風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

今年の箱根駅伝から

2012-01-07 03:32:13 | スポーツ・芸能好き
 正月は、バラエティ番組に食傷気味で、箱根駅伝が恰好の箸休めになります。
 それにしても、沿道の観衆を見ていると、関東学連が主催して関東チャンピオンを決める地方大会に過ぎない箱根駅伝が、これほどの人気を博するのが、関西人の私には不思議ではあります。
 しかも今年は詰まらないくらい、新・山の神の柏原をはじめ、十区間中六区間で区間賞を獲った東洋大が、往路・復路・総合で大会記録を大幅に更新する圧倒的な強さを見せて優勝しました。昨年、史上三校目の大学駅伝三冠(出雲、全日本、箱根)を達成した早稲田大に僅か21秒差の二位に敗れて、その悔しさをバネにこの一年間精進したという、メディアが好む美談だけで説明できるとは到底思えません。そのハングリーさは半端ではありません。
 ハングリーさという意味では、花の二区で、昨年の金栗杯を獲った東海大の村沢を破って堂々の区間賞を獲得した青山学院大の出岐も、天晴れと言うべきでしょう。データの上では、どんなに村沢が1万メートルに強くても、それは見るからにトラックの走りであり、五区23.4キロの勝負では、昨夏のユニバーシアードのハーフマラソンで6位入賞の実力をつけた出岐の方に、軍配が上がったということなのでしょう。元祖・山の神の今井正人ですらも、箱根駅伝では無名だった埼玉県の公務員ランナー川内優輝に、先の福岡国際マラソンで勝てなかったように、距離の壁というものは無視できません。しかし、距離の壁以上に、精神的なハングリーさあってこその快走だったと思います。
 失われた10年が20年になる今の日本に最も欠けていると思われるのは、月並みですが、東洋大や出岐が見せた精神的なハングリーさだろうと思います。昨年は、東日本大震災を経験し、日本人にとってコミュニティの重要性が再認識され、身近には、一人で生きていくのは寂しいこと、芸能界に俄かに結婚ブームが現れたのも偶然ではないと思いますし、昨年をよく表現する漢字として「絆」が挙げられたことに共感した日本人は多かったと思います。TPPが新自由主義を想起するものとして思わぬ逆風が吹き荒れたのは、この文脈の中で必ずしも唐突ではなかったと思います。こうした日本的なコミュニティの暖かさと強さを大事にしつつ、それでも経済はグローバルに戦っていかなくてはならない、その折り合いをつけるために、精神的なハングリーさを、豊かな日本、とりわけ私の子供たちも含む若い日本人に涵養させることが出来るかが課題であり、私も微力ながら関わっていきたい、関わって行かなければならないと思っている領域です。
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