保健福祉の現場から

感じるままに

介護保険の見直し

2017年11月02日 | Weblog
メディウォッチ「福祉用具貸与、上限価格を超える場合には「保険給付の対象としない」―介護給付費分科会」(http://www.medwatch.jp/?p=16541)。<以下引用>
<2018年10月から、介護保険における福祉用具貸与について「上限」設定が行われるが、上限を超える価格を設定している場合には保険給付の対象としない―。10月27日に開催された社会保障審議会の介護給付費分科会で、厚生労働省老健局高齢者支援課の武井佐代里課長からこういった点が明らかにされました。全国平均価格や上限価格が公表されるため、貸与事業者のみならず、ケアマネジャーや福祉用具専門員にも十分な注意が求められます。ケアマネや福祉用具専門員、公表される価格情報をもとに利用者に適切な説明を 介護保険の給付対象となっている福祉用具の貸与・販売、住宅改修について、現在は事業所の裁量による価格(つまり言い値)となっています。このため、同じ製品であっても、一部事業者が極めて高額な貸与価格を設定している事例があると問題視されています。この点について介護保険制度を議論する社会保障審議会・介護保険部会では「貸与価格上限を設ける」「全国の平均貸与価格情報を公表する」「ケアマネジャーや福祉用具専門員が、価格情報や他の製品について利用者に説明することを義務付ける」方針を決定。上限価格は「全国平均価格+1SD(標準偏差)」とすることが昨年(2016年)末に決まりました。10月27日の分科会では、全国平均価格情報や上限価格設定について次のような、より具体的な運用方法案が厚労省から提示されています。▼2018年10月から、既存製品について「全国平均価格情報」や「貸与価格上限」を適用する ▼2019年度以降、「3か月に1度」程度の頻度で、新規製品の価格情報などを整理し、「全国平均価格情報」や「貸与価格上限」を適用していく ▼「全国平均価格情報」や「貸与価格上限」は、「1年に1度」程度の頻度で見直す ▼対象製品は「1か月に100件以上」の貸与件数があるものとする(全貸与件数の98.3%をカバー) この点に関連して武井高齢者支援課長は、「上限を超過した価格を給付対象とすれば、制度として肯定したことになってしまい、利用者負担も増えてしまう。上限設定であるので、超過したものは保険から排除する」旨を説明。上限超過部分が保険給付外となるのではなく、上限を超過する価格を設定した製品については、全額が保険給付対象外となることが明確になりました。例えば、aという製品について、▽B事業所が7000円▽C事業所が6500円▽D事業所が6000円―などと価格設定している場合、国がこれらの情報を収集し、平均価格などが公表されます。さらに、仮に「全国平均価格+1SD」が6800円と計算された場合、この6800円が上限となり、B事業所から貸与される製品a(7000円)は介護保険の給付対象外となる、いうイメージです。各事業所で適正な価格を設定することが求められるとともに、ケアマネジャーや福祉用具専門員は、利用者の不利益にならないよう、価格情報を適切に把握し(国で公表)、利用者に十分な説明を行うことが求められます。このため厚労省は、運営基準の中で▼貸与しようとする製品の特徴や貸与価格、当該製品の全国平均貸与価格を利用者に説明する▼機能や価格帯の異なる複数の製品を利用者に提示する▼利用者に交付する福祉用具貸与計画書をケアマネジャーにも交付する—ことを規定する考えも示しました。地域区分、完全囲まれルールなどを2018年度から適用 分科会では、介護報酬における地域区分の見直し案も提示されました。委員から異論は出ておらず、ほぼ確定したものと考えてよさそうです。診療報酬と異なり、介護報酬では全国を8つに区分けし(級地)、地域によって20-0%の単価の上乗せが行われます。例えば東京23区では人件費が他の地域に比べて高いために、事業所・施設の経営を圧迫しないよう、単価に20%の上乗せが行われます。しかし現行の仕組みでは「隣接地域すべての地域区分が、自地域より高くなる」地域、逆に「隣接地域すべての地域区分が、自地域より低くなる」地域が出てしまうことから、地域区分を一定の範囲から選択できるとする特例が創設されます(当該地域の地域区分の設定値から、隣接地域のうち一番低い、あるいは高い区分までの範囲で選択)【完全囲まれルール】(関連記事はこちら)。厚労省は自治体と協議し、「特例を活用するか」などを確認。2018-20年度における地域区分案を固め、分科会に提示しました。委員から異論は出ておらず、最終決定にこそいたっていませんが、ほぼ確定したものと言えます。なお、単価の上乗せ(上記の東京23区であれば20%)は、単純に「1単位=12円」となるのではあく、サービスごとに「支出に占める介護従事者などの人件費割合がどの程度か」を考慮して行われており、現在、▼訪問介護や居宅介護支援などでは70%(つまり東京都であれば、1単位=10円×〔1+0.2(単価の上乗せ20%)×0.7(人件費割合70%)〕=11.40円▼訪問リハビリや通所リハビリなどでは55%(同じく1単位=10円×〔1+0.2×0.55〕=11.10円)▼通所介護や特定施設入居者生活介護などでは45%(同じく1単位=10円×〔1+0.2×0.45〕=10.90円)―と設定されています。厚労省老健局老人保健課の鈴木健彦課長は、2017年度の介護事業経営実態調査を特別集計して、サービスごとの人件費割合を精査し、上記の割合を見直すべきか否かを検討する考えを示しています。改定率、「プラス」求めるサービス提供側と「マイナス」求める費用負担側とで対立 なお、10月27日の分科会には、2017年度の介護事業経営実態調査結果が報告されました。委員からは改定率に関する意見が出ました。サービス提供側委員(鈴木邦彦委員:日本医師会常任理事、稲葉雅之委員:民間介護事業推進委員会代表委員ら)からは「経営状況は非常に厳しい、2015年度に続く連続のマイナス改定は許されない」といった見解、費用負担者側委員(本多伸行委員:健康保険組合連合会理事、安藤伸樹委員)全国健康保険協会理事長ら)からは「介護保険の持続可能性や、2016年度の臨時改定を踏まえ、マイナス改定とすべき」との見解が出ています。改定率は年末の予算編成過程で議論され、12月中から下旬に決定となります。>
 
時事通信「生活援助ヘルパー、資格要件緩和=訪問介護の新研修創設へ-厚労省」(https://www.jiji.com/jc/article?k=2017103001275&g=eco)。<以下引用>
<厚生労働省は30日、訪問介護サービスのうち料理や洗濯などの家事をする「生活援助」のヘルパーについて、資格要件を緩和する方針を決めた。短期間で資格を取得できる研修制度を2018年度に創設する。11月1日に開かれる社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の分科会で提案する。現在、訪問介護ヘルパーの資格を得るには、約130時間の介護職員初任者研修を受けることなどが条件。厚労省は、生活援助に限って資格取得のハードルを下げ、不足しがちな介護人材をより多く確保したい考えだ。一方、訪問介護のうち排せつや入浴を介助する「身体介護」については、報酬面でも生活援助との差をさらにつけて手厚くする方針だ。生活援助の報酬は引き下げられる可能性もある。>
 
介護給付費分科会(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho.html?tid=126698)の議論が進んでいる。財政制度分科会(http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/index.html)の資料(http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia291025/01.pdf)p67「先⾏実施した+1.14%と平成30年度改定の合計が次期介護保険事業計画の保険料負担に直結することから、保険料負担の増を極⼒抑制する観点からは平成30年度改定においてマイナス改定が必要。」、p70「保険者機能の強化に向けた取組の⼀環として、例えば、⼀定の回数を超える⽣活援助サービスを⾏う場合には、多職種が参加する地域ケア会議等におけるケアプランの検証を要件とするなど、制度趣旨に沿った適切な利⽤の徹底を図るべき。また、⼀定の間隔を空ければ1⽇に複数回所定の報酬を算定可能な現⾏の報酬体系は、必要以上のサービス提供を招きやすい構造的な課題を抱えていることから、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」とのバランスも踏まえ、例えば、1⽇に算定可能な報酬の上限設定など、「⾝体介護」も含めて訪問介護の報酬の在り⽅を⾒直すべき。」、p71「⾼齢者向け住まいに居住する者の在宅サービス利⽤については、必要以上にサービスが提供されないよう、例えば「特定施設⼊居者⽣活介護費」とのバランスも考慮し、報酬を算定できる回数の上限を設定するなどの対応を検討すべき。」、p72「通所介護について機能訓練などの⾃⽴⽀援・重度化防⽌に向けた質の⾼いサービス提供がほとんど⾏われていないような場合には、事業所の規模にかかわらず、基本報酬の減算措置も含めた介護報酬の適正化を図るべき。」、p73「地域医療構想の⽅向性と整合的に療養病床の転換を進めるとともに、効率的な医療・介護サービスの提供体制を構築するため、患者の状態像にそぐわない20対1病床への転換の防⽌のための医療必要度の要件の厳格化等や、介護医療院について、⼈員配置や費⽤⾯での効率化が進むよう報酬・基準を設定するとともに、療養病床の⼊院患者のうち医療の必要度の低い患者については、在宅医療等で対応を進めるような改定内容とすることを検討すべき。」、p74「介護費の適正化などに向けた財政的なインセンティブとして、客観的な指標に基づき⾃治体に対して財政⽀援を⾏う新たな交付⾦を創設することとなっているが、全⾃治体の取組みの底上げを図るためには、あわせて現⾏の調整交付⾦の活⽤によるインセンティブも必要。新たな交付⾦とセットで、調整交付⾦を活⽤したインセンティブの仕組みを導⼊すべき。」、p76「今後、介護費の地域差を縮減に向けて保険者機能を強化していくことが必要であり、在宅サービスについても総量規制や公募制などのサービスの供給量を⾃治体がコントロールできる仕組みを導⼊すべき。」、p77「今後、更に在宅での介護サービスを利⽤者が増加していく中で、在宅と施設におけるその負担の公平性を確保するためには、補⾜給付については、さらに要件等について⾒直しを検討する必要。」、p79「今後、総合事業については、さらに多様な主体によるサービス提供に移⾏していく必要があり、その移⾏状況も踏まえながら、改⾰⼯程表に基づき、軽度者に対する⽣活援助サービスなどの更なる地域⽀援事業への移⾏を進めていく必要。」とあった。最大の注目は、来年度からの介護保険者インセンティブの制度設計であろう。
コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 精神障害者の地域移行 | トップ | 認知症ドライバーと生活支援 »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Weblog」カテゴリの最新記事