ブルーシャムロック

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何も言うな。

2015-12-07 18:21:30 | 信・どんど晴れ
「女将」
松本佳奈はポツリと女将に言う。
「今、女将のためにやっている仕事に反抗する気持ちすら失いました。」
表情を代えずに言う佳奈に、女将は
「そうかい。それはいささか織り込み済みだったんだよ。でもね
面白いことを教えてあげるよ。」
と、佳奈をからかうように顔を覗きこむ。
「なんなんですか。」
佳奈は質問した。
「そうだねぇ。あんたが徳之島と加賀美屋に来た時にね。夢を見た。
私には一人娘がいてね、風景が東北か北海道みたいなんだ。
まだ、雪の残る春が浅い時でね。娘がだまって東京に出ていった夢だった。
私には娘なんていないのに、なんだか生々しい。東京も行ったこともない。
なのに、娘が去っていく電車の中で{東京に行く}とか言っていた・・・。
そして私は呼び戻すことができなかったんだ・・。
もしかしたら、正夢なのかもしれない。
と思って、かつて東京にいたあんたのことかもしれないと私は確信し、
あんたを鍛え直そうと思って、古仁屋に足を運んだ際に、あんたをみて
私の後継者にしよう。と思ったんだ・・。」
世界に入っている女将を見て。
「そんなわけなんですか。でも、東北だか北海道というのがなにやらすごいですね。」
と佳奈は答えた。
「うん。あの東北だか北海道の風景の人の無念があんたを呼んだのかもね。」
女将の表情は揺るがない。
「私なりに解釈しますが、多分東北だか北海道の風景の人は
我々とは違う、日本に住む人なんではないか。その人の情念が
私を呼んだのかな。」
佳奈がそんなことを答えたのは、もう逃げられない自分を感じたからだった
「逃げられない自分を感じたのかい?」
女将は少々意地悪そうに答えた。
「はい。」
佳奈の表情は気の抜けたコーラみたいだった。でも、表情には生きていこうと思う
表情もあった。
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