ルーツな日記

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"SAVE LIVE MUSIC" 上原ひろみ ~BALLADS~ ライヴ配信

2020-09-16 17:55:01 | ジャズ
ブルーノート東京長期公演の真っただ中の上原ひろみさん。9月11日に、その配信3回目が行われました。

この日のテーマは「BALLADS」。実は4つのプログラムの中で、私が最も気になっていたのがこれ。バラードですからね。恐らく1ステージ全てバラードでやるんだろうと。これは多分、上原ひろみさんとしても初めての試みなのではないでしょうか?上原さんと言えば、超絶的な早弾きや変拍子といった、激しい面がクローズアップされがちですが、実はバラードが絶品なんです。

さて、この日も上原さんの足元、靴のアップからスタート。ラバーにLIVE MUSIC AWAKENSと書かれている。ちなみに前回「PLACE TO BE」の時は、RETURN OF LIVE MUSICと書かれていました。そしてカメラは上原さんの全身を映しだす。大人っぽいお化粧に、髪形もいつもの爆発をエレガントに纏めた感じ。黒のワンピースで肩のあたりがレースになってる。バラードですからね、アダルトな雰囲気で、とても美しい。この上原さんの容姿を見てさらにバラードへの期待でワクワクしましたね。

ピアノの前へ座り、しばしの精神集中。そして柔らかいタッチが奏でる儚げな音色。美しいメロディーラインがしっとりと響いていく。1曲目は「Somewhere」。情感豊かなスロー・ナンバーに、まるで魂を引き抜かれるかのよう。そんな風に始まる上原さんのライヴ、極上です。

「Wake Up and Dream」、「Whiteout」、「Firefly」と、絶品バラードが続きます。上原さんって、ジャズピアニストとして語られがちですが、実はメロディー・メイカーとしても、とても魅力的な人。特に近年のスロー・ナンバーにおける抒情性は特筆されるべき。感情の移ろいをグラデーションのように紡いでいくメロディラインの美しさは、上原ひろみさんならでは。例えば「Wake Up and Dream」は、クラシックのような旋律を持ち、それをレイヤーのように重ねていくドラマチックな展開が感動的。「Firefly」は儚いメロディーが産まれては消え、産まれては消えゆくように流れていく。毎回聴くたびに儚すぎて泣きそうになります。

そして曲の良さと相まって、ピアノの音色が良いんですよ!配信で聴いてもその美しさは分かります。上原さんは、繊細なタッチとペダルで微妙に音色を変えていく。メロディーの移ろいを音色でも彩っていく。その流れるような美しさは、ただただ聞き惚れるしかありません。そしてもちろん上原さんですからね、バラードとは言え、即興パートもふんだんに。曲想に寄り添いながらも、時折リズミカルになったり、力強くなったり、瑞々しい感情表現を交えながら、上原さんらしい予測不能な世界へ引き込んでいく。また上原さんの表情が良いんですよ。めちゃくちゃエモーショナル。批判を恐れずに書きますけど、私は上原さんの顔ファンですから!!

矢野顕子さんとのコラボ作で披露された「月と太陽」。もちろんここでは上原さんが一人でやるんですけど、この曲も良かったですね~。上原さんが作った詩も素敵なんですけど、ピアノ曲としてインストで演奏されるこの曲も味わい深かったです。さらにこの日最も意外な選曲がベートーベンの「悲愴」ですね。ここにベートーベンいれるか?っていう。ですが、流れとして不思議と収まるところが上原さんの個性的たる所以なのです。

本編ラストは「Green Tea Farm」。ちょっと懐かしさのある和テイストなメロディー。この曲はいつ聞いても染みますね。途中、「Place To Be」になって、最後は「故郷」のメロディで。うさぎおいしかのやま。

それにしても、ピアノ1台で、バラードのみで、これだけ多彩な音色と、情感を表現できるもんなんですね。そしてどれもが上原ひろみ印っていう。あらためて上原さんに惚れ直しました。

そしてアンコールは「Sepia Effect」。全8曲、もちろん最後までスロー・ナンバーです。1曲目「Somewhere」の出だしの繊細さから、その音色の世界に引き込まれ、曲を重ねるごとに”上原ひろみのバラード”の美しさに没入していく。ただただ身も心も没入していく、そんな濃密ライヴ。まったく飽きることなく画面にかじりついたおよそ70分。唯一、気が抜けた瞬間と言えば、いつも1回だけあるMCの時間。今回は演奏がしっとりだったこともあり、おしゃべりはいつもより饒舌でした。「4つのプログラムの中でも最もマニア向けの公演、それが今日のBALLADSになります。」とか、「ここの会場と、オンライン配信の皆さんと、マニアが大集結。」とか、会場を笑わせていました。

いやはや、本当に素晴らしいライヴでした。

あと、ちゃんと最後の音が消えるのを待って拍手するお客さん達も素晴らしかったです。やっぱりバラードは、最後の余韻まで浸らないと。

(やっぱり会場で観たかったな…。)


1. Somewhere(Place To Be)
2. Wake Up and Dream(Spark)
3. Whiteout(Spectrum)
4. Firefly(Alive)
5. 月と太陽(Get Together 〜LIVE IN TOKYO〜)
6. Beethoven's Piano Sonata No.8 - Pathetique(Voice)
7. Green Tea Farm(Brain)
EC. Sepia Effect(Spectrum)


欲を言わせていただければ、「Voice」収録の「Haze」、聴きたかったな~。私が上原さんのスロー・ナンバーで一番好きな曲。それだけが残念…。

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