風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

ハロウィン選挙

2021-11-03 00:26:23 | 時事放談
 ハロウィン当日に衆院選があった。日経新聞朝刊は一面で「自民、単独で安定多数」と書きたてる一方、小さく「立民はふるわず」と撥ねつけたが、私は、自民も立民も維新もそれなりの勝者だったと思う。奇を衒うわけではない。
 それにしても予想外のことが続出した選挙だった。
 先ず、自民党が261議席という絶対安定多数を獲得するとは誰も予想しなかった。メディアは、12年前の「政権交代。」とまでは行かないまでも、ある種の地殻変動を予想して浮かれていた(私は白けた目で眺めていた)と言わざるを得ない。開票が始まる31日20時ちょうどの各テレビ局の予想議席数ですら以下の通りで(村上和彦氏による)、皆さん見事に外した(フジはこの時点でも自民党は過半数割れすると見ていた)。出口調査ではサイレント・マジョリティ(隠れトランプ支持者のように、あるいは日本のリベラルのように声をあげるでなし、出口調査を受け付けないが、自民党を静かに支持する層)を見誤ったとする見方がある。
   日テレ   自民 238    立民 114  
   テレ朝   自民 243    立民 113
   TBS     自民 239    立民 115
   テレ東京  自民 240    立民 110
   フジ     自民 230    立民 130
   NHK     自民 212~253 立民 99~141
   結果     自民 261    立民  96
 自民党は、序盤の劣勢予想を受けて、関係者のお尻に火が付いて、終盤で追い上げたと言われる。甘利さんは小選挙区で落選(比例で復活当選)したものの、最後の数日は他候補の応援を止めて地元に貼りついたそうだ。その必死さを、選挙活動だけでなく、日頃の政治活動でも維持して欲しいものだ(笑)。いずれにしても、公示前の276議席から261議席まで減らしたとは言え、二か月前のスガ政権末期の世論調査からは大敗が予想されただけに、その後の岸田さんが頼りなげに見えても見事に復活したという意味では、スガさんが身を引いた潔さは特筆すべきかも知れない。あるいは最大の勝因はコロナ禍が落ち着いていたことかも知れない(笑)。岸田さんご本人は一応の「信任」を受けたと言われるが、政権発足後、まだ何もしておらず、ただ岸田政権の布陣に、人事刷新による出直しを認めるか否かという、よく分からない「信任」選挙だった。
 次に、立憲民主党と共産党をはじめとする選挙協力は、メディアでは「不発」に終わったと評判が悪いが、メディアが予想を外した責任逃れか恨みつらみであって、枝野さんが一定の評価を下されたのは負け惜しみでも何でもなく、それなりに機能したと言うべきだろう(しかし、これは小学生でも分かる算術の論理であって、大義はない)。その証拠に、共同通信の集計によると289選挙区中、2割を超える64選挙区で当選者と次点の差が1万票未満の接戦だったそうだ。そして、神奈川13区で立民の新人候補が甘利明・幹事長を破り、東京8区では石原伸晃・元幹事長を落選に追い込んだ(選挙の元締めである自民党の幹事長が小選挙区で敗北するのは初めて)。そもそも公示前の110議席が(希望の党解体を受けて)水膨れしていたのであって、野党第1党は旧・民主党から立民に至るまで、その時々の野党の分裂度合いにもよるが50台から70台で推移したことからすれば、96議席はよく健闘したと言うべきだろう。選挙協力なかりせば・・・弱小政党が理念は別にして徒党を組んで一丸にならなければ、ここまで持たなかったのではないか。
 そして維新は公示前の11議席から41議席へと4倍近く増やして第三党にまで躍進したことには、正直なところ驚いた。2012年当時の勢いを取り戻しつつあるということだろう。此度の選挙の最大の勝利者であるのは間違いない。大坂の19の選挙区では15人が立候補して全勝し、私が長年住み慣れた高槻市を地盤とする立民候補者・辻本清美さんを落選させた。大阪はコロナ第五波で医療崩壊の苦労があったとはいえ、大阪の人は吉村知事の頑張りはしっかりと見極めていたのだと感心する。もっとも、大阪在住の知人によれば、「橋下さんの脅しにも似た強引さと、松井さんののらりくらりとした胡散臭さがあったからこそ、コロナ禍の吉村さんの一所懸命さにくすぐられた」ということらしい(笑)
 個別に見て行くと、さらに驚くことが多々あった。甘利明さんについては「金銭授受」を巡る問題が逆風になったと言われるが、前回(2017年)選挙前に発覚してなお当選していたことからすれば、安倍さんの安定政権を支えた功労者一人から、岸田政権が人心一新する中で旧態依然を引き摺る3Aの一人へと、選挙民の印象が変わったとしか言いようがない。アメリカが抜けた後のTPPをまとめあげた剛腕ぶりを評価するだけに、複雑な思いだ。石原伸晃さんは危ないと言われていたが、まさか落選するとは思ってもみなかった。自民党の実力者であり、惜しい人材である。旧・民主党首脳の一人・イラ菅さんが長島昭久さんを下したのは、個人的には納得できない。選挙民は何と忘れっぽいのだろう(苦笑)。小沢一郎さんが小選挙区で敗北したのは感慨深い。時代の風はもはや小沢さんには吹かなくなって久しい。
 終わってみれば、投票率は前回を上回ったとは言え、小選挙区55.93%、比例代表55.92%と、戦後3番目に低いものだった。全ての衆議院議員に「喝」を入れたい。野党共闘の立民(110→96)・共産党(12→10)ともに議席を減らし、共産党との共闘に消極的だった国民民主党は8→11へと3議席増やしたことからすれば(そして、維新が自民と立民への不満の受け皿となったことは言うまでもない)、単なる数合わせで、理念なき野合に将来はないことを、当該野党の方々は肝に銘じて欲しい。英米のように二大政党による政権交代を常態化して多少なりとも緊張感のある政治を実現するには、今の勢力分布で見果てぬ夢を追うより、ヌエのように右から左まで翼を広げる自民党を穏健保守と穏健リベラルで二つに割って、維新や国民民主や一部の立民を糾合してガラガラポンして大同団結させる(立民、共産、社民の極端なリベラルは泡沫化させる)しかないと、個人的には思っているが、どうだろうか。実際のところ、私の中では、自民党総裁選での政策論争の方が、衆議院議員選挙よりも余程盛り上がったのだ。既得権益を失う自民党や、泡沫化する極端なリベラルの方々には受け入れられないのかも知れないが、これこそ見果てぬ夢なのだろうか。
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