風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

政権人事を巡って

2024-05-18 09:32:55 | 時事放談

 今どき、政治のトップ一人だけで何でも出来るものではない。自由・民主主義的な体制では権力を集中させず、モンテスキューに代表されるように三権を分立させる工夫を重ねて来たことが知られるし、逆に中国やロシアが独裁者のなすがままで権威主義体制を強めているのは、それなりの経緯がある。

 習近平は、2012年の政権掌握以来、反腐敗闘争を仕掛けて、政界浄化を期しているかのように見せかけて、かねて不平不満を抱いてきた庶民のガスを抜こうとしているのだと実しやかに語られ、西側世界に仄かな期待を持たせたことがあったが、何のことはない、敵を粛清する権力闘争と変わらないことを疑う者はいなくなった。今や共産党独裁ではなく習近平独裁となり、イエスマンばかりで周囲を固めるばかりに、彼にnoと言える人がいなくて、意思決定において独裁政権に典型的な危うさを孕むまでになり、ユーラシアグループは昨年の十大リスクの二番目に「絶対権力者」習近平を挙げた。

 ロシアも、プーチンの出自から旧KGB出身者で周囲を固め、盤石の警察国家を作り上げたからこその権威主義体制である。ウクライナ侵攻当初に想定外が続出し、短期間で終わるはずの「特別軍事作戦」が、アフガニスタン侵攻を越えるほどの泥沼になりかねない情勢は、独裁者に特有の意思決定の脆さのあらわれだろう。

 かかる次第で、政権の人事には注目しないわけには行かない。

 台湾の次期総統が四月末に国家安全保障チームの人事を発表した。基本的に現政権からの残留組を充てることで、台湾の対中政策を大きく変えるものではないことを示唆し、バイデン政権を安心させたと言われる。立場上、アメリカの意向を受けないわけには行かないし、そもそもヨーロッパと中東で紛争が続き、これ以上、アメリカの力を分散させるわけには行かないことは、台湾にとってこそ重要であろう。

 さて、それでアメリカである。秋の大統領選の行方はなお混沌としているが、三権分立では議院内閣制より厳格とされるアメリカで、果たして行政のトップ一人で国の行方が変わるはずはないと思いたいし、実際に2017〜21年では何だかんだ言ってエリートが支えて、トランプ氏の思い通りにならなかったではないかと思いたいところだが、冷や水を浴びせる記事があった。「『トランプ2.0』欧州覚悟を」とのタイトルでFT紙エドワード・ルース氏が書いたコラムを日経が転載したものだ。トランプ氏はタイム誌の取材で次のように語ったそうだ。「今回の私の強みは多くの人物を知っていることだ。私は今や良い人も悪い人も、愚かな人も賢い人も知っている。最初に大統領に就いた時は殆ど誰も知らなかった」と。なるほど、前回、トランプ氏の暴走を抑えられたのは、そういうことだったのだろう。あの時以上に世界の分断が深まるご時世に、トランプ氏のような同盟軽視で予測不可能な人にリードして欲しくないと、以前、ブログに書いたが、類は友を呼ぶであろうトランプ2.0政権の人事を思うと、益々「もしトラ」は勘弁して欲しいとの思いを強くするのだった。

 

 

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