ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

マリー・マクギリス@BLUEDRAG

2008-11-24 22:36:12 | ジャズ
MARIE MAcGILLIS AND THE MODEL MILLIONAIRES / SITTIN' IN THE CATBIRD SEAT

11月21日、池袋BLUEDRAGにてマリー・マクギリスを観てきました! 20~30人程で満席になってしまうようなこじんまりとしたライヴ・ハウスで、古き良きアメリカン・ミュージックとジプシー・スウィングに酔いしれる、至福の時間でした。

バックはマリーと共にロスから来日したジャンゴ・スタイルの若きギタリスト、トミー・デイビー。そして日本からGYPSY VAGABOMZというバンドのギタリスト大西孝旺と女性ウッドベース奏者サーヤの二人。彼等の奏でるジプシー系のインスト曲と、マリーの歌うアメリカン・オールド・ソングの数々。途中休憩を挟んでの2部構成、たっぷりと楽しませていただきました。

さて、現在のオールド・タイム・レディーと言えば、もう何度も来日して日本でもすっかりお馴染みのジャネット・クライン。彼女は古き良きアメリカのオールド・ジャズ&ブルース及びスタンダード等を、あの時代そのままの雰囲気プラス彼女の強烈な個性で甦らせ人気を博しています。そしてマリー・マクギリスはそのジャネットに次ぐオールド・タイム・レディのニュー・フェイス。エンターテイナーに徹するかのごとくのジャネットに対し、より本格的な“歌”を唄うマリー・マクギリス。歌好きの私といたしましては、正直マリーの方が好みなのであります。

今年の秋、新宿ディスク・ユニオンで初めてマリーの存在を知り、(その時は半信半疑でCDは買わなかったのですが…、)帰宅後早速ネットで視聴し一声聴いて虜になりました。豊かな声量からくる芳醇な響きは、ドリーミー且つノスタルジックでありながらブルースやジャズの猥雑さをジワリと醸し出します。そしてまだ可憐さを残しながらも華やかなルックスは弱冠24歳と言いますから、アメリカって凄いなと。そしてこんなに早くこの日本で彼女の生の歌声が聴けるとは!

照れくさそうに片言の日本語を交えながら次々に米オールド・ソングを歌っていくマリー。新作からのレパートリーはもちろん、古いスタンダードやポピュラー・ソングなどを表情豊かに歌っていきます。声は想像以上にパワフルで、高い声を張り上げるときなどはかなり荒っぽく歌う。かと思えば静かな曲では繊細且つ艶やかに。このコントラストがまた良いんですよね。アップテンポの曲では軽くステップを踏みながらスウィンギーに、そしてスローな曲では観客に歌いかけるように、もしくはまるでトミー・デイビーに求愛するがごとくに。とにかくキュート!

また、インスト曲ではそのトミー・デイビーが聴かせてくれました。卓越したテクニックと華麗なコード・ワークでジプシーの哀愁を情感豊かに表現。そして日本勢二人も大健闘だったと思います。第一部では誰がソロを取るか最初に相談しあったり、探り探りな感じがありましたが、第2部になると馴れてきたのか3人で自由自在にソロを回したりと、ライヴ感たっぷりの演奏で盛り上げてくれました。

特にマリーはウッドベース奏者のサーヤが気に入った様子で、ことあるごとに「サヤー!」と叫んでました。まさか日本に米オールド・ソングを弾きこなす若い女性ウッドベース奏者が居るとなんて…、驚いたでしょうね。私も驚きましたけど!

トミー・デイビーは、ほとんどの曲で素晴らしいギター・ソロを披露してくれた一方、案外、曲によって得意、不得意があるようで、確か「Blue Room」(ペリー・コモ)だったかな?では途中でギター・ソロを諦めて、照れ笑いしながら“ダメだ~”という表情で頭を抱えてしまったり。そして行き場を失ったバンド演奏陣を見かねて、マリーがすかさず低い声で「サヤ~!」と。“あなた何とかして~!”みたいな。そして笑顔でソロを弾くサーヤさん。でもこんな展開もバンド間の信頼と小さな箱ならではのライヴが成せる楽しい瞬間でしたね。

で、曲目については正直良く分かりませんでした。メモも取りませんでしたし…。なんとなく耳馴染みのあるような曲を沢山演ってくれましたが、私は勉強不足で、スタンダードやポピュラー・ソングについては曲名までビシッと分からないんですよね~。新作からの曲も含めて、もう記憶が曖昧になっています。でも本編最後に演った曲は覚えています。トラディショナル・ブルースの「Sweet Lovin' Ol Soul」。元祖オールド・タイム・レディーであるマリア・マルダーが05年のアルバムでタイトル・トラックとして取り上げたことで有名な曲ですね。こういう曲で締めるマリーはやっぱり素敵な人ですね。ドスの効いたマリア・マルダーとはまた違う、マリーならではの迫力とブルース・フィーリングに溢れた素晴らしい歌声でした。これは本当に痺れました!

アンコールはトミー・デイビーのソロ・ギター演奏で終了。マリー・マクギリスのソロ・コンサートというより、マリー・マクギリス・フューチャリング・トミー・デイビーといった内容でしたが、スタンダードとジプシー・スウィングが見事にブレンドされた素晴らしいライヴでした。良い歌に、最高の歌声、そしてホットな演奏。これさえあればって感じでしたね!


さて、こんなアットホームな空間でしたから、もう一つお楽しみがありました。私は一番後ろのカウンターのところで観ていたのですが(一番後ろといっても、前から数えて3番目の席…)、休憩時間にマリーが私のすぐ横に来てカウンターごしにちょっと困ってる様子。そして意を決したように「お・み・ず・くだざ~い!」みたいな。ちょっと可愛かったです。で、私の隣のお客さんがマリーにサインを頂いてたので、すかさず私も便乗してサインをもらいました!

「ワッチャ・ネイム?」みたいに聞かれたので、「リョージ!」と答えましたら、何だか困ってる様子だったので、「R、Y、…」と指で机に書きながら教えていきました。するとマリーも私の後を「R、Y、」と楽しげに復唱しながら書いてくれました。しかし順調に「RY」まで書いた後、何故か「ユー!」と言いながら、あろうことか“R”と“Y”の間に小さな“U”をねじ入れてしまったのです…。「え~!!!」って感じでしたが、ま、それもいい思い出ということで。その後の“O、J、I”は上手くいきました。サイン以外にもメッセージを書いてくれて、嬉しい限りです!

それにしても満足に自分の名前の綴りすら説明できない私の英語力にちょっぴり悲しくないました。しかしマリーは何故“U”を入れたかったんでしょう???


*上の写真はマリー・マクギリスの最新作「SITTIN' IN THE CATBIRD SEAT」。バックにはジャネット・クラインのパーラー・ボーイズのメンバーも何人か参加していまして、ジャネットが今年のフジロックに出演した際にバックで来日したジョン・レノルズ(G/Banjo)とベニー・ブライダン(Violin)も居ます。彼等の演奏とマリーの歌声からは、ビング・クロスビー、ビリー・ホリデイ、ファッツ・ウォーラー、エラ・フィッツジェラルド、ベッシー・スミス、ベニー・グッドマンなど、オールド・タイム・アメリカンな息吹がたっぷりと味わえます。そして下の写真がサインを頂いた裏ジャケット。

また、マリーの今回の来日の真の目的は、実は大阪のスウィート・ホリワイアンズとレコーディングすることに有り、そのアルバムが来年夏にリリース予定だとか。このスウィート・ホリワイアンズというバンドも私は良く知らないのですが、昨晩のジプシー・バカボンズにしろ、なんだか日本も侮れませんね。しかもこのレコーディングは、日本で「SITTIN' IN THE CATBIRD SEAT」が発売される前から決まっていた話しのようですし、こんな海を離れた島国のバンドと交流のあるマリー・マクギリスって、いったい何者ですか?