ブルーシャムロック

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純情の秋田市に捧げる牡丹_14

2008-12-03 18:19:25 | 信・どんど晴れ

翌日の夜、佳奈たちは淡雪につれられて車で15分ぐらいの高台にある団地に向かっていた。
「団地に誰が居るんだよ。」
出発する前、佳奈は淡雪に聞いていた。
「高校時代の恩師よ。」
淡雪はそういって久留美と会話に戻っていた。
助手席に久留美がのっていて、佳奈は後ろの席に座らされた。
団地の駐車場に車を止める。
団地の表示名は"3-a"と表示されている。
「此処の何階なんだ?」
佳奈は淡雪に面倒くさそうに質問する。
「4階よ。エレベーターがないのよ。」
様式的に1960/70年代頃に作られた感じがする。
壁も頗割れ、汚れも目立つように思う。
「仕方がないな。」
佳奈は苦笑する。
「少し疲れるね。」
久留美も言う。
コンクリート製の階段を上がり、大体数十メートル進んだとき、
先頭にある淡雪の足が止まった。
444と書かれている。
表札には、「陣内」と書かれている。
インターホンを押す、淡雪
「ゴメンクダサーイ!! 横手です。」
はーいという声がしてドアが開いたときに出てきたのは女性だった。
「横手さん?主人は二女たちとテレビを見ているわ。長女は淡雪が来るから
バイオリンを披露したいと言っていたわ。」
とツーテールの女性は答えた。
「ごめんください。」
淡雪の次に入ってきた久留美と佳奈が挨拶をする。
「あれ、横手さん、大学のお友達?」
女性は答えた。
「はい。学校の友達ではないんですけれども・・。」
そういってリビングまで移動する。
「あけましておめでとうございます。」
テレビを見ていた、男に淡雪は挨拶をした。
「あ、横手さんあけましておめでとうございます。で帰ってきたんだ。」
男はめんどくさそうに答えた。
「紹介します。私の高校時代の恩師である陣内健三郎先生。」
「初めまして。私は淡雪のRoommateの松本佳奈です。」
「同じく淡雪のRoommateの高槻久留美です。」
恩師の陣内先生は些かムサイ感じがする。眼鏡を掛けたもさいかんじの先生。
しかし、瞳にやさしさがともっている。奥さんが美形なので、なんとも不釣合だ。
彼が注目したのはやはり、佳奈の方だった。久留美はあまり自分たちと変わらない
と感じたのかもしれない。
「松本さんは、出身は沖縄の方?」
先生は率直に聞いてみた。
「沖繩じゃないんですけれども、その近くの加計呂麻島なんです。」
考えて・・。
「僕理系の教師なんだけれども、学生時代からの友人が生物の教師で琉球群島に
足を運んで、その自慢話ばかり聞くんで、なんとなく分かる。たしか奄美大島の隣の
細長い島じゃないかな・・・。」
と答えた。
「そんなに答えるのは先生が初めてです。関東に上京して自分の島のこと知らない人が
多いんで・・・。」
秋田に自分の島のことを知っている人がいたのが佳奈は純粋に嬉しかった。
「なんだか、佳奈ちゃん嬉しそうだよね。加計呂麻島しっているひとがいたんで。」
久留美が淡雪に耳打をした。
「うん。上京してから佳奈ちゃんさびしいんだよ・・・。今度ある人を私たちが住んでいる家に
招こうかな。」
淡雪はたくらんでいるようである。
戸棚が空き、素っ頓狂な声が聞こえた。
「あけましておめでとうなのー。」
だいたい6~7歳の女の子だろうか。丸い顔のロールがかった髪をしている。
「長女です。」
先生は答えた。
「淡雪が帰ってきたからバイオリンを披露するの・・・。」
彼女が弾いた曲は「安里屋ゆんた」とthe boomの「島唄」だった。
「沖繩の人が来るんで凄く練習したのよ。彼女絶対音感がいいんでバイオリン習わせたら
凄くよくてね。今度仙台の大会に出るのよ・・。」
と我が子の曲に耳を傾けていた。佳奈は苦笑していた。彼女が後に語った言葉は
「奄美の唄は知らないんだな。」である。
しばらく色々な曲が続いたが、次の曲を聴いた久留美は
「たしか是、Bruce Springsteenの"thunder road"じゃなくって?」
といった。
「確かそうかも。いつもお前さんがcdでかけているからなんとも覚えちまったよ。」
と佳奈も補足する。
「そうなの。私は先生の影響でBruce Springsteenのファンになったのよ。」
と淡雪はニコニコしながら答えた。
基本的に洋楽は殆ど聴かずj-pop専門の佳奈にとっては、そういう話は雲の上の話題であった。
難しそうな顔をしていた、佳奈に電話がかかってきた。glayの曲だった。
「もしもし、松本です。あ、彰か。そうか。テニス部の集りか・・・。先生のことか。
たしかに、もさい人だ。そんなのに、心奪われた淡雪が許さない?!なるほどー。
えっ。明日関東に帰るのか?私らはあと二日秋田にいるがな・・。」
通話が終わった後、佳奈は難しい顔になった。
「こういう経緯があって、淡雪と彰は・・・。」


コメント
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