「日本文学の革命」の日々

「日本文学の革命」というホームページを出してます。「日本文学の革命」で検索すれば出てきますので、見てください

電子同人雑誌の可能性 138 「同人雑誌の本質」

2018-04-25 05:27:16 | 日本文学の革命
同人雑誌内のメンバーには厳格な肩書や位階や序列が存在しない。また強大な規律も存在し得ない。そしてそれと並んでもう一つ、それらのものに優るとも劣らないほど強大な力―これがあったらメンバー全員を意のままに支配できるほどの―が同人雑誌内には存在しないのである。それは経済的束縛である。より具体的に言えば同人雑誌のメンバーはその活動を通して定期収入を得ていないのである。明確に規定された報酬を得ていないし、それを目当てに働いているわけでもないのである。ぶっちゃけ言って給料制が存在しないのだ。

たとえばある同人が自分はこれだけの記事を書いたんだからこれだけの報酬を寄こせ、これだけの時間雑誌のために働いたんだから時給換算してこれだけの給料を寄こせ、と当然の如く要求するのは、同人雑誌では有り得ないのである。それはボランティアに来た者が働いたあとで金品を要求するのと同じくらいあり得ないのである。同人雑誌に集まって来た者は金目当て給料欲しさでやって来た訳ではないのである。もちろん同人雑誌は発売されるメディアであり、売れたらいいなあ、いっぱいお金が入ってきたらいいなあと思うのは人情である。しかし第一次的にそれを目当てに行動しているのではないのである。

もし同人雑誌のメンバーに給料制的に定期収入が支払われたら、たちまちこの団体は会社組織みたいになってしまうのである。人々に毎月毎月給料を支払い続けるということはたいへんなことである。前に書いたが出版社のような会社組織が雑誌を制作・運営するためには億単位の金が必要となるのである。アバウトな同人雑誌ではそんなにかからないだろうが、やはり重大な圧力になるだろう。勢い雑誌の運営は経済的利益を優先するものになるだろう。売れる雑誌が第一義的に目指されることになり、経済的利益の確保や拡大が優先されるようになる。売れそうもない企画やアイデアはスルーされたりつぶされたりするようになる。団体のメンバーには経済的能率性が求められ、経済に効果のない交流や交際や無駄話などは極力抑えられるようになる。経済的利益という一つの合理的目標が追及されることになり、メンバーはそれを実現するために一つの組織体として整然と動くことが要求されるのである。要するに一つの会社組織と変わらない存在になってしまうのである。