ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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フジロック 予習 ウィルコ

2016-06-24 07:33:40 | フジロック
WILCO / STAR WARS

今年のフジロックで最も楽しみなロック・バンド、それはウィルコ!!

シカゴが誇る怪物インディー・ロック・バンド、初期の頃はメンバー・チェンジが激しい印象があったものの、過去最強と言われる現在のメンバーが揃って以降は、およそ10年もの間に渡って不動のメンバーとなっております。すなわちジェフ・トゥイーディー(vo,g)を中心に、ジョン・スティラット(b)、パット・サンソン(key,g)、マイケル・ヨルゲンセン(key)、グレン・コッチェ(ds)、そしてネルス・クライン(g)の6人。

ジェフ・トゥイーディーとはアンクル・テュペロ時代からの盟友であるジョン・スティラット、そのジョン・スティラットとジ・オータム・ディフェンスを組むパット・サンソン、さらにはジム・オルーク人脈からウィルコ入りしたグレン・コッチェ、アヴァンギャルドなジャズ・ギタリストとして圧倒的な存在感を放つ鬼才ネルス・クライン、そんな多士済々なメンバー達が繰り広げるウィルコという名のアメリカン・ロック。最新作は、昨年突如リリースされ、フリー・ダウンロードも話題となった「STAR WARS」。1st作から数えて通算9作目。ちなみにこのタイトル、某有名映画とは何の関係もないそうです。そしてジャケ写の猫は、彼らのスタジオ、ロフトのキッチンにかけてある絵だとか。

いきなりアヴァンギャルドなギターが切り裂く小品「EKG」から始まり、その鋭利さを引き継ぎつつも大らかなフィーリングがウィルコらしい「More...」と続く。ポップ且ついびつなギター・リフに胸躍る「Random Name Generator」、ガレージなブルース臭を感じさせる「The Joke Explained」、さらに圧巻なのはヴェルベッツやニューヨーク・パンク的な内向グルーヴをオルタナ・カントリーな視点で捉えたようなウィルコ流のポスト・ロックが5分強に渡って繰り広げられる「You Satellite」、そしてその緊張感の先に開ける穏やかなオーガニック・ナンバー「Taste the Ceiling」などなど。ヴァラエティに富みながらもその大きな流れが編み上げるウィルコの王道。これぞウィルコですよ!!そして特筆すべきは、全編に渡って七色の音色で絡み合うギター・サウンド。その緻密且つフリーキーな響きは、ウィルコのこれまでの冒険が成せる一つの境地と言えるでしょう。

もうかれこれ結成から20年以上が経つウィルコ。その長い道のりだけではなく、ジェフ・トゥイーディーのプロデュース業や、ネルス・クラインの活発な課外活動など、外からのリターンをも貪欲に飲み込みながら、ますます太く大きくなるその王道。それでいて散漫にならず、一層ウィルコらしさそは研ぎ澄まされていく。そんな現在のウィルコをグリーン・ステージの爆音で観れるという幸せ!ライヴ・バンドとしても折り紙付きの彼ら、どんなステージを観せてくれるのでしょうか。自らが主宰するフェス「SOLID SOUND FESTIVAL」では、オール・カヴァーのセットや、ブルーグラス・タイプ編成のセットなど、サプライズなステージを見せてくれているそうですが、もちろんそれはそれでとてもそそられますけどね、でもフジではおそらくウィルコど真ん中なライヴを繰り広げてくれることでしょう。

2011年以来、5年振りのウィルコのフジロック。楽しみですね〜!
(ネルス・クラインは2014年にプラスティック・オノ・バンドのメンバーとして出演していますけどね。)






最後に、ウィルコのこれまでの歩みをざっとおさらい。



UNKLE TUPELO / 89/93-AN ANTHOLOGY
ジェフ・トゥイーディが参加していたアンクル・テュペロのアンソロジー盤。カントリー・ロックです。このアンクル・テュペロからフェイ・ファーラーが脱退しサン・ヴォルトを結成、残されたジェフがウィルコを立ち上げたのでした。元々、フェイ・ファーラーとジェフはパンク・バンドを組んでいたそうで、パンクからカントリーへ接近してアンクル・テュペロが生まれ、それが現在のウィルコに繋がっていると言うのはなかなか興味深い話ですね。



WILCO / A.M.
1995年、記念すべきウィルコのデビュー作。スカッとしたカントリー・ロックを聴かせてくれます。どっちが好きかと聴かれれば、もちろん現在のウィルコの方が好きですか、こちらには現在のウィルコにはない気持ち良さがあるのも事実。ですがここから長い歩みを経た上に今のウィルコがある訳で、その研鑽の積み重ねこそが現在のウィルコが唯一無比のアメリカン・ロック・バンドとなった所以でもある訳ですよね。そう考えるとなかなか感慨深いのです。



BILLY BRAGG & WILCO / MERMAID AVENUE
ビリー・ブラッグと共にウィルコが伝説のフォーク・シンガー、ウディ・ガスリーの未発表詩に曲を付けた作品。ウィルコがこういう作品に手を染めている事実も特筆ものですが、英国の個性派ビリー・ブラッグとの共同作業と言うのがまた深い。この1998年の名盤に続いて、2000年には「MERMAID AVENUE Vol. II」もリリースされています。



WILCO / YANKEE HOTEL FOXTROT
ジム・オルークを招いて製作されたインディー・ロック史に残る記念碑的傑作。2001年の4th作。もともとオルタナ・カントリーの枠に収まるようなバンドではなかったウィルコが、ジムの助力を得て自我を突き詰めた作品。音響的な広がりと内省的な深みがいびつに絡み合うような、ある種、混沌としながらも、優しく暖かい音空間が素晴らしい。もはやカントリー・ロックではないポスト・ロック。ですがシングル・ヒットを欲するレコード会社に契約を切られ、ホームページでの無料ダウンロードに踏み切った後に、ノンサッチへ移籍し無事発売されたという、そういう経緯もなんか格好良い!



WILCO / SKY BLUE SKY
2007年の6作目。これも名盤ですよ!なんだかんだで個人的にはこのアルバムが一番好きかも。ウィルコにはビートルズ的なポップ・センスの影響も感じるんですが、このアルバムは特に「ホワイト・アルバム」期のソウルっぽい感性に通じる雰囲気があるんですよね~。ジム・オルークとの共同作業も既に円熟味を感じさせ、独特の緊張感を伴いながらも穏やかな曲の流れが心地良い。ウィルコ史上最もメロディアスな作品であり、ジェフがシンガーとしての感受性豊かな資質を開花させた作品ともいえるでしょう。また、このアルバムからネルス・クライン(g)とパット・サンソン(key)が参加し、現メンバーの6人が揃っています。



WILCO / WILCO (THE ALBUM)
通算7作目となる09年の作品「WILCO (THE ALBUM)」。タイトルに「WILCO」と付けるぐらいですから、まさにこれまでの集大性的な作品。既にオルタナ・カントリーとは別次元の境地に達したウィルコによる、どうだ!というばかりの横綱相撲的作品。音響や前衛を血肉としつつ、それらをあくまでもポップ且つ情緒的に、ウィルコという名のアメリカン・ロックに集約させた圧巻の1枚。このアルバムで王道を確立した印象。なんとなくオルタナ・カントリーへの揺り戻しも感じられるところがまた嬉しい!