●宇宙探査●月と火星を第2の地球に!―SPE―         科学技術研究者   勝 未来

                 ~各国は月と火星の探査計画を着々と実行に移している~   

●宇宙探査●産総研、月の表と裏の違いをもたらした超巨大衝突の痕跡発見

2013-02-20 20:11:31 | 月の誕生
  月は、常に地球に決まった面のみを見せている。さらに、我々が見ている表の地形と裏の地形が異なっている。これは過去に月に超巨大な隕石が衝突したからではないか、と言われていたが、産業技術総合研究所(産総研)は、月探査衛星「かぐや」のデータを解析し、月への超巨大衝突の痕跡を発見したと次の通り発表した。

 産総研は、月探査衛星「かぐや」が月表面を網羅する約7000万地点で取得した200億点以上の可視赤外線反射率スペクトルのデータをデータマイニング手法を用いて解析し、地球から見た月の表側と裏側の地形の違いの原因と考えられている月への超巨大衝突の痕跡を発見した。

 月には光の反射率が低くクレーターの少ない「海」と呼ばれる領域と、光の反射率が高くクレーターの多い「高地」と呼ばれる領域がある。「海」は地球に面した表側に多く、裏側にはほとんどない。また裏側は表側より標高が高く地殻が厚い。

 この月の表裏の「二分性」は、月の形成初期の超巨大衝突によって表側の「高地」を構成する地殻物質の多くが取り除かれたためではないかと考えられている。

 今回、可視赤外線反射率スペクトルデータに対して、クラス分類というデータマイニング手法を適用し、衝突溶融物に多く含まれる低カルシウム輝石の分布状況を調べた。その結果、月の表側にあるプロセラルム盆地に対応する直径3000 kmもの円状の分布を発見した。これは、超巨大衝突によって生成した衝突溶融物によるものと考えられ、月の形成初期の超巨大衝突を、初めて観測データによって裏付けることができた。

 月はその形成以来ずっと地球の近傍にあったため、月の誕生過程の解明は地球の初期形成史を知ることにもつながる。また、今回の解析手法を地球を周回する人工衛星データに適用することで、鉱物資源探査や環境モニタリングなどへの応用が期待できる。
 
 月の起源について、最も可能性が高いと考えられているのは、地球に巨大な天体が衝突し、そのとき生じた破片が集積して月になったとする巨大衝突説である。

 この説では、できたばかりの月の表面は融けた溶岩の海で覆われている。月の「高地」は、この溶岩の海が冷えて固まる際に浮上・集積してできた岩石で構成されている。一方、「海」は「高地」の形成後に内部から噴出した溶岩が窪地に溜まって形成されたと考えられている。

 暗い領域の「海」は月の表側に広く存在するが、裏側にはほとんど見られない。また過去の月探査から、表と裏では「海」と「高地」の比率だけでなく、地殻の厚さや放射性元素の分布もまったく異なることが明らかになっている。

 この表側と裏側の非対称性は月の「二分性」と呼ばれているが、その成因は明らかになっていない。過去に「表側で発生した巨大な天体衝突が高地の物質を吹き飛ばして、直径3000 kmもの巨大な衝突盆地(プロセラルム盆地)が形成され、その結果として二分性が生じた」という仮説が提案されていたものの、実際に衝突が起こったことを示す物質科学的な証拠は見つかっていなかった。

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