ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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アーティ・トラウムを偲ぶ

2008-09-19 13:26:50 | ルーツ・ロック
ARTIE TRAUM / THIEF OF TIME

70年代に花開いたウッドストック・シーンの中心人物の一人、アーティ・トラウムが08年7月20日に亡くなられました。4年前にガンの一種である眼内黒色腫という病気にかかり、今年5月に肝臓への転移が見つかったそうです。享年65歳。ベアズヴィルの自宅で、奥様や兄であるハッピー・トラウム達に見守られながら天国へ旅立ったそうです。

06年にはハッピー&アーティ・トラウムの未発表ライヴを集めたCD「LIVE RECORDINGS 1970's-1980's」が発売され、ボーナス・トラックとして新録音曲が3曲納められ、同年11月にはトムズ・キャビンの『聴かずに死ねるか』シリーズでハッピー&アーティ・トラウムとして25年振りの来日。さらに翌07年にはソロ作「THIEF OF TIME」をリリースと、元気な活動を見せてくれていたアーティー・トラウム。しかし今年の6月、トムズ・キャビンが彼の病状悪化を救うため、日本での募金活動を始めました。正直「え!そんなに悪いの?」と驚きました。そしてそれからたった一月と少しで逝ってしまいました。

私は来日公演にも行かず、募金もしなかったような似非ファンですが、それでも彼の音楽を愛していた一人です。ハッピー&アーティ・トラウムの「DOUBLE-BACK」、マッド・エイカーズの「MUSIC AMONG FRIENDS」、その続編となるウッドストック・マウンテン・レヴューの「MORE MUSIC FROM MUD ACRES」などなど。70年代のウッドストック・サウンドを代表するアルバムであり、ルーツ好きなら必ず通る名作達ですね。

43年ニューヨーク州生まれのアーティ・トラウム。60年代のグリニッジ・ヴィレッジでフォークの洗礼を受け、68年にウッドストックへ移住。69年に兄ハッピーとのデュオ、ハッピー&アーティトラウムとしてのデビュー作「HAPPY & ARTIE TRAUM」をリリース。彼等の代表作である「DOUBLE-BACK」は71年リリースの2作目。暖かくフォーキーなサウンドはウッドストックのあの時代へタイムスリップさせてくれます。そして彼等の人望が傑作を生んだマッド・エイカーズの「MUSIC AMONG FRIENDS」。これはウッドストックの空気を一枚のアルバムに詰め込んだような素晴らしい作品。私がウッドストックのシーンに興味を持ったのはこのアルバムからかもしれません。


またアーティ・トラウムはギタリストとしても尊敬を集めていた人で、アコースティック・ギターの教則本やビデオが何本もリリースされています。彼のギターに息づくのは、ウッディ・ガスリーやピート・シーガーなどのフォークはもちろん、ビッグ・ビル・ブルーンジーやミシシッピ・ジョン・ハートなどブルース、さらにビル・モンローのカントリー、そしてジャズ。彼がNY時代に刺激を受け、吸収していったであろう音楽はまさに米ルーツミュージックの縮図。だからこそか、彼のギターが奏でるハーモニーは何処かロマンチックなんですよね。きっとみんなそこに惹かれるんでしょうね。ちなみにアーティはバンジョーも達者。


あ~、それにしても一昨年の来日公演は、行くべきでしたね…。悔やんでも仕方がありませんが、やっぱり悔やまれます。

アーティ・トラウムさん、安らかに。


*写真はアーティ・トラウムの最後のソロ作となった「THIEF OF TIME」。プロデュースはウェンディ・ウォルドマン。バックにはウォーレン・バーンハート(p)、トニー・レヴィン(b)、ゲイリー・バーク(ds)を配し、ゲストにジョン・セバスチャンやエイミー・ヘルム、ケニー・エドワーズなども参加。土臭さが薫るブルース・ナンバー「Where the Blues Began」や「Country Boy Blues」から、ジャジーな「Bonnie Jean」、ブラジル・テイストな「Thief of Time」や「Back in the Sugarcane」、さらにアコギの響きが美しすぎる「That Secret Place」。ヴァラエティ豊かな中に、アーティらしい洗練さとハート・ウォーミングな息遣いが感じられる作品です。ギターの素晴らしさはもちろん、素朴ながら温かみのあるアーティの歌声も味わい深いです。



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