ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

ダニー・コーチマー

2010-04-28 21:00:06 | ルーツ・ロック
JO MAMA / JO MAMA

先日のキャロル・キング&ジェイムス・テイラーの来日公演で、素晴らしいプレイを聴かせてくれたギタリスト、ダニー・コーチマー。ダニー・クーチとしても知られますね。今回のキャロル・キング&ジェイムス・テイラーのツアーでは、バックにあのセクションの面々がつくことが、マニアの間で早くから話題になってましたが、なかでも私はクーチを生で観れることを楽しみにしていたんです。

クーチの作となる「Machine Gun Kelly」で紹介されて彼がステージに出てきた時は思わず身を乗り出しちゃいましたよ!この曲でのギター・プレイも良かったですが、「Smackwater Jack」でのギター・ソロには痺れましたね!! 「Jazzman」ではちょっとフュージョンっぽい感じに弾きまくってましたしね。「Steamroller Blues」でのブルージーなフレージングも流石でした。でもやっぱり「It's Too Late」ですかね。あのしっとりとたメロディーとあの音色。職人的な技からじわっと染みる渋み。堪りませんね~。

さて、そんなダニー・クーチ。彼はセクションの一員となる前からジェイムス・テイラーとキャロル・キングとは親交厚い人物でした。クーチとジェイムスは幼なじみだとか、同じアカデミーに通っていたとか、マーサズ・ヴィニヤード島で出会ったとか、よく分かりませんが、とにかくそんな頃にジェイムス&クーチというフォーク・デュオを組んで音楽活動をはじめたようです。その後二人はフライング・マシーンなるバンドを結成し、NYのグリニッジ・ヴィレッジ辺りでかなりの評判を得ていたそうです。

しかしフライング・マシーンは解散し、ジェイムスはロンドンへ渡り、後にビートルズのアップルからソロデビューを果たす訳ですが、クーチはロサンジェルスへと向かいます。そしてそのロスでキャロル・キングとザ・シティというバンドを結成します。ちょうどこの頃、キャロル・キングはティン・パン・アレイの作曲家から自作自演アーティストへ羽ばたこうとしていました。そんなキャロルにとってこのザ・シティはその第一歩だったのです。しかしザ・シティは69年に1st作「NOW THAT EVERYTHING'S BEEN SAID」をリリースしたものの、レーベルのごたごたに巻き込まれ、満足に売られないまま解散。そしてキャロルはソロ・デビュー。そしてクーチはキャロルとジェイムス、両者のソロ活動をサポートしていくことになります。

で、ここからが本題です。ザ・シティは キャロル・キング、チャールズ・ラーキー、ダニー・クーチの3人編成によるバンドでしが、解散後、キャロルの代わりに彼女によく似た雰囲気の声を持つアビゲイル・ヘイネスをヴォーカルに向かえ結成されたのがジョー・ママです。実は私、クーチが中心の作品で一番好きなのがこのジョー・ママのデビュー作「JO MAMA」(上写真)なのです。

ベースはもちろんチャールズ・ラーキー、ドラムスにジョエル・オブライエン、キーボードにラルフ・シュケット。彼らはクーチがザ・シティ以前に参加していたバンドの仲間達ですね。プロデューサーはピーター・アッシャー。かのピーター&ゴードンのピーターですけど、この頃のクーチやジェイムス・テイラー周辺における重要人物の1人ですね。曲目は12曲中、10曲がクーチのオリジナルもしくは共作で占められています。クーチはギタリストとしてだけではなくコンポーザーとしても優れた才を発揮しています。

1曲目、先のライヴでもダニーの代名詞のように紹介された「Machine Gun Kelly」。ザ・バンドっぽいノリとLAらしい開放感が合わさった土っぽくも気持ち良い名曲。この曲はクーチ自ら歌っているようですが、カントリー・タッチの飾らない歌声が良いですね。3曲目は跳ねるギターのカッティングと転がるピアノがリードする「Searching High, Searching Low」。チャールズ・ラーキーのベースも良いですね~。そしてアビゲイル・ヘイネスがまた良い声してるんですよ。軽い感じに歌ってるんですけど妙にソウルフルで。

6曲目のSSWっぽい「Sailing」。これ名曲ですよね。洗練されたメロディー・ラインをキャロルっぽい「そばかす声」で歌うアビゲイル・ヘイネスの躍動感たっぷりの歌唱も最高ですが、存在感抜群のクーチのギター・ソロも流石。7曲目は「火の玉ロック」の邦題でお馴染みのジェリー・リー・ルイス「Great Balls of Fire」のカヴァー。ここではアビゲイル・ヘイネスが泥臭さを見せつけてくれる。格好良いですね~。8曲目は人懐っこい跳ねと粘りが秀逸なミドル・ファンク「The Sky Is Falling」。この曲のリズムにはやられますね。どことなくニューオーリンズな香りも感じられますし。さらにギターソロで急にギアを変える感じが格好良い!!

他にもラテンな「Venga Venga」やジャジーなスロー・ナンバー「The Word Is Goodbye」、ラストを飾るジャズ・ロック的大作「Love'll Get You High」まで、ヴァラエティ豊か。そしてなんだかんだでクーチの絶妙なタイム感で刻まれる渋いバッキングに耳を奪われます。そしてそれに絡み付くようなチャールズ・ラーキーのベースとラルフ・シュケットの鍵盤。良い案配にファンキーで、良い案配に土臭く、良い案配にソウルフル!!

しかしこのジョー・ママも、もう1枚のアルバムを残して解散してしまいます。クーチは一つところに留まらないのが性に合っているのかもしれませんね…。




THE CITY / NOW THAT EVERYTHING'S BEEN SAID
クーチがキャロル・キングと組んだバンド、ザ・シティ。このアルバム1枚を残しただけの短命に終わりますが、その原因の一つには、キャロルがツアーに出ることにナーヴァスだったこともあるそうです。作曲とレコーディングはお手の物でしたが、観客の前で歌うことについては慣れていなかったのでしょうね。結局、リハーサル中にツアーが中止になり、そのまま解散してしまったそうです。ちなみに、そのツアーのドラムスにはジョエル・オブライエンが予定され、リハにも参加していたそうなので、このザ・シティはキャロルにとって独り立ちするためのほろ苦いステップである一方で、ジョー・ママの雛形となったバンドといえるでしょうね。



THE SECTION / FORK IT OVER
こちらはセクションの3作目77年作。このアルバムの解説によりますと、71年にジョー・ママがキャロル・キングのサポート・バンドとしてジェイムス・テイラーと共にツアーした際、クーチがリー・スカラー、ラス・カンケルの2人と親交を深め、そこにクレイグ・ダーキーが加わってザ・セクションの結成に至ったとか。で、このアルバムはほとんどフュージョンですが、クーチはかなり聴かせてくれます。ラテンタッチの「Rainbows」が良いですね~。基本インストですが、1曲「Bad Shoes」でジェイムス・テイラーが歌っています。



DANNY KORTCHMAR / KOOTCH
で、結局のところダニー・コーチマーなの?ダニー・クーチなの?という疑問に終止符を打つかのような、ダニー・コーチマーのソロ作「クーチ」。73年リリース。“クーチ”という呼び名は、彼のニックネームのようですね。で、この作品、ジョ-・ママに比べるとなんとなく男の色気が増してる感じ。でやっぱりクーチのバッキングには気持ち良く腰を揺らされます。「Got To Say So Long」でのバッキングとメロディが一体化したようなプレイも素晴らしいの一言。クーチはギターと歌以外にベースと、ドラムスもプレイしています。良いジャケットですよね~。



もちろんダニー・コーチマーは自身を中心にした作品以外に、というよりそっちの方が主流なのかもしれませんが、膨大な量のセッションをこなしています。キャロル・キングやジェイムス・テイラーの諸作はもちろん、ドン・ヘンリー、ジャクソン・ブラウン、リンダ・ロンシュタット、J.D.サウザーからホール&オーツやボン・ジョビまで、挙げていったらきりがない程。さらにプロデューサーとしても数多くの作品を手がけていますし。クーチの公式サイトを覗いてみればその凄さにびっくりさせられます。

CDのクレジットを見て、ダニー・コーチマーの名前を発見すると、なんか嬉しくなるんですよね~。近年ではバディ・ガイの「BRING'EM IN」とか、キャデラック・レコードのサントラなんかでも彼の名前を見つけることが出来ます。




2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (folkrock)
2010-05-17 21:27:37
セクションなんてバンドについて書いてる
方がいらっしゃるとは思わなかったので、
うれしくてコメントしちゃいます。

ボクはジャクソン・ブラウンが大好き
なんですが、セクションのメンバーと
一緒にやってるのが一番好きです。

歌心のあるチームですよね。特にあのベース!

また、きま~す。
返信する
ありがとうございます! (moccho)
2010-05-18 01:23:19
folkrockさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。

ジャクソン・ブラウン、良いですね。
「Running on Empty」あたりですよね。
70年代のSSWやフォークロックって、シンガーはもちろん、バックの演奏にも歌心がありましたよね。
なかでもセクションのメンバーは特別ですね~。

folkrockさんのブログも拝見させて頂きました。
ロニー・レイン、私も好きです!
返信する

コメントを投稿