるために、自分にも
他人にも上記のような根拠の無いうそをつき続ける。
これが家族に大きな精神的、ひいては肉体的なダメージまでを与える。
だから依存者本人が自分の病気を簡単には認めそうにないような場合には
まず家族がギャンブル依存症について正確な知識を得られる
専門機関なり、ギャンブル依存者の家族の自助グループである
ギャマノンのような何らかの組織に相談してほしいと思う。
繰り返される嘘や裏切りや借金や喧嘩で
傷ついてぼろぼろになった自分自身を救済することのほうが先決だ。

ギャンブル依存症が完全には治癒しない病気だということを
はっきり知ることは絶望的ではあるが
自分自身の気持ちに一つの区切りをつけることにもなる。
つまり周囲の人間が何をしても治すことはできないし
ギャンブル依存者が言葉でどれほどきれい事を言っても
そういう病気なのだからそれを信じることはできないということだ。

もし依存者自身が心の底から回復をめざしたいと願ったなら
ひとつだけ道がある。
「今日一日はギャンブルをやらない」という毎日を死ぬまで続けていくこと。
言葉にするとたったこれだけだが
脳の機能障害によってギャンブルをやりたいという欲望に
コントロールがきかなくなっているギャンブル依存症の人間にとっては
この方法で回復し続けることには相当な困難が伴う。

それでも依存者が言葉ではなく実際の行動で回復をめざすというなら
家族としてそれを支えることは100%不可能ではないが
しかしそれもまた簡単なことではない。
私自身五年前に「ギャンブル依存症」という病気の存在を知り
自分のダンナがその病気だと確信し
借金の問題を任意整理によって解決するのと同時進行で
本やネットでこの病気について調べ、こうしてブログを書きと
未だに試行錯誤を続けている。
そういう意味では家族もまた毎日が「今日一日」なのだと思う。




ギャンブル依存症の回復に向かうために(2)

2013-05-21 10:59:51 | ギャンブル依存症
気づいてみればこのブログを書き始めてから
丸五年が過ぎた。
長いことその折々の自分の思いを何の脈絡もなく書き綴って
きたが、お銀さんという方が運営されている「ギャンブル依存症
家族のための情報サイト」というサイトに出会って、私もこの
ブログを少しは具体的に誰かの役に立つものにしていこうと思
うようになった。

このブログでもリンクをしているがそのサイトは、ギャンブル依存症
とは何かという説明や、債務がある場合はどうすればいいか
家族の相談窓口はどんなものがあるかなど、ギャンブル依存症全般の
知識や情報がたいへん丁寧に説明されていて、相談のできる掲示板なども
設置されているのでぜひ一度見ていただきたい。

とてもその方の真似はできないが、私のブログでもなるべく具体的な
情報を提示できるように心がけていきたいと思う。
そこでまず「病気」としての依存症に対応するにはどうすればよいのか。
家族がギャンブル依存症や回復するにはどうすればいいかについて説明し、
本人がそれを心から納得してGAなどに繋がり、ギャンブルをやめることが
できるというのが、理想的な展開なのだろうが
まずすんなりとそういう風にはならない。

そこで一つの方法として、専門の医療機関を受診し、専門家の
先生から、ギャンブル依存症についてきちんと説明してもらう
という方法が考えられる。
そこで私が今住んでいる地域で受診できる専門病院はどこなのか
を知るために市の精神保険福祉センターというところに聞いてみた。

センターで紹介されたのは次の4箇所だった。

 福岡市東区 雁ノ巣病院 092-606-2861
 
 中間市 通谷メンタルクリニック 093-243-5569

 熊本 菊陽病院 096-232-3171

それと北九州の八幡厚生病院がギャンブル依存症に対応してくれるようだ。
雁ノ巣病院はアルコール依存症の治療で歴史と
実績のある病院で、そのノウハウをギャンブル依存症にも応用して
治療に取り組んでいる病院。
中間市の通谷メンタルクリニックというのは「ギャンブル依存と
たたかう」の著書もある、医師で作家の帚木蓬生さんが院長を
されている。

ギャンブル依存症についての正確な専門的な知識をもって対応してくれる
医療機関は、中北部九州では上の4箇所ということになる。
患者の数に比べると、その数は驚くほど少ない。
これは一般の人だけでなく専門家の間でさえ、ギャンブル依存症と
いうものについての認知度が極端に低いことを表わしている。
そこには多分、投薬などの治療方法がない、つまりはお金にならない
ということも大きく影響しているように思われる。

もうずいぶん前になるが、肉親のギャンブルに悩んで
精神科を訪れた家族が「治らない」と言われて
悲観して家族を殺したという痛ましい事件があった。
だから精神科やカウンセラーならどこでもよいというわけには
いかないのだ。
「完治はしないけれども、ギャンブルを止め続けることで
回復することはできる」ということを、正確に
患者や家族に説明し、納得させることのできる
専門機関でなければだめだという理由がここにある。

アルコール依存症とギャンブル依存症

2013-04-21 12:17:19 | ギャンブル依存症
今年からはなるべくギャンブル依存症の話に特化しようと
思っていたのだが、先日知人のダンナさんが飲酒運転で人身事故を
起すという事件が起こった。
その人は自営業で、かなり前からお酒を飲んで運転することがある
という話は聞いていた。それが最近ではほぼ毎日になっていたらしい。

飲酒運転によってたくさんの悲惨な事故が起こり、法律が改正されて
現在は飲酒運転で事故を起すと免許の取り消し、7年以下の懲役
または100万円以下の罰金に加えて、免許取り消し後2年間は
免許が取得できないことになっていて、更にサラリーマンの場合では
飲酒運転で事故を起した場合には、解雇されることも多い。
だからこのことが正確に理解できている人は絶対に飲酒運転をしなくなった。

クビになる心配がないといった自営業ならではの特殊性があるにしても
これだけ飲酒運転の問題がマスコミでも報道されている状況で
そういうことが理解できないというのは明らかに依存症という病気なのだ。
改めてアルコール依存症について解説をしてあるクリニックのサイトを見ると
やはり「コントロール障害」であるという本質のところは一致していて
症状や特性、回復にいたる道筋もギャンブル依存症とほぼ重なる。
「アルコール依存症とはどんな病気か」という項目には
次のように書かれている。(森岡クリニック様のサイトより抜粋)

「少しでもアルコールを口にすると、ほどよい量で切り上げることが
できず、必ず飲み過ぎて問題を起こしてしまう。アルコールをほどよ
い所でとめる能力が無くなったためである(コントロール障害)。
 これが正常な大量飲酒者とアルコール依存症者を区別する大切な点
である。 いったんコントロール障害を起こしてしまうと、一生もとに
戻らない。だから、アルコールで問題を起こしたくないと思えば、完全
にアルコールを断つ以外に方法はない。コントロール障害を起こしてい
るかどうかは、検査では分からない。その人のアルコールの飲み方で判
断するしかない」

お節介だとは思ったが、知人に対して少し依存症について話し
一度「アルコール依存症」に対応してくれる医療機関に
ご主人と一緒に相談をしてみたらという話をしてみたが
「もう昼間は飲まないと言って、実際に飲んでいない」という答で
私が「依存症は病気で」といったあたりから
知人の表情が??な感じになっているのが明らかだった。

アルコール依存症にしても、ギャンブル依存症にしても
このように事態がかなり深刻な状況になっているにも関わらず
本人はともかくとして、周囲の人間がそれを病気だと認識するハードルが
とてつもなく高いことを改めて思い知らされた。

抜粋した記事の「アルコール」の部分を「ギャンブル」に置き換えれば
そのままギャンブル依存症に適用できる。
また同じサイトの「アルコール依存症からの回復」には
次のように書かれている。

「アルコール依存症から回復するためには、なぜ自分は完全に
断酒しなければならないかということを理解しなければならない。 
断酒は回復の基礎にすぎない。酒をやめただけで、あらゆる問題が
よくなっていくわけではない。長い病気のために、自分の状態をあ
りのままにみることができず、自己中心的、依存的になり、安定を
失った心の回復、他人との信頼関係の回復などは特に大切なことである。
 身体的な健康をとり戻し、精神的にも安定し、日常生活の中でアル
コールを飲む必要を感じなくなり、他人と協調しながら仕事ができて
いるというのが、もっともよい回復であろう。しかし、この病気では
身体や精神の障害が残ることも多く、各自が自分に可能な回復目標を
持つべきである」

ギャンブル依存症からの回復に取り組む依存者本人や家族も、目標と
するところはまったく同じだ。ただここに書かれている状態はいわば
究極の目標であって、現実にはこの中の一部分を実現するのだって
かなり難しい。だから最後に書かれているように「各自が自分に可能な
回復目標を持つべき」なのだというのが妥当なのだろうし、幾らかでも
実現可能なのだろうと思う。

ギャンブル依存症の回復に向かうために(1)

2013-04-07 12:04:51 | ギャンブル依存症
1月にGAに参加した時に
GAがギャンブル依存症の人たちの回復のために発行している
「GAギャンブラーズアノニマス ミーティング・ハンドブック」
と「GA【ギャンブラーズ・アノニマス】へようこそ 最初の
90日間」という2冊の小冊子を購入した。

そのミーティング・ハンドブックの表紙にはこう書かれている。
「神さま、私にお与えください
自分に変えられないものを
受け入れる落ち着きを!
変えられるものは変えていく勇気を!
そして二つのものを見わける賢さを!」

私はそもそもこの文言がすんなり理解できるようなら
ギャンブル依存症なんかにはならないだろうと思ってしまったが
そんな風にあっさり断定するのが私の悪い癖で
こういう言葉を理解できるようになることが
ダンナの回復への道筋なのだろうけど
かといって私がしゃかりきになって
「こう考えろ、こう感じろ」といったって意味がない。
ああ、もう面倒くさいなぁ(とまたすぐ投げる)

しかしまあ気を取り直して
「神さま~」はアメリカの神学者ラインホルド・ニーバー作とされている。
GAよりはずっと古い歴史を持つAA(アルコホーリクス・アノニマス
アルコール依存症の人たちの自助組織)の初期のメンバーたちが
この言葉をたいへん気にいり、以降AAによって印刷配布され
広く世の中に知られるようになった。

GAは組織の設立や運営や手法がおおむねAAのそれを参考にしているので
この「ニーバーの祈り」が冒頭に書かれているのだと思われる。
この言葉はGAのサイトのトップページにも掲げられているが
できればこういう簡単な解説ものせておいてほしいものだ。
さらにGAでも初めて参加する人がいるような場合は
こうした経緯やGAで用いられている用語や表現についての
簡単な補足や説明があったほうが親切な気がする。

なぜならこの「ニーバーの祈り」や、ハンドブックにある
「スピリチュアル(霊的)な原理」というような言い回しは
幼時からキリスト教の教えに接し、それを信じて受け入れている人たちと
私たち日本人とでは聞いた時の感じ方がかなり違うような気がするからだ。

繰り返しになるがギャンブルに限らず多くの依存症は
依存する対象に対する自分の欲望をコントロールすることができなくなるし
一生コントロールを取り戻すこともできなくなるという病気だが
まずは自分でそのことを認めるということが
回復に向かうための第一歩なのだ。

そしてそれはギャンブル依存者と訣別せずに共存を選んだ
あるいは選ばざるをえない家族にも
求められることなのだと思う。
病気であるからには治るはずだ、なんとか治そうとやっきになることに意味はない。
しかし「どうせ治らないんだから何をしたってムダだ」と投げてしまえば
病気は進行し悪化し、自分の人生そのものを崩壊させるだけでなく
やがて犯罪などを引き起こし、たくさんの無関係な人たちまでを巻き込むことになる。

だから放置するのでも、開き直るのでも、自暴自棄になるのでもなく
「回復」を目指すことが何よりも大切だし、他の選択肢はない。
「ニーバーの祈り」にある
「自分に変えられないものを受け入れる落ち着きを!」というのは
つまりはそういうことなのだろうと私は理解した。

「回復のためのプログラム」の1は
「私たちはギャンブルに対して無力であり、思い通りに生きて
いけなくなったことを認めた」とあるのもほぼ同じことを意味する。
まずはギャンブル依存者自身が、自分はギャンブル依存症という
不治の病気であることを認めること
それがすべてのスタートラインなのだ。




依存症ー正常と病気との線引きとは

2013-03-17 09:40:02 | ギャンブル依存症
昨年の8月に、佐々木奎一さんのブログから
「09年の厚生労働省の研究調査で日本の成人男性の9.6%、
同じく女性の1.4%がギャンブル依存症で単純計算で男性は483万人
女性は76万人、計559万人。同書によると、そのうち約8割
(約447万人)がパチンコ依存症」という記事を引用させてもらった。
559万人という人数は、日本の成人人口8千万人の約7%にあたる。

人口の比率による完全な単純計算だが、私が住んでいる市の総人口は
約150万人、その7%はおよそ10万人にものぼる。
厚生労働省が3年前に把握した数字がこれで
把握できていない潜在的な患者を考えるとすでに10%
成人の人口の10人に1人といっても決して誇張ではないように思う。
ギャンブル依存症の「完治しない、放置すると進行する
脳の機能障害」という病態を考えると
帚木蓬生先生が「このままでは社会の土台が腐っていく」と
強く警鐘を鳴らされるのもうなづける深刻で甚大な問題なのだ。

ところが事態の深刻さに比べて
「ギャンブル依存症」という病気に対する認識はおそろしく低い。
本人が自分はギャンブル依存症だと認めることが難しいのに加えて
家族もそのことを認めることができない。
多くの場合「お金にルーズ、意思が弱い、人間的な欠陥」と
いうように本人の性格の問題として理解してしまっている。
この認知度の低さは、一つは病気の深刻さに比べて
情報の量があまりにも少ないことによるものだが
もう一つはこれまで書いてきたように
「薬物依存」や「アルコール依存」などに比べると
本人や周囲の人間が「病気」と認識できるような
具体的な症状が出ないことが
この病気に対する対応を遅らせてしまっているのだと思う。

ギャンブル依存症に限らず、人間の脳や心に大きな変化や異常を起こし
しかも正常と異常の線引きがとても難しい「依存」の問題は
近年爆発的に増加し、多様化している。
すでにWHO(世界保健機構)で病気と認定されている
酒、ニコチン、ギャンブルの他にも
買い物やセックス、ネット、ゲーム、携帯(近頃はスマホ依存という新種も)
ギャンブルと似たもので宝くじなども依存症になりうる。
しかしこうした依存症全般についての医学的な解明は進んでいないし
治療や対処の仕方も確立されていない。
一体どうすればいいのかというような現状だが
私はどの依存症の場合も「自分でコントロールすることができない」という
その一点では同じだと考えている。

コントロールができないから、日常生活で色々な問題が生じる。
どういう問題かといえば、大きく分けて
やらなければいけないことができなくなるという点と
やってはいけないということをやってしまうというこの二点だ。
やらなければいけないこととは仕事とか勉強とか家事であったり
支払わなければいけないお金であったり、家族との約束であったりする。
逆にやってはいけないこととは、浪費であったり借金であったり
色々な意味での嘘をつくことであったり
更に悪化すれば犯罪行為であったりする。
依存の対象がなんであれ、何かに依存することでこれらの問題が生じてくれば
その人は依存症という病気なのだと考えていいのではないかと思う。

なぜ今さらこんなことを書くかというと、依存症の種類に限らず
家族が依存症の人間と向きあう時に、まずはそれが病気なのだという
明確な認識を持つことがとても重要だと思えるからなのだ。
説得したり、怒ったり、泣き喚いたりすることで
家族の癌が治ると考える人はいないはずだ。
依存症の家族に向き合うというのも、そういうものなのだと私は思う。
「完治はしない。けれど進行を止める、あるいは遅らせることはできる。
ただ本当の意味でそれができるのは患者本人だけだ」
今のところこれだけが依存症という病気について分かっている事実だ。

このように書いている私自身も生身の人間だから
「これで家族に絶望するなというほうがおかしい」と
そういう思考になると激しい欝の状態に陥ることもままある。
それでも全国には現在進行形で
ギャンブル依存者が引き起こした借金とか犯罪とかもろもろの問題に
死ぬほど苦しんでいる人たちがたくさんおられることを思えば
そういう人たちが、一日でも早くこのブログにリンクしているような
いろいろな情報源に巡り合うことでたとえわずかでもいいから
明日を生きる望みを見出してもらえればとただそれを願うのみなのだ。






GAとギャマノン

2013-02-10 08:20:59 | ギャンブル依存症
先月初めて自分の住んでいる地域のGAに参加した。
債務整理に取り組んでいた頃、私の住んでいる地域では、GAの開催が
夜だったことに加えて、会場までの交通費すら惜しまなければならない
ような状況だったので、参加することができなかった。

GAはギャンブル依存症の患者のための自助組織である。私は当事者
ではなく家族なので、ギャマノンに参加することを勧められた。
GAが何か、ギャマノンが何かということについては改めて書くが
ギャマノンには、ギャンブル依存者の家族のための「20の質問」
といのがあるので、それを転載する。

<ギャマノンの20の質問>

1.あなたは借金の取立てにいつも悩まされていますか?
2.問題の人は、しばしば説明もなく長時間、家を空けることがありますか?
3.その人はギャンブルのために仕事の時間まで費やしますか?
4.その人について、お金に関して信用できないと感じていますか?
5.その人は、心からギャンブルをやめると約束し、もう1回だけ
 チャンスを与えてくれと懇願したのにもかかわらず、何度もギャ
 ンブルをしていますか?
6.その人は、自分で予定したより長くギャンブルをしたり、最後
 の1円がなくなるまでギャンブルをしますか?
7.その人は、損失をカバーしようと、またはもっと勝とうと、す
 ぐにギャンブルに戻ってしまいますか?
8.その人は、金銭上の問題を解決するためにギャンブルをしてい
 ますか?またはギャンブルが家族に物質的な快適さ豊かさを与え
 てくれるだろうという、非現実的な期待を持っていますか?
9.その人は、ギャンブルをするためや、ギャンブルでできた借金
 を払うためにお金を借りていますか?
10.その人の評判は、ギャンブルのために損なわれていますか?
 ギャンブルのお金を作るために、違法行為までしていますか?
11.あなたや家族の服や食べ物が買えなくなると思って、あなた
 は生活のために必要なお金を隠すようになっていますか?
12.あなたはチャンスがあれば、その人の服や財布の中を探りま
 すか?さもなければその人の行動をチェックしていますか?
13.その人は自分のお金を隠すことがありますか?
14.あなたはその人のギャンブルが進行するにつれて、その人の
 人格が変わるのに気づいていますか?
15.その問題の人は、自分のギャンブルを否定したり、うそで包
 み隠したりしていますか?
16.その人は、ギャンブルに対する責任をあなたに押し付けるために
 あなたに罪の意識を持たせようとしますか?
17.あなたはその人の気持ちを先読みし、その人の人生をコントロー
 ルしようとしていますか?
18.その人はギャンブルのためにいつも憂鬱になったり、後悔したり
 さらに破滅を恐れるときさえありませんか?
19.ギャンブルによって、家族がバラバラになってしまうと恐れた
 ことがありますか?
20.あなたは自分の人生も悪夢そのものだと感じていますか?

この20の質問のうちで6問が「はい」であれば家族はギャンブル依存症
と考えられるということだ。同様の質問はGAにもあり、そちらは
ギャンブル依存者本人のためのものだ。

GAもギャマノンも、当事者同士の自助グループで、匿名が原則なので
本名も住所も職業も名乗る必要はない。ネットでのハンドルネームの
ように自分で仮の名前をつけて、その名前で呼び合う。
GAやギャマノンで公表されている文章の中には「神」「霊的」といった
文言が見られるが、GAもギャマノンも基本的にどんな宗教・政党・組織
団体にも所属するものではない。なぜそういう言葉が使われるのかについ
てはまた改めて書いていきたいと思う。

現在は全国ほぼ全ての都道府県に一つはこの組織があり、大体週に1回
の割合でミーティングが行われている。自助グループとは何かというと、
現在の自分の思いを率直に語り、参加している全員で、その思いを分かち
合うというもので、医師やカウンセラーが同席するというわけではないから
具体的な治療や助言がなされるわけではない。GAやギャマノンに参加する
場合には、その点をしっかり理解しておいたほうがいいのではないかと思う。

GAやギャマノンでのミーティングでは、基本的に「言いっぱなし」の
「聞きっぱなし」で、そこで話したことを批判されたり否定されたりは
しない。自分の親や兄弟、配偶者や子ども、あるいは友人がギャンブル
で借金をしている、あるいは犯罪を犯したというようなことは、そう
簡単に誰にでも相談できる話ではないが、それはまた自分ひとりで抱え
込む、あるいは対処できるような簡単な話でもない。

ギャンブル依存症にはいくつかの側面がある。
たとえば借金などの経済的な問題。
これは弁護士さんや司法書士さんなど、法律の専門家に相談する。
もうひとつは、脳の病気としての側面。
治療や回復のためには、専門の医療機関や
相談機関で相談する必要があり
回復を続けていくためには、GAなどの自助グループへの参加が
有効とされている。

この道筋を理解していないと、いきなり「ギャンブル依存症だからGA
へいけば何とかなるんじゃないか」ということでGAに参加したとし
ても、何だかよくわからない、良くなっているような気がしないという
ことになるのではないかと思うのだ。

*「ギャマノン」のホームページをリンクに追加しました。


ギャンブル依存症とは何か

2013-01-23 13:10:46 | ギャンブル依存症
前のブログで書いたようにブログを
リニューアルしました。これまでは折々に思った
ことを、何の脈絡もなく書き綴っていましたが、これからはギャ
ンブル依存症に悩むたくさんの家族の方たちのために少しでも役
にたつようにより現実的な情報を提供できるようにしていきたいと
思っています。

但し私がこのブログに書いていることは、あくまでも本やネットで
得た情報が中心になっているので、100%正しいということでは
ありません。もしも誤りがあればご指摘いただければありがたいですし
疑問に感じられることがあれば、ご自分で調べていただいて、納得
のできる答を探していただければと思います。

<ギャンブル依存症とは何か>
今まで書いたことと重複する部分もありますが、まず医学的に
ギャンブル依存症という病気は何かというと、現在のところは
ギャンブルが原因で、脳内の神経伝達物質(例:ドーパミンなど)
の分泌に異常をきたす病気だと考えられていますが、そのメカ
ニズムはまだ完全に解明されてはいません。

また、例えば高血圧のように血圧がいくつ以上であれば病気だ
というような、何かで数値化できる目安も分かっていません。
また一度脳の中にそうした変化が起こると、もとに戻ることは
ないので完治(完全に治癒する)こともありません。

さらにギャンブル依存症の人を何もせずに放置しておくと、
病態は進行してやがて社会生活上の様々な深刻な問題
(借金、生活苦、犯罪など)を引き起こすようになって
いきます。更にギャンブル依存症は、継続的にギャンブ
ルをやったから病気になるというものではなく、たった
一回の大勝ちした経験が糸口になって発病することもあります。

ここで要約したことは主に帚木蓬生先生の著書「ギャンブル依存
とたたかう」を参考にしています。ギャンブル依存症という病気を
理解する上で大切なことがいくつかあります。

まず第一にそれが病気であるという客観的な目安
になるものがほとんどないということです。だから本人も家族も
病気なのかどうなのかがよく分かりません。それを判断するために
医療機関やGAに幾つかの質問事項があります。家族の人は
それを基準にして、病気かどうかを判断することができますが
本人が自分をギャンブル依存症だと認めるのは、とても大変です。

なぜなら依存症は「否認」をする病気であるという特徴があります。
否認というのは多くの場合「嘘」です。ですから例えば診断の基準
になる質問に対してもなかなか本当のことを言いません。病気だと
診断されて、ギャンブルができなくなったら大変だという思いも
あるでしょうし、自分は普通に仕事もして、人間関係も普通にやれて
いるのだから、病気なんかであるわけがないと思う人もいるでしょう。

けれどギャンブル依存症かもしれないという話になったのには、例えば
仕事と言っていたのに、パチンコに行っていたという初歩的なものから
始まって、ひと月の小遣いを数日で使い果たして度々前借りをする
内緒でカードでお金を借りていた、親や同僚、友人などからお金を借りた。
税金や光熱費など払わなければいけないお金をパチンコで使ってしまった
などという、身近な人間を心配させたり、悲しませたり、怒らせたりする
行為がいろいろあったからだと思います。ひと月の小遣いが3万円で
毎月ちゃんとその範囲でパチンコをやっている。こういう人は、その
時点では依存症ではないと思います。言い換えれば決められた範囲で
自分の行動をコントロールできる人だけが、依存症ではないのです。

次に大切なことはギャンブル依存症は治らないということを納得し
受け入れるということです。ギャンブル依存者にしろ家族にしろ
病気であるからにはいずれは治るはずだという期待、希望を持ちます。

ギャンブル依存症は、上に書いたように脳の中の伝達物質に変化が
起こって、ギャンブルがやりたいという衝動を、コントロールする
ことができなくなったという、コントロール障害です。脳の変化は
元には戻らないので、コントロールがきかなくなったものを、コント
ロールできる状態にもどすことはできないということです。
例えて言えば、ブレーキがなくなって、しかも二度とブレーキを
取り付けることができない車のようなものだと思います。
そして、この治らないという現実を認めることは、病気を認めるよりも
もっと難しいことです。現在数は少ないですが、ギャンブル依存症の
治療ができて、回復をめざすことのできる機関がいくつかあります。

専門の治療を受けることができるのは、その地域でギャンブル依存症に
取り組んでいる医療機関や、全国で開催されているGA(ギャンブラ
ーズアノニマス)、依存症の回復機関ジャパンマックや全国の
マック、ギャンブル依存症治療のNPO法人横浜のワンデーポートなどです。

けれど治療に取り組む、回復をめざすためには、まず本人が自分がギャンブル
依存症であることを認めること、そしてギャンブル依存症が完治することは
ないということを受け入れること、その上で病気の進行を止め、回復に向か
うことができるのは本人だけであること、この三つのことを正しく理解する
ことが大前提になるように思います。


ギャンブル依存者559万人

2012-08-26 11:25:53 | ギャンブル依存症
前のブログに「09年の厚生労働省の研究調査で
日本の成人男性の9.6%、同じく女性の1.4%がギャンブル依存症で単純計
算で男性は483万人、女性は76万人、計559万人。同書によると、そのう
ち約8割(約447万人)がパチンコ依存症」というジャーナリスト佐々木
奎一さんのブログの記事を引用させてもらった。

「へぇー、一応調査をしてるんだ」とも思ったが、この数字を把握しても
政治がなんのリアクションも起さないことにも唖然とした。
このブログを書き始めた4年前、ギャンブル依存症のことを知るために
参考にした精神科医で作家の帚木蓬生先生の著書「ギャンブル依存と
たたかう」の初版が発行されたのが2004年。その中では患者数は
推定200万人とされている。それから5年経って、倍増どころか、
すでに3倍に達しているということだ。
私はこのブログを書き始めてから、400万人という数字を見かけ
確実な根拠があったわけではないが、以後推定400万人と書いて
きたが、現実にはそれもとっくに越えていることになる。

私と一緒に働いているパートの女性は、家族揃ってパチンコが趣味。
けれど前に簡単に依存症の話もしたし、私の家庭の事情も知っている
ので、私の前ではあまりおおっぴらにパチンコの話はしない。けれど
先日何かの拍子に「もしパチンコ行けんやったら、多分もう仕事とか
もせんでぐだぐだしていると思う」と人に話しているのが耳に入った。

「パチンコに行けなかったら仕事もしない」
この思考回路が依存症でなくて、何を依存症と言うのだろうと私なんかは
思うが、こんな感じの依存症の人はいまやごまんといるということなのだろう。
ギャンブルによる借金もなく、ひと月働いた給料の範囲でギャンブルをして
いる分には、かろうじて依存症の範疇には入らない。
彼女の家はダンナさんが建設関係なので月収は共稼ぎで40万近くあり
家賃もなくてこどもももう独立している。たとえ夫婦で月に10万
パチンコに使ったとしても生活には困らない。

しかし年収が少なくて子育てをしているような家庭の人間が
ギャンブルしたり、ギャンブルで借金を作ったりしたら
生活自体が破綻する。以前親がギャンブルをする家庭は子どもの
教育水準が低いという話があった。家族の誰かがギャンブル依存症
で、借金があったりすると、その返済に追われてこどもの
教育費に回すお金がない。あるいは貸金業法の改正で、去年から
年収の30%以上の借り入れはできないから、たとえば進学費用を
借りたいと思っても審査が通らないといった問題も出てくるだろう。

お母さんがパチンコ依存症という方のブログを読んでいて、母親が
闇金のようなところから借金をするために、娘の携帯番号や勤め先
を書類に書くようなことをして、とうとう娘さんたちは、お母さんに
居場所がわからないところに引っ越したというような話を読めば
自然に涙が出てくる。ギャンブル依存症の人間の周囲には、必ず
こうして巻き込まれた家族がいて、だから被害者の数はすでに
1千万人を越えているのではないかと思う。これで何一つ変わらず
更に日々患者を増やしていくような現状は、あまりにも異常だ。

しかしここまで業界と癒着して利権を貪ってきた政治家たちは下手に
業界を規制しようとすれば、しっぺ返しを食らう可能性があるから
まったく身動きができない。業界の広告費をあてにしている
マスコミにとって、ギャンブル依存症の話題はタブーだ。
だから規制もされず、ギャンブル依存症に関する情報も
ほとんど流れず、患者ばかりがどんどん増え続けることになる。
この状況の深刻さを一人でもいいから知ってもらいたいと思う。

ギャンブル依存症は、いつそうなったのか本人にはわからない。
そしてかかってしまったら取り返しがつかない。
この病気にならないためにできることはただひとつ。
「今日はギャンブルをやらない」という毎日を積み重ねていくこと。
世の中はなべて「健康志向」「健康ブーム」だ。
病気をしない、健康に過ごすためのノウハウや食品や薬品で
あふれかえっている。
肉体や内臓はいろんな手段で補強も修繕もできるが
実は人間の脳はそういう具合にはいかない極めて脆弱な器官であることを
私は依存症の問題を通じて学んだ。
そんな人間の脳を守るたった一つの方法といえば
それがどれほど魅力的に思えても
得体の知れない危険なものには近づかないということなのだろうと思う。