保健福祉の現場から

感じるままに

地域医療構想でのデータ活用

2019年02月01日 | Weblog
メディウォッチ「主要手術の公民比率など見て、構想区域ごとに公立・公的等病院の機能を検証―地域医療構想ワーキング(1)」(https://www.medwatch.jp/?p=24624)。<以下引用>
<地域医療構想調整会議において、今年度(2018年度)中にまず「公立病院及び公的等病院の機能改革」に関する合意を行う必要がある。その後、合意内容の妥当性等を検証していくことになるが、その際、「公立病院・公的病院等でなければ担えない医療機能への重点化」が重要な視点となることから、各構想区域において、例えば5疾病5事業における主要症例(胃がん、乳がんなど)にどういった病院が対応しているのか、などのデータを提示していく―。1月30日に開催された「地域医療構想ワーキンググループ」(「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織、以下、ワーキング)で、こういった方向が示されました。2018年12月末、機能改革等について公立の48%、公的等の60%で合意済 2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となることから、今後、医療・介護ニーズが急速に増加していくと見込まれます。そうした中では、より効果的かつ効率的な医療提供体制を構築することが求められ、病院・病床の機能分化・連携の強化を進めていく必要があります。この一環として地域医療構想の実現があげられ、現在、各地の地域医療構想調整会議(以下、調整会議)で議論が進められています。調整会議では、まず「公立病院および公的病院等の機能改革等」について、今年度(2018年度)中に合意を得ることとなっています。ただし、昨年(2018年)12月末時点の合意状況を見ると、ベッド数ベースで▼公立病院は48%(2018年9月末から9ポイント向上)▼公的病院等60%(同8ポイント向上)―にとどまっています。残り3か月、各調整会議での集中的な議論が待たれます。主要症例ごとに、各構想区域のデータから「公立等と民間が競合しているか」など判断 「公立病院および公的病院等の機能改革等」については、「公立病院・公的病院等でなければ担えない医療機能への重点化」が1つの指針として掲げられ、具体的には、▼高度急性期・急性期機能▼山間へき地・離島など過疎地等における一般医療▼救急・小児・周産期・災害・精神などの不採算・特殊部門の医療▼がんセンター、循環器病センターなどの高度・先進医療▼研修の実施等を含む広域的な医師派遣拠点機能―など例示されています。もっとも、こうした機能をどの病院が担っているかは、地域によって区々です。厚生労働省が2017年度の病床機能報告結果を分析したところ、「胃がん・結腸がん・直腸がんの手術治療」「乳がんの手術治療」「冠動脈バイパス手術」「脳動脈瘤クリッピング手術」について、3分の1から半数程度の構想区域では「公立・公的等病院のみが実施している」が、濃淡に差はあれど「民間病院と公立・公的病院等の双方で実施している」構想区域も少なくなく、さらに一部には「民間病院のみが実施している」構想区域もあることが分かりました。例えば「胃がん・結腸がん・直腸がんの手術治療」については、全339構想区域のうち、▼約45%の構想区域(154区域)で公立・公的等病院のみが実施(「2017年6月に当該手術を1回以上算定している病棟が公立・公的等のみ」という構想区域が154)▼約36%の構想区域で公立・公的病院と民間病院の双方が実施▼約3%の構想区域で民間病院のみが実施―しています(約16%の当該区域では実施しておらず、他の区域で手術を受けている)。また「乳がんの手術治療」については、全339構想区域のうち、▼約39%の構想区域(132区域)で公立・公的等病院のみが実施(「2017年6月に当該手術を1回以上算定している病棟が公立・公的等のみ」という構想区域が132)▼約25%の構想区域で公立・公的病院と民間病院の双方が実施▼約3%の構想区域で民間病院のみが実施―しています(約30%の当該区域では実施しておらず、他の区域で手術を受けている)。厚生労働省は、こうした状況を踏まえ、手術等の医療機能ごとに「構想区域を、例えば4つのパターンに分類できるのではないか」との考えを示しました。今年度(2018年度)中に公立・公的等病院の機能改革に関する合意がなされますが、その合意内容について、各種データを活用して、「公立病院・公的病院等でなければ担えない医療機能への重点化」が実現されているかどうかを検証してはどうか、という提案です。【パターン(ア)】手術(例えば胃がんや乳がんなど)を相当程度実施する公立・公的等病院と民間病院とが存在する構想区域【パターン(イ)】手術を一定程度実施する病院(公立・公的等、民間の双方)が数多く存在する構想区域(東京や大阪などの大都市に多いパターン)【パターン(ウ)】複数の公立・公的等病院が一定程度の手術を実施する構想区域【パターン(エ)】複数の病院に手術が核酸し、いずれの病院でも手術実績が低い構想区域 このうち、【パターン(ア)】のような構想区域では、手術を相当程度実施する公立・公的等病院と民間病院とが、「競合」しているのか、「棲み分け」をしているのか、を考えていく必要があります。例えば、どちらの病院でも、患者の重症度や合併症状況が似通っていれば、「競合」していると考えられます。こうしたケースについて、中川俊男構成員(日本医師会副会長)は「公立病院には多くの助成金・補助金が投入され、公的病院等では税制上の優遇がある。一方、民間病院にはそうした支援がない。地域で『競合』している場合には、公立・公的等病院側が身を引くべきである」と強く求めており、当該公立・公的等病院は機能転換を迫られることになりそうです。一方、例えば「重症患者や合併症のある患者を公立・公的等病院が受け入れ、比較的軽症の患者を民間病院が受け入れている」ような場合には、「棲み分け」をしていると考えられます。この場合、当該公立・公的等病院は「「公立病院・公的病院等でなければ担えない医療機能への重点化している」と言え、当該機能は維持すべきと判断されることになるでしょう。厚労省は、「各構想区域がどのパターンに合致するのか(手術別・部位別に見る必要がある)」や、さらに詳細なデータ(5疾病5事業の主要症例に関するデータなど)を提示する考えです。こうしたデータをもとに、各調整会議で「うちの構想区域において、乳がん手術は【パターン(ア)】に該当するようだ。患者の状況などから判断して、●●県立病院と民間の○○病院とは競合していると考えられ、○○病院には十分な余力があるようだ。2019年3月までに『乳がん手術については○○病院に集約していく』という方向で合意したが、その内容に問題ないのではないか」、あるいは「公立の◆◆中央病院と民間の◇◇病院のデータを見ると、乳がん手術については一定の棲み分けがなされているようだ。2019年3月までに『乳がん手術については○○病院に集約していく』という方向で合意したが、重症患者への対応に問題が出る可能性がある。合意内容を少し見直していく必要があるのではないか」といった検証論議をしていくことが期待されます。この点について小熊豊構成員(全国自治体病院協議会会長)は、「受け入れている患者の状態(重症度や合併症の状況など)、患者の利便性(アクセスなど)などを総合的に考えていく必要がある」と強調し、一部データのみに基づく安易な判断に警鐘をならしています。例えば、「競合」しているように見えても、民間病院だけでは地域の要手術患者に対応できず、公立・公的等病院と民間病院とが「協力」しているケースも考えられるためです。中川構成員も、地域の状況・特性を熟知した調整会議メンバーで十分な議論が行われることに期待を寄せています。症例が拡散している場合など、公立病院等の再編・統合の検討も 一方、【パターン(エ)】のような構想区域や、【パターン(ア)】の構想区域でも、症例数の少ない公立・公的等病院では、患者のアクセスなども考慮した上で、▼当該機能を他院への移譲する▼近隣病院と再編・統合する―ことなどを検討する必要がありそうです(症例数の少ない民間病院は自然淘汰されると中川構成員が指摘)。米国メイヨークリニック・スタンフォード大学とグローバルへルスコンサルティング・ジャパン(GHC)との共同研究では、「症例数と医療の質(例えば医療安全)は相関する」ことが明らかになっており、再編・統合等により症例数の確保・医療資源の集約を行い、医療の質を維持・向上していくことが不可欠です。この点、前者の選択肢「一部機能の他院への移譲」には、経営面での課題も生じそうです。当該公立・公的等病院の経営を支えるために当該機能が不可欠というケースもあるためです。そこで中川構成員は、再編・統合や大規模なダウンサイジングなど「公立・公的等病院の大改革が必要」と指摘しましたが、小熊構成員は「公立病院同士でも、再編・統合の議論が難しいケースもある。設立母体がさまざまな公的等病院ではなおさらだ。構想から再編・統合の実現までには10年単位の時間が必要である。さまざまな要素を考慮しなければならない」と実態を紹介しています。>

「地域医療構想ワーキンググループ」(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_368422.html)の資料「手術等における公立・公的医療機関等と民間医療機関の競合状況等について」(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000474973.pdf)p11「手術実績」は「病床機能報告」(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055891.html)、「病床利用率」は「病院報告」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/80-1.html)、「流入・流出入院患者数」は「患者調査」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/10-20.html)で分析されている。病床機能報告(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055891.html)はダウンロードでき、活用が容易であるが、手術実績は1か月間のデータであり、できれば、一年間の実績が出ている「医療機能情報」(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/teikyouseido/index.html)を活用した方が良いように感じる。これは「患者調査」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/10-20.html)にもいえる。「流入・流出入院患者数」は毎年厚労省から都道府県に配布される「医療計画作成支援データブック」を活用しても良いかもしれない。患者住所地と医療機関所在地のクロス集計は今のところ被用者保険分は分析できないが、2020年度分からはできるようになるのは魅力的かもしれない。また、病床種別の病床利用率(前年度1日平均在院患者数/許可病床数)は「医療機能情報」(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/teikyouseido/index.html)で公表されていることは常識としたい。地域医療構想(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000080850.html)を推進するためには、地域医療構想調整会議において、地域のデータに基づき、具体的に協議する必要がある。「医療機能情報」(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/teikyouseido/index.html)については、「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_335126.html)で協議されているが、都道府県ごとのサーバー・バラバラの報告様式ではなく、全国一元化し、データベース化した方が良いであろう。また、「病院報告」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/80-1.html)や「患者調査」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/10-20.html)について、二次医療圏単位で分析が容易にできるよう配慮が必要と感じる。そして、厚労省「NDBオープンデータ」(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177182.html)はせめて二次医療圏単位での集計にできないものであろうか。「第3回NDBオープンデータについて」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000174513.pdf)p2「2次医療圏毎での集計;作業負荷が高く第3回オープンデータでは対応困難。課題として引き続き対応を検討。」とあり、地域ごとの分析ができないでいる。内閣府「経済・財政と暮らしの指標「見える化」ポータルサイト」(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/mieruka/index.html)では、二次医療圏別、市区町村別のSCRが公表されており、チグハグな感じがする。ところで、がん医療は、がん診療連携拠点病院(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000201832.pdf)だけではないが、「医療機能情報」(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/teikyouseido/index.html)をみると年間手術実績が非常に小さい病院がみられる。果たして当該病院でがん手術機能を確保すべきかどうか、地域医療構想調整会議において議論すべきかもしれない。
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医師確保計画の行方

2019年02月01日 | Weblog
メディウォッチ「「医師少数区域等での勤務」認定制度、若手医師は連続6か月以上、ベテランは断続勤務も可―医師需給分科会(1)」(https://www.medwatch.jp/?p=24637)。<以下引用>
<医師の地域偏在解消に向け、新たに「医師確保計画」に則った医師確保策(医師派遣の充実や、医師少数地域での勤務の評価、大学医学部への地域枠・地元枠の設置要請など)が2020年度からスタートします。各都道府県では、2019年度の1年間をかけて「医師確保計画」を作成することになり、その拠り所となる指針策定に向けた議論が「医師需給分科会」(「医療従事者の需給に関する検討会」の下部組織)で大詰めを迎えています(医師需給分科会では、2018年度中に中間とりまとめを行い、これに基づき、厚労省が指針を策定する)。1月30日に開かれた医師需給分科会では、次の4点について詰めの議論を行いました。今回は(2)の「医師少数区域等で勤務した医師の認定」に焦点を合わせ、ほかの項目は別稿でお伝えします。(1)医師少数区域・医師多数区域の設定(新たな医師偏在指標に基づき、上位33%を多数区域、下位33%を少数区域とし、少数区域への医師派遣等を充実していく)(2)医師少数区域等で勤務した医師を認定する制度(3)地域枠・地元枠の必要医師数(4)外来医師多数区域の設定(新たな偏在指標に基づき上位33%を多数区域とし、多数区域での新規クリニック開設者には在宅医療等提供を求める) 医師少数区域等の勤務期間、6か月が最低限だが、1年以上が望ましい 医師偏在を是正するためには、まず、医師に「医師の少ない地域」に赴任してもらうことが必要です(ほかに、地域枠等での地域に勤務する医師を養成する手法もある)。このためには、例えば「大学等に医師派遣を依頼する」ことや、「医師の少ない地域に赴任した医師にインセンティブを与える」ことなどが考えられ、後者については2018年の改正医療法・医師法で制度化が行われました。具体的には、「医師少数区域等で一定期間勤務した医師」を認定し、「医師派遣機能などを持つ地域医療支援病院」等の管理者(院長)となるための要件とする制度で、2020年4月からスタートします。制度の詳細を固めるには、さまざまな要素を勘案しなければいけませんが、とくに重要な論点として、▼「一定期間」(医師少数区域等での勤務期間)をどの程度とすべきか▼院長要件が課せられる病院の範囲をどう設定すべきか―の2点があります。前者の勤務期間については、先進的な実事例(沖縄県立中部病院等から離島への派遣期間:2年)や自治医科大学による医師派遣事業(1年)、新専門医制度における総合診療専門医の僻地等研修期間(東京、神奈川、愛知、大阪、福岡の5都府県では12か月、その他の地域では6か月)などを勘案し、これまでに「連続する6-12カ月程度」との考えが厚労省から示されていました。この点、医師需給分科会では「若手医師とベテラン医師とでは異なる勤務形態(ベテランでは週1、2日の勤務を可能とするなど)を認めたほうが、医師少数区域等に勤務しやすのではないか」「若手医師に対して、医師少数区域等で勤務しやすいような環境整備を行う必要があるのではないか」といった意見が示されており、厚労省は、これらも踏まえて、改めて次のような考えを提示しました。1月30日の医師需給分科会で概ね了承されています。【卒後3~9年目で医師少数区域等に勤務する場合】▼最低限の勤務期間:6か月(地域のニーズや地域医療に関する研修の状況を踏まえると1年以上の勤務が望ましい)▼「臨床能力の向上」という要請に応えるため、医師少数区域等の所在する都道府県において「若手医師が医師少数区域等で勤務する環境整備」のためのプログラム策定を促す【卒後10年目以降の医師が医師少数区域等に勤務する場合】▼最低限の勤務期間:6か月(地域のニーズや地域医療に関する研修の状況を踏まえると1年以上の勤務が望ましい)▼医師少数区域等に所在する複数の医療機関で断続的(週1日等)に勤務する医師もいると考えられ、「卒後10年目以降で勤務した日数が累積で認定に必要な勤務期間となる場合」(例えば、週2日の勤務を90週(22カ月)続けるなど)も、認定の対象とする 「6か月」の勤務期間は、総合診療専門医の受験資格取得研修における「僻地での研修期間」を参考にしたものです。地域における医療資源(医師)確保という側面からは「長期間」の勤務が望まれますが、「赴任してくれる医師」の視点からすれば、「短期間」の勤務としたほうが、赴任へのハードルが下がることになり、両者のバランスを考慮した数字と考えることができるでしょう。また卒後10年以上のベテラン医師では、家庭環境から「連続した赴任」等が難しいケースもあるでしょう。一方で、「非常勤で構わないので、そのスキル・知識を当院に貸してほしい」と欲する医療機関もあると考えられることから、「断続」勤務を可能としたものです。この点、制度の運用状況を見て「より長期の勤務期間を求める(認定の要件とする)といった見直しも、将来検討すべき」との指摘もありましたが、制度の安定性を考慮すれば、根幹に関する見直しは慎重に考えるべきでしょう。例えば、制度発足当初は「6か月」勤務で認定されるが、制度開始から6年経過後に「1年間の勤務が必要」と見直されれば、認定者の間に大きな不公平が生じ、制度の信頼が揺らぎかねないためです。この6か月の間に、▼個々の患者の生活背景を考慮し、幅広い病態に対応する継続的な診療や保健指導(継続的な診療、診療時間外の急変時対応、在宅医療など)▼他医療機関との連携や、患者の地域生活支援を支援するための介護・福祉事業者等との連携(地域ケア会議や退院カンファレンス等、他の事業者との連携やマネージメントに関する会議への参加など)▼地域住民に対する健康診査や保健指導等の地域保健活動―などを実施することが求められます。認定資格を院長要件とする仕組みに、さらなるインセンティブ等を求める声も こうした6か月間以上の医師少数区域等での勤務を終えた医師(認定医師)には、「『医師派遣機能などを持つ地域医療支援病院』等の管理者(院長)となるための要件を1つ満たす」(以下、院長要件)という一種のインセンティブが与えられます。この点、医師需給分科会では、これまでにも多くの委員から「診療所などでも、院長要件を設けるべき」との指摘が出ていました。より広範な医療機関に院長要件を課すことで、医師少数区域等で勤務する医師が増えると考えられるためです。しかし、対象医療機関を広めるほど「半強制」に近づいてくことになり、それが地域住民にとって好ましいかどうかも考えなければいけません。院長要件を課される対象医療機関の範囲は、別の検討会(特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会)で議論されており、今夏(2019年夏)に詳細が固められる予定です。ところで、この院長要件の適用は、「施行日(2020年4月予定)以降に初期臨床研修を開始した医師」に限定されます。このため、厚労省は▼「2020度以降に初期臨床研修を開始した医師」以外の医師が管理者(院長)となるケース▼当該病院の管理者(院長)が急に不在となり(事故での急逝など)、後継者が認定資格を持っていないなど、特別の事情のあるケース―については、認定視覚を持っていなくとも当該病院の管理者(院長)に就任できることとする考えも示しました。「2020度以降に初期臨床研修を開始した医師」が実際に地域医療支援病院の院長等に就任するのは20-30年ほど先のことになると考えられ、当面、すでに臨床研修を終えた医師等は、認定資格を持たず(つまり医師少数区域等での6か月以上の勤務経験がない)とも、「前者」のケースとして、「医師派遣機能などを持つ地域医療支援病院」等の管理者(院長)に就任することになります。この点について本田麻由美構成員(読売新聞東京本社編集局生活部次長)は「当面は、ほとんどのケースで例外規定が適用され、軽い仕組みとなってしまわないか」と危機感を示しています。なお、この院長要件は一種のインセンティブと解されていますが、その効果のほどは不透明です。このため、より多くの医師が医師少数区域等に赴任するよう、▼医師が多数勤務する病院(特定機能病院等)に、勤務医の5%を医師少数区域等に派遣させる義務を課し、当該病院には経済的なインセンティブを与えてはどうか(鶴田憲一構成員:全国衛生部長会会長)▼医師少数区域等のうち、比較的医師の多い区域等に集中しないよう、「とくに医師の少ない地域への赴任」ではより大きなインセンティブが得られるなどの濃淡をつけてはどうか(裵英洙構成員:ハイズ株式会社代表取締役社長)―といった提案がなされています。3年ごとの「医師確保計画」の見直し時期(2020年からスタートし、2024年、27年と3年ごとに見直される)などに、制度の運用状況(どの程度、医師少数区域等に赴任しているか、実際の勤務期間はどの程度か、など)を見ながら、こうした提案も踏まえた改善策が検討されることになりそうです。この点に関連して、厚労省では、前述した「若手医師が医師少数区域等で勤務する環境整備」のためのプログラムの魅力が重要ではないか、との見解を示しています。魅力あるプログラムを用意しPRすることで、若手医師が当該地域に積極的に赴任を検討・希望することが期待されます。>

医師需給分科会(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_318654.html)の「医師偏在指標について」(https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/000475517.pdf)、「外来医師多数区域の設定について」(https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/000475518.pdf)が出ているが、具体的にどの医療圏があてはまるか公表されれば、それなりのインパクトがあるように感じる。2019年度に各都道府県が策定する医師確保計画は「将来時点の必要医師数と地域枠等の必要数」(https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/000474791.pdf)を踏まえることになるが、医師派遣は透明性の確保が重要であろう。医療部会(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126719.html)の資料(https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000345591.pdf)p3「医療法及び医師法の一部を改正する法律施行スケジュール」にある「医師確保計画の策定(H31.4.1施行)」にかかる指標策定は今年度中である。医療法改正(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000203213.pdf)に関して、「「医療法及び医師法の一部を改正する法律」の公布について」(http://www.hospital.or.jp/pdf/16_20180725_01.pdf)、「「医療法及び医師法の一部を改正する法律」の一部施行について」(http://www.hospital.or.jp/pdf/15_20180725_02.pdf)、「地域医療対策協議会運営指針について」(http://www.hospital.or.jp/pdf/15_20180725_03.pdf)、「キャリア形成プログラム運用指針について」(http://www.hospital.or.jp/pdf/15_20180725_04.pdf)が発出されているが、それぞれの都道府県で取り組まれなければ意味がない。平成29年度全国医政関係主管課長会議(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000197363.html)(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000197362.pdf)p40「地域枠の導入状況(都道府県別)」、p41「各医学部の地元出身者(地域枠を含む。)の割合」、p43「(参考) 秋田県地域枠の状況」が出ており、「これまで地域枠で秋田大学医学部に入学した者全員が、卒業後に秋田県内に勤務している。」とあるが、各都道府県ごとに、これまでの年度別の「自治医大・地域枠出身医師の勤務先(診療科、地域)」「派遣ルール」「キャリア形成プログラム」が公表されるべきであろう。医師の養成に積極的に公費が投入されている自治医大・地域枠出身医師に関する情報公開すらできないようではいけない。自治医大出身医師(義務年限内)の派遣は知事権限ではあるが、地元大学、都道府県医師会、病院団体等とスクラムを組んだ都道府県ガバナンスの強化が欠かせないであろう。「医師確保計画の策定(H31.4.1施行)は、これからの「医療計画」(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/index.html)、「地域医療構想」(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000080850.html)、「公的医療機関等2025プラン」(http://www.hospital.or.jp/pdf/15_20170804_01.pdf)、「新公立病院改革プラン」(http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/c-zaisei/hospital/hospital.html)の推進にも絡むのは間違いない。ところで、看護職員需給分科会(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_338805.html)の資料(https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/000469057.pdf)p2「看護職員確保に関する議論の進め方スケジュール(案)」では、今年1月「都道府県に推計ツールを発送」、今年4月末「都道府県推計の集約」とあったが、今後、医師確保計画とセットで看護師確保計画もあった方が良いように感じる。
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地域包括ケアシステムと地域データの活用

2019年02月01日 | Weblog
国保情報1月28日号「予防・健康づくりと互助が主題 老健局帳」。<以下引用>
<厚労省の大島一博老健局長は23日、第8期の介護保険事業計画に向け、予防・健康づくりと互助を最大のテーマに据える方針を示した。これは全国市長会の講演で言及したもの。2月から社会保障審議会介護保険部会での議論を始め、来年通常国会へ介護保険法改正案を提出することを明らかにした。2040年に向け、生産年齢人口が減少するなかで高齢者は増加し、医療・介護の人材不足が見込まれる。大島局長は論点として、通いの場の推進や地域支援事業を通じた地域づくりで、介護予防・健康づくりを進めることを示した。また、「高齢者には社会参加と同時に、働き手になってもらう必要があるのではないか」と提起。地域人材の確保にもつなげる考えを説明した。>

国保情報1月28日号「保健事業でのKDB活用が普及 厚労省調査」。<以下引用>
<厚労省国保課が初めてまとめた「市町村国保における保健事業実態調査」によると、保健事業を実施する際のKDBなどのデータ活用について、市町村の9割以上が「地域全体の分析」や「地域全体の健康課題の明確化」などに使っていたことが分かった。特定健診などの数値目標の評価にも72.7%の市町村が利用したほか、高額医療費につながる疾病の予防対策の検討での使用も65.4%に達していた。一方、保健指導等の効果の評価では53.2%、小地区(中学校区など)の状況や健康課題の把握では35.8%という活用状況。同省国保課は「個々の事業の活用やミクロ的な分析がまだやや少ない」と指摘した。特定健診受診率向上の事業で連携している外部組織は、郡市区医師会が65.4%と最多。次いで保険者団体(国保連合会や保険者協議会など)が59.1%、国診協を含む地域医療機関が49.2%。保健事業の企画・実施・評価における課題には、70.0%の市町村が「保健師等専門職の人材不足」と回答した。これは昨年3月に、厚労省国保課が市町村の保健事業の実施体制や取り組み状況を調べたもの。>

国保情報1月28日号「総務省「法定外繰り入れ解消を」 自治体に要請」。<以下引用>
<総務省は25日、「全国都道府県財政課長・市町村担当課長合同会議」を開いた。福田毅自治財政局調整課長は、新国保制度では円滑運営のため、保険者努力支援制度などの財政支援措置が講じられたと説明。そのうえで、「このことを踏まえると、決算補填を目的とする法定外の一般会計繰入金等の計画的な解消に向けて取り組んでもらうことが適当だ」と、自治体の財政課長に要請した。また福田課長は、政府の経済財政諮問会議や財務省などが検討を求めている国保の普通調整交付金の見直しについて、「効率化の観点のみならず、必要な医療・介護サービスを住民に安定的に提供するという視点も必要だ」と訴えた。同省は、地方の深刻な医師不足を踏まえ、31年度から都市部等の地域の拠点病院から、過疎地等の医師不足の病院に医師を派遣した場合の経費の一部を補助する方針も説明した。地方負担に対し60%の特別交付税措置を講じる。遠隔医療システム導入費用についても、60%の特別交付税措置を講じる。>

「全国高齢者医療主管課(部)長及び国民健康保険主管課(部)長並びに後期高齢者医療広域連合事務局長会議」(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-hoken.html?tid=252919)の資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000192093.pdf)p4「保険者努力支援制度」は今年度から本格化しているが、介護保険の「保険者機能強化推進交付金」(http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/khf/ki/ki_v622.pdf)と一体的に推進したい。「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施」(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-hoken_553056_00001.html)(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000428884.pdf)というのであればなおさらである。認知症施策推進関係閣僚会議(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ninchisho_kaigi/index.html)の資料「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の進捗状況及び今後の方向性」(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ninchisho_kaigi/dai1/siryou4.pdf)に示すように「共生」と「予防」が柱になっており、「予防・健康づくりと互助が主題」はわかる。しかし、行政が強制するものではない。そういえば、経済財政諮問会議(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/)の資料「予防・健康・医療・介護のガバナンス改革」(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2017/0412/shiryo_04.pdf)p1「医療・介護費は経済の伸び以上に増加。その要因を分析し、データに基づく政策の戦略的展開により、個人・保険者・医療機関等の自発的な行動変容を促すことが必須。」、p3「地域における『予防・健康・医療・介護』は、それぞれ密接に関連するが、制度がバラバラ。都道府県の役割は限定的。」「都道府県を、個人・保険者・医療機関等の自発的な行動変容を促す司令塔へ。このため、制度(権限)・予算(財政)・情報(データ)・人材などの面で、都道府県の保健ガバナンスの抜本強化を検討。」とされていた。例えば、医療費の地域差については、医療保険データベース(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/database/index.html)では、「医療費の地域差分析」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/database/iryomap/index.html)、「市町村国民健康保険における保険料の地域差分析」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/database/iryomap/hoken.html)が出ているほか、日医総研「医療費の地域差について (都道府県別データ)」(http://www.jmari.med.or.jp/research/research/wr_644.html)(http://www.jmari.med.or.jp/download/WP405.pdf)も参考になる。また、介護費の地域差については、「地域包括ケア「見える化」システム」(http://mieruka.mhlw.go.jp/)で、地域別の要介護認定率、介護費用額、保険料額が公表されていることは常識である。保険者機能の責任を果たすためには、被保険者の方々との情報の共有が欠かせないであろう。経済財政諮問会議(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/)の「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)-概要-」(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2018/0521/shiryo_04-1.pdf)p22~23「医療・介護の1人当たり保険料・保険料率の見通し」が出ていたが、自分たちの自治体ではどうなのか、関係機関・団体と共有することが不可欠で、例えば、市町村健康づくり推進協議会で共有することも考えられるかもしれない。3年ごとに実施される「介護予防・日常生活圏域ニーズ調査」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/0000138618.pdf)(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/0000138620.pdf)や「在宅介護実態調査」(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000154928.html)が積極的に活用されなければならない。資料「介護サービス情報公表制度の活用等について」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/0000115405_1.pdf)にあるように、介護保険法改正で「市町村は地域包括支援センターと生活支援等サービスの情報を公表するよう努めなければならない」と規定され、平成27年10月から、介護サービス情報公表システム(http://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/)を活用して公表できるようになった。厚労省の介護事業所・生活関連情報検索(http://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/)による生活関連情報の公表項目には、見守り・安否確認、配食(+見守り)、家事援助、交流の場・通いの場、介護者支援、外出支援、多機能型拠点などがあり、市町村ごとに取り組み状況が公表されていることになっているが、介護事業所・生活関連情報検索(http://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/)に入力していない自治体が少なくない。そもそも介護保険法で規定されている、データ分析や情報公表にしっかり取り組まないようでは、地域包括ケアの推進はあり得ない。介護保険事業計画策定に向けた各種調査等に関する説明会(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-rouken.html?tid=384533)の「保険者等による地域分析と対応」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/0000138613.pdf)p1「多くの市町村、都道府県では、必ずしも、介護保険事業(支援)計画のPDCAサイクル等が十分な状況とはいえず、ノウハウや人員不足が大きな理由となっている。」は全く同感である。
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