ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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ジョー・ヘンリー&リサ・ハニガン@渋谷 Duo Music Exchange

2012-10-20 21:14:52 | SSW
LISA HANNIGAN / PASSENGER

10月16日、渋谷 Duo Music Exchangeにてジョー・ヘンリー&リサ・ハニガンのライヴを観てまいりました。ジョー・ヘンリーは言わずと知れた現在のルーツ系最重要プロデューサーにしてシンガー・ソング・ライターとしても独自の世界観を切り開くその界隈のキー・パーソン。リサ・ハニガンは08年にデビューしたアイルランド出身の才女で、昨年ジョー・ヘンリーのプロデュースによる2nd作「PASSENGER」をリリースしたばかり。ここ日本でもこの来日を期に一気に注目度を上げ、その歌声に惚れ込む人が急増。かく言う私もそんな一人でした。正直、リサにメロメロです…。

そしてもう一人特筆すべきなのが、サポート・メンバーのジョン・スミス。この人は当ブログで2010年度のブライテストホープ第1位に上げさせて頂いた英フォーク界の逸材(デビューは2010年ではないのですが、日本盤デビューが2010年だったので、その年のホープとして取り上げさせて頂きました)。2年前のプロモ来日の際は、随分と彼を追いかけたものですが、まさかそのジョン・スミスがこういう形で再来日してくれるとは!

さて、この夜の渋谷 Duo Music Exchangeです。私は整理番号が50番台だったので、そこそこ前の方の椅子席に着席。開場直後はスペースに余裕があり、随分空いてるな、という印象だったものの、開演間近には椅子席が満席なのはもちろん、その後ろに立ち見客がずらりと並ぶ盛況振り。流石の注目度でしたね。オープニング・アクトのエミ・マイヤーによる素敵な鍵盤弾き語りの後、いよいよジョー・ヘンリー&リサ・ハニガン御一行がステージに登場。

薄暗い照明からまるでモノトーンのように浮かび上がるフロントの3人。向かって左からジョン・スミス、リサ・ハニガン、ジョー・ヘンリー。この3人がステージ上で佇んでいるだけでワクワクさせられる。リズムはドラマーが一人というシンプルな編成。ジョーとジョンがアコースティック・ギターを、リサは変わった形のマンドリンを持ってたかな? そして始まったのは「Sold」。ジョー・ヘンリーが歌い出した瞬間に独特の空気に包まれる。ブルージーななかにひりひりとした緊張感が滲み出るかのようなその歌表現は、聴くものの耳を引きつけて離さない。そしてそんな空気感を引く継ぐようにリサが歌い始めた「A Sail」。初めて生で聴いたオーガニックな美声は、ピュアな繊細さを描くと共に、ふくよかなエモーショナルを醸す。ちょっぴりハスキーな質感が力強くも寂寞とした雰囲気を感じさせて美しい。いや~、歌声も素晴らしいんですが、楽曲自体も凄く良い!

続いて「Civil War」、「Passenger」とジョーとリサが交互に歌い、いよいよジョン・スミスにスポットが当たる。曲は「Salty And Sweet」という曲。浮遊感のある優しい曲調。フォーキーな弦捌きに土っぽくも暖かい歌声。やっぱりこの人の声の響きというの堪らないものがありましたね。サビでひっそりと添えられたリサのハーモニーもキュートでした。さらにリサとジョンのデュエットによる「O Sleep」。コレも極上でした。二人の息はぴったりで、個性の違いとその声と声の重なりがこの上なく魅力的でした。

ジョー・ヘンリーがどっぷりと歌ったブルース「All Blues Hail Mary」、リサによるアコギのフィンガー・ピッキングと柔らかい歌声がトラッド・フォーク的な香りを誘った「Paper House」、さらにリサの「Little Bird」はジョーとのデュエットで。こういった趣向もライヴならではですね。あ、その前にジョーの「Flag」もありましたっけ。あと印象的だったのがリサの「Knots」。 今回のセットリストの中では珍しいアップテンポ曲で、ウクレレを弾きながら歌うリサが光ってましたね。歌の歯切れも素晴らしく、バックもシンプルな故のスピード感があって最高でした。さらにジョン・スミスが歌った「Freezing Winds Of Change」も良かった!新曲でしょうか? ジョンらしいスピリチュアルな美しさを持った曲で、ジョンのエモーショナルな歌声の響きがまたことの外深かった!

で、このあとは何をやりましたっけ? 一応、メモを取りながら見ていたのですが、私もこの頃にはすっかりライヴの雰囲気に飲まれてしまい、そのメモもいい加減になってしまいまして…。たしかリサの「Lille」、ジョーの「Sticks And Stones」あたりはやりましたね。あとジョンの「Winter」!! この曲は彼の代表曲で、ギターを膝の上に寝かしてパーカッシヴに弾くプレイは何度見てもどうやってるのかよく分かりません…。でもそのトリッキーさ以上にその音色と彼の歌が醸す空気に聴き入ってしまうのです。

そして特に圧巻だったのは、リサが歌った「What'll I Do」と「Eyes Out For You」。前者はアルバム「PASSENGER」の中でも最もポップで風変わりな曲で、リサの類い稀な作曲センスが伺われる曲。この夜のライヴ全体の印象としては、ドラムの太鼓っぽい神秘的なリズムも含め、ジョー・ヘンリーらしい陰影の濃い世界観に包まれてる印象でしたが、その一方で、こういう曲でのリサの溌剌とした魅力には爽快感を感じると同時になんか癒される思いでしたね。そして本来はジョーの曲ながら、ここではリサが歌った後者「Eyes Out For You」。トラッド・フォークな曲調に乗ったリサの芯の強い歌唱が素晴らしかったです。強いと言ってもがなったり叫んだりするのではなく、内に秘めたパワーをただ純粋に歌声に託すような。そんなピュアな力強さ。

ラストはジョー・ヘンリーの「Odetta」で大団円。ジョー、リサ、ジョン、そしてドラマーのロス・ターナーも含めた4人の個性が見事に溶け合い、えも言われぬ趣きに満ちた至極のステージ。もちろん拍手喝采が鳴り止まない。戻ってくる4人。アンコールで演奏されたのはジャクソン・ブラウンの「These Days」。アンコールにカヴァーを持ってくる選曲が嬉しいですね。しかしコレでも観客達はまだ帰りたがらない。再度のアンコールに応えてなんと、ザ・バンドの「The Night They Drove Old Dixie Down」ですよ。レヴォン・ヘルムをトリビュートしての選曲と思いますが、1本のマイクに向かってメンバーが集まり、リサ、ジョン、ジョーの順番で歌っていく。これは堪りませんでしたね。サビになると自然と観客達も合唱を始める。後半になると合唱の声がどんどん大きくなって、感動的でした。


それにしても、よくぞ呼んでくれましたよね。こういったソロ・アーティストのライヴにプロデューサーが参加するようなスペシャルなライヴは、英米では実現しても、なかなか日本にまで来てくれないものですからね、これは奇跡ですよ! 彼らを呼んでくれたHILLSTONEさんに拍手!そして感謝!来てくれたジョー・ヘンリー御一行様にも感謝! リサ・ハニガンとジョン・スミスは、これからの活躍が多いに期待されますね。そしてやはり恐るべしはジョー・ヘンリーですね。全体を貫いた独特のムードはやはり彼ならでは。まるで一編の長い詩を観ているかのようなステージでした。天晴でした!!



*上の写真は、ジョー・ヘンリーのプロデュースにより昨年リリースされたリサ・ハニガンの最新作「PASSENGER」。落ち着いた作風で、シンガー・ソング・ライターとしてのリサの魅力が見事にパッケージされています。ドラムはロス・ターナー。ジョン・スミスも2曲でギターを弾いてます。「O Sleep」でリサとデュエットするのはレイ・ラモンターニュ。



JOHN SMITH / THE FOX AND THE MONK
そしてこちらは「Winter」の入ったジョン・スミスのアルバム「THE FOX AND MONK」。おそらく自主制作で出されたもので、06年作ですかね? 巧みなピッキングと、エモーショナルな歌声。静けさと激しさを併せ持ち、英国らしい叙情性を感じさせる作品です。



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 11.01.21 2010年 ブライテストホープ(JOHN SMITH / MAP OR DIRECTION)
 10.07.17 ジョン・スミス@吉祥寺Star Pine's Cafe
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