ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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夏フェスで見たブラック・ミュージック まとめ

2018-10-12 23:05:29 | フェス、イベント
もう秋ですけど、先日WOWWOW でサマーソニックの放送があったことですし、夏フェスのこと書きます。

という訳で、今年の夏、私がフェスで体験したブラック・ミュージック!!

まずは何と言ってもフジロックのケンドリック・ラマーと、サマーソニックのチャンス・ザ・ラッパーですよ!

現行最重要ラッパーと言える2人が、夏フェスで相次いで来日するということで、今年は日本にとってヒップホップの歴史を変える記念すべき年になる!と期待されていましたが、実際のところどうだったんでしょう?

ケンドリック・ラマーは、フジロックのヘッドライナーとして発表された時点から、かなり盛り上がってましたよね。そんな注目度からかケンドリックが出演した土曜は4万人の動員があったそう。実際、ライヴも盛り上がりましたし、フジロックで黒人ラッパーがトリを務めるという、新たな時代の到来を強烈に印象付けましたよね。しかも、その直後にNHK の情報番組で特集が組まれ、SNSでも騒がれたり。彼は日本におけるヒップホップの新たな扉を開けたかも?

対してサマソニに登場したチャンス・ザ・ラッパーですが、ヘッドライナーではなかったのが惜しまれますね~。ライヴがヘッドライナー級の素晴らしさでしたから尚更です。お客さんの入りも、決して満員ではありませんでした。少なくともスタンド席とか余裕ありましたよね。やっぱりケンドリック・ラマーに比べると、注目度という点で、事前の盛り上がりにやや欠けた印象はあります。注目は常にヘッドライナーに集まりますからね。でもそもそも知名度という点でもチャンス・ザ・ラッパーという名は、ケンドリック・ラマーほど日本では浸透していないように思います。

例えばチャンス・ザ・ラッパーはCDを売らないじゃないですか。本国ならともかく、日本ではレコード会社やCDショップがプロモーションをしないと世間に露出しないんじゃないですかね? タワーレコードに行けば、ケンドリック・ラマーなら大きなポップと特集棚が作られたりして自然に目に入ってきたりしますけど、チャンス・ザ・ラッパーはそれがいっさい無い訳ですから。そういう露出が知名度に繋がりますからね。まあ、私みたいな老人がそう思うだけで、今の若者はそんなこと無いんですかね?

まあ、何はともあれ、ここ日本において、一夏でケンドリック・ラマーとチャンス・ザ・ラッパーの両者を見れたというのは、まさに奇跡でしたね。フジとサマソニに感謝です!!


さて、今年の夏でもう一つの最重要事項は、ソニマニのブレインフィーダー・ナイトです。西海岸の異端児フライング・ロータスが主宰するLAのレーベル、ブレインフィーダー。ソニマニのレインボーステージが丸々ブレインフィーダー・ステージと化しました。特にフライング・ロータスとサンダーキャットは、ケンドリック・ラマーと並んで、西海岸のブラック・ミュージックを新たな方向へ導いている主犯格ですからね。ですが、私にとってサンダーキャットの音楽というのは、クロスオーヴァーし過ぎていて、なかなかブラックミュージックとは呼びづらい物だったりもするんです。フライング・ロータスに至っては打ち込みのビートミュージックですしね。もちろんブレインフィーダーは黒人音楽のみのレーベルではありません。ソニマニにも出演したジェイムス・ズーや、ドリアン・コンセプトなど、そのカラーは混沌としています。人種やジャンル、あらゆるものの異種配合。でもそれこそ西海岸らしさとも言える訳で。スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンとか、WAR などを生んだかの地の土地柄。ブレインフィーダーというレーベルは、そんな西海岸の気風を先鋭的に受け継いだ集合体なんだと、ひしひしと感じさせられたブレインフィーダー・ナイトでした。

そして忘れてならないのが、ジョージ・クリントンですよ!!このブレインフィーダー・ナイトにジョージ・クリントンのパーラメント/ ファンカデリックが含まれているところが意義深い。デトロイトの印象が強いジョージ・クリントンがブレインフィーダーと契約したと聞いた時、単なるフライローの趣味かと思いましたが、Jazz The New Chapter の最新号を読んでいましたら、西海岸ヒップホップの立役者ドクター・ドレー、スヌープ・ドッグがP−FUNKをこぞってサンプリングしていたことなど、ジョージ・クリントンが西海岸のヒップホップに与えた影響について書いてありました。目から鱗でしたね〜。西海岸のヒップホップとP−FUNKの親和性があってのジョージ・クリントン meets ブレインフィーダーなんですよ! しかもそれはケンドリックラマーのアルバムと、ジョージ・クリントンの作品に、それぞれが相互に客演し合っていることにも繋がっていきますし、スヌープ・ドッグのバックバンド上がりのサンダーキャットやカマシ・ワシントンとか、ドクター・ドレーの作品で名を上げたアンダーソン・パックとか、そこら辺に与えた影響も言わずもがなでしょう。まるで今年の夏フェスがそういう周辺事情の縮図のようでもあり、そういう流れで見れたのも特筆ものでしたね。

そんなジョージ・クリントン&パーラメント/ファンカデリックのステージ、混沌としていて最高でしたね。彼らはサマソニ最終日のビーチのトリも務めたのですが、そちらでは花火が上がる中での「Maggot Brain」があったりで、私にとってのベストアクトでした!!

そしてサマソニ初日のビーチでトリを務めたのが、新しき西海岸の雄カマシ・ワシントン。今や新世代ジャズの最重要人物にまで上り詰めた感のある彼とそのバンドですが、今回はキーボードがブランドン・コールマンではなく、スタンリー・クラーク・バンドで知られるルスラン・シロタでした。この人、ウクライナで生まれ、10代をイスラエルで過ごしたそうですから、カマシ軍団も人種混合化の兆しでしょうか?ただサウンド的には、ルスラン・シロタの加入でだいぶすっきりした印象。私の個人的な趣味で言わせてもらえば、ブランドン・コールマンの方が好きですけどね…。

他にもサマソニでは、UK出身のジョルジャ・スミス、エチオピア系アメリカ人のケレラといった次世代のR&B歌姫も印象的でした。どちらもオルタナティヴなR&Bですが、レゲエやジャズ感のあるジョルジャ・スミスに、フューチャリスティックなケレラ、それぞれが個性を発揮したステージを見せてくれて、今後のブラックミュージックが増々楽しみになりました。


フジロックで圧倒的なインパクトを残したのは、アンダーソン・パックですね。ヒップホッップ、ソウル、ファンクを当たり前のように横断するそのサウンドは、ケンドリックやカマシ以上に、新世代のブラックミュージックという言葉がしっくりくる程に先鋭でした。間違いなく、今後のブラックミュージックを占うキーマンの一人ですよね。


いやはや、こうやって思い出しながら文章を綴っているだけでもゾクゾクしてしまうほど、今年の夏フェスはブラックミュージックが熱かったですね。そう言えば、東京ジャズで観たロバート・グラスパーのR+R=NOW はケンドリック・ラマーの「How Much A Dollar Cost」をやってましたっけ。



ちなみに、フジロックでは、N.E.R.D とサーペントウィズフィートが見れなかったのが、悔やまれますが、まあ仕方ないですかね。それがフェスですから。




ライヴレポはこちら↓

フジロック ベストアクト 後編(ケンドリック・ラマー、アンダーソン・パック)
サマーソニック ベストアクト第1位! (ジョージ・クリントン)
サマーソニック ベストアクト第2位!(チャンス・ザ・ラッパー)
サマーソニック ベストアクト第3位!(ジョルジャ・スミス)
サマーソニック ベストアクト第4位&第5位(カマシ・ワシントン、サンダーキャット)


ソニマニまとめ


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