ルーツな日記

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フジ予習:G・ラヴ&スペシャル・ソース

2011-06-08 16:38:37 | フジロック
G LOVE / FIXIN' TO DIE

フジロック予習特集第3弾、G・ラヴ&スペシャル・ソースです!

G・ラヴ&スペシャル・ソース、もうお馴染みですよね。ブルースをベースにしながらも小気味良くハネるグルーヴに、人を喰ったような調子のラップが乗る。ジャック・ジョンソンなどとの交流からもオーガニック派の第一人者の一人として認知されています。ですがデビューは以外と古く、1994年。1st作「G.LOVE & SPECIAL SAUCE」で聴ける、ブルージーなギターにジャズ的なラインを弾くベース、ハネまくるスネア、ヒップなヴォーカルというスタイルはかなり衝撃的でした。短絡的に言えばブルース×ヒップホップな訳ですが、その独特のミクスチャー感は彼等にしかないものでした。当時は旬なロック・シーンにおける新世代ブルース的な立ち位置で評価されていたと記憶しています。しかもリリース元はあのOKEHでしたからね。1910年代からR&B/Bluesの傑作を生み出してきたレーベル。そのOKEHがソニー傘下として94年に再出発した際に、ケブ・モなどと共にその第一弾アーティストとしてリリースされたのがG・ラヴ&スペシャル・ソースだったそうです。またOKEH初の白人アーティストだった、などと言われたりもしています。


さて、そんなG・ラヴ、通算9作目となる最新作はすばり、ルーツ回帰作です。

とは言えもちろんG・ラヴですから、その辺のSSWやアメリカーナ勢とは一味も二味も違います。ブルースやトラディショナルの古く魔力めいた魅力に、あくまでもG・ラブらしいヒップな感性を通して回帰しています。オリジナル・ベーシストのジミー・ジャズの脱退は残念ですが、現在売り出し中の米新世代カントリー・ロック・バンド、あのアヴェット・ブラザーズのメンバーがプロデュース他全面バック・アップしているのは刺激的なほど嬉しい! 今年のグラミー賞でボブ・ディランと共演したあのバンドです。

オープニングを飾る「Milk And Sugar」。イントロのワン・フレーズはカントリー・ブルースそのものながら、あっという間にG・ラヴらしい粋なグルーヴへとなだれ込む。なによりナチュラルなエコーを感じさせるドブロの音が良い! なんかヴィンテージなライヴ感をそそられるますね~。 そのG・ラヴが爪弾くドブロや、彼の歌及びハープは、快調ながらもこれまでにない泥臭さが感じられる。バック・アップするスコット・アヴェットのバスドラとセス・アベットのベースも素朴ながら刺激的!

そしてタイトル曲「Fixin' To Die」。デルタ・ブルースの巨人、ブッカ・ホワイトのカヴァー。この曲はボブ・ディランもデビュー・アルバムで取り上げていて、G・ラヴはディラン・ヴァージョンに強いインスピレーションを受けている模様ながら、G・ラヴならではのミクスチャー感覚によるブルース表現がめちゃくちゃ格好良い!Jacob Edwards(ds)、Bob Crawford(b)のアヴェット組+手拍子による原始的なグルーヴを感じさせるリズムも印象的ですが、ダミ声を絞り出すように歌うG・ラヴに痺れますね~。中盤のハーモニカソロも格好良い!!!

その「Fixin' To Die」が終わるや否や、泥臭いスライド・ギターの音色で幕を開ける「You've Got To Die」。ブラインド・ウィリー・マクテルのカヴァーですが、G・ラヴとアヴェット・ブラザーズとでヴォーカルを歌い繋いだり、バンジョーの音色だったりが、のどかなカントリー臭を発散。のどかと言えば、G・ラヴによるオリジナル曲「The Road」や「Walk On」なんかは完全にカントリー曲。スコット・アヴェットの弾くバンジョーが良い感じ。

また「Katie Miss」や「Heaven」のような小曲的スロー・ナンバーがまた秀逸。前者はG・ラヴとスコット・アヴェットによる共作。ギターとバンジョーの素朴な爪弾きと、優しいメロディーをささやくように歌うG・ラヴ。トラッドっぽい雰囲気もまた良い。後者はG・ラヴ一人による自作自演曲。イントロやギターの感じは、もろ弾き語りブルースながら、そのコード進行は不思議なジャズ感と言うか、どこかエギゾチックな雰囲気があり、この辺りの感覚は流石はG・ラヴ!!終盤に口笛というセンスにもやられます。

上記の楽曲をはじめ、全体的にG・ラヴ流のカントリー・ブルースや、フォーク、トラディショナルな雰囲気が濃厚ながら、もちろんそれだけでは終わりません。カノン的なコード進行にラップが乗るという、王道オーガニック・バラードな「Just Fine」は、かのルー・アドラーの息子にして女優ミーシャ・バートンの元カレとしても知られるシスコ・アドラーとの共作。さらにこの曲で印象的なエレキ・ギターを弾いてるのはノース・ミシシッピ・オールスターズのルーサー・ディッキンソン。そしてガレージ・ブルース、もしくはフォーク・ロック期のボブ・ディラン辺りを思い起こさせるアップ・テンポな「Get Goin'」。G・ラヴの軽快なエレキとラップ、セス・アヴェットのハモンドが良いですね。またこの曲やジャジーな雰囲気を醸す「Ma Mere」でのジェフリー・クレメンズのハネたドラミングはやはりスペシャル・ソース印。

さらにルー・リード曲「Pale Blue Eyes」。まるで子守唄のような雰囲気で歌うG・ラブの歌声に引き込まれますが、アヴェット・ブラザーズのチェロ奏者Joe Kwonがそこにまた良い味わいを加えてます。ここでのバンジョーとチェロの絡みは美しいですね~。そして最後を締める「50 Ways To Leave Your Lover」はポール・サイモンのカヴァー。この辺りの選曲センスにも唸らされますね。原曲よりさらに欧風な哀愁が濃厚な前半から、サビでストーンズ風なグルーヴに展開するという。さらにブルーグラスなセッションへなだれ込み、G・ラブのハープが大暴れ!みたいな。いや~、格好良いです!


これは傑作ですよ!個人的な印象としては、これまでのG・ラヴ作品のなかで文句無しに1番好きです。ルーツ回帰と言っても、安易なブルース・カヴァー集などには向かわず、G・ラヴらしいセンスを見せつけてくれるところが嬉しいですね。哀愁のあるトラディショナルな方向へ回帰しながらもしっかりとヒップな感覚は残していますし、G・ラヴらしい風通しの良さや、ルーズなフィーリングが気持ち良いです!これはライヴが楽しみですね! 実はこのアルバム発売直前にG・ラヴはプロモ来日を果たしてまして、その時に新宿タワレコでインストア・ライヴをやってるんですよね~。私も観に行きましたよ!ブルージーながらG・ラヴらしい跳ねたグルーヴを紡ぐアコギに、ざらついたヴォーカルをのせ、見事にこのアルバムの世界感をアコギ弾き語りで表現していました。ハープも見事でした!

フジでもどこか小さなステージで弾き語りとかやってくれたら嬉しいですけどね。まあ、ないでしょうね…。それともう一つ期待したいのが飛び入りセッション! これは過去のフジでもやってくれてますから、あるかもしれませんよ~。ハープを持って誰かのステージに乱入!なんて場面を想像したり。アヴェット・ブラザーズがキャンセルになったのはかなり痛いですけどね…。

ま、それはそうと今年はグリーン・ステージに登場するG・ラヴです。過去にはレッド、ヘヴン、オレンジに出演していますが、たぶんメイン・ステージははじめてではないでしょうか?どんなステージを見せてくれるのか?楽しみです。





G.LOVE & SPECIAL SAUCE / G.LOVE & SPECIAL SAUCE
94年のファースト・アルバム。このアルバムで聴ける独特のファンク感は今聴いても斬新。またこの頃は都会のストリートという印象を持っていました。



G.LOVE / LEMONADE
オーガニック/サーフ系としての名盤となった06年作。ジャック・ジョンソン、ドノヴァン・フランケンレイーター、ベン・ハーパーなどいかにもな方達はもちろん、レオ・ノッセンテリ、ブラッカリシャスといった多彩なゲスト陣からもG・ラヴのセッション好き気質が伺えます。とにかく気持ち良いアルバム!



THE AVETT BROTHERS / I AND LOVE AND YOU
こちらはアヴェット・ブラザーズ、09年の出世作。実はインディー時代も含めればその活動歴は10年を越えるらしい。そして今最もライヴが観たいバンドの一つ。なのでフジ・キャンセルは返す返す残念。早々にリベンジして欲しいです!!



G. Love - "Milk and Sugar"



G. Love - "Fixin' to Die": SXSW 2011 Showcasing Artist



G. Love - "Heaven" (From new album Fixin' to die)



G. Love Free 93.9 The River Session 'Just Fine'





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