風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

ロンドン五輪・これから

2012-08-21 01:59:04 | スポーツ・芸能好き
 今日、ロンドン五輪・日本代表メダリスト76名の内71名(負傷療養者を除く)が銀座を凱旋しました。20分間のパレードのために集まった観衆は、主催者発表によると50万人、俄かに想像がつきませんが、夜のニュースで見て、あらためてその黒山の人だかりには目を見張りました。泉麻人さんが「パワースポット」と呼びましたが、言い得て妙です。感動を与えてもらえた感謝の気持ちとともに、パワーを与えてくれた源泉にあやかりたい、パワーを身近に感じたい気持ちもあったかも知れません。
 「ロンドン五輪」シリーズの最後に、日本人の活躍を総括したいと思います。
 先ずは日本のメダル獲得数が、金こそ7個と前回をも下回ったものの、銀14、銅17、合計38個は、これまで最多だったアテネの37個を超えて、史上最多となりました。なにしろ開会式の翌日から閉会式まで、競技(決勝)が行われた16日間、途切れることなく連日メダル・ラッシュが続いたのは、画期的なことではなかったでしょうか。これだけ活躍を目の当たりにして、金メダルが少ないことを恨めしく思う声もなくはありませんでしたが、いつしか感動の渦にかき消されてしまいました。しかしスポーツの世界は、科学技術の世界と同じで、やはり2位ではダメだと思いますので、敢えて、奮起を促したいと思います。因みに、中学生の子供の夏休みの宿題を見ていて、金・銀・銅は経済的な価値だけでなく、比重も違うことにあらためて気が付きました。銅8.96、銀10.49に対して、金19.32とほぼ倍の重みがあります。なんだか象徴的と思いませんか。
 また、今回は、日本人女性の活躍、所謂「女子力」が目立つ大会とも言われました。確かに、男女の柔道で唯一の金メダルをもたらした松本薫、レスリング四階級中三階級を制した吉田沙保里・伊調馨・小原日登美、五輪で初のメダル(銀)を勝ち取ったバドミントン女子ダブルスと卓球女子団体、なでしこジャパンの(二度の大舞台で期待通りの活躍で)銀メダルも立派でしたし、女子バレーは実に28年振りの銅メダルでした。しかし敢えて言わせてもらうと、男子とは違って競技として発展途上故の有利なところがあったのではないかと思います。いずれ男子の競技と同じで先行者利得は失われていくのではないでしょうか。そういう意味では、男子も、体操男子個人総合の内村航平の予想を裏切らない金メダルは圧巻でしたし、48年振りの男子ボクシング金メダルがありましたし、競泳男子400メートル・メドレーリレーやアーチェリー男子個人やフェンシング男子フルーレ団体の銀も素晴らしかったし、健闘しました。
 そして、日本の伝統とも言うべき「チーム力」による勝利が目立つ大会とも言われました。競泳の入江陵介が言った「27人で一つのリレーをしていると思っていました」という言葉に象徴されます。確かにチーム・プレーによるメダル獲得が目立ったのは事実であり、メダルには届かなかったものの、12年ぶりに決勝進出を果たした新体操フェアリージャパンもよく頑張りました。4連覇を達成したロシアは飛び抜けていましたが、点数を見ると接近しており、7位とは言えメダルまで遠いわけではなく手応えを感じたことでしょう。これらは何れも単なるチーム力の結果ではなく、個々の技量を上げた上でのチーム力だったと言うべきですし、更に文字通りのチームだけではなく、姉妹や夫婦などの家族や選手を支えるコミュニティの支えもあったと言うべきです。その象徴が競泳男子400メートル・メドレーリレーで、層の厚さは間違いないところですし、チーム一丸となっての勝利への執念が、水泳王国であり体育会の国オーストラリアをすらも上回ったのは、まさに水泳ニッポンの真骨頂でした。今年4月、選考会を経てロンドン五輪代表が決まって選手が集合したとき、とったアンケートの最初の項目は「トビウオジャパンのチームワークを高めて目標を達成するためにあなたができる行動を3つあげなさい」というもの。個人プレーの水泳で、個人プレーを超えてデータやノウハウの共有が図られ、チームとしての力が発揮された原点は、このあたりにあったのではないかと思います。
 こうして日本人の活躍を見ていると、失われた二十年に打ちのめされた日本という国家の可能性をも感じさせます。年齢の壁を超えて二大会ぶりにメダルを獲得した室伏広治のように、はたまた三連覇は叶わなかったものの、メドレーリレーでは見違える泳ぎを見せて銀メダルに貢献した北島康介のように、体格や体力で劣るところを卓越した技術によって乗り越えることが出来ること、そして、個々人が技術を磨いた上で、1+1が2を超え、1+1+1が3を超え、更に1+1+1+1が4を超えるチーム・プレーを発揮出来ることは、これからの日本の行く末を暗示します。失われた10年は、間違いなく、1990年代以降、個別最適を進めて、かつて日本が誇ったチーム力を忘れてしまったからに他なりません。個々のレベルを引き上げた上で、あらたな総合を施すことによって、今の閉塞感を打ち破ることが出来るのではないか。
 しかし、今のモメンタムに水を差すつもりはありませんが、金メダルだけが全てではありません。今日、銀座を凱旋した車両の最後に、東京オリンピックを招致する委員が占めていました。「2020年のニッポンに、この感動をつなげよう!」と。その時には、補助金を注ぎ込んで国策(都策?)によって金メダルを増やすのではなく、補助金を注ぎ込んでいろいろな競技を続ける選手たちの生活基盤を与え、活躍した結果として金メダルを獲得できるというような、文化としてのスポーツが日本においても根差して欲しいものだと思います。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ロンドン五輪・おわりに | トップ | 東京タワーふたたび »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

スポーツ・芸能好き」カテゴリの最新記事