MEMPHIS HORNS / MEMPHIS HORNS
2012年4月12日、メンフィス・ホーンズのサックス奏者、アンドリュー・ラヴが亡くなられました。メンフィスの自宅で。享年70歳。晩年はアルツハイマー病を患い、合併症で亡くなられたそうです。
メンフィス・ホーンズと言えば、そりゃあもうサザン・ソウル/メンフィス・サウンドの象徴のような存在でした。メンバーはウェイン・ジャクソン( trumpet )とアンドリュー・ラヴ(sax)の2人。2人とも1941年メンフィス生まれです。元々はスタックスのハウス・バンド的存在だったマーキーズというバンドで、そのメンバーは多分に流動的だったことと思われますが、大まかに言えば、そこからリズム・セクションが独立してブッカー・T. & ザ・MG'Sとなり、残されたホーン隊が後にメンフィス・ホーンズとなった、という感じのようです。なのでメンフィス・ホーンズも当初は2人だけではなく4~5人からなるブラス・セクションだったようです。そしてMG'S同様に白人黒人の混成バンドでした。ちなみにウェイン・ジャクソンは白人、アンドリュー・ラヴは黒人でした。
60年代のスタックス黄金期を代表する作品、オーティス・レディングの「OTIS BLUE」。MG'S のリズムに絡むアンドリュー・ラヴ&ウェイン・ジャクソン達のホーン隊。これぞスタックス・サウンド!これぞサザン・ソウルですよね! やはりオーティス・レディングの歌唱と、それを支えたバックの演奏って言うのは、ソウル・ファンにとってかけがえの無いものです。また彼らによるスタックス/ヴォルト・ツアーと呼ばれるヨーロッパでのライヴ盤もスタジオ録音とはまた違う南部魂が感じられて最高ですね! あと個人的にスタックス時代だとアルバート・キングの「BORN UNDER A BAD SIGN」が好きです。あとジョニー・テイラーの「WANTED: ONE SOUL SINGER」辺りもアンドリュー・ラヴを含むホーン隊が良い味を出しています。
やはりメンフィス・ホーンズと言いますとスタックスの印象が強いかもしれませんが、例えば、彼らが参加したウィルソン・ピケットの67年作「THE SOUND OF WILSON PICKETT」はマスル・ショールズのフェイムスタジオで録音され、リズム・セクションはロジャー・ホーキンス、トミー・コグビル、チップス・モーマン、ジミー・ジョンソン、スプーナー・オールダムなどが務めています。さらに70年代になると、彼らはウィリー・ミッチェル率いるハイ・レコードでも欠かせない存在となり、アル・グリーンの名作「 LET'S STAY TOGETHER」をはじめ、アン・ピーブルス、シル・ジョンソン、オーティス・クレイなどの諸作に参加し、ホッジス兄弟達のハイ・リズムと共に、伝説のハイ・サウンドを彩りました。
そしてメンフィス・ホーンズの単独名義となるデビュー作が70年リリースの「MEMPHIS HORNS」。こちらはサウンズ・オブ・メンフィス・スタジオにて録音。バックにはジム・ディッキンソンこそ居ないものの、ほぼディキシー・フライヤーズな面々が参加しています。この頃には同スタジオに出入りし、ディキシー・フライヤーズとセッションを重ねていたようです。
ここに挙げたものは氷山の1角にすぎないのですが、メンフィス・ホーンズがいかに“メンフィスの音”もしくは“サザン・ソウルの音”として愛されていたかが分かりますよね。これだけ多岐にわたって、南部の音を担って来た人達はそうは居ません。そんな彼らですから、ロック・フィールドからもそのサウンドを求めて引く手数多でした。例えば、ジェイムス・テイラー、スティーヴン・スティルス、ドゥービー・ブラザーズ、スティーヴ・ウィンウッド、ジョー・コッカー、スティングなどなど。ちなみに私が初めてメンフィス・ホーンズの音を聴いたのは、おそらくヘヴィ・メタル・バンドのシンデレラ。(私、若い頃メタル大好きだったんで。)彼らはブルース/ソウルをルーツに持つ変わり種で、1990年の3rd作にメンフィス・ホーンズの2人が1曲だけですが参加し、ファンキーなホーン・リフで彼らの南部趣味に一役買ってます。
ですが個人的に最も印象的なのはプライマル・スクリームです。彼らの南部回帰作と言える94年作「GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP」でメンフィス・ホーンズの果たした役割は重要ですよね。アーシーなロックンロールに彼らのホーンが切れ込む感じこそ、この作品の格好良いところ! ちなみにこの次作に収録された名曲「Star」でオーガスタス・パブロのメロディカと並んで印象的なホーンを吹いてるのもメンフィス・ホーンズです。
まあ、結局この辺りも氷山の一角な訳ですが、つまり、南部な雰囲気にしたいと考えたとき、真っ先に白羽の矢が当たるような存在がメンフィス・ホーンズだった訳です。彼らが一吹きすれば、そこにはメンフィスの風が吹くのです。まさにメンフィス・サウンドの象徴、メンフィス・ホーンズ。
さて、近年のアンドリュー・ラヴはアルツハイマー病を患っていたそうなので、第一線からは引いていたようです。晩年の録音としては、バディ・ガイの「BRING 'EM IN」(05年)とか、 アル・グリーンの「EVERYTHING'S OK」(05年)とか。あと映画「LIGHTNING IN A BOTTLE」のオールスター・バンドにも参加していましたね。あ、そう言えば中島美嘉の「All Hands Together」(06年)にも参加してましたよね?
様々なフィールドでメンフィスの音色を鳴らし続けたアンドリュー・ラヴさん、安らかに。
*トップの写真はメンフィス・ホーンズ名義のデビュー作「MEMPHIS HORNS」。オーティス・レディングの「I Can't Turn You Loose」、「Sad Song (Fa-Fa-Fa-Fa-Fa)」や、やサム&デイヴのメドレー「You Don't Know Like I Know ~ Soul Man」など往年のサザン・ソウル名曲に加え、メンフィス・ホーンズの2人によるオリジナル曲も含んだ11曲。メンフィス・ホーンズによるあのホーンの音色がたっぷり味わえます。アンドリュー・ラヴは、テナー、アルト、バリトン・サックスを使い分け、さらにフルートまで吹いてます。ソロもたっぷり堪能出来ます。ほぼディキシー・フライヤーズなバックも最高!
本文で挙げた他の作品も一部ご紹介。
OTIS REDDING / OTIS BLUE
まず、サザン・ソウルと言えばコレ。土っぽく男臭いサザン・ソウルの旨味がたっぷり味わえます。
OTIS REDDING / LIVE IN LONDON & PARIS
スタックス/ヴォルト・ツアーの記録。スタジオという狭い箱から飛び出して暴れまくるサザン・ソウル、そんな感じ。爆発するオーティスの歌唱も凄いですが、それに畳み掛けるようなバンドの演奏も素晴らしい。。
AL GREEN / LET'S STAY TOGETHER
ハイ・レコードが生み出したメンフィス・ソウルの大名盤。セクシーなソウルネスの中にもメンフィス・ホーンズの存在感は格別。
PRIMAL SCREAM / GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP
今でもライヴの定番曲となっている「Rocks」だって、メンフィス・ホーンズあってのあの格好良さ!
BUDDY GUY / BRING 'EM IN
メンフィス・ホーンズは数々のブルースマンにも愛されていました。バディ・ガイもその一人でした。このアルバムのホーン隊にもアンドリュー・ラヴが加わっています。(ウェイン・ジャクソンは参加していません。)
2012年4月12日、メンフィス・ホーンズのサックス奏者、アンドリュー・ラヴが亡くなられました。メンフィスの自宅で。享年70歳。晩年はアルツハイマー病を患い、合併症で亡くなられたそうです。
メンフィス・ホーンズと言えば、そりゃあもうサザン・ソウル/メンフィス・サウンドの象徴のような存在でした。メンバーはウェイン・ジャクソン( trumpet )とアンドリュー・ラヴ(sax)の2人。2人とも1941年メンフィス生まれです。元々はスタックスのハウス・バンド的存在だったマーキーズというバンドで、そのメンバーは多分に流動的だったことと思われますが、大まかに言えば、そこからリズム・セクションが独立してブッカー・T. & ザ・MG'Sとなり、残されたホーン隊が後にメンフィス・ホーンズとなった、という感じのようです。なのでメンフィス・ホーンズも当初は2人だけではなく4~5人からなるブラス・セクションだったようです。そしてMG'S同様に白人黒人の混成バンドでした。ちなみにウェイン・ジャクソンは白人、アンドリュー・ラヴは黒人でした。
60年代のスタックス黄金期を代表する作品、オーティス・レディングの「OTIS BLUE」。MG'S のリズムに絡むアンドリュー・ラヴ&ウェイン・ジャクソン達のホーン隊。これぞスタックス・サウンド!これぞサザン・ソウルですよね! やはりオーティス・レディングの歌唱と、それを支えたバックの演奏って言うのは、ソウル・ファンにとってかけがえの無いものです。また彼らによるスタックス/ヴォルト・ツアーと呼ばれるヨーロッパでのライヴ盤もスタジオ録音とはまた違う南部魂が感じられて最高ですね! あと個人的にスタックス時代だとアルバート・キングの「BORN UNDER A BAD SIGN」が好きです。あとジョニー・テイラーの「WANTED: ONE SOUL SINGER」辺りもアンドリュー・ラヴを含むホーン隊が良い味を出しています。
やはりメンフィス・ホーンズと言いますとスタックスの印象が強いかもしれませんが、例えば、彼らが参加したウィルソン・ピケットの67年作「THE SOUND OF WILSON PICKETT」はマスル・ショールズのフェイムスタジオで録音され、リズム・セクションはロジャー・ホーキンス、トミー・コグビル、チップス・モーマン、ジミー・ジョンソン、スプーナー・オールダムなどが務めています。さらに70年代になると、彼らはウィリー・ミッチェル率いるハイ・レコードでも欠かせない存在となり、アル・グリーンの名作「 LET'S STAY TOGETHER」をはじめ、アン・ピーブルス、シル・ジョンソン、オーティス・クレイなどの諸作に参加し、ホッジス兄弟達のハイ・リズムと共に、伝説のハイ・サウンドを彩りました。
そしてメンフィス・ホーンズの単独名義となるデビュー作が70年リリースの「MEMPHIS HORNS」。こちらはサウンズ・オブ・メンフィス・スタジオにて録音。バックにはジム・ディッキンソンこそ居ないものの、ほぼディキシー・フライヤーズな面々が参加しています。この頃には同スタジオに出入りし、ディキシー・フライヤーズとセッションを重ねていたようです。
ここに挙げたものは氷山の1角にすぎないのですが、メンフィス・ホーンズがいかに“メンフィスの音”もしくは“サザン・ソウルの音”として愛されていたかが分かりますよね。これだけ多岐にわたって、南部の音を担って来た人達はそうは居ません。そんな彼らですから、ロック・フィールドからもそのサウンドを求めて引く手数多でした。例えば、ジェイムス・テイラー、スティーヴン・スティルス、ドゥービー・ブラザーズ、スティーヴ・ウィンウッド、ジョー・コッカー、スティングなどなど。ちなみに私が初めてメンフィス・ホーンズの音を聴いたのは、おそらくヘヴィ・メタル・バンドのシンデレラ。(私、若い頃メタル大好きだったんで。)彼らはブルース/ソウルをルーツに持つ変わり種で、1990年の3rd作にメンフィス・ホーンズの2人が1曲だけですが参加し、ファンキーなホーン・リフで彼らの南部趣味に一役買ってます。
ですが個人的に最も印象的なのはプライマル・スクリームです。彼らの南部回帰作と言える94年作「GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP」でメンフィス・ホーンズの果たした役割は重要ですよね。アーシーなロックンロールに彼らのホーンが切れ込む感じこそ、この作品の格好良いところ! ちなみにこの次作に収録された名曲「Star」でオーガスタス・パブロのメロディカと並んで印象的なホーンを吹いてるのもメンフィス・ホーンズです。
まあ、結局この辺りも氷山の一角な訳ですが、つまり、南部な雰囲気にしたいと考えたとき、真っ先に白羽の矢が当たるような存在がメンフィス・ホーンズだった訳です。彼らが一吹きすれば、そこにはメンフィスの風が吹くのです。まさにメンフィス・サウンドの象徴、メンフィス・ホーンズ。
さて、近年のアンドリュー・ラヴはアルツハイマー病を患っていたそうなので、第一線からは引いていたようです。晩年の録音としては、バディ・ガイの「BRING 'EM IN」(05年)とか、 アル・グリーンの「EVERYTHING'S OK」(05年)とか。あと映画「LIGHTNING IN A BOTTLE」のオールスター・バンドにも参加していましたね。あ、そう言えば中島美嘉の「All Hands Together」(06年)にも参加してましたよね?
様々なフィールドでメンフィスの音色を鳴らし続けたアンドリュー・ラヴさん、安らかに。
*トップの写真はメンフィス・ホーンズ名義のデビュー作「MEMPHIS HORNS」。オーティス・レディングの「I Can't Turn You Loose」、「Sad Song (Fa-Fa-Fa-Fa-Fa)」や、やサム&デイヴのメドレー「You Don't Know Like I Know ~ Soul Man」など往年のサザン・ソウル名曲に加え、メンフィス・ホーンズの2人によるオリジナル曲も含んだ11曲。メンフィス・ホーンズによるあのホーンの音色がたっぷり味わえます。アンドリュー・ラヴは、テナー、アルト、バリトン・サックスを使い分け、さらにフルートまで吹いてます。ソロもたっぷり堪能出来ます。ほぼディキシー・フライヤーズなバックも最高!
本文で挙げた他の作品も一部ご紹介。
OTIS REDDING / OTIS BLUE
まず、サザン・ソウルと言えばコレ。土っぽく男臭いサザン・ソウルの旨味がたっぷり味わえます。
OTIS REDDING / LIVE IN LONDON & PARIS
スタックス/ヴォルト・ツアーの記録。スタジオという狭い箱から飛び出して暴れまくるサザン・ソウル、そんな感じ。爆発するオーティスの歌唱も凄いですが、それに畳み掛けるようなバンドの演奏も素晴らしい。。
AL GREEN / LET'S STAY TOGETHER
ハイ・レコードが生み出したメンフィス・ソウルの大名盤。セクシーなソウルネスの中にもメンフィス・ホーンズの存在感は格別。
PRIMAL SCREAM / GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP
今でもライヴの定番曲となっている「Rocks」だって、メンフィス・ホーンズあってのあの格好良さ!
BUDDY GUY / BRING 'EM IN
メンフィス・ホーンズは数々のブルースマンにも愛されていました。バディ・ガイもその一人でした。このアルバムのホーン隊にもアンドリュー・ラヴが加わっています。(ウェイン・ジャクソンは参加していません。)
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