ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

アーロン・ネヴィル

2008-10-24 20:16:45 | ソウル、ファンク
AARON NEVILLE / BRING IT ON HOME...THE SOUL CLASSICS

アーロン・ネヴィル。ソウル史上最もマッチョな肉体を持ち、最も天使に近い声で歌う男。

ネヴィル・ブラザーズの来日公演での見所は? ま、色々ありますよ。って言うか全てが見所なのですが、まぁ、何は無くともアーロン・ネヴィルです!

何しろ、兄弟の中で最もソロ・シンガーとして成功を収めたのはこの人だからです。3度のグラミー受賞に輝き、ネヴィルズ結成以前にも「Tell It Like It Is」という全米2位の大ヒットを放っています。そしてネヴィルズでの成功以降、何枚ものソロ・アルバムを発表し、作品数では本体のネヴィル・ブラザーズ以上です。人気の面でも本体を上回っているかもしれません。

とにかくその歌声! 甘く滑らかな地声と天空から降り注ぐようなファルセット。人はそれを“ゴールデン・ヴォイス”と讃えます。そしてその黄金の声を震わすように、そして信じられない高低差と振り幅で次々にコブシをまわす歌唱法は、まるで山々にこだまするヨーデルのようでもあり、それは“山彦唱法”とも“黒いヨーデル”とも評されます。

アーロンの歌唱法のルーツについては古いドゥー・ワップやカントリーのヨーデルなどがあるそうですが、それにしてもユニーク。こんな歌い方する人、他にいませんよね? アーロンの後にも先にもアーロン無し。まさにワン・アンド・オンリーなシンガーなのです。

そんなアーロン・ネヴィルのデビューは1960年。アラン・トゥーサンのプロデュースによる「Over You」でした。今ではアーロンといえばバラードというイメージですが、この曲は以外にもロッキンなダンス・ナンバーでした。実はアーロンの滑らかな歌声はスピード感があり、アップ・テンポの曲も良いんですよ。90年代以降のソロ作でもチャック・ベリーをカヴァーしたりしてますしね。ですがやっぱり注目はスロー・ナンバー! 何しろネヴィルズの初期、外部プロデューサーとの折り合いが上手くいかず、ネヴィルズらしい作品が作れなかった頃、そんな苦しい時代も、「Arianne」や「Drift Away」など、アーロンの歌うスロー・ナンバーだけは高水準を保っていましたから。さらにアルバム「YELLOW MOON」以降はディラン・ナンバーの「With God On Our Side」など、まさに神が付いたかごとくの素晴らしさです。

そしてアーロンの歌唱は、その艶やかな性質はもちろん、リズム感というかキレの良さは黒人以外の何者でもないのですが、案外カントリーにも通じる土っぽいおおらかな魅力もあり、これがまた堪らないのです。特にソロ作ではそんな魅力を開花させた素晴らしい作品を残しています。

またアーロンの場合、その歌声にただただ感動させられるだけではなく、トロっとした安らぎを覚えます。それはアーロンがソロ・シンガーとして秀でているだけではなく、デュエット・シンガーとして名を馳せいることと無関係ではありません。

彼のデュエット・パートナーとして知られるリンダ・ロンシュタットは「アーロンと歌っていると、舞踏会のシンデレラみたいな気分になる」と語っていたそうです。またリンダ以外にもトリーシャ・イヤウッドやレイチェル・ランパなどと名デュエットを残しています。実はアーロンが受賞したグラミーの3曲は、どれもデュエット・ナンバーでして、2曲がリンダ・ロンシュタット、もう1曲がトリーシャ・イヤウッドとのデュエットでした。もちろんどれも極上の味わい。

ちなみに私事で恐縮ですが、今から10数年前、私が結婚したときの披露宴で、キャンドルサービスのバック・ミュージックを自分で選べると言われ、妻の希望も聞かずにアーロンの歌う「Ave Maria」と、リンダとのデュエット「Don't Know Much」の2曲を選びました。なので未だにこの2曲を聴くと「あ、ロウソクに火をつけなきゃ…」みたいな気分になります。ちなみにもし、もう一度結婚式を挙げるようなことがあれば、その時はレイチェル・ランパとの「There Is Still A Dream」を使いたいです! すいません、どうでもいい話ですね…。

さて、ネヴィル・ブラザーズの来日公演。アーロンは何を歌うでしょうか? とにかく名曲が多すぎて困ります。12年振りの来日ですから、定番の「Tell It Like It Is」や「Amazing Grace」は外せないでしょうね。個人的には「Wildflower」や「Drift Away」あたりを所望したいところですがいかがでしょうか?


*上の写真は現在のところアーロン・ネヴィルの最新作「BRING IT ON HOME...THE SOUL CLASSICS」。タイトル通りソウル・クラシックのカヴァー集。こちらではメイヴィス・ステイプルズとチャカ・カーンとデュエットしています。






こちらはリンダ・ロンシュタットがアーロン・ネヴィルをフューチャーした89年作「CRY LIKE A RAINSTORM, HOWL LIKE THE WIND」。グラミー受賞の2曲「Don't Know Much」と「All My Life」を含む4曲をデュエットしています。これがアーロン・ネヴィル黄金時代の始まりです。


リンダがデュエットの成功を受けてプロデュースに携わった、その後のアーロンのソロとしての方向性を決定づけた実質的な1stアルバムと言える作品。大陸的な大きな包容力が素晴らしい作品。「Ave Maria」も収録。


「RHYTHM COUTRY & BLUES」と題された、リズム&ブルースとカントリーの対決、いや共演盤。両界から大物達がこぞって参加し夢の共演を繰り広げています。ここでアーロンはカントリー界の歌姫トリーシャ・イヤウッドと「I FALL TO PIECES」をデュエットし、見事にグラミー受賞。


2000年リリースのアーロンのソロ作「DEVOTION」。数あるアーロンのソロ作の中でも最もソウルフルで、私はこれが一番好きです。レイチェル・ランパとの強力デュエット「There Is Still A Dream」も入ってますし!



ネヴィル・ブラザーズ

2008-10-24 12:16:19 | ソウル、ファンク
ジョン・クリアリーの次はネヴィル・ブラザーズだー! という訳でネヴィル・ブラザーズの来日公演が近づいてきました。12年振りだそうです。体感的にはもっと経ってるような気もしますが、それだけ待たされたということなのですね。

文屋章さんのブログ「boonlog」によりますと、来日メンバーはこんな感じだそうです。

Art Neville (keyboards., vo.)
Charles Neville (sax)
Aaron Neville (vo., tambourine)
Cyril Neville (percussion, vo.)
Willie Green (Drums)
Michael Goods (Keyboards)
Makuni Fukuda (Guitar)
Chris Severin (Bass)

アイヴァンやイアンといった息子達がいないのは残念ですが、とりあえずウィリー・グリーンの名に一安心です。やっぱりこの人がいないとね~。彼のパワフル&ファンキー・ドラムがあってのネヴィル・ブラザーズだと私は思っています! しかしネヴィルズの最新作「WALKIN' IN THE SHADOW OF LIFE」(05年)には彼の名がクレジットされていなかったのです…。ですがちゃんとライヴでは叩いていたんですね! そしてそのウィリーと今回タッグを組むベーシストはクリス・セヴェリン。この人はアラン・トゥーサンのバックでも知られる人ですね。昨年はトゥーサンのバックで来日し素晴らしいプレイを披露していましたから、このリズム隊は期待出来ます! ギタリストのマクニ・フクダはニューオーリンズ在住の日本人ギタリストだそうです。ネヴィル・ブラザーズのメンバーになって凱旋帰国なんて、素晴らしすぎる!

さて、現在予習を兼ねてネヴィルズの伝記本「魂の宿る街ニューオーリンズから - ネヴィル・ブラザーズ自伝 -」(写真)を読んでます。随分前に出た本ですが、部分的にはかじっていたものの通しで読むのは初めてだったりします。これが面白いんですよ。兄弟それぞれの語りが時系列に沿って並べられてるだけなのですが、4人それぞれの紆余曲折な人生が、本人の言葉で語られるだけにリアリティがあって引き込まれます。ニューオーリンズという街と人種差別に始まり、窃盗、ドラッグ、女性、投獄…。あの至福の音楽の陰には一筋縄では行かない歩みがあったようです。もちろん、50年代~60年代のニューオーリンズR&B周辺、ラリー・ウィリアムスとの邂逅、ミーターズの微妙なメンバー関係、ネヴィルズ結成のいきさつなどなど、興味深い話がてんこもりです。そして兄弟、家族の絆こそががこのバンドの創造力とエネルギーの源泉なんだとあらためて感じさせられました。色々悪いこともしてきたようですが、やっぱり素晴らしいバンドなのです!

いや~、ライヴが楽しみです!